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【ABA・応用行動分析学】真似から始めるスキル獲得トレーニング【模倣準備編】

· 約11分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

全ての学習は模倣から!というと少し言い過ぎですが、赤ちゃんや幼い子供がパパママの真似をしたり先生の真似をしたりして新しい行動をするというシーンを見た・経験したことがある人は多いのではないでしょうか?

はじめに

全ての学習は模倣から!というと少し言い過ぎですが、赤ちゃんや幼い子供がパパママの真似をしたり先生の真似をしたりして新しい行動をするというシーンを見た・経験したことがある人は多いのではないでしょうか?

療育という文脈においても児童が新しい行動を獲得する際に模倣訓練が用いられます。

今回の記事では自然に発生する模倣というよりも意図的に模倣させることでスキルや行動の獲得を目指す方法である模倣訓練に関してその概要と必要な準備をご紹介します。

模倣とは

応用行動分析学でいう模倣は、下記の要件を満たすものを模倣として定義してます。

  1. モデル(見本)は先行刺激
  2. 模倣行動はモデル提示の直後に起こる
  3. モデルと模倣行動の間には類似性がある
  4. モデルは模倣行動の制御変数

少し難しい書き方になってしまいましたが、すごく簡単にいうとお手本を見せたときに、即座にお手本通り実行されるということです。

模倣訓練では上記の定義に当てはめながらトレーニングを実施します。

模倣訓練のメリット

これまでもスキルや行動の獲得に関してさまざまな方法論をご紹介してきましたが、そもそも模倣訓練を行うメリットはなんでしょうか?

それは、行動のレパートリーの増加を促進することにあります。

というのは、発達障害を持つ児童の中には、模倣スキルを持たないが故に行動のレパートリーが最小限の状態になってしまっているケースがあります。

一番最初の例で示した通り、模倣スキルは意図的に訓練せずとも自然に獲得している場合があり、そのようなケースにおいては目に付く行動を模倣することで時間の経過とともに模倣可能な行動の数が増えていきます。

ですが、模倣しないケースでは行動のレパートリーは自然には増加しません。このような場合において模倣スキルを獲得することは以後の行動レパートリーの増加に大きく貢献します。

模倣訓練の実践に向けての準備

さて、ここからは実際に模倣訓練を実施するにあたり必要な調査や準備に関してステップに分けてご紹介します。

1.前提スキルの確認

モデリングを通じて児童が学習していくためには、その前提として児童が持っていなければならないスキルがあります。このスキルがまだない場合にはまず最初に学習する必要があります。

モデルに注目することができる

モデル(お手本)に対して模倣行動をするのにはそもそもお手本を観察してもらう必要があります。そのため大前提としてお手本を見せたときに児童が注目するかどうかを事前に確認しておくことが必要です。

2.モデル候補のリストアップ

前提スキルの確認ができたら次に、お手本をリストアップします。初回の学習であればなるべく簡単な動作(微細・粗大)でかつ、連鎖タスクではないものをリストアップするのがおすすめです。

  1. 頭に手のひらで触れる
  2. 唇に手のひらで触れる
  3. ジャンプする...etc

3.予備テスト

モデル候補がリストアップできたらそれぞれのモデルに対して予備的なテストを実施します。これはもしかすると選んだモデルによっては訓練なしに模倣することができるかもしれないという可能性の確認と、それぞれのモデルの模倣難易度を確認するためです。

具体的なやり方としては、以下の通りです。

  1. 児童の注目を得る
  2. お手本を提示する
  3. 模倣行動を観察する
  4. 結果に応じて対応・記録する(正反応・無反応・誤反応)

それぞれのモデルに対して最低3回は上記のステップで予備テストを実施して、例えば3回中3回模倣できているという場合には、そのモデルは訓練なしに模倣できるものとしてトレーニング対象から外すこともできます。

模倣の難易度は、結果に応じて以下の順番で難易度づけをします。

  1. 正反応を示したモデル
  2. 近似反応を示したモデル
  3. 模倣できなかった、不正確な模倣だったモデル

4.使用する強化子やプロンプトの設計をする

**模倣訓練においては正反応の際に強化をします。**そのためあらかじめどのような強化子を用いるかなど、決めておく必要があります。

プロンプトに関しては必須ではないですが、モデルの提示に加えて必要だと考えられる場合には同じくプロンプトに関しても設計が必要です。

プロンプトを利用する場合に注意する必要があるのは、模倣はモデルの提示だけで起きることが重要であるため最初は利用しても最終的にはプロンプトなしで模倣できるように設計する必要があります。

プロンプト及び強化に関してはこちらの記事を参照してください。

https://www.easpe.com/blog/article/15/

https://www.easpe.com/blog/article/13/

5.シチュエーションやタイミングの把握

支援者と一対一で学習する時に加え、モデリングを実施できるような日常生活でのシチュエーションや、教室以外でどのような場面が活用できるか事前に把握しておきます。

6.協力者を探す

お手本や見本を提示する人として最適なのは、実は学習児の同級生や兄弟姉妹などです。というのは、自分の体の大きさやその使い方に関して大人よりもずっと近しいからです。そのため、教室やまたはお家などで身近に年齢や体系が近しい協力者がいると非常に効果的です。

もしいない場合や難しい場合には先生や保護者の方、セラピストが実施しても問題ありません。

同じ年頃の子供たちに協力してもらえる際には、適切にモデルを提示できるように対象となる行動やスキルに関して事前に学習してもらう必要があります。教え方としてはロールプレイや手引きを通じてどのようなタイミングでどのようなことをすればいいのかきちんと理解できるように教えていきます。

まとめ

さて今回は模倣に関して、応用行動分析学上の定義からその訓練方法の概要、実戦に必要な準備に関してご紹介しました。

次回の実践編では、具体的な訓練方法とその後に関してご紹介します。