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ASDを持つ子供たちの心の理論の発達において、多言語使用が与える影響

· 14 min read
Tomohiro Hiratsuka

この記事は、発達障害や教育に関連する最新の学術研究について紹介します。特に、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供たちの音韻発達やバイリンガリズムの影響、幼児期の心理社会的発達と神経発達障害の関連、環境要因によるASD発症メカニズム、そしてリクリエーションプログラムでの脳-コンピュータ・インターフェース(BCI)の活用など、多岐にわたる研究内容を紹介しています。

学術研究関連アップデート

Phonological Development in 3–6-Year-Old Mandarin-Speaking Children with Autism, Developmental Delays, and Typical Development

この論文は、3~6歳の自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供たちにおける音韻発達の特徴を調査したものです。研究では、ASDの子供21人、発達障害(DD)の子供18人、および通常発達(TD)の子供15人を対象に、親子間の自由遊び中の10分間の会話サンプルを分析しました。

結果として、ASDの子供たちは、TDの子供たちに比べて、音の初頭や終端の在庫が少なく、音節構造においても異なるパターンを示しました。具体的には、ASDの子供たちはTDの子供たちよりもシンプルな音節構造(例:V1やV1V2C)を多く使用し、複雑な音節構造(例:V1V2V3、CV1C、CV1V2C)は少なかったことが確認されました。

また、ASDとDDの子供たちの間で音節構造の割合には有意な差はありませんでしたが、ASDの子供たちはDDの子供たちに比べて、音節の多様性が少ないことが示されました。これらの結果は、ASDの子供たちの言語能力が年齢と共にTDの子供たちとの間に大きな差が生じ、特に音の初頭や終端、音節の複雑さと多様性において差が見られることを示唆しています。また、ASDとDDの子供たちは言語能力が似ているものの、DDの子供たちはASDの子供たちと比較して初頭や音節の複雑さと多様性において細かな違いを示すことが確認されました。

Every Newborn-Reach Up Early Education Intervention for All Children (EN-REACH)- a parent group intervention for school readiness in Bangladesh, Nepal, and Tanzania: study protocol for a cluster randomized controlled trial - Trials

この論文は、バングラデシュ、ネパール、タンザニアで実施される「Every Newborn-Reach Up Early Education Intervention for All Children(EN-REACH)」という介入プログラムの効果を評価するためのクラスターランダム化比較試験(cRCT)のプロトコルを紹介しています。このプログラムは、特に発達遅延や障害を持つ子供たちが初等教育にアクセスしやすくすることを目指し、保護者グループを対象にした学校準備のためのトレーニングを提供します。

研究では、約150のクラスターで、4~6歳の子供たちを持つ保護者を対象に、訓練を受けたファシリテーターが指導する保護者グループ介入の効果を評価します。主要な評価項目は「学校準備度」であり、これに加えて知能指数、子供の機能、成長、視覚・聴覚の評価も行われます。また、プロセス評価も組み込まれており、プログラムの実施可能性や拡張性に関する洞察が得られる予定です。

この試験は、家庭から初等教育への移行を支援するプログラムの効果を検証し、障害を持つ子供も含めた全ての子供たちの教育アクセス向上に寄与することを目指しています。

Bilingualism and second-order theory of mind development in autistic children over time: Longitudinal relations with language, executive functions, and intelligence

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供たちの「心の理論(Theory of Mind)」の発達において、バイリンガリズム(多言語使用)がどのような影響を与えるかを長期的に調査したものです。研究では、21人の単言語および21人のバイリンガルの自閉症児を対象に、6歳、9歳、12歳の3つの時点で、第一および第二次の心の理論のスキルを評価しました。

結果として、バイリンガルの自閉症児は9歳と12歳の時点で、単言語の自閉症児よりも第二次の心の理論において優れていることが明らかになりました。また、知能と特に表現語彙力が、バイリンガルの自閉症児の心の理論の発達に重要な役割を果たしていることが示されました。一方で、単言語の自閉症児は12歳の時点でようやく言語や知能の資源を活かすことができるようになりました。

