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ICFコアセットを活用した発達障害の評価システムの実用性検証

· 44 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、発達障害(ADHD・ASD)やダウン症に関連する最新の学術研究を紹介し、それぞれの研究が示す新たな知見や実生活への応用可能性を解説しています。具体的には、ADHDと幼少期の逆境経験が攻撃性に与える影響、ダウン症の子どもの歯周病リスク、ICFコアセットを用いた発達障害評価の実用性、大学教育における先端技術の利点と課題、ASDの治療抵抗性行動障害へのクロザピンの効果、家庭支援プログラムのADHDへの影響、小児推拿(ツイナ)のADHD児への効果、エクソーム解析によるASDの遺伝的要因の特定、依存症とADHDの関係、トルコの家庭医のASDに関する知識レベルなど、多岐にわたる研究をまとめています。これらの研究は、発達障害支援の新たな方向性を示すものであり、医療・福祉・教育・行政における実践への応用が期待されます。

学術研究関連アップデート

Attention deficit/hyperactivity disorder (ADHD) dimensions mediate the relationship between adverse childhood experiences and adult aggression depending on cognitive reappraisal

この研究は、幼少期の逆境的経験(ACEs)が大人になってからの攻撃的行動にどう影響するのかを調査し、その関係にADHD(注意欠如・多動症)がどのように関与するかを分析しました。特に、ADHDの症状(多動・衝動性)がこの関連を部分的に媒介している可能性を検討しました。

研究のポイント

  • 幼少期に虐待やネグレクト(ACEs)を経験した人は、大人になって攻撃的になりやすいことが知られているが、そのメカニズムはまだ明確ではない。
  • ADHDを持つ人は、ACEsの影響を受けやすく、攻撃性も高い傾向があるため、ADHDの症状がこの関係を媒介しているのではないかと考えた。
  • *感情を適切にコントロールする能力(認知的再評価:Cognitive Reappraisal)**が、この影響を和らげる可能性を検証。

研究方法

  • *成人287名(男女混合)**を対象に、幼少期の逆境(ACEs)、ADHD症状、攻撃性、感情調整能力について評価。
  • 統計解析を用いて、ACEs → ADHD症状 → 攻撃性の関連を分析し、感情調整能力がこの関係をどう変化させるかを検討。

主な結果

  1. ADHDの症状が、ACEsと攻撃性の関係を部分的に媒介
    • 特に多動性・衝動性の高い人ほど、ACEsの影響で攻撃的になりやすいことが判明。
  2. 感情調整(認知的再評価)が重要
    • 感情調整が上手な人(特に女性)は、多動・衝動性が高くても攻撃性が低く抑えられることが分かった。

結論と意義

  • ACEsによる攻撃性リスクは、ADHDの症状(特に多動・衝動性)を通じて強まる可能性がある
  • 感情を適切に調整する能力(認知的再評価)を高めることが、攻撃性の軽減に役立つ
  • 性別による影響もあり、特に女性の感情調整能力が攻撃性の低減に重要な役割を果たす
  • ADHDの治療には、薬物療法だけでなく、感情コントロールを改善する心理的アプローチも必要

実生活への応用

  • ADHDのある子どもや成人には、感情調整トレーニング(例:マインドフルネス、認知行動療法)を取り入れることで、攻撃的行動のリスクを軽減できる可能性
  • 特に幼少期に逆境を経験した人には、ADHDの評価と共に感情調整の支援を強化することが重要
  • 性別に応じた支援方法を考える必要があり、女性には感情調整トレーニングを重点的に行うことで効果が期待できる

この研究は、ADHDの衝動性が攻撃的行動の要因となること、そして感情調整の改善が有効な介入策となる可能性を示しており、ADHDと精神的健康の支援に新たな視点を提供しています。

Periodontal diseases in Down syndrome during childhood: a scoping review - BMC Oral Health

ダウン症の子どもにおける歯周病のリスクと特徴:包括的レビュー

この研究は、ダウン症(DS)の子どもが歯周病(特に歯周炎)にどれくらいかかりやすいのかを調査したレビューです。ダウン症の人は**免疫系が通常とは異なり、炎症が起こりやすい体質(慢性炎症体質)**を持っているため、感染症や歯周病のリスクが高いと考えられています。しかし、成人やティーンエイジャーに比べて、子どもの歯周病についてはまだ十分に研究されていないため、この論文ではその知識のギャップを埋めることを目的としました。


