このブログ記事では、発達障害に関連する最新の学術研究を紹介しています。具体的には、知的障害を持つ子供の証言の信頼性評価、デジタル介入が自閉症児の社会感情スキル向上に与える効果、リモートでの自閉症診断プロトコルの有効性、作業療法目標と参加の関係、ASDを持つ幼児の不安予防介入の効果、自閉症関連の睡眠障害と脳ネットワークのメカニズム、性別が情動知能や共感に及ぼす影響、エチオピアにおける発達障害児のインクルーシブ教育の利点と課題、黒人家庭が求める自閉症支援の種類、警察による自閉症児射殺事件の教訓、ASD診断とサービスへのアクセスにおける保護者の視点、発達性ディスレクシア児の視覚処理の問題、ADHDサブタイプの脳構造の違い、自閉症者の犯罪意図察知能力、成人ADHD向けオンライン支援プログラムの実施可能性など、多岐にわたる研究を紹介します。
学術研究関連アップデート
Mock Juror Perceptions of Eyewitness Reports Given by Children with Intellectual Disabilities
この研究は、知的障害を持つ子供が証人となる場合、模擬陪審員がその証言の信頼性や真実性をどのように評価するかを調査したものです。成人の模擬陪審員217人を対象に、半数には子供の障害について事前に情報を提供し、10歳から15歳の知的障害を持つ子供の証言を読ませました。その結果、模擬陪審員の嘘発見率は55.76%で、通常の発達をした子供の証言に関する過去の研究と同程度でした。また、子供が知的障害を持っていることを知らされたグループと、そうでないグループの間で、嘘発見率や信頼性の評価に違いは見られませんでした。模擬陪審員は、知的障害のある子供の証言を低い信頼性として評価しましたが、多くの証言を虚偽と見なすことには消極的でした。この結果から、障害の開示が証言の信頼性に悪影響を及ぼすとは限らないことが示唆されています。
The Use of Digital Interventions for Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder—A Meta-Analysis
このメタ分析は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供や青年に対するデジタル介入の効果を評価することを目的としています。3つのデータベースをもとにシステマティックな文献検索を行い、28件の研究(150の効果サイズ)を対象に、群間の標準化効果量を計算しました。結果、デジタル介入はASDの子供たちの社会感情スキルの向上において中から大の効果を持つことが示されました(Hedges' g = 0.62, p < 0.001)。特に、社会感情スキルに対する効果が他のスキル(言語・コミュニケーション、認知、日常生活、身体スキル)よりも大きいことがわかりました。また、コンピュータベースの介入は、タブレットやスマートフォンベースの介入よりも大きな効果を示しました。ランダム化比較試験(RCT)と準実験的デザイン(QED)の間に統計的な差は見られませんでした。この結果から、デジタル介入を行動や教育の補完的なリソースとして統合することが推奨され、今後の研究では女性や若い子供を対象にしたデジタル介入に焦点を当てる必要があると結論付けられました。
Use of Telehealth in Autism Spectrum Disorder Assessment in Children: Evaluation of an Online Diagnostic Protocol Including the Brief Observation of Symptoms of Autism
この研究は、COVID-19パンデミック中にリモートで自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を行うプロトコルを評価することを目的としています。29人のASDが疑われる子供を対象に、オンラインで「自閉症症状の簡易観察(BOSA)」と「自閉症診断面接改訂版(ADI-R)」が実施され、その後、標準的な臨床環境で「自閉症診断観察スケジュール-2(ADOS-2)」などを用いて診断が確認されました。オンライン評価と対面評価の間には、Cohen’s Kappa = 0.66(P < 0.001)で、79.8%の一致が見られました。オンラインプロトコルの感度は94.7%、特異度は70%、陽性的中率は85.7%、陰性的中率は87.5%でした。さらに、「判断不能」の結論を含めると、誤診はありませんでした。この結果から、BOSAとADI-Rを組み合わせたオンライン診断プロトコルが、リモートASD評価に有望なツールであることが示されました。