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ASDを持つ幼児の不安予防介入の効果

· 25 min read
Tomohiro Hiratsuka

このブログ記事では、発達障害に関連する最新の学術研究を紹介しています。具体的には、知的障害を持つ子供の証言の信頼性評価、デジタル介入が自閉症児の社会感情スキル向上に与える効果、リモートでの自閉症診断プロトコルの有効性、作業療法目標と参加の関係、ASDを持つ幼児の不安予防介入の効果、自閉症関連の睡眠障害と脳ネットワークのメカニズム、性別が情動知能や共感に及ぼす影響、エチオピアにおける発達障害児のインクルーシブ教育の利点と課題、黒人家庭が求める自閉症支援の種類、警察による自閉症児射殺事件の教訓、ASD診断とサービスへのアクセスにおける保護者の視点、発達性ディスレクシア児の視覚処理の問題、ADHDサブタイプの脳構造の違い、自閉症者の犯罪意図察知能力、成人ADHD向けオンライン支援プログラムの実施可能性など、多岐にわたる研究を紹介します。

学術研究関連アップデート

Mock Juror Perceptions of Eyewitness Reports Given by Children with Intellectual Disabilities

この研究は、知的障害を持つ子供が証人となる場合、模擬陪審員がその証言の信頼性や真実性をどのように評価するかを調査したものです。成人の模擬陪審員217人を対象に、半数には子供の障害について事前に情報を提供し、10歳から15歳の知的障害を持つ子供の証言を読ませました。その結果、模擬陪審員の嘘発見率は55.76%で、通常の発達をした子供の証言に関する過去の研究と同程度でした。また、子供が知的障害を持っていることを知らされたグループと、そうでないグループの間で、嘘発見率や信頼性の評価に違いは見られませんでした。模擬陪審員は、知的障害のある子供の証言を低い信頼性として評価しましたが、多くの証言を虚偽と見なすことには消極的でした。この結果から、障害の開示が証言の信頼性に悪影響を及ぼすとは限らないことが示唆されています。

The Use of Digital Interventions for Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder—A Meta-Analysis

このメタ分析は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供や青年に対するデジタル介入の効果を評価することを目的としています。3つのデータベースをもとにシステマティックな文献検索を行い、28件の研究(150の効果サイズ)を対象に、群間の標準化効果量を計算しました。結果、デジタル介入はASDの子供たちの社会感情スキルの向上において中から大の効果を持つことが示されました(Hedges' g = 0.62, p < 0.001)。特に、社会感情スキルに対する効果が他のスキル(言語・コミュニケーション、認知、日常生活、身体スキル)よりも大きいことがわかりました。また、コンピュータベースの介入は、タブレットやスマートフォンベースの介入よりも大きな効果を示しました。ランダム化比較試験(RCT)と準実験的デザイン(QED)の間に統計的な差は見られませんでした。この結果から、デジタル介入を行動や教育の補完的なリソースとして統合することが推奨され、今後の研究では女性や若い子供を対象にしたデジタル介入に焦点を当てる必要があると結論付けられました。

Use of Telehealth in Autism Spectrum Disorder Assessment in Children: Evaluation of an Online Diagnostic Protocol Including the Brief Observation of Symptoms of Autism

この研究は、COVID-19パンデミック中にリモートで自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を行うプロトコルを評価することを目的としています。29人のASDが疑われる子供を対象に、オンラインで「自閉症症状の簡易観察(BOSA)」と「自閉症診断面接改訂版(ADI-R)」が実施され、その後、標準的な臨床環境で「自閉症診断観察スケジュール-2(ADOS-2)」などを用いて診断が確認されました。オンライン評価と対面評価の間には、Cohen’s Kappa = 0.66(P < 0.001)で、79.8%の一致が見られました。オンラインプロトコルの感度は94.7%、特異度は70%、陽性的中率は85.7%、陰性的中率は87.5%でした。さらに、「判断不能」の結論を含めると、誤診はありませんでした。この結果から、BOSAとADI-Rを組み合わせたオンライン診断プロトコルが、リモートASD評価に有望なツールであることが示されました。

