応用行動分析学といえばDTT!とは言わないまでも、応用行動分析学・ABAとセットでDTTというワードを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか?今回の記事では**DTT Discrete Trial Traning(離散試行型指導法)**に関して基礎知識と実践するにあたり必要な準備方法に関してご紹介します。
はじめに
応用行動分析学といえばDTT!とは言わないまでも、応用行動分析学・ABAとセットでDTTというワードを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか?今回の記事では**DTT Discrete Trial Traning(離散試行型指導法)**に関して基礎知識と実践するにあたり必要な準備方法に関してご紹介します。
DTTとは?
DTTは、ある刺激に対して可能な限り小さくされた一つの新しい反応(行動)を学習するための方法です。
刺激「お名前は?」 行動「たかし」 刺激と反応の例
DTTではABC分析の3つの要素に乗っ取り、刺激と行動を結びつけていくトレーニングを実施します 。
トレーニングの流れとしては、先行刺激を提示して、それに対する行動を形成し、行動に対する結果を提供するという一連の流れを短い時間で複数回繰り返しトレーニングを実施します。
実際にトレーニングを実施するあたっては、プロンプトや強化等、他の方法も織り交ぜて教えていくことになります。
DTTで達成できること
DTTを使用した際に達成できる主な項目は下記のようになります。
- 口頭でのコミュニケーションスキルの向上
- 質問への回答反応の増加(無反応ではなく)
- アカデミックスキルの向上
- 他者視点取得(他者の視点に立って考える力)
- 感情理解
- 適応行動(特に日常生活上の安全に関して)
科学的に効果があると確認された領域
DTTを実践するにあたって必要な準備について
ここからはDTTを使用しスキル獲得トレーニングを実践するにあたって必要な準備に関して解説します。
1.目標行動の定義と基準の設定
まず初めにやる事は、対象とする行動のきっかけになる刺激と、正反応、望ましい達成率を決めます。
たかしのケース 目標:赤、青、黄色、の色の区別をつけられるようになる 刺激:支援者がたかしに「赤はどれ?」などと色ごとに聞く 行動:たかしは、色を指差す 基準:全試行のうち80%の確率で正しい色を指差すことができる 明確に定義したもの たかしは、色を指差してと支援者から言われた時に、正しい色を指差す。また3日連続の試行全体のうち8割正しく回答することができる。 目標行動の定義と基準の設定の例
2.タスク分析
対象とするスキル が、初めから最小単位になっていない場合、例えば、目標とする行動が、絵カードを見せられた時に答えられる動物の名前が3種類、などと言う場合には、ステップに分けていく必要があります。
連鎖的な行動をステップに分ける方法としてはタスク分析(TA)が利用できます。より詳細な方法に関しては下記の記事をご参照ください。
https://www.easpe.com/blog/article/18/
簡略的にタスク分析をするような場合には、下記の方法で複雑なスキルをステップごとに分けることができます。
ステップに分ける方法
- タスクを誰にかに遂行してもらいその様子を観察しながらステップを書き留める
- 対象スキルや対象行動に詳しい人にステップを記録してもらう
- 自分自身でタスクを実行しながら分析する
タスクを分析できたら、DTTをどのようなステップで進めていくのかわかるように記録します。
目標設定 3種類の形(丸、四角、三角)に関して、指定された形でまとめてと言われた時に、正しく仲間分けできる。また試行全体のうち80%正しく分けることができる。 DTTで教えるステップ ・丸だけまとめる ・四角だけまとめる ・三角だけまとめる ・丸と四角を同時にまとめる ・丸と三角を同時にまとめる ・四角と三角を同時にまとめる ・丸と三角と四角を同時にまとめる 連鎖タスクの目標設定、DTT設計の例
またタスク分析をして、それぞれのステップに分けた後で、児童がそれらに対して取り組む準備ができているかチェックすることも重要です。
つまり言葉でやり取りする準備はできているか、また例えばカードを掴むなど指先の運動はできるかなどの前提となっているスキルを獲得しているのか、確認しておく必要があります。
3.データシートの作成
DTTを実施する上では、**一つ一つの試行に関してきっちりとデータを収集していく必要があります。**そのため事前にどのような形でデータを記入していくのかフォーマットを作成しておくことが有効です。
また状況によっては、いつもと違う支援者の方が担当される、またはお家で保護者の方がやられる場合もあるかと思います。そのような際にもABC分析や、明確に記述した行動・基準に関する情報などを一枚のシートに記載しておくことで簡単にまた正確な情報共有が可能です。
下記がDTTを実践する際に必要となり得るシート例です。
4.強化子の選択
DTTにおいては、標的行動が成功する際に強化を使用するため、その際に用いる強化子をあらかじめ選択しておきます。強化子は、好きな活動や、好きなおやつ、社会的なもの(褒める、ハイタッチ)など、児童が喜ぶものを選択します。より詳しく強化子について知りたい場合には強化の記事をご覧ください。
https://www.easpe.com/blog/article/13/
5.環境調整
**DTTに取り組む際には、どのような環境下において実践するかが非常に重要です。**セラピーを開始する前にきちんと準備ができているか確認します。
- 注意や集中を削ぐものが児童の目につくところにおいてないか?
- アクティビティを行うのに十分な広さがあるか?
- 休憩を取れるスペースが確保されているか?
- 定型発達も含めた他の児童と簡単に関わることができる場所にあるか?(般化の為)
- 光量や椅子の高さなど、集中しやすい環境か?