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ボランティアやレジャーを起点とした知的障害を持つ高齢者の方々の社会的包摂

· 24 min read
Tomohiro Hiratsuka

このブログ記事では、発達障害や福祉に関連する最新の学術研究を紹介しています。主な内容として、自閉症の早期診断におけるジェスチャー発達の役割や、知的発達障害を持つ人々に対する永久的避妊の倫理的問題が議論されています。また、ADHDや自閉症スペクトラム障害に関連する不適応的空想や親のストレスとの関連性、深層学習を用いた自閉症予測モデルの開発、ADHDの組織スキル訓練の効果、ADHD家族のリズム感覚の影響などの研究も含まれています。さらに、網膜と認知機能障害との関連や、性少数者とクラインフェルター症候群における感覚過敏やサヴァン能力の共通性に関する調査も取り上げられており、知的障害を持つ高齢者の社会的包摂に関する研究も紹介します。

学術研究関連アップデート

Early gesture development as a predictor of autism spectrum disorder in elevated-likelihood infants of ASD

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)リスクが高い幼児(EL)におけるジェスチャー発達が、早期診断の予測因子となるかを探ったものです。47人のEL幼児と27人の低リスク(LL)幼児を対象に、生後9〜19か月の間にジェスチャーの頻度、コミュニケーション機能、統合能力を観察し、18〜19か月で自閉症診断観察スケジュール(ADOS)評価を実施しました。

結果、共同注意(JA)ジェスチャーの発達はELグループでLLグループより遅れ、特に14〜18か月で差が拡大しました。また、ASD診断基準を満たす子どもは、12〜13か月で社会的相互作用ジェスチャーが減少し、15〜16か月で**他のコミュニケーションスキルとの統合ジェスチャー(G-M)が、18〜19か月で目線との統合ジェスチャー(G-E)**が減少しました。

結論として、ジェスチャーの発達、特にG-MジェスチャーがASDの早期予測指標となり得ることが示されました。

この論文は、知的発達障害を持つ子ども、青年、若年成人に対する永久的避妊に関する倫理的、法的、医療的な問題を扱っています。医療技術の進歩により、特に知的障害を持つ人々に対して利用できる避妊や月経管理の選択肢が増えています。著者は、永久的避妊の代わりに長期的かつ可逆的な方法や最小限の侵襲による治療法を優先すべきだと強調しています。また、過去の永久的避妊の使用とその乱用について簡潔に触れ、それに基づく現在の倫理的および法的な課題、特にインフォームドコンセントの重要性について議論しています。医療の意思決定や患者の希望も考慮すべきであるとし、この特定の集団における永久的避妊を検討する医療提供者に対する推奨事項が示されています。

The Daydream Spectrum: The Role of Emotional Dysregulation, Internalized Stigma and Self-Esteem in Maladaptive Daydreaming Among Adults With ADHD, ASD, and Double Diagnosis

この研究は、ADHD、自閉症スペクトラム障害(ASD)、およびその両方の診断を持つ成人(「AuDHD」)における**不適応的空想(MD)**と、感情調整の問題、内面化されたスティグマ(自己否定感)、および自尊心の関連性を調査しています。MDは、過度な空想活動が他の活動よりも優先され、回避的な対処行動につながる特徴を持ちます。この研究では、MDの決定要因として感情調整の問題、空想による逃避、自尊心、内面化されたスティグマに焦点を当て、ADHD、ASD、およびAuDHDの3つのグループ間で比較しました。

結果として、内面化されたスティグマ、感情調整の問題、逃避行動、自尊心がMDに有意に関連していることが確認されました。また、ADHDのグループは感情調整や社会的引きこもりのスコアが低いことがわかりましたが、MDの発生率においては3つのグループ間で差はありませんでした。特に、ADHD症状や逃避行動が高いMDレベルの予測因子であることが明らかになりました。

結論として、この研究は、MDが内面化されたスティグマや自尊心と深く関連しており、感情調整の問題がMDに影響を与えることを示しています。この知見は、MDに対する臨床的介入やさらなる研究の方向性を提案しています。

この研究は、自閉症の子どもと定型発達の子どもが会話の話題を維持する能力についてどのように異なるかを調査しています。会話をうまく続けられない子どもは、友達が少なく、人気が低い傾向があり、これが子どもの幸福感に影響する可能性があります。研究では、会話を続ける能力と他者の視点を考慮する能力や短期記憶との関連を3つの実験で調べました。

結果として、1つ目の実験では、自閉症の子どもは定型発達の子どもより会話の維持に困難を抱えることが多いものの、特定の側面では強みも見られました。2つ目と3つ目の実験では、会話能力が他者の視点を考える能力や短期記憶能力と関連していることが確認されました。

結論として、自閉症児も定型発達児も、学校のカリキュラムで社会的な会話スキルを支援することが有益であると提案されています。

Differing relationships between parenting stress, parenting practices and externalising behaviours in autistic children

