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ブラジルにおけるABA介入の有効性についてのシステマティックレビュー

· 38 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの神経発達症に関連する最新の研究を紹介しています。ASDにおける感情表現や社会的所属感、自転車トレーニングの効果、体育教育での身体リテラシー、ABA介入の有効性、ケトジェニックダイエットの可能性など多岐にわたるテーマが取り上げられています。また、ADHDと自閉症特性の関係、ゲームを活用した感情調整の改善、運動介入が作業記憶に与える影響、学習障害支援の課題についての知見も報告されており、各研究が神経多様性の理解や支援方法の向上に向けた具体的な示唆を提供しています。

学術研究関連アップデート

Affect Expression During Social and Non-Social Contexts in Autistic Young Adults

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の若年成人(平均年齢21.5歳)の感情表現の違いを調査したものです。ASDグループ(18名)と非自閉症比較グループ(17名)が参加し、社会的ストレス課題を通じてポジティブ/ネガティブな感情表現やその強度を観察しました。

主な結果

  1. ASDグループの感情表現:
    • ASDグループは非自閉症グループと比較して、感情表現が全体的に控えめでした。
    • 特にポジティブな感情表現が少なく、ニュートラルな表情の割合が高い傾向が見られました。
    • ネガティブな感情の違いは比較的小さかったです。
  2. 社会的関与への反応:
    • 両グループとも、社会的関与の場面でポジティブな感情表現が増加。
    • ASDグループも社会的関与に対してポジティブに反応するものの、その表現は控えめでした。

結論

ASDの若年成人は、社会的関与の場面でもポジティブな感情を控えめに表現する傾向があることが示されました。この結果は、ASDの人々が必ずしも社会的交流を嫌悪しているわけではなく、むしろ反応が控えめである可能性を示唆しています。この知見は、ASDの感情表現の特徴を理解し、適切な社会的サポートを設計する上で重要です。

Bike-Riding Training may Improve Communication Skills and Stereotyped Behavior in Adolescents With Autism

この研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の思春期の男子(平均年齢13.3歳)を対象に、自転車練習がコミュニケーション能力と反復行動(ステレオタイプ行動)に与える影響を調査しました。50名の参加者を訓練の頻度と強度が異なる実験群(各10名)とコントロール群に分け、12週間のトレーニングを実施しました。

方法と評価

  • トレーニング内容:
    • 高頻度または低頻度(週1回または週3回)で、自転車技術を習得するための運動を実施。
    • 強度は低いものと高いものに分けられた。
  • 評価方法:
    • トレーニングの前後と1か月後に、GARS-2テスト(反復行動とコミュニケーション能力を測定)を用いて評価。

主な結果

  1. トレーニング後の効果:
    • トレーニング後、反復行動が有意に減少(p=0.001)。
    • コミュニケーション能力が有意に向上(p=0.002)。
  2. フォローアップ結果:
    • トレーニング1か月後も、これらの改善が持続(反復行動: p=0.003、コミュニケーション能力: p=0.048)。
  3. 頻度や強度の影響:
    • トレーニング頻度や強度にかかわらず、自転車練習自体が効果的であることが示された。

結論

自転車練習は、ASDの思春期の子どもたちにおいて、反復行動を減少させ、コミュニケーション能力を向上させる効果があるとされています。このトレーニングは、思春期という重要な発達段階において、他の領域の発達も支援する可能性があります。この結果は、運動プログラムがASD支援の一環として有効であることを示唆しています。

Exploring physical literacy: insights from physical education teachers in Turkey on physical activity and curriculum practices for students with autism spectrum disorder—a brief study based on interviews

この研究は、トルコの体育(PE)教師が**身体リテラシー(PL)**をどのように理解し、特に自閉スペクトラム症(ASD)を持つ生徒を対象とした体育活動やカリキュラムにどのように応用しているかを調査しました。8名の教師(女性5名、男性3名)への半構造化インタビューを通じてデータを収集し、NVivoソフトウェアを用いてテーマ別に分析を行いました。