研究方法

  • 対象とした研究:
    • 1951年~2024年7月までの文献を、PubMed/MEDLINEとGoogle Scholarで検索。
    • 英語またはフランス語で書かれた、ダウン症の子ども(成人やティーンエイジャーは除く)を対象とした研究を選択。
    • 動物実験・成人対象の研究・他の障害を持つ子どもを対象とした研究は除外
  • 採用された研究:
    • 2431本の論文から、58本の研究を厳選。
    • 7本の横断研究、36本のケースコントロール研究、7本のコホート研究、8本のケースレポートを含む

主な研究結果

  1. ダウン症の子どもは、他の子どもよりも歯茎の炎症が重い
    • 健康な子どもや、他の障害を持つ子どもと比較して、ダウン症の子どもは歯周炎が重症化しやすいことが判明。
    • ただし、これは**歯磨きの習慣や口腔ケアの不足だけが原因ではなく、体質的な要因(慢性炎症体質)**が関与している可能性がある。
  2. 歯の骨(歯槽骨)の喪失に関しては、結論が分かれている
    • いくつかの研究では、ダウン症の子どもにおいて骨の損失が進んでいないと報告されている。
    • しかし、一部の研究では、成人期になると骨の損失が増える可能性があるため、子どもの段階ではまだ進行していないだけの可能性もある
  3. 局所的なリスク要因(細菌の種類や歯並びなど)は、炎症の重症度に大きく影響しない
    • 一般的な歯周病のリスク要因(歯並びの乱れや口腔内の細菌など)よりも、ダウン症特有の免疫異常が炎症を引き起こしている可能性が高い。

結論と意義

  • ダウン症の子どもは、他の子どもよりも歯周炎にかかりやすく、炎症が強く出る傾向がある
  • しかし、歯の骨が失われるかどうかについては、研究結果が一致していないため、さらなる調査が必要。
  • これらの結果から、ダウン症の免疫システムの異常が、歯周炎の重症化にどう関与しているのかを解明することが重要と考えられる。

実生活への応用

  • ダウン症の子どもは、通常の子どもよりも早い段階で歯周病のリスクが高まるため、特別なケアが必要
  • 定期的な歯科検診や、炎症を抑えるための予防策(歯磨き指導・フッ素塗布など)を強化することが重要
  • 将来的な研究として、免疫調整療法(抗炎症薬の活用など)が歯周病の予防・治療に役立つかどうかを検討する必要がある

この研究は、ダウン症の子どもの歯周病リスクをより深く理解し、より良い予防策を考えるための基礎データとして非常に重要な知見を提供しています

Operationalizing the ICF Core Sets for Autism and ADHD: A Multiple-Methods Feasibility Study

ICFコアセットを活用した発達障害の評価システムの実用性検証

この研究は、ICF(国際生活機能分類)を活用した発達障害(自閉スペクトラム症[ASD]と注意欠如・多動症[ADHD])の評価ツール「ICF CoreSetsプラットフォーム」の実用性を検証したものです。ICFは、WHO(世界保健機関)が定めた個人の生活機能や健康状態を評価するための国際基準であり、これを発達障害向けに簡略化した「ICFコアセット」が開発されています。本研究では、そのICFコアセットをオンラインで簡単に利用できるプラットフォームとして実装し、その使いやすさや有効性を評価しました。


研究方法

  • ICF CoreSetsプラットフォームを開発し、試験運用。
  • 678件の評価データを収集し、ASDまたはADHDの当事者、その家族、一般の人、専門家が利用。
  • アンケートやインタビュー、フォーカスグループを通じて、使いやすさや改善点についての意見を収集。
  • 定量データ(数値的なデータ)は統計的手法で分析し、定性データ(インタビューなどの記述データ)は内容分析を実施。

主な結果

  • ICF CoreSetsプラットフォームは、発達障害の評価ツールとして実用的であることが確認された。
  • ユーザーからのフィードバックにより、一部の機能や使い勝手の改善が必要であることが判明
  • 改良を加えた上で、研究や実際の支援現場での活用が可能な段階に達している

