ASDの遅い診断に関する定義と背景
この記事では、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する最新の研究を包括的に紹介しています。幼稚園児の音声処理が読解能力に与える影響から、COVID-19パンデミック下でのフェイスマスク使用がASD評価に与えた影響、非発声のASD児における言語環境が社会的コミュニケーションに与える効果、外見に基づくASDの自動識別法、名前を聞いた際のASD児の注意喚起の神経反応、中国語を使う読字障害の音韻欠陥プロファイル、拒食症とASD特性の関係性、そしてASDの遅い診断に関する定義と背景に至るまで、多岐にわたるテーマが取り上げられています。
学術研究関連アップデート
Neural Processing of Speech Sounds in Autistic Kindergarteners as a Predictor of Reading Outcomes
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ幼稚園児の音声処理の神経的基盤が、読みの発達(単語認識と読解力)にどのように関連しているかを調査したものです。56人の幼稚園児(ASD 28人、定型発達児28人)が、音声刺激(「旧」/gibu/と「新」/bidu/)に対する早期の聴覚事象関連電位(ERP)を測定され、幼稚園の入園時と修了時に読みの能力が評価されました。
主な結果:
- 自閉症の子どもで読み能力が低いグループは、「新」刺激に対してERP振幅(P1とP2)が有意に高く、「旧」刺激との違いが大きいことが示されました。
- ERPの差スコア(旧 vs 新)は、幼稚園修了時の単語認識能力を予測しました(P1: p=0.05, P2: p=0.04)。ただし、読解力には影響を与えませんでした。
- 読み能力が高い自閉症児や定型発達児とは異なる音声処理パターンが観察されました。
結論:
自閉症児における音声処理の神経的な違いが、読み能力の個人差に寄与している可能性があります。この知見は、自閉症児の読解スキル向上を目指した介入策の設計に役立つことが期待されます。
The Impact of Face Mask Use on Research Evaluations of 5–7 Year-Old Children With Autism Spectrum Disorder
この研究は、COVID-19パンデミック中に行われた自閉症スペクトラム障害(ASD)の研究評価において、フェイスマスクの使用が与える影響を調査しました。5~7歳のASD児(平均年齢6.2歳、n=60)を対象に、認知、言語、社会的コミュニケーション能力を評価しました。
主な結果
- マスクの耐容性:
- 全期間着用: 66.7%
- 部分的に着用: 21.6%
- 着用不可: 11.6%
- 耐容性と認知・コミュニケーションスコア:
- マスクを耐容できなかった子どもは、全期間または部分的に着用した子どもよりも**認知スコア(F=13.241, p<0.001)とコミュニケーションスコア(F=13.639, p<0.001)**が有意に低い結果を示しました。
- 診断確信度:
- 88%の評価で、研究者はマスク使用が診断結果に「影響なし」と回答。
- マスク使用が評価完了やASD診断能力に大きな影響を及ぼさなかったと報告されました。
結論
マスクの使用は、多くのASD児にとって耐容可能であり、研究評価結果や診断の確信度に大きな影響を与えなかったことが示されました。ただし、マスクを耐容できない子どもは、認知やコミュニケーション能力に課題がある可能性があり、さらなる支援が必要であることが示唆されます。
Social Communication During Play Across Language Environments in Nonvocal Preschool-Age Children with ASD from English and Non-English Speaking Families
この研究は、非発声の自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ未就学児が異なる言語環境で示す社会的コミュニケーション行動を調査しました。対象は、英語圏および非英語圏の家族出身の子どもたちで、バイリンガルの介入者が英語と非英語(「世界言語」)の2つの条件で交流しました。
主な結果
- 社会的コミュニケーション行動は参加者間で異なりが見られましたが、同一の参加者内では言語環境間で有意な違いはありませんでした。
- ASD児は言語環境を区別していないように見え、バイリンガル環境がASD児に悪影響を与えないという先行研究を支持する結果となりました。