主な発見

  1. 個別化と包摂性:
    • 教師たちは、個別化され包摂的なPLプログラムが重要であると認識していました。
    • これにより、生徒の関与が高まり、体育活動への積極的な参加が促進されると考えられています。
  2. 課題:
    • 教師研修の不足:
      • ASDを持つ生徒への対応に関する専門的なトレーニングが不足している。
    • 標準化された評価ツールの欠如:
      • 効果的な評価基準がないため、進捗を測るのが難しい。
    • リソースへのアクセスの制限:
      • 適切な教材や施設が不足しており、教師がプログラムを実施する上での障害となっている。
  3. 改善の提案:
    • 専門的なスキル開発:
      • 教師の知識を向上させるための研修やワークショップが必要。
    • インフラの整備:
      • ASDを持つ生徒をサポートするための教材やリソースの提供が求められる。

結論

研究は、PLの原則に基づいた体育プログラムが、ASDを持つ子どもたちにとって有益であることを示唆しています。ただし、教育現場での実践をより効果的にするためには、教師の専門性向上とリソースの拡充が重要であると結論づけられています。この知見は、特別支援教育の分野における包摂的な体育の実現に貢献するものです。

Applied Behavior Analysis Interventions for People With Autism in Brazil: A Systematic Literature Review

この研究は、**自閉スペクトラム症(ASD)**を持つ人々に対する応用行動分析(ABA)を用いた介入の効果を、ブラジルにおける研究に焦点を当てて体系的にレビューしたものです。ABAは社会的に重要な問題に対応する科学的アプローチであり、多くの高所得国で広く使用されていますが、低・中所得国での効果や実施可能性に関する情報は限られています。

主な結果

  1. 研究対象と方法:
    • データベースや行動分析の専門ジャーナルから文献を検索し、さらに参照文献や引用文献も確認。
    • 合計59件の研究がレビュー対象となり、What Works Clearinghouse(WWC)基準を用いて質的評価を実施。
  2. 質的評価結果:
    • 14件の研究が「基準を満たす」と評価。
    • 10件が「留保付きで基準を満たす」と分類。
    • 残りの35件は「基準を満たさない」と判断。
    • 質の高い研究は全体の約24%にとどまった。
  3. その他の観点:
    • 研究参加者の特徴や介入内容、実験デザインの特徴などが分析され、過去のレビューと似た傾向が確認された。
    • 多くの研究で参加者は子どもであり、介入内容には言語スキルや行動改善が含まれていた。

結論

このレビューは、ブラジルにおけるABA介入研究が質的にばらつきがあることを示しています。一部の研究は高い基準を満たしていますが、全体的にはさらなる質向上が必要とされています。今後の研究では、方法論の標準化実施の実用性を向上させるための課題解決が求められます。この知見は、低・中所得国におけるASD介入の効果をより深く理解し、適切な支援を提供するための基盤となります。

“Do My Friends Only Like the School Me or the True Me?”: School Belonging, Camouflaging, and Anxiety in Autistic Students

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の中高生における学校での所属感、カモフラージュ(周囲に溶け込むための行動調整)、不安の関係性を調査しました。ASDの生徒は、学校環境での社会的・感覚的な違いからストレスを感じやすく、非自閉症の生徒に比べてメンタルヘルスの問題を抱える可能性が高いことが知られています。

主な結果

  1. 調査方法:
    • イギリスとアイルランドの通常学校に通う72名のASD生徒を対象に匿名オンライン調査を実施。
    • 学校への所属感、不安、カモフラージュ特性に関する質問票を使用(例: 「所属感の簡易尺度」「ASC-ASD」「CAT-Q」)。
    • 開放型質問も設け、学校環境とカモフラージュに関連する要因について自由回答を収集。
  2. 結果:
    • カモフラージュは、学校所属感と不安の関係を仲介する(所属感が低いほどカモフラージュが増え、不安が高まる)。
    • 開放型質問の回答を基に、「学校環境」「受容と理解」などのカテゴリーを設定。
    • 社会的関係、個人的要因、環境や適応策、受容と理解が所属感に影響を与える重要な要因と判明。
  3. 生徒のコメント例:
    • 「本当の自分ではなく『学校での自分』が友達に好かれているように感じる」
    • 「学校環境が少しでも理解を示してくれると安心できる」