この研究は、自閉症の子どもを持つ親の育児ストレス育児方法、および子どもの外向的行動(問題行動)の関連性を調査しています。親がどのように子どもを育てるか(育児方法)が育児ストレスや子どもの行動にどのように影響するかは、これまであまり研究されていませんでした。学校年齢の自閉症児を持つ親に対して、育児ストレス、育児方法、子どもの行動に関するアンケートを実施したところ、育児ストレスが高い親は、子どもが攻撃的な行動などの挑戦的な行動を示すことが多いと報告しました。また、ストレスが高い親はマインドフルな育児(今この瞬間に非判断的に存在する育児スタイル)が低く、許容的な育児(子どもに譲歩することが多い)を行う傾向があることがわかりました。しかし、これらの育児方法は、育児ストレスと子どもの行動の関連性には影響しませんでした。結論として、親のストレスを軽減する方法に焦点を当てるべきであり、それには育児方法の改善が含まれる可能性があるとされています。

3D CNN for neuropsychiatry: Predicting Autism with interpretable Deep Learning applied to minimally preprocessed structural MRI data

この研究は、3D深層学習(DL)を用いて、自閉症の診断を予測するモデルを開発し、解釈可能な方法で構造MRIデータに適用したものです。データセットには、公開されているABIDE IおよびIIのMRIスキャンデータ(計1329人分)が使用され、トレーニング、検証、およびテストセットに分けてモデルが訓練されました。従来の機械学習(ML)アプローチとは異なり、この研究ではデータをテンプレート空間に変換せずに処理し、バイアスを減らしつつ、自閉症に関連する構造変化の感度を最大限に高めることを目指しました。

結果として、従来のML研究と同等の予測精度が達成されました。また、モデルが正確な診断に寄与した脳領域を特定する解釈ステップでは、左半球の言語処理に関与する領域が特に重要であることが確認され、既存の文献と一致する自閉症に関連する変化が見られました。この研究は、臨床的な自閉症の異質性や施設間の違いといった課題に取り組むために、コードやモデルを公開し、他の精神神経疾患にも応用可能な手法を提供しています。

A Randomized Controlled Trial of the Effects of Organizational Skills Training on Children With Attention Deficit Hyperactivity Disorder in China

この研究は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもに対する組織スキル訓練(OST)の効果を調査したランダム化比較試験です。目的は、ADHDの子どもたちの時間管理や物品管理に必要な組織スキルの向上を評価することです。

方法として、70人のADHDの診断を受けた子どもたち(平均年齢8.33歳)が、従来の治療を受けるグループ(薬物療法、バイオフィードバック、行動療法)と、従来の治療に加えてOSTを受けるグループに分けられました。治療は約4か月間行われました。

結果では、両グループとも介入後に行動スコアが改善しましたが、OSTを受けたグループのほうが、組織スキルや注意欠陥のスコアにおいて有意に良好な結果を示しました。特に、組織スキルを評価するBRIEFスコアの正常化率は、OSTグループで約79%と高く、従来治療グループの37%を上回りました。

結論として、OSTは従来の治療に加えることで、ADHDの子どもの組織スキルと注意欠陥症状をさらに改善する効果があることが確認されました。

Time and ADHD in Danish Families: Mutual Affect Through Rhythm

この研究は、ADHDを持つデンマークの家族を対象にしたフィールドワークに基づいて、ADHDが「時間のずれ」として経験されることを示しています。ADHDは生物学的・精神医学的な状態であるだけでなく、時間や社会的な反応性の側面を持つ現象であると論じています。家族内でのリズムや感情、気分が互いに影響し合い、ADHDの強度に影響を与えることが確認されました。家族は感覚や気分、習慣が世代を超えて広がる「身体のネットワーク」として機能し、その中でさまざまな時間管理の戦略を用いてリズムを調整し、ADHDの影響をコントロールしています。

Frontiers | Molecular physiology unlocks the mystery that relates cognitive impairment with the retina in Schizophrenia and autism spectrum disorders: A Perspective review

このレビュー論文では、統合失調症(SSD)および自閉症スペクトラム障害(ASD)における認知機能障害と網膜の関連について議論しています。SSDやASDは認知機能障害を伴う神経発達障害であり、早期診断が重要ですが、現時点で有効な診断ツールはありません。網膜は中枢神経系の一部であり、非侵襲的に撮影できることから、神経疾患の診断に利用できる可能性が注目されています。この論文では、認知機能障害の分子バイオマーカーと網膜の関連性について考察し、特にADAM10やCNTFといった分子の役割に注目しています。また、SSDやASDにおける認知機能障害の早期診断プロトコルの提案も行い、分子バイオマーカーを用いた認知機能向上の可能性についても言及しています。さらに、この領域でのさらなる研究の必要性を強調しています。

