このブログ記事では、COVID-19パンデミック中の自閉症や特別な医療ニーズを持つ子どものケア、親の高齢が自閉症リスクに与える影響、パンデミック後の自閉症児と介護者の回復力、自閉症の遺伝的要因であるCHD8遺伝子や介在ニューロン病仮説に基づく神経回路の発達異常、乳児期の顔スキャンパターンの非典型性、自閉症を持つ女子思春期の神経心理学的特徴、ユーザビリティ評価がASD向けアプリ開発に与える影響、中東地域におけるASD児童の脳形態の違いに関する研究を紹介しています。
学術研究関連アップデート
Changes in Child Health Care, Health, and Caregiver Mental Health During the COVID-19 Pandemic in Children with Autism and Special Health Care Needs
この研究は、COVID-19パンデミックによる影響が自閉症児と特別な医療ニーズを持つ子ども(CSHCN)の医療、健康、介護者の精神的健康にどのような変化をもたらしたかを調査したものです。2018年から2021年にかけての全米児童健康調査データを分析した結果、自閉症児とCSHCNの約3分の1が予防検診を受けられず、2021年には半数が遠隔医療を利用しました。2020年には、自閉症児の親がケア調整の支援を受ける機会が減少しました。CSHCNでは、2018/2019年から2021年にかけて不安の有病率が増加し、それに伴い精神的健康ケアの需要も増えました。一方、自閉症児ではこの傾向は見られませんでした。経済面では、2020年および2021年に医療費や食費の支払い困難が2018/2019年よりも少なくなったことが報告されました。この研究は、パンデミックが医療アクセスに与えた影響を理解し、長期的な緊急事態計画において障害者を含む政策の重要性を強調しています。
A assessment of the effects of parental age on the development of autism in children: a systematic review and a meta-analysis
この研究は、親の年齢と子どもの自閉症リスクの関連性についての先行研究の矛盾を解消するため、システマティックレビューとメタ分析を行いました。41件の観察研究を対象に、母親と父親の年齢が子どもの自閉症リスクに与える影響を検討しました。
主な結果:
- 低年齢の親(母親のOR=0.96、父親のOR=1.11)は、自閉症リスクの低下と有意な関連は見られませんでした。
- 一方、高年齢の親は、子どもの自閉症リスクの上昇と有意に関連していました。
- 母親の年齢:OR=1.47(95% CI: 1.33–1.62)
- 父親の年齢:OR=1.51(95% CI: 1.40–1.62)
結論: 親の高齢は子どもの自閉症リスクを高める要因の一つであることが示されました。ただし、この関連性の具体的なメカニズムは依然として不明であり、さらなる研究が必要とされています。この結果は、親の年齢が自閉症のリスク要因となる可能性を示唆しています。
A Longitudinal Examination of Autism Services, Child Adaptive Functioning, and Parent Quality of Life during the COVID-19 Pandemic
この研究は、COVID-19パンデミック中に自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもへのサービス提供が中断された影響を、子どもの適応機能と**介護者の生活の質(QoL)**の変化に焦点を当てて調査しました。対象は146人の介護者(87%が母親)で、2020年夏から2021年夏にかけて4回のオンライン調査が実施されました。
主な結果:
- 外出禁止令解除後、子どもの適応機能と介護者のQoLは時間とともに向上しました。
- サービス強度の増加は、介護者の身体的QoLの向上と関連していました。
- 子どもの反復行動の減少は、介護者の社会的および環境的QoLの向上と関連していました。
結論: 外出禁止令解除後、子どもと介護者は回復力を示し、サービス強度と子どもの反復行動が介護者のQoLに影響を与えることが確認されました。この結果は、サービス提供と行動管理が介護者支援の重要なポイントであることを示唆しています。
Expansion of phenotypic and genotypic data in autism spectrum disorders due to variants in the CHD8 gene
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の遺伝的原因の一つであるCHD8遺伝子変異に関連する表現型と遺伝型のデータを拡張することを目的としています。CHD8遺伝子は、細胞増殖や脳の発達を制御するクロマチンリモデラータンパク質をコードしており、ASDの一般的な分子遺伝的原因として知られています。
研究対象は、CHD8の臨床的に重要な変異が確認された**6人の子どもと1人の成人(1人の子どもの母親)**です。このうち、4人が病的変異、3人が意義不明変異を持つとされました。これらの患者は以下の特徴を示しました:
- ASD、発達遅滞、失調症状、過成長など、CHD8変異によく見られる特徴
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD)、結合組織障害といったASDの一般的な併存症
さらに、以下のような新しい特徴が報告されました:
- 肝腫大(4人)と高ビリルビン血症(2人、うち1人は両方)—これらはCHD8変異ではこれまで報告されていない
- 心血管異常(2人)—主に不整脈と心筋症
結論: CHD8変異の臨床的特徴には、これまで知られていなかった肝臓や心血管系の異常が含まれる可能性があることが示唆されました。これらの新しい特徴がどのような分子機序で現れるのかを解明するため、さらなる研究が必要とされています。この研究は、CHD8遺伝子変異の多様な影響とその関連疾患の理解を深めるものです。
Dysregulation of neuropilin-2 expression in inhibitory neurons impairs hippocampal circuit development and enhances risk for autism-related behaviors and seizures
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と小児てんかんの共通メカニズムとして提唱される**介在ニューロン病(interneuronopathy)**に着目し、**Neuropilin-2(Nrp2)が介在ニューロンの発達や移動に与える影響を調査しました。Nrp2は、胚発生中に内側神経節隆起(MGE)**から海馬などの大脳皮質領域への介在ニューロンの移動を調節する重要な遺伝子です。ASD患者におけるNrp2多型が報告されている一方で、Nrp2の異常がASDの病因やてんかんリスクにどのように寄与するかは未解明でした。