結論

ASD生徒にとって、学校環境での受容と理解が不安軽減に重要であり、所属感や社会的関係が深く関与しています。また、カモフラージュ行動が不安に影響することから、環境の適応や支援策の充実が必要であることが示されています。この研究は、学校環境の改善やASD生徒のメンタルヘルス支援に向けた実践的な示唆を提供します。

Understanding Autism as a Condition in Mental Health Clinical Practice: Clinical Perspectives from a Youth Early Psychosis Service

この研究は、若者向けの早期精神病サービスにおいて、自閉スペクトラム症(ASD)やその特性がどのように理解され、臨床実践で扱われているかを調査したものです。ASDの診断率が増加している一方で、精神病の文脈で若者の症状が精神病的な観点から解釈されることが多く、神経発達的な視点が十分に考慮されない場合があると指摘しています。このような状況では、必要以上に医学的な治療が行われたり、神経多様性の影響を考慮しない治療計画が立てられる可能性があります。

主な内容

  1. 問題提起:
    • ASDやその特性を持つ若者が早期精神病サービスに来院することは珍しくありません。
    • しかし、精神病的なレンズを通じて症状が理解されるため、ASDの可能性が見落とされることがあります。
  2. 影響:
    • ASDの特徴を考慮しない治療計画では、適切な支援が提供されない場合があります。
    • 必要以上に医療的な介入が行われることで、本人や家族に負担をかける可能性があります。
  3. 提言:
    • 神経発達的な視点を取り入れることで、より正確な診断や支援が可能になる。
    • ASDの特性を考慮した治療計画を策定し、個々のニーズに合った支援を提供する必要性を強調。
  4. 将来の方向性:
    • サービス提供者がASDについての理解を深め、精神病と神経発達の視点を統合することが求められる。
    • 若者の多様なニーズに対応するための、柔軟かつ包括的な治療アプローチが必要。

結論

ASDの特性が早期精神病サービスで適切に考慮されることは重要です。精神病的な理解に偏らず、神経多様性を尊重した支援が、若者の生活の質を向上させる鍵となります。この研究は、サービス改善に向けた具体的な方向性を示し、より適切な治療と支援の提供を目指しています。

“Interactive lessons are great, but too much is too much”: Hearing out neurodivergent students, Universal Design for Learning and the case for integrating more anonymous technology in higher education

この研究は、高等教育(HE)における神経多様性(ND)を持つ学生の声を反映させた教育体験とエンゲージメントの向上を目指しています。特に、ユニバーサルデザイン学習(UDL)の要素をカリキュラム設計に取り入れ、ND学生と神経定型発達(NT)学生の認知的および感情的なエンゲージメントを高める方法を探りました。

主な結果

  1. 量的・質的調査:
    • 従来の講義形式からUDLを取り入れたセッションへの移行を8週間観察。
    • UDL戦略はND学生とNT学生の両方に有益で、学習への認知的・感情的エンゲージメントを向上させました。
  2. ND学生の好み:
    • 従来の講義は退屈であると感じられる一方、インタラクティブな活動は好評でした。
    • ただし、**過剰なインタラクティブ性(特にグループディスカッション)**はND学生にとって負担になる場合がありました。
    • ND学生は、匿名性の高いテクノロジーを活用した活動や、実践的なタスクを好み、これにより効果的に参加できると述べています。
  3. 教育の方向性:
    • ND学生の声をカリキュラム設計に組み込むことで、すべての学生にとって柔軟で包括的な学習環境を提供できると結論付けています。

結論

神経多様性を尊重し、匿名性の高いテクノロジーや多様な学習方法を取り入れることは、高等教育での学習体験を向上させる鍵です。この研究は、学生の声を反映させた柔軟な教育実践の必要性を強調しており、すべての学習者が自分に合った方法で学べる環境の重要性を示しています。

Exploring the potential of the ketogenic diet in autism spectrum disorder: metabolic, genetic, and therapeutic insights

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の治療における**ケトジェニックダイエット(KD)**の可能性を検討しています。現在のASD治療は主に症状の管理に焦点を当てており、基礎的な機能障害には十分対応していません。一方、KD(高脂肪・低炭水化物の食事で栄養性ケトーシスを誘導)は、てんかん治療での成功を背景に、ASDにも治療的な利益をもたらす可能性が注目されています。