結論と意義

  • 発達障害の評価にICFを活用することで、より客観的で包括的な診断・支援が可能になる
  • ICF CoreSetsプラットフォームは、ユーザーの意見を反映しながら改良されており、今後さらに標準化(心理測定的検証)を進めることで、正式な評価ツールとして確立できる可能性がある

実生活への応用

  • 医療や福祉の現場で、ASDやADHDの診断・支援計画を立てる際の補助ツールとして活用できる。
  • 家族や当事者が自己理解を深め、適切な支援を受けるための指標として利用可能。
  • 研究機関や政策立案者が、発達障害に関するデータを収集し、より良い支援策を考えるための基盤として機能

この研究は、ICFを発達障害の分野で実用的に活用するための重要な一歩となるものであり、今後の発展が期待されます

Benefits and challenges of inclusive emerging technologies in universities: Analysis of the voice of students

大学における「インクルーシブな先端技術」の活用:学生の声から見えるメリットと課題

この研究は、大学教育における先端技術の活用が、学生の学習や授業のインクルーシブ性(多様な学生が学びやすい環境づくり)にどのような影響を与えるのかを、実際の学生の声を通じて分析したものです。


研究の背景と目的

  • 先端技術(Emerging Technologies)の導入は、大学教育において学習の質を向上させ、学生のモチベーションや参加意欲を高めると期待されている。
  • しかし、こうした技術が本当に「すべての学生」にとって有益なのかについては、まだ十分な証拠がない。
  • 本研究では、先端技術を取り入れた授業を受けた学生の実体験を分析し、メリットと課題を明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • 対象: 先端技術を導入した授業を受けた49人の大学生
  • 方法: フォーカスグループ(学生同士で意見を交換しながらのインタビュー)を実施し、技術の活用による影響を分析
  • データ分析: インタビュー内容をカテゴリーごとに整理し、技術の利点と課題を明確化

主な結果

1. 技術導入によるメリット

学習のモチベーション向上

→ 先端技術を使った授業の方が、より興味を持って学べると感じた学生が多かった。

授業への積極的な参加が増えた

→ インタラクティブな技術(VR、AR、AIツールなど)が、発言や意見交換の機会を増やし、受け身の学習を減らした

学習効果の向上

視覚的・体験的な学習が可能になり、特に難しい概念を理解しやすくなった

インクルーシブな教育環境の促進

→ 障害のある学生や異なる学習スタイルを持つ学生も、自分に合った方法で学べる環境が整った

教員と学生の関係が良好に

→ 技術の活用を通じて、教員との距離感が縮まり、質問しやすくなった


2. 技術導入における課題

⚠️ 技術の使い方が難しいことがある

→ 一部の学生は、新しいツールの操作に戸惑い、学習よりもツールの使い方に時間を取られることがあった

⚠️ 設備や技術サポートの不足

→ 大学のWi-Fi環境やデバイスの性能が不十分な場合、スムーズに授業が進まないことがあった。

⚠️ 教員の技術活用スキルの差

教員によって技術の活用度にばらつきがあり、活かしきれていないケースもあった

⚠️ デジタル依存の懸念

→ 「技術に頼りすぎると、対面のコミュニケーション能力や思考力が低下するのでは?」という懸念の声もあった。


結論と提言

  • 大学での先端技術活用は、学習意欲や理解度を向上させる効果があるため、積極的に導入すべき。
  • ただし、技術を活かすためには、適切なサポート(教員のトレーニング、インフラ整備)が不可欠
  • 特に教員が技術を効果的に使いこなせるようにするための研修が重要であり、それが「すべての学生にとって公平な学習環境」を実現する鍵となる。

実生活への応用

🏫 大学の授業改革: 先端技術を活用し、より参加型の授業を増やす。

👩‍🏫 教員向け研修の充実: すべての教員が技術を効果的に使えるようにする。

📡 インフラの整備: 高速Wi-Fiや使いやすいデバイスの導入を進める。

👥 学生のフィードバックを重視: 技術の活用が本当に役立っているか、継続的に意見を聞く。


この研究は、大学教育における先端技術の導入が、学習の質を向上させる一方で、技術的・運営上の課題もあることを示し、より効果的な活用のためには教員のトレーニングが重要であることを明らかにしました。

