療育で活用できるデータを集める方法4選【応用行動分析学・ABA】
児童の成長をモニタリングして行く上でデータ分析は欠かせません。
療育のデータ分析してますか?
児童の成長をモニタリングして行く上でデータ分析は欠かせません。
個別支援計画の更新時などに、保護者の方へのインタビューやアセスメントなどを使用してデータを集め、現在の状態を可視化するという作業はみなさん実施されているかと思います。
しかし、より短い期間でデータを集めて分析して行く方法となるとなかなか難しいと感じられているのではないでしょうか?良質な支援を提供していくには、日々実施している支援の効果をしっかりと確認していく必要があります。
行動を科学する学問である応用行動分析学では、療育効果を比較的短い期間で計測する方法がいくつも確立されています。
この記事では療育において主に使用されるデータ収集方法に関して概要と実践方法をご紹介します。
基本的な考え方
応用行動分析学は行動を科学する学問と簡単にご紹介しましたが、データ収集・分析をする上でも前提となる基本的な事項があります。
効果測定に関して
療育の効果測定と聞くと、発達段階やその他指数を思い浮かべがちです。しかしながらそれらの基準は個々のスキル獲得の度合いに関しては計測できません。個々のスキル獲得においてより重要なのは、学習中のスキルが出来るようになりつつあるのか否かという点です。この点に関して応用行動分析学では、行動の回数、頻度、時間、発生割合、前後関係などさまざまな側面から学習状況を分析します。
誰が見てもわかる形で行動を定義する
データ分析をするにあたって基本的には、行動の回数や時間などを計測することになります。その際にまずは、行動を客観的に計測でき、かつ誰が見てもわかるような形で定義する事が必要です。
これは計測したい行動のみを適切に計測し、かつ観察者が違っても同一のデータを収集できるようにするためです。
悪い例 教室で小休憩中に癇癪を起こす
良い例 教室で小休憩中に、大きな声を出しながら、机や椅子を叩く行動が5秒以上続く。
以後紹介するそれぞれの記録方法も、計測する行動の定義が定まっていることを前提としていますので、こちらを 念頭に記事を読み進めていただければと思います。
時間記録の実施方法
**時間記録(タイミング)**は主に、行動の持続時間を計測する方法です。ストップウォッチや腕時計、スマホなどを使用して、目標行動がどの程度の時間持続しているのか計測します。
使い所としては、目標行動の持続時間が増加しているのか、問題行動の持続時間がどの程度減少しているのかなど行動の持続時間自体が重要な場合に使用します。(反応潜時や反応間時間に関しては玄人向け記事で紹介します。)
単純に持続時間等を比較するだけでも、変化を見つけることは可能ですが、注意すべきは条件が一致しているかどうかという点です。例えば、観察時間に関して言えば、10分だけ観察した場合と、1時間観察した場合では持続時間の合計は観察時間の長い方が大きくなりがちです。このような場合には常に観察時間を統一した上で比較する、割合に直して比較していくなどの方法でより分析しやすくなりますが条件が違うのでデータの質が落ちてしまいます。
観察時間以外にも、観察する場所や観察する際の周囲の環境など、児童の行動に差が生じてしまう要因がある場合がある為、条件を可能な限り一致させるか、観察条件に違いがある場合には、事 前に児童の行動に差が生じるかどうか検証してから記録を開始する方が望ましいです。
イベント記録の実施方法
**イベント記録(事象記録)**は行動の生起に注目して計測する方法です。要は計測したい行動が起きた回数を数える方法ということもできます。使い所としては、行動の回数や正反応の割合が重要になるような行動などです。
イベント記録の対象行動の例 縄跳びの回数 算数の正解数 ひらがなの書き取り
行動を計測する際には、限りなくシンプルに標的行動が起きた数を数えるところから、反応の種類別に計測する、反応の種類に加え結果まで記録する方法などがあります。
計測するにあたって特別に必要なものはありません。身近にあるメモ用紙にチェックを入れて数えてもいいですし、スマホのカウンターアプリを使っても可能です。
反応有無のみを計測するケース
行動が発生した際に数えます。
反応種類別に計測するケース
計測する行動に関して、正反応、無反応、不適切反応、近似反応の種類別に数えます。
- 正反応:定義した行動
- 無反応:行動なし
- 近似反応:正反応とは言えないが、限りなく近い行動
- 不適切反応:正反応でも近似反応でもない行動
イベント記録(事象記録)を使用する際に**注意すべきなのは、行動の開始と終了が明確でない行動や、非常に高率で発生する行動、長い時間持続するような行動には使用しにくい(しない方がいい)**という点です。
明確に回数を数えていくためには、そもそも行動が区切れるものである必要があり、また区切れる行動であっても短い期間でたくさん発生するものでは計測の難易度が上がります。さらに長い時間持続するような行動では時間記録等を使用した方がより適切なデータを集める事ができるでしょう。
イベント記録が向いてない行動の例 おもちゃに夢中になって遊んでいる 物を叩く 離席