主なポイント

  1. ASDとKDの関連:
    • KDは代謝および神経保護経路を調整する作用があり、これがASDの基礎的な機能障害と重なる可能性が示唆されています。
    • 動物研究では、ASDで見られる多くの機能障害にKDが作用することが確認されています。
  2. ASDにおけるKDの利点:
    • KDは複数の障害経路を同時に標的とすることで、多面的な治療アプローチを提供する可能性があります。
  3. 今後の課題:
    • ヒト研究のデータが不足しており、KDがASDの機能障害に与える効果を確認するためのさらなる研究が必要。
    • 精密医療アプローチを活用し、KDが最適な治療となる患者群を特定することが求められます。
  4. 将来的な展望:
    • KDの研究が進むことで、ASDや同様の代謝パターンを持つ他の精神疾患に対する治療の理解やアプローチが根本的に変わる可能性があります。

結論

ケトジェニックダイエットは、ASD治療の新しい選択肢としての可能性を秘めています。ただし、その効果を裏付けるためには、さらに多くのヒト研究や個別化されたアプローチが必要です。この研究は、ASDに対する治療の未来に重要な洞察を提供しています。

OBF-Psychiatric, a motor activity dataset of patients diagnosed with major depression, schizophrenia, and ADHD

この研究は、**精神疾患の診断患者の運動活動データを集めたデータセット「OBF-Psychiatric」**を提供しています。このデータセットは、**双極性および単極性うつ病、統合失調症、注意欠如・多動症(ADHD)**の患者を対象としており、気分障害や不安障害の診断を受けた臨床サンプルや健常者のデータも含まれています。

主な内容

  1. 目的:
    • 精神疾患に関する高品質な医療データへのアクセスが限られている中で、運動活動データを収集・提供することで、精神健康状態の理解を深め、診断プロセスを最適化することを目指しています。
  2. データの特徴:
    • 162人の参加者(精神疾患患者および健常者)から収集。
    • 合計1565日分の運動活動データ(個人平均9.6日)。
    • ウェアラブルセンサーを用いて収集されたデータで、持続的で詳細なモニタリングが可能。
  3. 応用可能性:
    • 機械学習モデルや分析ツールの構築に活用でき、精神疾患の診断やモニタリングにおける新たな手法を支援。
    • 患者の体験や生活の質の向上に寄与する可能性がある。
  4. 重要性:
    • 精神健康と生活の質の向上に寄与するだけでなく、予防戦略の設計病気の負担軽減にも役立つデータセット。

結論

「OBF-Psychiatric」データセットは、精神疾患における運動活動データを包括的に提供し、診断の最適化や患者ケアの改善に向けた研究を支援します。このデータセットは、機械学習や分析の新たな応用を可能にし、精神医学の進展に重要な役割を果たすと期待されています。

Effectiveness of a Virtual Reality Serious Video Game (The Secret Trail of Moon) for Emotional Regulation in Children With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: Randomized Clinical Trial

この研究は、注意欠如・多動症(ADHD)の子どもたちの感情調整を改善するために、真剣ゲーム「The Secret Trail of Moon(MOON)」を使用した効果を検証したものです。MOONは、認知トレーニングを含むビデオゲームで、20回のセッションでその効果を測定しました。

主な内容と結果

  1. 目的:
    • MOONを使用することで、以下の改善が期待されました:
      • 感情調整
      • ADHDの主要な症状
      • 認知機能
      • 学業成績
  2. 方法:
    • 7~18歳のADHD診断を受けた76名を対象に、薬物治療に加えてMOONを使用したグループ(MOONグループ)と、薬物治療のみのグループ(コントロールグループ)にランダムに分けて実施。
    • 感情調整は「Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)」で評価。
  3. 結果:
    • SDQスコアの大幅な改善(3~4ポイント減少)は観察されませんでした。
    • ただし、以下の分野で有意な改善が確認されました:
      • 材料の整理能力(P=.03)
      • 作業記憶(P=.04)
      • 抑制力(P=.05)
    • 特にMOONの治療に積極的に取り組んだ患者で効果が高かった。
  4. 副作用:
    • 臨床的に有意な副作用は報告されませんでした。