Clozapine for Treatment-Resistant Disruptive Behaviors in Youths With Autism Spectrum Disorder Aged 10-17 Years: Protocol for an Open-Label Trial

自閉スペクトラム症(ASD)の治療抵抗性行動障害に対するクロザピンの効果を検証する臨床試験

背景

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもや青年(10〜17歳)には、攻撃性、自傷行動、激しいかんしゃくなどの「行動障害(DB)」が見られることがあります。現在、FDA(米国食品医薬品局)に承認されている治療薬はリスペリドンとアリピプラゾールですが、これらの薬が効かない(治療抵抗性)、または副作用で使用できないケースも少なくありません。

クロザピンは、統合失調症などの精神疾患で使われる抗精神病薬であり、特に「攻撃性を抑える効果」が強いとされています。しかし、ASDの子どもへの使用はほとんど研究されていません。本研究は、治療抵抗性の行動障害を持つASDの子どもにクロザピンが有効かどうかを検証することを目的としています。


研究の方法

  • 対象者: 10〜17歳のASD患者31名(既存の治療が効かなかった人)
  • 試験の種類: オープンラベル試験(プラセボなし、全員がクロザピンを服用)
  • 期間: 12週間
  • 投与方法: クロザピンを最大600mg/日まで調整しながら使用
  • 評価項目:
    1. 主要評価: 「異常行動チェックリスト」のイライラ度合いで効果を判断
    2. 副次評価: ASDの重症度、全体的な改善度、社会適応スキルなどを評価
    3. 安全性チェック: 副作用(体調変化、心電図、血液検査など)を毎週モニタリング

研究の進捗

  • 2023年2月から参加者募集を開始
  • 2024年4月にデータ収集終了
  • 現在、データ分析中(結果は今後発表予定)

研究の意義

  • ASDの行動障害に対してクロザピンを使用した初の臨床試験
  • 既存の治療が効かないケースに新たな選択肢を提供する可能性
  • 実際の医療現場での使用を想定した「現実的な臨床試験」
  • 結果が出れば、より大規模な研究や新たな治療指針につながる可能性

結論

ASDの子どもたちにおいて、クロザピンが「治療抵抗性の行動障害」に有効であるかどうかを検証する試験であり、将来的な新しい治療法開発の第一歩となる可能性がある。試験結果はまだ発表されていないが、今後の研究がASD治療の革新につながることが期待される。

Linking Adherence to Effectiveness in Family-Based Adolescent ADHD Academic Training and Medication Decision-Making Protocols

家族を中心としたADHD支援プログラムの効果と課題を検証した研究

研究の目的

ADHDのある思春期の子どもを対象にした家庭支援型プログラムとして、以下の2つのプロトコル(支援方法)が考案されました。

  1. CASH-AA(Changing Academic Support in the Home for Adolescents with ADHD)家庭での学習支援を改善するプログラム
  2. MIP(Medication Integration Protocol)薬の服用について家族で話し合い、適切な意思決定を支援するプログラム

本研究では、**これらの支援プログラムをどれだけ実践したか(治療の受けた時間)**と、ADHD症状の変化や学習・行動面の改善との関連を調査しました。


研究方法

  • 対象: ADHDの思春期の子ども 145名(平均年齢 14.8歳)
  • 支援者: 49人のセラピスト(地域・病院ベース)
  • 評価のポイント: ADHD症状(不注意・多動)、問題行動(外向的/内向的)、宿題の問題、薬の服用状況
  • 評価期間: 開始時、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の経過を分析

主な結果

  1. *MIP(薬の服用支援プログラム)**は、ADHD症状の改善や宿題の問題の軽減に効果的だった
    • 特に、不注意や多動の症状がより早く改善し、外向的な問題行動(例:怒りっぽさ、反抗的態度)が減少した
    • 宿題の問題も減り、家族の支援が学習面に良い影響を与えた
  2. CASH-AA(学習支援プログラム)は、逆に宿題の問題の改善が遅く、不注意症状が増える傾向があった
    • 宿題のやり方を変えることが逆にストレスになり、うまく機能しないケースもあった可能性が示唆される
  3. どちらのプログラムも「内向的な問題(例:不安・抑うつ)」や「薬の服用の有無」には影響がなかった

