このブログ記事では、発達障害に関連する最新の研究を3つ紹介しています。1つ目は、中国語版Psy-Flex尺度(Psy-Flex-C)の信頼性と妥当性を検証し、自閉症スペクトラム障害(ASD)児の親の心理的柔軟性を評価する有効なツールであることを示した研究です。2つ目は、自閉症の評価を目的としたRAADS-Rのドイツ語版(RADS-R)の検証であり、高い感度と特異度を示し、ドイツでの診断補助ツールとして有望であると評価されています。3つ目は、ADHD児と調節性内斜視不全(CI)の関連性を調査したもので、特定の診断基準を用いるとADHD群でCIの有病率が高くなることが示され、ADHDと視覚的な問題との関係についてさらなる研究が必要とされています。
学術研究関連アップデート
Psychometric Properties of the Chinese Version of the Psy-Flex Among Parents of Children with Autism Spectrum Disorder
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもの親の心理的柔軟性を評価する「Psy-Flex」尺度の中国語版(Psy-Flex-C)を作成し、その心理測定特性を検証したものです。研究は、英語版から中国語版への翻訳と意味の同等性評価を行い、20人の親と8人の専門家を対象に内容妥当性を確認する段階と、248人の親を対象に信頼性と妥当性を検証する横断研究の2段階で実施されました。Psy-Flex-Cは、内的一貫性(Cronbach’s α=0.84)とテスト-再テストの安定性(重み付きカッパ統計=0.88)で十分な信頼性が確認されました。また、親のストレスレベルの高低による平均スコア差が統計的に有意であり、受容・コミットメント・セラピー(ACT)プロセスとの適度な相関も見られました(r=0.54, p<0.01)。因子分析により、オリジナルと同様に一因子構造が適合することが確認され、中国のASD児の親にとって有効な心理的柔軟性評価ツールであることが示されました。
A novel screening instrument for the assessment of autism in German language: validation of the German version of the RAADS-R, the RADS-R
この研究は、自閉症の評価を目的としたRitvo Autism Asperger Diagnostic Scale-Revised(RAADS-R)のドイツ語版「RADS-R」の信頼性と妥当性を検証したものです。RAADS-Rは、言語、社会的関連性、限定的な興味、感覚運動の4つのサブカテゴリにわたる80の質問を含む質問票で、元の研究で高い感度97%と特異度100%を示しており、英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインにも採用されています。今回の検証では、ドイツ語に翻訳されたRADS-Rを299人(自閉症診断者110人、主に精神障害を持つ64人、無診断者125人)に実施しました。その結果、RADS-Rは感度92.5%、特異度93.6%という高い正確性を示し、ROC曲線解析でASDと非ASDを区別するための最適なカットオフスコアは81と判明しました。他の評価ツールであるSRS、AQ、EQと比較して、RADS-Rは感度が優れており、ドイツにおける診断補助ツールとして有望であると結論付けられました。
Convergence insufficiency prevalence in attention deficit and hyperactivity disorder children depends on the diagnosis criteria
この研究は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもにおける調節性内斜視不全(CI)の診断基準に基づく有病率を調査したものです。7〜17歳のADHD診断済みの子どもと、同年齢・性別の非ADHDコントロール群(各30人)を対象に、視力、屈折、調節能力、ヘテロフォリア(潜在斜視)、正負の融合輻輳(PFVおよびNFV)、立体視を評価しました。視力や屈折には差は見られませんでしたが、PFVとNFVに有意差があり、ADHD群でのPFVとNFVの数値はコントロール群に比べて低いことがわかりました。また、診断基準を2つのサイン(NPCの後退とPFVの低下)のみで判断した場合、ADHD群でのCIの有病率が有意に高くなることが確認されました。この結果は、ADHDと調節性内斜視不全との関連を示唆していますが、その関係性の方向性は不明であり、さらなる研究が必要とされています。