Frontiers | Androgyny and atypical sensory sensitivity associated with savant ability: A comparison between Klinefelter syndrome and sexual minorities assigned male at birth

この研究は、クラインフェルター症候群(KS)や性の少数者として生まれた男性が示すアンドロギニティ(中性的な特徴)と、感覚の過敏さや鈍感さ、サヴァン能力との関連性を調査しています。自閉症スペクトラム障害(ASD)は異常な感覚感受性やサヴァン症候群と関連しており、これらの特徴がKSや性の少数者にも見られるかを検証しました。研究では、22人のKS個体、66人の性の少数者、そして年齢や教育背景を一致させた男性のコントロールグループを対象に自己報告形式の質問票を用いて感覚過敏/鈍感、サヴァン傾向、共感覚、性に関する側面を調査しました。

結果、KSの個体や性の少数者は、コントロールグループよりも感覚過敏/鈍感やサヴァン傾向が強く、共感覚を持つ傾向があることが分かりました。これらの特性は、性別違和の状態や自閉症に関連する特徴と共通しており、アンドロギニティや感覚過敏が自閉症と共通の生理的背景を持つ可能性が示唆されました。研究は、早期発達における性ホルモンの減少が神経発達や感覚認識の異常に関与している可能性を提案しています。

Frontiers | Resting-state fMRI activation is associated with parent-reported phenotypic features of autism in early adolescence

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)における脳の活動と、親が報告した自閉症の特徴(PPFA)との関連性を調査したものです。ASDは社会的認知の欠如や自己参照的な思考、反復行動といった特徴が見られますが、発達中の神経機能に関する明確なバイオマーカーは未だ不明です。本研究では、デフォルトモードネットワーク(DMN)の領域、特に内側前頭前皮質(MPC)、後部帯状皮質(PCC)、上側頭溝(STS)、下前頭回(IFG)などの脳領域の安静時fMRI活動が自閉症の特徴と関連しているかを調べました。対象は10〜13歳の7,106人(53%が男性)の若者で、親が報告したPPFAデータと脳活動データを使用しました。

結果として、MPCやSTSの活動が自閉症の特徴と正の相関を示し、IFGの活動が負の相関を示しました。また、男性であることがPPFAと関連していることが分かりました。この結果は、社会的な脳領域が思春期の自閉症の特徴に関連していることを示唆しており、将来的な研究では、発達に伴う社会的脳領域の成熟過程とASDの特徴との関連をさらに明らかにする必要があるとしています。

Frontiers | Physiological Parameters to Support Attention Deficit Hyperactivity Disorder Diagnosis in Children: A Multiparametric Approach

この研究は、**注意欠陥多動性障害(ADHD)**の診断を支援するための多パラメータ生理学モデルの開発を目的としています。ADHDは不注意、衝動性、過活動性を特徴とする神経発達障害で、診断には時間がかかり、迅速な治療が遅れることがあります。これまでADHDを迅速に診断するバイオマーカーは特定されていませんが、ADHDの中核症状が自律神経系の機能不全と関連していることが示唆されています。この研究では、心拍変動(HRV)皮膚電気活動(EDA)呼吸皮膚温の4つの生理的パラメータを非侵襲的に測定し、ADHD児と定型発達児を比較しました。

69人の治療歴のないADHD児(7~12歳)と29人の定型発達児(対照群)を対象に、基準時と持続注意タスク中の生理的反応を観察し、診断に有用なパラメータを特定するためにロジスティック回帰分析を行いました。結果として、ADHD児は基準時にHRVが増加し、EDAが低下しており、タスク中にはEDAや呼吸頻度が高くなることが確認されました。このモデルは、性別と年齢で調整され、85.5%の正確性、AUCは0.95という高い識別能力を示しました。

結論として、この多パラメータ生理学モデルは、ADHD診断を支援するための効果的なツールとなり得ることが示唆されています。

Social Inclusion Through Making Neighbourhood Connections: Experiences of Older Adults With Intellectual Disabilities of Local Volunteering and Leisure, Facilitated by Local Connectors

結論として、知的障害を持つ人々が、ボランティアやレジャークラブに参加することで、地域社会での社会的包摂が促進される可能性があることが示されています。また、政策と実践に対する示唆や、さらなる研究の必要性についても言及されています。

この研究は、知的障害を持つ高齢者が地元のボランティア活動やレジャークラブに参加することで、どのように社会的つながりを形成し、社会的包摂を促進できるかを探ったものです。6人の知的障害者が、地域のサポーターから支援を受けながらクラブやボランティア活動に参加し、新しい友人を作る経験について語りました。研究では、彼らがどのように地元の人々と知り合い、社会的ネットワークを広げていったかが明らかになり、参加を阻む要因(交通手段の欠如など)と、参加を助ける要因(サポーターの存在など)が特定されました。