Do Occupational Therapy Goals for Children with Autism Spectrum Disorder Reflect Participation? A Mapping to the ICF – CY and ICF Core Sets Study

この研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供の作業療法における目標が、どの程度「参加」を反映しているかを調査しました。作業療法士40名がASDの子供に対して最もよく設定する3つの長期目標を報告し、その目標が国際生活機能分類(ICF – CY)およびICF ASDコアセットに基づいて分類されました。155の目標のうち、7つ(4.5%)はICF – CYカテゴリに関連付けられず、目標の35.1%が「参加」を反映しているとされました。さらに、ICF – CYカテゴリの84.5%がICF ASDコアセットと重複していましたが、手の機能や体のケアに関連するカテゴリが不足していることが示されました。ICF – CYとICF ASDコアセットは臨床ツールとして有望であるものの、作業療法目標を包括的にカバーするには不十分であり、参加をより反映するように目標の修正が必要であることが結論付けられました。

Prevention and Reduction of Anxiety in Autistic Preschoolers Through an Autism-Specific Parent-Mediated Intervention: A Pilot Randomised Controlled Trial Evaluating Short and Longer Term Outcomes

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ幼児の不安を予防・軽減するために、自閉症特有の親が仲介する介入プログラム(CLK-CUES)の効果を評価したパイロットランダム化比較試験です。57人の4~5歳の自閉症児の親が参加し、介入前、介入後、および12か月後のフォローアップで子供の不安や不確実性への耐性、親の健康状態が評価されました。介入による有害な影響は報告されておらず、結果として、介入群のみで不安(特に不確実性に関連する不安)が介入前後で有意に減少し、1年後のフォローアップでもその効果が維持されました。この研究は、特に不確実性に関連する不安に対する介入としてCLK-CUESの有望さを示していますが、より大規模な試験が必要であることが強調されています。また、自閉症児に適した評価指標の重要性も指摘されています。

Research progress on the main brain network mechanisms of sleep disorders in autism spectrum disorder

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)に伴う睡眠障害と脳ネットワークの関係についての最近の研究進展をレビューしたものです。ASDでは、睡眠障害が社会的障害や反復的な行動といった核心的な症状を悪化させることが知られていますが、これに関与する具体的な脳ネットワークはまだ十分に理解されていません。研究では、睡眠が脳機能に重要な役割を果たし、脳脊髄液の循環や代謝物の除去、記憶の固定化を促進することに注目しています。このレビューは、ASD関連の睡眠障害が脳ネットワークに与える影響をまとめ、主要なメカニズムを明らかにしようとするものです。本研究は、ASDにおける睡眠障害と脳ネットワークの関係を解明するための理論的枠組みを提供しており、今後の研究に向けた貴重な参考資料となります。

The Moderating Effect of Sex on Autistic Trait Emotional Intelligence, Alexithymia, and Empathy

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性が情動知能(TEI)、失感情症(アレキシサイミア)、共感に与える影響を調査し、これらの関係における性差の役割を探りました。自閉症の特性を持つ成人と非自閉症の成人が、自身の自閉症特性、TEI、アレキシサイミア、共感について報告しました。結果として、自閉症の特性が強いほど、TEIの低さ、アレキシサイミアの高さ、共感の低さに関連が見られました。しかし、性別による違いはTEIに限定され、特に男性がTEIに関連するサポートニーズが高いことが示されました。これにより、TEIとアレキシサイミアが共感の違いに影響を与える可能性が示唆され、性別が自閉症特性とTEIの関係において重要な役割を果たすことが明らかになりました。

Inclusive Education for Children with Developmental Disabilities in Ethiopia: Stakeholder Views on Benefits, Disadvantages and Priorities for Action