結論と意義

  • MIPは、ADHDの子どもの症状管理や宿題の問題を改善する有望な方法である
  • CASH-AAは効果が限定的で、学習支援方法の見直しが必要
  • 今後、MIPの導入を増やし、より多くの家庭で活用できるようにすることが重要

実生活への応用

  • 薬の服用を家族で適切に決めるための話し合いの場を増やすことが、ADHD管理に役立つ
  • 家庭学習の支援方法は、一律ではなく、子どもごとに柔軟に対応する必要がある
  • 地域や病院でのMIPプログラム導入を進めることで、ADHDの子どもと家族の負担を軽減できる可能性がある

この研究は、ADHDのある思春期の子どもへの支援において、薬の服用支援(MIP)が特に有効であることを示し、学習支援(CASH-AA)の見直しの必要性を提起する重要な知見となっています。

Parental Experiences of Administering Pediatric Tuina for Sleep and Appetite in Early School-Aged Children With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: Qualitative Study in Hong Kong

親が実施する「小児推拿(ツイナ)」がADHD児の睡眠と食欲に与える影響:香港での研究

研究の背景

  • *小児推拿(ツイナ)**は、中国伝統医学(TCM)に基づくマッサージ療法で、特定のツボを刺激することで健康を改善するとされている。
  • ADHDの子どもは、睡眠障害や食欲の問題を抱えやすいため、推拿が有効な補完療法となる可能性がある。
  • しかし、親が家庭で実施する小児推拿がADHDの子どもにどのような影響を与えるかについての研究は少ない。

研究の目的

  • 親が実施する小児推拿(家庭での施術)が、ADHD児の睡眠や食欲に与える影響を調査
  • 親の体験や意見を収集し、推拿の導入における課題や改善点を明らかにする

研究方法

  • 対象者
    • 小児推拿のトレーニングを受け、8週間以上自宅で子どもに施術を行った親12名
  • データ収集
    • フォーカスグループおよび個別インタビューを実施し、親の体験を詳細に聞き取り。
    • 録音した内容を文字起こしし、テーマ分析を行った。

主な結果

  • 親が実施する小児推拿の効果
    • 睡眠の質が向上(寝つきが良くなり、途中で起きる回数が減った)
    • 食欲が増加(偏食が改善し、よりバランスの取れた食事ができるようになった)
    • 行動や精神状態の安定(落ち着きが増し、感情のコントロールがしやすくなった)
    • 学業成績の向上(集中力の改善が見られた)
  • 親が感じた課題
    • 推拿の技術を習得するのが難しい(ツボの正確な位置を見つけるのが困難)
    • 時間管理が大変(毎日続けるのが負担になることがある)
    • より専門的な診断や指導が必要(リアルタイムでの指導やフォローアップが欲しい)

結論と意義

  • 家庭での小児推拿は、ADHD児の睡眠・食欲・行動改善に有望な補完療法となる可能性がある
  • プロの指導や継続的なフォローアップが重要であり、より実践しやすいサポート体制の構築が求められる。

実生活への応用

  • ADHDの子どものケアとして、小児推拿を試してみる価値がある(特に睡眠・食欲の問題がある場合)。
  • 親向けの推拿トレーニングは、専門家の指導を伴う形で行うのが望ましい
  • 定期的な診断やリアルタイムでの指導を取り入れることで、より効果的に実践できる可能性がある

この研究は、伝統医学を活用したADHDの新たな支援方法を示唆するものであり、今後の治療法の選択肢として注目される内容となっています。

Frontiers | Clinical and genetic findings in autism spectrum disorders analyzed using exome sequencing