この研究は、バイリンガリズムが自閉症児の高度な認知能力に及ぼす影響を長期的に検討することの重要性を強調しています。

Phonological Development in 3-6-Year-Old Mandarin-Speaking Children with Autism, Developmental Delays, and Typical Development

この論文は、3歳から6歳の自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供たちの音韻発達について、体系的に調査したものです。研究では、ASDを持つ21人の子供、発達遅延(DD)を持つ18人の子供、および通常発達(TD)の15人の子供を対象に、親子間の自由遊び中の音声サンプルを分析しました。

結果として、ASDの子供たちは、初期と最終の音韻在庫がTDの子供たちよりも有意に少ないことが示されました。特に、ASDの子供たちは、第2期および第4期において、DDの子供たちよりも初期の音韻在庫が少ないことが明らかになりました。また、ASDの子供たちは、V1(単母音)やV1V2C(母音連続+子音)の音韻構造を多く使用し、V1V2V3(母音連続)やCV1C(子音+母音+子音)などの複雑な音韻構造を少なく使用していました。

この研究は、ASDの子供たちの音韻発達における特徴や、DDの子供たちとの違いを明らかにし、ASDと通常発達の子供たちの言語能力の差が年齢とともに広がることを示唆しています。

Embryonic exposure to environmental factors drives transmitter switching in the neonatal mouse cortex causing autistic-like adult behavior

この論文は、環境要因が自閉症スペクトラム障害(ASD)を引き起こすメカニズムに関する研究を報告しています。妊娠中の女性がバルプロ酸(VPA)を使用したり、ウイルスによる免疫活性化を経験すると、その子供にASDの発症リスクが高まることが知られています。研究では、妊娠中のマウスにVPAまたはウイルス感染を模倣する物質を投与した結果、特定の神経細胞(PVおよびCCKを発現する介在ニューロン)で神経伝達物質がGABAからグルタミン酸に切り替わることが確認されました。この切り替えは、新生児期の初期に一時的に起こり、成人マウスにおいて自閉症様行動(反復的な行動や社会的相互作用の減少)を引き起こしました。しかし、GABAの発現を再導入することで、この行動を防ぐことができました。これらの結果は、神経伝達物質の切り替えがASDの環境的原因において重要な役割を果たしていることを示唆しています。

Frontiers | Prospective associations between early childhood mental health concerns and formal diagnosis of neurodevelopmental disorders in adolescence

この論文は、幼児期の心理社会的発達と思春期における神経発達障害(NDDs)の正式な診断との関連を調査しています。具体的には、4~5歳の子供に対して実施された「Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)」のスコアが、16~17歳時の精神健康問題やNDDsの診断を予測できるかを検討しました。研究では、オーストラリアの子供たち4968人のデータを使用し、幼児期のSDQスコアが思春期におけるADHDや自閉症の診断に関連していることを発見しました。さらに、女性、低学歴の母親、経済的困難などの社会的要因が、思春期における精神健康問題やNDDsの診断リスクを高めることが示されました。この研究は、幼児期における早期の問題発見と介入の重要性を強調し、社会的支援の重要性を示唆しています。

Frontiers | Case Report: Novel use of clinical brain-computer interfaces in recreation programming for an autistic adolescent with co-occurring attention deficit hyperactivity disorder

このケースレポートでは、注意欠陥多動性障害(ADHD)を併発する自閉症の男性青年が、リクリエーション目的で脳-コンピュータ・インターフェース(BCI)を使用した経験についてまとめています。BCIは通常、認知スキルの向上や行動問題の改善を目的に使用されますが、本報告では初めて、リクリエーション目的での使用が自閉症の子供や若者にどのような効果をもたらすかが検討されています。

研究では、参加者の過去の記録を保護者の同意のもとでレビューし、BCIプログラムに対する楽しみがカナダ職業パフォーマンス尺度(COPM)のスコア向上と関連していることが確認されました。また、他のリクリエーションプログラムに比べて、BCIプログラムにおけるパフォーマンスが高いことが示されました。さらに、臨床医たちは、参加者の社会的コミュニケーションの努力や自己主張の向上も観察しました。

結論として、BCIを使用したリクリエーションプログラムは、自閉症の子供や若者にとって新しいエンゲージメントの機会を提供し、スキルの発達も支援できる可能性があるとしています。