この研究は、エチオピアのアディスアベバにおける発達障害(DD)を持つ子供たちのインクルーシブ教育に関する利点や課題について、関係者の視点を調査したものです。発達障害には知的障害や自閉症が含まれ、これらの子供たちは社会生活や教育から排除されることが多いですが、通常の学級でインクルーシブ教育を受けることは、教育へのアクセスを広げ、健常な同級生と共に学ぶ権利を保証する可能性があります。しかし、支援が不十分な場合には参加や学業の達成が妨げられることもあります。

本研究では、発達障害を持つ子供に関わる保護者、教育者、臨床医など39人の関係者が半構造化インタビューを通じて意見を提供し、テーマ分析が行われました。分析結果では、「学習と発達」「仲間との関係」「学校での安全」「社会での包摂」という4つの主要な側面がインクルーシブ教育の利点と課題として浮き彫りになりました。特に、教師のトレーニングの強化やインフラの整備、政府の支援強化が重要な改善策として挙げられました。

この研究は、発達障害を持つ子供が健常児と共に学ぶための支援体制の整備が必要であり、適切な対策が取られれば、インクルーシブ教育は成功すると結論付けています。

Analyzing Community-Based Support Requests Made by Black Families Raising Autistic Children

この研究は、アメリカ南東部のコミュニティベースの自閉症支援組織のデータを分析し、黒人家庭が自閉症の子供を育てる際に求める支援の種類を調査したものです。黒人家庭は、白人家庭に比べて自閉症関連の支援へのアクセスに追加の障壁を経験することが知られています。この研究では、黒人家庭がどのような支援を求めているか、また家族の人口統計がどのように支援ニーズに影響を与えるかを調べました。

分析の結果、黒人家庭が最も頻繁に求めた支援は、家族や個人に対するサポート、学校関連の支援、行動支援であることが分かりました。一方で、いじめやソーシャルサービス、健康保険に関する支援の要請は少なかったです。さらに、リクエストの頻度は、居住地(都市部や農村部)、性別、年齢によって異なることが確認されました。

結論として、自閉症支援組織は、黒人家庭のニーズにより的確に対応するための改善策を提案しています。

Fatal Shooting of an Autistic Adolescent: What Should We Do?

この論文は、2024年3月に警察官によって射殺された15歳のアフリカ系アメリカ人で自閉症スペクトラム障害を持つライアン・ゲイナーの事件について、著者たちが反省を述べています。彼らは、このような警察による行動が障害者や精神疾患を抱える人々、そしてその家族やコミュニティに与える深刻な被害について論じています。過去の研究や近年の類似した事件を基に、著者たちは自閉症スペクトラム障害を持つ人々に対する警察の暴力を減らすための体系的な改革案を提案しています。

“I’m His Voice”: Parent Perspectives on Obtaining an Autism Diagnosis and Services and the Influence of Personal and Cultural Factors

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断とサービスの利用に関する保護者の視点や、個人的および文化的要因の影響を調査したものです。29人の親を対象に、2019年から2021年の間にASDの診断を受けた子供について、半構造化インタビューとアンケートを実施しました。結果、80%の親が診断を受ける過程は「非常に簡単/やや簡単」と感じた一方で、28%はサービスへのアクセスが「非常に困難」と答えました。分析の中で4つの主要テーマが浮かび上がり、診断の経験、診断後のサービスの利用、親による擁護の必要性、他者の認識が挙げられました。多くの親は小児科医との経験は良好であったものの、サービスへのアクセスに関してはApplied Behavior Analysis(ABA)療法への長い待機時間やスタッフの離職が問題視されました。保護者は、書類手続きや保険対応を手助けするナビゲーターの必要性を訴えています。この研究は、家族が公平かつ効果的に必要なサービスを受けられるよう、システム全体の改革が求められていることを示唆しています。