エクソーム解析による自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝的要因の調査:臨床・遺伝的知見

研究の背景

  • *自閉スペクトラム症(ASD)**は、社会的コミュニケーションの困難さや限定的な興味・行動を特徴とする神経発達障害。
  • ASDの症状や重症度は**非常に多様(ヘテロジニアス)**であり、患者ごとに異なる。
  • 遺伝的要因がASDの発症に関与していると考えられており、遺伝子検査による診断が進められている。
  • これまでに**染色体マイクロアレイ解析(CMA)が使われてきたが、より詳細な遺伝子変異を特定するためにエクソーム解析(ES)**が注目されている。

研究の目的

  • ASD患者の遺伝的背景を調べるために、エクソーム解析(ES)を用いた遺伝子検査を実施。
  • 既存のCMA検査で異常が見つからなかった患者を対象に、より詳細な遺伝子変異を特定することを目的とする。

研究方法

  • 対象者: ASD患者 20名
  • 検査方法:
    • CMA(染色体マイクロアレイ解析): **大きな遺伝子の異常(コピー数変異)**を調べる → 異常なし
    • ES(エクソーム解析): **特定の遺伝子の変異(病的変異)**を調べる。

主な結果

  • 80%(16名)が知的障害を併発
  • その他の併存症:
    • 言語障害
    • 精神運動発達の遅れ
    • 顔や体の異常(奇形特徴)
    • 低緊張(筋力が弱い状態)
    • 斜視(目の向きの異常)
  • 10名(50%)に病的な遺伝子変異が見つかった
    • 変異が確認された遺伝子:
      • ADNP, FBN1, WAC, ASXL3, NR4A2, ALX4, ANKRD1, POGZ, SHANK3, BPTF
    • 特定の遺伝子変異を持つ患者は、より重度の発達遅滞や特徴的な外見を示す傾向があった

結論

  • エクソーム解析(ES)は、CMAで異常が見つからなかったASD患者の診断に有用であることが示された。
  • ASDの遺伝的要因は多様であり、さらなる研究が必要
  • 特定の遺伝子変異を持つ患者は、より明確な身体的特徴や発達の遅れを示す傾向があるため、個別の診断・支援計画の策定に役立つ可能性がある。

実生活への応用

  • ASDの遺伝子検査にエクソーム解析を活用することで、より正確な診断が可能になり、個別に適した支援を考える手がかりになる。
  • 特定の遺伝子変異と発達特性の関連が明確になれば、より効果的な治療や療育の開発が期待される

この研究は、ASDの遺伝的背景をより詳しく理解するための重要な一歩であり、将来的には個別化医療や遺伝カウンセリングの発展に貢献する可能性がある

Frontiers | Gender differences in ADHD and impulsivity among alcohol or alcohol- and cocaine-dependent patients.

ADHDと衝動性の性差:アルコール依存症およびアルコール・コカイン依存症患者における比較研究

研究の背景

  • 衝動性(Impulsivity)は依存症のリスク因子とされ、発症年齢、重症度、治療の進行に影響を与える。
  • 注意欠如・多動症(ADHD)は衝動性と強く関連し、依存症患者においてADHDの影響を調査することは重要。
  • 本研究では、**アルコール依存症(AUD)アルコール・コカイン併用依存症(ACUD)**の患者を対象に、衝動性の性差とADHDの影響を検討。

研究の方法

  • 対象者: **204名(男性153名、女性51名)**の依存症患者。
    • アルコール依存症(AUD)グループ
    • アルコール+コカイン依存症(ACUD)グループ
  • 評価ツール:
    • ADHD自己評価スケール(ASRS): ADHDの評価
    • バレット衝動性尺度(BIS-11): 衝動性の評価
    • Zuckerman-Kuhlman性格質問票(ZKPQ): 性格特性の評価
    • アナログ視覚評価スケール(EVA): 感情状態の評価
    • ベック抑うつ尺度(BDI): うつ症状の評価
    • 状態・特性不安検査(STAI): 不安レベルの評価

主な結果

  1. ADHDの割合
    • 全体の24.6%がADHD陽性(AUDグループ21.9%、ACUDグループ32.2%)。
    • アルコール+コカイン依存(ACUD)患者の方がADHDの割合が高い
  2. 衝動性(Impulsivity)の違い
    • ACUDグループはAUDグループより衝動性スコアが有意に高かった(p=0.010)。
    • ADHDがある場合、女性の衝動性に与える影響は男性より大きかった(ADHDの影響度は女性で37%以上)。
  3. 性差による違い
    • 女性: ADHDが衝動性と強く関連し、活動性・社交性が低いほど衝動性が高い傾向。
    • 男性: ADHDと衝動性の関連は比較的弱く、孤独への耐性が低いほど衝動性が高い傾向。
  4. 不安・抑うつとの関連
    • ADHDを持つ男女ともに、不安や抑うつ症状が高い傾向を示した。

