この記事では、最新の学術研究について紹介しています。具体的には、乳児期に自閉症を予測するための親の態度、学習者の知識と知的成長を支援する教育理論の発展、成人の自閉症スペクトラム障害(ASD)を評価する新しい質問票の妥当性、そして知的障害を持つ自閉症の若者に対する磁気刺激治療の実行可能性と安全性に関する研究が取り上げられています。
Parent attitudes towards predictive testing for autism in the first year of life - Journal of Neurodevelopmental Disorders
この論文は、バイオマーカー技術(MRI、EEG、デジタル表現型、視線追跡など)を用いた乳児期(生後6~12ヶ月)の自閉症予測テストに対する親の態度を調査したものです。研究では、自閉症の子供を持つ親(n=30)と、自閉症に関する経験がない親(n=25)の2つのグループにインタビューを行い、その反応を質的に分析しました。
結果として、ほぼ全ての親が予測テストに関心を示し、特に乳児の発達に不安がある場合にテストを受けたいと述べました。主な利点として、早期介入へのアクセスが挙げられましたが、結果に対する感情的な反応や、誤った予測の影響に対する懸念も報告されました。テストを受ける動機としては、準備時間を増やし、早期介入を行うためという理由が多く挙げられましたが、家族のリソースやサービスの利用可能性に制約がある可能性も指摘されています。
論文は、予測テストの結果の倫理的なコミュニケーションや、公平な早期介入の実現に向けた課題についても言及しています。
The AIR and Apt-AIR Frameworks of Epistemic Performance and Growth: Reflections on Educational Theory Development
この論文は、学習者の知識獲得と知的成長を支援するための教育理論として、AIR(エピステミック思考とパフォーマンスの枠組み)とApt-AIR(適応型AIR)の2つの理論 的枠組みの発展について探求しています。これらの枠組みは、学習者の認識能力を向上させ、民主的な知識社会への参加を促進することを目的としています。
論文では、まずこれらの枠組みを簡単に紹介し、次に教育理論の発展に関する7つの反省点を述べています。具体的には、教育的課題に対応するためにこれらの枠組みがどのように動機づけられたか、哲学的な洞察がどのように取り入れられたか、他の教育心理学理論との整合性を高めるために行ったステップなどが説明されています。また、教育環境の設計が枠組みのテストや発展において重要な役割を果たすことや、これらの枠組みが実証的証拠に支えられていることにも触れています。
さらに、研究コミュニティとの対話や現実の課題への対応が枠組みの発展を促進してきたことを強調し、今後の研究に向けた重要な方向性を示しています。全体を通して、学習者の認識能力を多様な教育環境で向上させるための、強固で動的な理論的枠組みを作り出すことへの取り組みが述べられています。
Validity of the Systemizer Profile Questionnaire: A New Tool to Identify Cognitive, Mentalizing, Sensory, Social, and Systemizing Abilities in Adults with Autism-Spectrum-Disorders With and Without Comorbid ADHD
この論文では、新たに開発された「システマイザープロファイル質問票(SPQ)」の信頼性と妥当性を評価しています。SPQは、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ成人(注意欠如・多動性障害(ADHD)を併発している場合も含む)の認知能力、心の理論(メンタライゼーション)、感覚・社会的敏感性、社会的認知能力の困難を評価するツールです。
研究には、ASDの診断を受けた354人と、それと年齢や性別が一致する354人のコントロール群が参加しました。85項目からなるSPQのサブスケールは、確認的因子分析(CFA)と項目反応理論(IRT)を用いて評価され、最終的に63項目に絞られました。SPQは、感度(0.64から0.84)、特異度(0.73から0.90)、陽性的中率(0.76から0.89)、陰性的中率(0.69から0.90)が高いことが確認されました。
結論として、SPQは、RAADSによってASDが確認された場合、精神的・感覚的・社会的感受性および社会的認知能力のプロフィールを有効に記述するツールであるとされています。ただし、SPQ自体は診断ツールではないため、ASDの診断がない場合には、その有効性は限られると指摘されています。
Feasibility and Tolerability of Daily Theta Burst Stimulation in Autistic Youth with Intellectual Disabilities and Minimally Speaking Status: A Pilot Double-Blind Randomized Sham-Controlled Trial
この論文は、知的障害(ID)を持ち、言葉をほとんど話さない自閉症の若者に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の一種である間欠的シータバースト刺激(iTBS)の実行可能性、安全性、および耐容性を調査した世界初のパイロット試験を報告しています。25人の8〜30歳の参加者を対象に、4週間にわたって毎日20回のiTBSまたはシャム刺激を行い、その後8週間までフォローアップが行われました。結果として、すべての参加者が試験を完了し、軽度の局所的な痛みやめまいといった軽微な副作用が報告されましたが、発作や新たな行動問題などの深刻な副作用は発生しませんでした。小規模なサンプルサイズでは、治療の有益な効果は確認されませんでしたが、この治療法が実行可能であ り、安全に実施できることが示されました。今後は、より大規模なランダム化比較試験が必要です。