Foveal crowding in children with developmental dyslexia

この論文は、発達性ディスレクシア(DD)を持つ子供における中心窩の「群集効果」(foveal crowding)を調査し、その結果を典型的発達(TD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供と比較したものです。研究では、特別なフォント(Pelliフォント)を使用して中心窩の群集効果を測定し、中国語の読書速度と読書能力を評価しました。その結果、DDおよびDD+ADHDグループでは、TDグループに比べて群集効果が顕著で、最大読書速度や読書能力も低いことが示されました。さらに、DDグループでは群集効果が強いほど読書速度が遅く、読書能力が低い傾向が見られ、他の認知スキル(音韻意識、素早い自動命名、形態意識、正字法知識)においても同様に低いパフォーマンスが確認されました。この結果は、ディスレクシアの早期診断における有用な指標として、Pelliフォントを用いた群集効果テストが役立つ可能性を示唆しています。

Unsupervised machine learning for identifying attention-deficit/hyperactivity disorder subtypes based on cognitive function and their implications for brain structure

この研究は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の認知機能に基づいたサブタイプを特定し、それぞれの脳構造の違いを明らかにすることを目的としています。656人のADHDの子供のデータを使用し、無監督機械学習によってADHDサブタイプを分類しました。その結果、3つのサブタイプが特定されました。

  1. ADHD-A: 高次認知能力が高いサブタイプ(212人)。
  2. ADHD-B: 認知制御、処理速度、エピソード記憶が低いサブタイプ(190人)。
  3. ADHD-C: 認知制御、作業記憶、エピソード記憶、言語能力が著しく低いサブタイプ(254人)。

脳構造分析では、ADHD-Cタイプが非ADHD群と比較して左下側頭回および右外側眼窩前頭皮質の体積が小さいことが示され、右外側眼窩前頭皮質の体積は言語能力と正の相関がありました。一方、ADHD-AおよびADHD-Bタイプでは脳の体積に有意な差は見られませんでした。

この結果は、ADHD-Cタイプに特有の脳の異常が言語障害と関連している可能性を示し、これまでのADHDに関する脳構造異常に関する不一致をサブタイプの違いが説明する可能性を示唆しています。

Detecting criminal intent in social interactions: The influence of autism and theory of mind

この研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ成人が犯罪意図を適応的に察知する能力について調査し、理論的には「心の理論(ToM)」の困難がその能力に影響を与えるかどうかを検討しています。自閉症の成人102人と非自閉症の成人95人を対象に、「疑わしい行動パラダイム」を開発し、犯罪に関与する可能性があるシナリオを聞かせ、疑わしい行動にどう反応するかを評価しました。結果、自閉症者と非自閉症者の間で疑念や適応的な反応に大きな違いは見られませんでした。しかし、ToMの困難と低い言語能力が、犯罪の兆候に対する反応の遅れや適応的な対応の低下と関連しており、これは診断にかかわらず共通するものでした。これにより、一般的な「自閉症による法的弁護」が必ずしも妥当ではないことが示唆されました。

Feasibility of the Understanding and Managing Adult ADHD Programme: open-access online group psychoeducation and acceptance and commitment therapy for adults with attention-deficit hyperactivity disorder

この研究は、成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)に対する「Understanding and Managing Adult ADHD Programme(UMAAP)」の実施可能性と効果を評価しました。UMAAPは、自己申告または正式診断を受けたADHDの成人を対象とした、6回のグループウェビナー形式の介入で、心理教育とアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を組み合わせています。257人が参加し、参加率と満足度が高く、プログラムの実施可能性が確認されましたが、自宅での実践に対する自信は中程度でした。介入後、生活の質、自己受容、ADHDの知識が有意に改善され、3か月後にも維持されました。心理的柔軟性は介入直後に変化が見られませんでしたが、3か月後には有意に改善しました。この研究は、ADHD成人向けにオンラインで心理的支援を提供することの有効性を示しています。