小集団でも利用可能!認知行動療法に関して紹介【CBT準備編】
今回は認知行動療法に関して、そもそも認知行動療法とは何か?というところから認知行動療法に取り組むにあたって必要な準備、既存のカリキュラムなどに関して簡単にご紹介します。
今回は認知行動療法に関して、そもそも認知行動療法とは何か?というところから認知行動療法に取り組むにあたって必要な準備、既存のカリキュラムなどに関して簡単にご紹介します。
認知行動療法とは?
認知行動療法は社会性やコミュニケーション、認知、協調性、感情、メンタルヘルスを整える上で有効な行動療法の一つです。
自閉症児の多くは自身の感情、思考、行動を理解することに困難を示すことがあります。そして心と体がつながっていることを理解することも同様に困難である場合があります。認知行動療法では、思考や内在的な行動が、観察可能な行動(外部行動)をコントロールするという原則に基づいて思考プロセスの再構築、情操教育、認知行動スキルの学習支援を行います。
また認知行動療法は集団にも適応できる為個別療育以外の場面でも実施することができます。
認知行動療法のターゲットになる目標
認知行動療法を利用する際にターゲットになるものや目標としては下記のようなものが例として挙げられます。
- 不適切思考の認知と矯正
- 自身の行動のメタ認知、や他者の行動理解を通じた社会的相互作用へのよりより理解
- 反応に対する応答行動の最適化を通じた社会性の向上と協調性の向上。精神疾患のリスク低減や不安抑うつ状態の解消
- 強迫的、常同的行動の改善
- 誇 大妄想や恐怖への対処
- 不安症状
- うつ
- 怒り、癇癪
- 柔軟性、適応力
- 思考の停止、息抜き
- 代替行動および協調行動の発達
- 嫌悪刺激への段階的暴露
- 感情理解
認知行動療法に取り組む前に確認すべきこと
認知行動療法は取り組むにあたりいくつか前提となる事項があります。
- 認知機能、能力のレベルがだいたい6歳以上ある
- 表出、受容言語ともに6歳レベル
- 使用する教材に記載されているワードを理解できるレベルの読み能力
- 集団で行う場合には集団生活能力が対応可能か
グループワークやコミュニケーションを含むカリキュラムが多いため、基本的には上記の事項を満たしていないと実行するのも効果を得るのも難しいという形になりますが、より詳細な部分は使用するカリキュラムに応じたり、以下で紹介するような部分を確認した上で精査する必要があります。
ここからは認知行動療法位取り組むにあたり必要となるステップをいくつかご紹介します。
1.学習スタイルの把握
介入をしていく上で、児童の学習においてどのような点が強みまた弱みとなるか事前に確認しておくことが必要です。また、どのような学習のタイプに特に注目すべきかという点に関しては下記に記載します。
2パターンの学習スタイル
暗黙的学習 この学習タイプは、無意識的に偶発的で複雑な情報を学習します。例えば早期言語を獲得する際の学習がこれに該当します。自閉症児にとっては苦手なことが多い学習タイプです。
明示的学習 算数など努力や経験が必要な意識的な学習タイプです
強み、弱味の現れる部分
注意 自閉症児の場合には、細部に注目したり注意を別のものに移すのが困難である場合があります。
視覚 視覚で学習することが得意な場合もあります、見たものから学習していくことが可能です。
音声言語 音声言語で学習することが得意な場合があります。
実行機能 自閉症児の中には、複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことが困難である場合があります。
他者視点取得 他者から見 たときの物の見え方や、他者の意図の推測などが困難である場合があります。
感覚処理 感覚過敏による嫌悪や回避といった行動が生じている可能性があります。
弱みや強みを把握したり、どのような学習スタイルが使えそうか判断するためには、過去の検査記録や個別支援計画を振り返ることも有効です。構造化面接や非構造化面接、直接的なアセスメントや行動観察も有効です。またフォーマルアセスメントを再度実行することも有効です。
2.カリキュラムの選択・作成
認知行動療法に関してはすでにたくさんのプログラムが作成されています。プログラムによっては発達障害の有無に関わらず利用できるようなものや特化したもの、特化した上で効果検証がしっかりとされているものなどがあります。
すべての子どもたちに対して使用可能なプログラムの例 Coping Cat C.A.T. Project Coping Power Fast Track Program and Promoting Alternative Thinking Strategies (PATHS) Second Step Adolescents Coping with Depression Linking the Interests of Families and Teachers Early Risers: Skills for Success Skills for Academic and Social Success FRIENDS Program for Children Cool Kids Child and Adolescent Anxiety Social Effectiveness Therapy for Children Interpersonal Psychotherapy for Depressed Adolescents ACTION treatment ACT and ADAPT program
自閉症児向けに特化されたプログラムの例
Facing Your Fears: manualized group therapy for managing anxiety in learners with ASD by Judith Reaven, Audrey Blakeley-Smith, Shanna Nichols, and Susan Hepburn Exploring Depression and Beating the Blues: cognitive behavior therapy to understand and cope with depression by Tony Attwood and Michelle Garnett Exploring Feelings: series by Tony Attwood
自閉症児向けに特化されたプログラムでかつエビデンスのあるものの例
Modified Building Confidence CBT program: for anxiety in learners with ASD by Jeff Wood and colleagues Cool Kids ASD Program Kit: program addressing anxiety in learners with ASD by Anne Chalfant, Heidi Lyneham, Ronald Rapee, and Louisa Carroll Coping Cat program: for children with anxiety and ASD examined by McNally Keehn and Kristina Hedtke Multi-Component Integrated Treatment: for adolescents with ASD developed and examined by Susan White and colleagues
いずれのプログラムを使用する場合においてもフォーマル、インフォーマルアセスメントの結果をもとに、それぞれの児童に合わせてカスタマイズが必要です。
プログラムによってはSVや事前研修を必要とする場合もありますが、これらの学習を通じてより最適な支援を提供しやすくなるため、受けられる場合には積極的に学習機会として活用していくことが重要です。
3.個別・集団いずれのタイプを使用するか
CBIは1対1の場合も集団の場合もいずれの状況下でも使用することができます。どちらの方法を使用するかについては、児童の発達状態やスキル、特性を考慮するのはもちろんのこと、支援者のスキル、教室の広さ、時間とうも同じように考慮して決めます。
グループワークは 支援者にとっては最も効率の良い方法になりますが、その集団のメンバーがスキル獲得段階や特性などが類似していることまた、それぞれのメンバーが集団生活をする上での準備段階がすんでいることをしっかりと確かめないと機能しません。 またグループで行う場合に保護者の方と協力して一緒に取り組むように設計することも有効です。グループワークに保護者の方に参加していただくことで、保護者の方からお子さんにプロンプトを出したり、適応行動を促進することができる為、支援者にとってもグループワークをする上で非常にやりやすい状態にすることができます。
4.プログラム内容のすり合わせ
プログラムを実施するにあたり、支援者、保護者、学校の先生など様々な人が参加する場合には、認知行動療法を実施するに至った背景や実施する内容等に関してそれぞれがきちんと理解している必要があります。特に認識をすり合わせておく必要のある項目は下記の通りです。
- なぜ認知行動療法を用いるのか
- 認知行動療法の原理原則は何か
- 利用するプログラムや行動計画に関して理解と合意がなされているか
- 強化計画に関して理解と合意がなされているか
- 般化計画やプロンプトに関して理解と合意がなされているか