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自閉症青年への時間関係スキル教育におけるRFTの有効性

· 12 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、ADHDや自閉症、ディスレクシアなどに関する最新の学術研究を紹介しています。ADHDの症状と刺激薬治療の関係、幼児ADHD診断に向けた脳波と行動測定の統合モデル、自閉症青年への時間関係スキル教育、サウジアラビアでの自閉症支援サービスの親の満足度、自閉症の早期診断における脳波と視線追跡の活用、Early Start Denver Model(ESDM)の介入の有効性、そして英語が母語でないディスレクシア学習者への指導効果といった内容を取り上げています。

学術研究関連アップデート

Stimulant medication and symptom interrelations in children, adolescents and adults with attention-deficit/hyperactivity disorder

この研究は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状に対する刺激薬の影響を、ネットワーク解析により検討したものです。348名の刺激薬治療を受けるADHDの参加者、70名の治療を受けないADHDの参加者、そして444名の非ADHDコントロールグループを対象に、18のADHD症状間の関連性を比較しました。結果として、刺激薬治療を受けているADHDの人は、治療を受けていない人や非ADHDの人と比べ、症状間の関連が強いことが示されました。また、早期かつ集中的に治療を受けたグループと、遅れて緩やかな治療を受けたグループ間での症状ネットワークには差は見られませんでした。この研究は、症状間の関連が治療によるものか、もともとの要因によるものかを解明するために、さらに長期的な追跡研究が必要であることを示唆しています。

The utility of wearable electroencephalography combined with behavioral measures to establish a practical multi-domain model for facilitating the diagnosis of young children with attention-deficit/hyperactivity disorder - Journal of Neurodevelopmental Disorders

この研究は、幼児期のADHD診断を支援するために、ウェアラブル脳波計(EEG)と行動測定を組み合わせたマルチドメインモデルを開発しました。ADHDの診断は複雑で、特に幼児期では複数の情報源を組み合わせるアプローチが重要です。本研究では、43名のADHD児と35名の定型発達児を対象に、ウェアラブルEEGデバイス、K-CPT-2テスト(集中力評価)、およびADHD症状評価スケールのデータを用いて、機械学習と深層学習モデルを作成しました。これらのモデルを統合したアンサンブルモデルは、0.974の高い精度を達成しました。重要な特徴として、教師評価、K-CPT-2の反応時間、後頭部高周波EEGバンドの強度がADHDの特定に有効であることが示されました。このシステムは、ADHD診断の実用性と信頼性を高める可能性を持ち、特に幼児期の診断支援に有望とされています。

Teaching Nonarbitrary Temporal Relational Responding in Adolescents with Autism

この研究は、リレーショナル・フレーム理論(RFT)に基づく手法を用いて、自閉症の青年に非任意の(物理的基盤に基づく)時間関係の応答スキルを教える試みを行いました。時間関係の応答は、順序づけや計画、時間の理解といった重要なスキルの基礎であるとされますが、これまでこの分野での研究は限られていました。今回の研究では、3人の自閉症の青年がRFTベースの「複数例訓練(MET)」を受け、全員が100%の精度でスキルを習得しました。また、訓練後も2週間および4週間後にそのスキルを保持し、新しいデータセットに対しても100%の精度で応用できたことが確認されました。

Frontiers | Parental satisfaction with the quality of services provided to persons with autism spectrum disorder and their families in Saudi Arabia

この研究は、サウジアラビアにおける自閉症スペクトラム障害(ASD)の人々とその家族へのサービスに対する親の満足度を評価しています。対象は301人のASD児の親で、家族指導・教育、診断・評価、支援・介入、生活の質や平等な機会の向上を目指すサービスについて調査しました。結果、診断・評価サービスの質は満足のいくものとされましたが、他のサービス(家族指導、支援・介入、生活の質向上)は不十分と評価されました。また、サービスの質にASD児の年齢による差は見られませんでした。本研究は、これらのサービスの質の向上と国際的な品質基準の適用の重要性を示唆しています。

Frontiers | Interest Paradigm for Early Identification of Autism Spectrum Disorder: An Analysis from Electroencephalography Combined with Eye Tracking

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断に向け、乳幼児を対象に脳波(EEG)と視線追跡(ET)を組み合わせて用いる新しいアプローチを検討しています。研究では、ASDに特徴的な「限定された興味」に関連する神経生理学的および行動的マーカーを調査し、EEGの時間周波数解析やETによる瞳孔サイズや視線固定時間などの指標を活用しました。その結果、ASD児と非ASD児の間で神経および注意反応に顕著な違いが見られ、これがASDの早期発見に役立つ可能性が示されました。この研究は、発達障害の神経生物学的基盤の理解や診断ツールの開発に貢献するものです。

Frontiers | "The package has been opened"-Parents' Perspective and Social Validity of an Early Start Denver Model Intervention for Young Children with Autism

この研究は、自閉症の早期介入プログラム「Early Start Denver Model (ESDM)」に参加した子どもの親たちの経験や視点を調査し、介入の実現可能性、受容性、重要性に対する社会的妥当性を評価しました。インタビューに参加した14人の親は以下の3つのテーマを強調しました:1) 包括的なアプローチ:早期発見と地元での支援、医療従事者や幼稚園スタッフとの密な連携、子どもと家族全体のニーズに応じた個別目標が重要とされました。2) 利便性とアクセスの良さ:ESDMの特徴、親教育、親とセラピストの関係、近隣での提供が評価されました。3) 自信と知識の向上:介入により自閉症やESDM戦略への理解が深まり、子どもや家庭生活に良い影響を与え、幼稚園との協力関係も強化されたと述べられました。

Neurodiversity Can Explain Differences in How People Experience Everyday Life

この記事では、「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」の概念について解説しています。ニューロダイバーシティとは、人々の脳が情報を処理する方法が異なることであり、ADHDや自閉症、ディスレクシアなどがその例として挙げられます。記事では、神経多様性が日常生活にどのように影響を与えるかを紹介し、異なる処理方法が人々の体験にどのように関係しているかを説明しています。また、最新の研究では、ADHDの人が特定の条件下で非常に集中できる「ハイパーフォーカス」や、自閉症の人が周囲の音に敏感であることが分かっています。さらに、異なる考え方を持つ人が混ざったグループがより良い問題解決につながることも示されています。現在の研究は、学校や病院などの環境を神経多様性に配慮した設計にすることに焦点を当てており、ニューロダイバージェント(神経多様な)人々が自分の力を発揮できる社会の実現を目指しています。

Frontiers | English Learners with Dyslexia Benefit from English Dyslexia Intervention: An Observational Study of Routine Intervention Practices

この研究は、英語を母語としない学習者(EL)に対する英語のディスレクシア(読字障害)介入が有効であるかを調査しました。母語がカリキュラムの言語と異なると、音構造や語彙知識が限られ、学習に独自の困難を伴います。英語を主言語とする学生(EP)とELの両者に、読みの学習には音声認識と意味理解のスキルが重要であることが知られていますが、ディスレクシアのような読字障害にも同様の介入効果があるかは明らかでありません。本研究では、EPとELの学生が英語のディスレクシア指導(ELDI)を受けた場合の変化を比較し、初期の読字スキルの低さがELにおいてより顕著であるものの、2年間の集中的な指導後には両グループが同等のスキルを達成したことが確認されました。結果は、ELも日常的なディスレクシア介入で成功する可能性を示唆しています。