ASD特性が好奇心駆動の探索行動に与えるポジティブな効果
このブログ記事は、発達障害や脳科学に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しています。具体的には、自閉症スペクトラム障害(ASD)関連遺伝子CHD8の機能不全がマウスの行動や神経新生に与える影響、ASD特性が好奇心駆動の探索行動に与えるポジティブな効果、自閉症関連遺伝子RBM27が神経発達におけるミトコンドリア保護に果たす役割、自閉症児の介護者向けマインドフルネスアプリのストレス軽減効果、ADHDに関連するアデノシンの役割、ADHDを持つ高校生アスリートの脳震盪からの回復時間、ADHDと学業成果の関係における携帯電話使用時間の媒介効果などが含まれています。
学術研究関連アップデート
The Deficiency of the ASD-Related Gene CHD8 Disrupts Behavioral Patterns and Inhibits Hippocampal Neurogenesis in Mice
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と神経発達遅滞のリスクを高めるCHD8遺伝子の機能不全が、行動パターンと海馬での神経新生にどのように影響するかをマウスで調査しました。CHD8ヘテロ接合マウスは社会的新奇性への関心が低く、不安様行動を示しましたが、学習・記憶能力は正常範囲内にありました。また、CHD8の欠損により未成熟および成熟した新生ニューロンの数が減少し、海馬での神経新生が妨げられていることが確認されました。これにより、CHD8は海馬での神経新生の調整に重要な役割を果たし、この新生の障害がASD様行動と関連している可能性が示唆されました。
Autistic traits foster effective curiosity-driven exploration
この研究は、好奇心駆動の探索行動と自閉スペクトラム特性(ASD特性)が学習に与える影響を調査したものです。大学生を対象にASD特性の自己評価と他者評価を収集し、キャラクターの隠れパターンを学習する探索タスクに取り組んでもらいました。探索中、参加者は任意のタイミングで探索対象を変更でき、予測誤差と学習の進展(予測誤差の減少度)が追跡されました。
結果、「同一性への固執」や一般的なASD特性が低い参加者は、探索の初期段階で学習の進展に依存してすぐに別の対象へ移行する傾向が見られました。一方、ASD特性が高い参加者は後期段階でも学習の進展に基づいて探索を続け、結果的にタスクのパフォーマンスが向上しました。この研究は、ASD特性が探索行動と学習過程に与える影響を明らかにし、個々の特性に合わせた学習アプローチの必要性を強調しています。
Ortholog of autism candidate gene RBM27 regulates mitoribosomal assembly factor MALS-1 to protect against mitochondrial dysfunction and axon degeneration during neurodevelopment
この研究は、神経発達障害(自閉症、知的障害、ADHDなど)に関与する可能性があるミトコンドリア機能障害を防ぐための分子メカニズムを調査しています。研究では、自閉症関連遺伝子RBM27のCaenorhabditis elegans(線虫)でのオルソログであるrbm-26が、神経の軸索(アクソン)変性を防ぐ役割を果たすことを発見しました。具体的には、RBM-26がミトコンドリアリボソームの組み立て因子である**MALS-1(MALSU1)**の過剰発現を抑制することで、軸索の損傷から保護しています。RBM-26に変異があると、この抑制機能が失われ、MALS-1の過剰発現が引き起こされ、軸索の重なりの異常や変性が発生することが確認されました。このように、RBM-26はミトリボソームの組み立て因子の発現を調整することで、神経発達における軸索の保護を担っていることが明らかになりました。