ロボットを用いたPRTの効果比較
このブログ記事は、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する最新の学術研究を紹介しています。具体的には、ASDの青年のエッセイ分析、性別と報告者の不一致に関する研究、全国規模でのASDと身体的併存疾患の関連性、新しい社会的能力評価ツールの開発、発音障害を持つ幼児の治療用デジタルゲ ームの設計、注意問題を持つ学生向けの学校参加促進プログラム、知的障害者のための臨床不安尺度の開発、ASDとADHDにおける反抗挑戦性障害(ODD)の比較、ロボットを用いたABAとPRTの効果、そして自閉症成人の「カモフラージュ」戦略の心理的・社会文化的予測因子について紹介します。
学術研究関連アップデート
Analysis of Autistic Adolescents’ Essays Using Computer Techniques
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の青年が書いたエッセイを自然言語処理技術を用いて分析し、自閉症と非自閉症の生徒間の文章の違いを調査しました。結果として、自閉症の生徒はポジティブな感情を表す言葉を使う頻度が少なく、抽象的な表現が少ない一方で、非自閉症の生徒よりも可読性が高い複雑なストーリーを作成する傾向があることが分かりました。また、教師による作文能力の評価には有意差がありませんでした。これらの結果は、自閉症者の書いた文章が、話し言葉のナラティブと同様の特徴を持つ可能性を示唆しており、大規模で費用対効果の高い自閉症に関する疫学的研究への道を開くかもしれません。
Sex Differences and Parent–Teacher Discrepancies in Reports of Autism Traits: Evidence for Camouflaging in a School Setting
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性について、性別の違いや親と教師の報告の不一致を調査しました。Simons Simplex Collectionのデータから、親と教師が社会的反応性尺度(SRS)を用いて自閉症特性を報告した青年388人を対象に分析しました。親の報告では性別による自閉症特性の違いは見られませんでしたが、教師の報告では男子が女子よりも自閉症特性が多いとされました。また、女子の親は教師に比べて、複数の領域で自閉症特性が多いと報告しました。年齢が高いことや女子であることが、親と教師の報告の不一致の増加の予測因子であることがわかりました。この結果は、女子の自閉症特性が家庭と学校で異なる可能性を示唆しており、女子が意識的に行動を変えたり、性別に基づく期待により教師から見落とされる可能性があることを示しています。このため、個別の不一致についての議論が、長期的な影響を軽減する助けになるかもしれません。
Complete Spectrum of Physical Comorbidities with Autism Spectrum Disorder in a Nationwide Cohort
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と身体的疾患(PD)との関連性を、ICD-8およびICD-10診断に基づいて調査しました。対象は、1984年から1995年に生まれたデンマークの登録データからASDと診断された12,063人と、一般人口の5%にあたる41,251人のランダムサンプルです。参加者は出生から最初の診断、死亡、移住、または2017年12月31日のいずれかが最初に発生するまで追跡されました。ASDの人々は、13種類のPDのうち12種類において乳幼児期および児童期に一般人口と比較して高いリスクがあることが明らかになりました。特に神経系の疾患と眼の付属器の疾患で顕著でした。累積リスクが高いカテゴリーは8種類で、呼吸器系疾患が最も高く、ASD群では5歳で24.9%、30歳で41.5%のリスクがありました(対照群はそれぞれ16.3%、34.5%)。研究は、乳幼児期および児童期における多くの身体的疾患のリスクがASDで増加していることを示しています。