結論

  • ADHDは特に女性の衝動性に強い影響を及ぼすことが示され、治療計画の際に考慮する必要がある。
  • ADHDの有無を依存症患者に対して体系的に評価することが重要
  • 今後は長期的な追跡研究が必要であり、より詳細なメカニズム解明が求められる。

実生活への応用

  • 依存症治療において、ADHDの評価を標準化し、特に女性の衝動性管理を重視する。
  • アルコール・コカイン併用依存症患者はADHDの割合が高いため、早期介入が重要
  • 個々の性格特性(社交性、孤独耐性)を考慮したカウンセリングや支援が有効

この研究は、依存症とADHDの関連における性差を明らかにし、より個別化された治療アプローチの必要性を示唆する重要な知見を提供しています。

Knowledge, Behaviours, and Attitudes of Family Physicians and Residents About Autism Spectrum Disorder in Turkey: A Descriptive Cross‐Sectional Study

トルコの家庭医と研修医における自閉スペクトラム症(ASD)への知識・行動・態度に関する調査

研究の背景と目的

  • 自閉スペクトラム症(ASD)は増加傾向にある発達障害であり、早期発見と介入が重要。
  • 家庭医(かかりつけ医)は、子どもが最初に医療機関を受診する場であり、ASDの早期発見において重要な役割を担う。
  • 本研究では、トルコの家庭医と研修医がASDについてどの程度の知識を持ち、どのような行動・態度をとっているのかを評価し、知識を向上させるための要因を分析。

研究方法

  • 対象: トルコ全土の家庭医、家庭医学専門医、家庭医学研修医 計392名(平均年齢32.8歳、女性60.7%)
  • 調査期間: 2022年3月〜6月。
  • 調査方法:
    • 50問のアンケート(対面・オンライン)。
    • *「医療従事者向けASD知識テスト(KCAHW)」**を実施(19問)。

主な結果

  1. 家庭医のASDに関する知識レベル
    • *KCAHWの平均スコアは14.1/19(±2.6)**で、中程度の知識を持っていることが分かった。
    • ASDの合併症や非典型的な症状についての知識が不足していた。
    • ASD児への適切な支援方法についても理解が不十分であることが判明。
  2. ASDのスクリーニングとフォローアップ
    • ASDのスクリーニングを行っている医師ほど、自己評価として「知識がある」と回答する傾向(p = 0.004)。
    • ASD児のフォローアップを行っている医師は、より自信を持って対応できる(p = 0.028)。
  3. 知識レベル向上の要因
    • 小児科での研修経験
    • ASDに関する専門的な研修を受講
    • ASDの診療経験(患者のフォローアップ)
  4. ASDに対する医師の意識
    • 98.2%の医師が「ASD児には特別支援教育が必要」と回答
    • 79.6%が「ASDには社会的な偏見がある」と認識
    • 52%が「ASDの診断が差別につながる可能性がある」と考えていた

結論

  • トルコの家庭医・研修医はASDに関する基本的な知識を持っているが、合併症や非典型的な症状、具体的な支援方法に関する知識は不足している。
  • 小児科での研修やASDに関する教育を受けることで、知識レベルが向上することが明らかになった
  • ASDスクリーニングやフォローアップを実施することで、医師の自己効力感が高まり、適切な対応ができるようになる

実生活への応用

  • 家庭医向けのASD教育プログラムを強化することで、より早期の診断と適切な対応が可能に
  • ASDに関する研修や実地経験(小児科ローテーション)を推奨することで、知識向上が期待される
  • 社会的な偏見を軽減するための啓発活動も必要

この研究は、家庭医がASDの早期診断・介入において重要な役割を果たすことを示し、医師の教育や研修の充実がASD支援の向上につながることを示唆しています