メインコンテンツまでスキップ

ADHD児における睡眠問題と内面化症状の関連性

· 約7分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、発達障害やADHD、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する最新の学術研究が紹介されています。特に、成人ADHD患者における自殺リスクと関連要因、ADHD児における睡眠問題と内面化症状の関連性、メディケイド保険加入のADHD児に処方される向精神薬のガイドライン遵守状況、そしてASD患者における炎症性サイトカインやバイオマーカーの可能性が取り上げられています。

学術研究関連アップデート

この研究は、成人ADHD患者における自殺リスクと関連要因を調査しています。74名の成人ADHD患者を対象に、Columbia-Suicide Severity Rating Scaleを使用して自殺念慮(SI)、重度自殺念慮(SSI)、自殺行動(SB)、および非自殺性自傷行動(NSSIB)の有病率を評価しました。結果、SIの生涯有病率は59.5%、SSIは16.2%、SBは9.5%、NSSIBは10.8%と判明しました。SIは成人期の不注意症状の重症度、低い自尊心、社会的機能の障害と関連がありました。SSIは、子供時代の不注意症状の重症度、注意衝動性、入院歴と関連し、身体活動が保護的な要因とされました。これにより、成人ADHD患者において自殺リスクが高いことが示唆され、特に不注意が自殺念慮と関連しているため、予防的介入のためにリスクの高い患者を特定することが重要です。

Sleep Problems in Children with ADHD: Associations with Internalizing Symptoms and Physical Activity

この研究は、ADHDを持つ子どもたちにおける睡眠問題と内面化症状(うつ、不安、ストレス)の関連性、さらにそれに対する身体活動の影響を調査しています。188人のADHD児(平均年齢8.6歳)を対象とし、睡眠問題をピッツバーグ睡眠質指標(PSQI)で評価し、内面化症状はうつ・不安・ストレス尺度21(DASS 21)で測定しました。また、身体活動は7日間の加速度計で記録しました。その結果、59%の子どもが睡眠問題を抱えており、これらの子どもたちは毎日の中~高強度身体活動(MVPA)が少なく、WHO推奨の60分MVPA基準を達成する割合も低いことがわかりました。さらに、睡眠問題を抱える子どもたちはうつ、不安、ストレスのスコアが高く、日中の機能障害が内面化症状と関連していました。身体活動基準を満たすことが、ADHD児のうつや不安のリスクを減らす可能性が示唆され、今後の研究で睡眠と内面化症状への長期的な影響、および身体活動に基づく介入の効果が求められます。

Adherence to Guidelines and Federal Psychotropic Medication Labels for the Treatment of Medicaid-Insured Children With ADHD

この研究は、ADHDを持つメディケイド保険加入の子どもたちに処方される向精神薬が、臨床実践ガイドライン(CPG)と米国食品医薬品局(FDA)の薬物ラベルにどの程度従っているかを検討しました。2016~2018年のメディケイド請求データを用い、46州にわたるADHD診断を持つ子ども123万6068人の処方状況を解析しました。結果、86.7%の子どもがガイドライン推奨かつFDA承認の薬を受けていましたが、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、第二世代抗精神病薬といったCPGに含まれない薬も23.4%の子どもに処方されていました。これにより、ガイドラインがエビデンスに基づく治療の促進に効果的であることが示唆されました。

Correlation of biochemical markers and inflammatory cytokines in autism spectrum disorder (ASD) - BMC Pediatrics

この研究は、自閉スペクトラム障害(ASD)における免疫応答の変化と炎症性サイトカインの役割を調査し、ASDのバイオマーカーとして有望な候補が存在するかを明らかにしようとしています。ASD患者(22名)と健康な子ども(12名)の血清中のCRP、TNF-α、TGF-β、IL-1β、IL-10、IL-8、IL-6の濃度を測定した結果、ASD患者ではIL-10とIL-8の濃度が対照群に比べて有意に低いことが示されました。また、ASD患者群ではCRPとIL-10、CRPとIL-8の間に正の相関が見られたのに対し、対照群ではこれらの相関が見られませんでした。これらの結果は、ASDにおける免疫調節異常の可能性を示唆し、IL-10やIL-8がASDの病態形成に関与する可能性があることを示しています。今後、これらのバイオマーカーのさらなる研究が、ASDの診断や治療の改善につながる可能性が期待されます。