結論

MOONのような真剣ゲームを統合した治療プランは、ADHDの症状改善に役立つ可能性があります。特に、感情調整や認知機能を補完的に支援するツールとして有望です。この結果は、ゲームベースの介入がADHD治療における新しい可能性を示唆しています。

Frontiers | Exploring the Impact of Different Types of Exercise on Working Memory in Children with ADHD: A Network Meta-Analysis

この研究は、注意欠如・多動症(ADHD)の子どもたちにおける作業記憶を改善するための運動介入の効果を評価したものです。ネットワークメタ分析を用いて、さまざまな運動タイプ(認知的有酸素運動、ボールゲーム、マインドボディ運動、インタラクティブゲーム、一般的な有酸素運動)の効果を比較しました。

主な内容と結果

  1. 対象と方法:
    • PubMed、Cochrane、Embase、Web of Scienceから関連研究を検索。
    • 選定基準を満たした17件の研究を分析対象としました。
  2. 運動タイプ別の効果:
    • 認知的有酸素運動が最も大きな効果を示し(SMD = 0.72, 95% CI: 0.44-1.00)、次いでボールゲーム(SMD = 0.61, 95% CI: -0.12-1.35)。
    • マインドボディ運動インタラクティブゲームは中程度の効果(それぞれSMD = 0.50, 0.37)。
    • 一般的な有酸素運動は効果が小さいが有意(SMD = 0.40, 95% CI: 0.19-0.60)。
  3. 追加分析:
    • SUCRA分析では、作業記憶の改善において認知的有酸素運動が最も効果的であることが確認されました。
    • メタ回帰分析では、介入頻度総介入期間が認知的有酸素運動の効果を強化する要因であることが示されました。

結論

認知的有酸素運動は、ADHDの子どもたちの作業記憶を改善するための最も効果的な運動タイプとされ、高い頻度と長い期間の介入がその効果をさらに高める可能性があります。今後の研究では、これらの要因の影響をより深く検討し、より大規模なサンプルで結果を検証する必要があります。この研究は、ADHD管理における運動介入の有用性を示唆しています。

Frontiers | Children with autistic spectrum disorder can imagine actions. What can this reveal about the Mirror Broken Hypothesis?

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちが、典型発達(TD)の子どもたちと同様に目標志向型の動作を想像できるかどうかを調査しました。ASDの子ども18名とTDの子ども18名を対象に、動作イメージ(Motor Imagery: MI)の能力を評価しました。

主な方法と結果

  1. 評価方法:
    • VMIQ-2質問票: 動作イメージ能力を自己評価。
    • 新しい行動課題:
      • 日常動作を映像で4秒間観察後、同じ時間軸で動作を想像するよう求められる。
      • 動作を途中で中断され、提示された2枚の静止画から、正しい時間点のフレームを選択するタスク。
  2. 結果:
    • ASDとTDの両グループは、質問票と行動課題の両方で同等のパフォーマンスを示しました。
    • エラー分布は両グループで類似しており、主に動作の後半フレームに関する判断ミスが多く見られました。

結論

ASDの子どもたちは、TDの子どもたちと同様に動作を想像できることが示されました。この結果は、ASDの人々が動作イメージの障害を持つとする「Broken Mirror Hypothesis」を完全には支持しません。また、動作イメージを活用する認知戦略が、ASDのリハビリテーションに有効である可能性を示唆しています。

Frontiers | Dyscalculia and Dyslexia in School-Aged Children: Comorbidity, Support, and Future Prospects

このミニレビューは、学齢期の子どもたちにおけるディスカリキュリア(算数障害)とディスレクシア(読字障害)の併存が教育に及ぼす影響について、2015年から2024年の文献を基に最新の視点を提供しています。

