本ブログ記事では、中国の子供たちを対象に原因不明の神経発達遅滞(NDD)と神経発達併存症(NDCs)をトリオベースの全エクソームシーケンス(trio-WES)を用いて表現型と遺伝的解析を行った研究、台湾の全国データベースを用いた、妊娠中の抗うつ薬使用が子供の自閉症スペクトラム障害(ASD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)のリスクと関連しているかを調査した研究を紹介します。
学術研究関連アップデート
Phenotypic and genetic analysis of children with unexplained neurodevelopmental delay and neurodevelopmental comorbidities in a Chinese cohort using trio-based whole-exome sequencing - Orphanet Journal of Rare Diseases
中国の子供たちを対象に、原因不明の神経発達遅滞(NDD)と神経発達併存症(NDCs)の表現型および遺伝的解析をトリオベースの全エクソームシーケンス(trio-WES)を用いて行った研究では、NDDとNDCsの重症度、複数のNDCs、ASDの併存、頭囲異常が遺伝的診断の可能性を高める独立した要因であることが示されました。トリオWESを用いた結果、病因変異が検出された患者の50.3%において、新しいASDリスク遺伝子としてCUL4B、KCNH1、およびPLA2G6が特定されました。このため、これらの条件を持つ患者にはtrio-WESの実施が推奨されます。
Association between maternal antidepressant use during pregnancy and the risk of autism spectrum disorder and attention deficit hyperactivity disorder in offspring
この研究は、台湾の全国データベースを用いて、妊娠中の抗うつ薬使用が子供の自閉症スペクトラム障害(ASD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)のリスクと関連しているかを調査しました。2004年から2016年にかけて登録された生児を対象に、抗うつ薬曝露群と非曝露群に分けて分析しました。一般的な分析では抗うつ薬曝露がASDおよびADHDのリスク増加と関連していましたが、兄弟間比較や父親の曝露を対照とした分析では、ASDやADHDのリスク増加は見られませんでした。この結果は、妊娠中の抗うつ薬使用とASDやADHDの関連が、薬物の直接的な影響ではなく、母親のうつ病や遺伝的・環境的要因によるものである可能性が高いことを示唆しています。