対人関係療法の訓練モデルのコスト効果分析
このブログ記事では、ADHDや自閉症スペクトラム障害(ASD)を含む神経発達障害の治療法や診断、関連要因についての最新の研究成果を紹介しています。成人のADHDにおける注意散漫の神経基盤の解明、ASD治療におけるオキシトシンの有効性、ディスレクシアの簡易診断ツールの 開発、運動介入の遠隔医療の有効性、ADHDに対するデジタルヘルスデバイスの効果などを紹介します。また、ASDと知的障害のある人々における精神疾患の有病率や、早産児の長期的な健康リスク、エチオピアにおけるADHDの有病率に関する研究、対人関係療法の訓練モデルのコスト効果分析なども紹介します。
学術研究関連アップデート
Neural correlates of inattention in adults with ADHD
この論文は、成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)における注意散漫の神経基盤を解明することを目的としています。過去20年間のMRI研究では、主に灰白質の体積(GMV)や皮質の厚さ(CT)の違いに焦点が当てられてきましたが、この研究では皮質の回旋、溝の深さ、フラクタル次元も含めて分析しました。141人の成人ADHD患者の脳構造データを用い、TFCEアプローチとCAT12ソフトウェアを使用して解析を行った結果、注意散漫が皮質の回旋と負の相関を示し、皮質の厚さとフラクタル次元と正の相関を示すことが明らかになりました。影響を受ける部位は幅広く、特に頭頂葉や後帯状皮質が顕著でした。この研究は、成人のADHDにおける注意散漫の神経構造の変化の重要性を示しており、今後の研究が診断の精度向上や個別化された治療戦略の開発に貢献する可能性を示唆しています。
A clustering approach identifies an Autism Spectrum Disorder subtype more responsive to chronic oxytocin treatment
この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療におけるオキシトシンの効果に関する研究を報告しています。特に、41人の自閉症の子供に対して行われた6週間のオキシトシン投与試験の結果を再評価し、データ駆動型のクラスター分析を用いてオキシトシンに反応するASDのサブタイプを特定しました。その結果、2つの異なるサブタイプが明らかになり、そのうち1つのサブタイプでは61.5%がオキシトシンに反応しましたが、もう一方のサブタイプでは13.3%のみが反応しました。このオキシトシン感受性のサブタイプは、初期の臨床症状の軽度さ(ADOS-2)や感情的な顔の目の領域への関心の高さが特徴であり、これらの特徴を用いることで迅速かつ客観的にオキシトシン反応者を識別できる可能性があります。この研究は、今後の臨床試験で個別化されたオキシトシン治療の成功率を高めるための指針となることを示唆しています。
An abbreviated Chinese dyslexia screening behavior checklist for primary school students using a machine learning approach
この研究は、中国の小学生を対象に、ディスレクシア(読字障害)の早期発見と介入を促進するための簡略化されたスクリーニングツールを開発することを目的としています。元の30項目からなる「マンダリンディスレクシアスクリーニング行動チェックリスト」を短縮し、学年ごとに異なる簡略チェックリストを作成した後、これらを統合して共通の簡略版チェックリストを作成しました。研究には、2年生から6年生の15,522人の生徒とその保護者が参加し、データは機械学習法を用いて分析されました。最終的に、6項目からなる共通の簡略版チェックリストが開発され、その信頼性と分類性能は元のチェックリストと同等であることが確認されました。このチェックリストは、中国全土でディスレクシアのリスクがある子供を事前にスクリーニングするために使用できます。