主な内容

  1. 併存の課題:
    • ディスカリキュリアとディスレクシアが併存する子どもたちは、学習面で大きな課題に直面しており、その影響は広範囲に及ぶ。
    • 特に、文化的・言語的に多様な(CALD)集団や低所得層に関する研究が不足していることが指摘されました。
  2. 現在の課題:
    • スクリーニング、診断、介入ツールが進歩しているものの、これらの学習障害に対する統合的な支援体制の不足が課題となっています。
    • 研究の焦点が偏っており、個々のニーズを包括的に扱うアプローチが不足している。
  3. 将来の展望:
    • テクノロジーの活用: AIや学習アプリケーションを通じて、個別化された支援を提供する可能性。
    • 学際的なコラボレーション: 教育者、心理学者、神経科学者の連携を促進。
    • ニューロダイバーシティに基づく教育モデル: 学習の多様性を尊重し、包摂的な学習環境を整備する重要性。

結論

このレビューは、ディスカリキュリアとディスレクシアを持つ子どもたちへの包括的な支援を整える必要性を強調しています。研究の課題を克服し、技術と専門知識を活用することで、より良い学習環境を提供できる可能性が示されています。

Frontiers | Exploring Neurodevelopmental Concerns: Insights from a Public Neuropediatric Learning Disabilities Multiprofessional Outpatient Facility in Brazil

この研究は、ブラジルの公的医療システムにおいて、学習障害や注意欠如などの神経発達の問題を持つ子どもや青年を支援する専門外来施設の患者プロフィールを分析したものです。

主な内容と結果

  1. 対象と方法:
    • 2017年3月から2023年3月にかけて220件の診療記録を分析。
    • 主な相談内容は**学習困難(70%)注意障害(79.1%)**に関連していました。
  2. 診断の頻度:
    • 最も多かった診断は以下の通り:
      • 注意欠如・多動症(ADHD): 30%
      • 知的障害: 19.1%
      • 特定の学習障害: 17.7%
  3. 学業関連の特徴:
    • 運動性多動(𝟀2(9)=29.8; p<0.001)、行動上の問題(𝟀2(9)=16.2; p=0.050)、および言語困難(𝟀2(9)=17.0; p=0.043)が学業の課題と関連。
    • 男子は女子よりも以下の診断が有意に多かった:
      • ディスレクシア(読字障害)(𝟀2(1)=4.44; p=0.035)
      • 知的障害(𝟀2(1)=8.38; p=0.004)
      • 自閉スペクトラム症(ASD)(𝟀2(1)=9.29; p=0.002)
  4. 結論:
    • 学習困難や関連する問題に関する国際的な研究結果と一致し、診断の重複(併存症)の存在が確認されました。
    • この外来施設のような大学病院と連携した専門医療プログラムは、神経小児科、精神医学、神経心理学の協働を可能にし、包括的な支援を提供する上で重要とされています。

この研究は、学習障害や注意障害に対する公的医療システムでの支援の現状と課題を明らかにし、より適切なサービスの提供に向けた示唆を与えています。

Journal of Neuropsychology | Wiley Online Library

この研究では、注意欠如・多動症(ADHD)を持つ子どもと青年を対象に、自閉症特性を有する群とそうでない群の感情調整能力、臨床的特徴、および機能性を比較しました。

主な結果

  1. 調査対象:
    • ADHD診断を受けた8~16歳の子ども114名(自閉症特性あり: 50名、自閉症特性なし: 64名)が対象。
    • 親による**社会的応答性スケール(SRS)**を使用して、自閉症特性の有無を分類。
  2. 臨床的特徴の違い:
    • 自閉症特性を有する群は以下の問題が有意に多かった:
      • 多動性/不注意
      • 行動問題
      • 感情問題
      • 友人関係の問題
    • また、怒りやすさ分離不安障害の頻度が高い。
  3. 機能的障害:
    • 両群とも機能障害の有意な基準には達しなかったものの、自閉症特性を有する群で機能障害のレベルが有意に高かった。

結論

ADHDを持つ子どもや青年で自閉症特性を示す場合、感情調整の難しさ精神的・社会的な問題がより深刻であることが明らかになりました。特に、怒りやすさや分離不安障害が目立つため、これらの特性を持つ子どもには追加的なサポートや介入が必要であることが示唆されています。この研究は、ADHDにおける自閉症特性の影響を理解し、より包括的な支援を提供するための基礎を提供しています。