本記事は前回のプロンプト基礎知識編に続き、プロンプトを用いたトレーニングの設計方法に関してステップごとにご紹介します。
はじめに
本記事は前回のプロンプト基礎知識編に続き、プロンプトを用いたトレーニングの設計方法に関してステップごとにご紹介します。
前回の記事を読んだ後の方がより理解しやすいので、まだ読まれていない方はこちらからぜひご参照ください。
https://www.easpe.com/blog/article/15
それでは早速、必要なステップごとに見ていきましょう!
対象行動の特定とタスクの分類
まずは、プロンプトを使用する対象になる行動やスキルを定義します。基本的には目標の行動を客観的に計測できる形でまとめ、目標行動の頻度や発生する条件に関して現状のデータを集めるという流れになります。
対象行動の特定や定義の仕方に関してのより具体的な方法に関しては下記の記事を参照してください。
https://www.easpe.com/blog/article/4
目標行動に関して定義、ベースライン調査が完了した後で次に目標行動が個別タスクか連鎖タスクか判別します。
個別タスクとは
短い時間に一つの反応を返すようなタスク(行動)です。
指示された時に、「特定の物を指差す」。 回答を求められたときに、「答える」。 先行刺激に対して、1つの反応を返すようなタスク
連鎖タスク
時系列に沿っていくつかの個別タスクを含んでいる、複雑なタスクです。
【手洗い】洗面所に行く 水を出す 手に石鹸をつける こする 洗い流す 水を止める 手を拭く 上から順番に個別タスクを実施する必要のあるタスク
目標とする行動が連鎖タスクの場合には基本的な行動の定義、データ収集に加え、対象行動やスキルをしっかり特定する為に追加で以下のような調査が必要です。
連鎖タスクに含まれる全ての個別タスクを漏れなく把握する
連鎖タスクがどのような個別タスクによって 構成されているのか把握するために、個別タスクをリストアップします。
児童の行動を調査した結果やカリキュラムから、連鎖タスクに含まれるそれぞれの個別タスクを時系列に沿った順番で書き出す。 連鎖タスクが完了する時点までの全てのタスクに関して書き出す。
連鎖タスクを行っているのを観察しながら、ステップを書き出す。
連鎖タスクに含まれる個別タスクの終了条件を明確にする
連鎖タスクに含まれる個別タスクが、どのように区切られているのか明確に把握するためにそれぞれの個別タスクの終了条件を明確にします。
手洗いの1つのステップである「水を出す」ステップの終了条件は蛇口を捻ることではなく、蛇口をひねって水が出ること等
上記の調査で、連鎖タスクの構成要素それぞれに関して明確に把握できたら、最後に連鎖タスクを一度に教えることができるか、または個別タスクごとにトレーニングが必要かチェックします。個別にトレーニングが必要と判断される場合には、連鎖タスクとしてトレーニングする前に、個別タスクとしてトレーニングを開始していくという流れになります。
アプローチを選択する
目標行動に関する定義やベースライン調査が完了したら次に使用するアプローチを選択します。
前回の記事で紹介したプロンプトを用いたトレーニング方法から、どのアプローチを用いるか選択します。
トレーニング方法の決め方に関しては、簡単なフローチャートを作成しましたのでこちらを参照してみてください。
最小ー最大プロンプトを用いる場面 ・児童が対象行動やスキルを使用することができるが頻度が低いとき
・児童が学習した対象行動やスキルが、頻度や時間、クオリティの面で後退している 時段階的ガイダンスを用いる場面 ・対象行動やスキルが既存のルーティンや活動に含まれている ・瞬間、瞬間でプロンプトをいつ使用するかまた使用しないかを判断しなければならないような場合 同時プロンプトを用いる場面 ・新しく学習を始める時
先行刺激を特定する
どのアプローチを選択しても、対象となる行動やスキルを使用するきっかけとなる刺激(先行刺激)を特定する必要があります。
というのは、いずれプロンプトを使用せずとも対象行動やスキルを使用できることを目標としているため、あらかじめどのような先行刺激の後に目標行動を使用するのか特定しておく必要 がある為です。
きっかけとなる刺激は次の3つに分類されます。
自然発生する刺激
意図的に発生させる必要がない刺激です。
喉が乾く →飲み物を要求する先行刺激 気温が上がり体温が上昇する →衣類を脱ぐ先行刺激
出来事が終了するという刺激
活動や出来事が終了したこと自体が刺激となります。
問題文を読み終わる →問題に回答する先行刺激 プリントを解き終わる →次のプリントに取り組む先行刺激
外的刺激
意図的に外側から加えられる刺激です。
質問に回答するよう指名される →質問に回答する先行刺激 チャイム →次の教室に移動する先行刺激
目標行動を促す合図や手引きを決める
刺激を特定した後で、対象行動やスキルの使用を促す合図やサインを決定します。
この合図やサインを使用して、どんな刺激が起きたときに、どんな行動をすればいいのか児童がより理解しやすくなるようにします。
そのため合図やサインは簡潔でわかりやすく特定しやすいもので、また児童の持つスキルや興味関心に合ったものである必要があります。
実際に利用できるものとしては下記のようなものがあります。
ものや環境の利用
児童が課題に取り組む前に、すでに必要なものや状況をセッティングしておきます。
お昼ご飯の時間の前に、あらかじめテーブルをご飯の配置にしたりランチボックスを置いておく。
手順を指示する
音声または視覚でもって、どのようにタスクを進めればいいのか教えます。
コートを脱いで、ハンガーにかけてねと声かけをする。 手洗いのステップをイラストで示す
自然発生する出来事の利用
自然に起きる出来事を合図として利用します。
バスが到着する チャイムがなる
手順 を指示する音声または視覚支援
最小ー最大プロンプトのアプローチを使用する際にはどのタイミングで合図やサインを出すのかあらかじめ決めておく必要があります。タイミングは以下の2パターンです。
トレーニングに使用する強化子を選択する
合図やサインが決まったら、今度はトレーニングに用いる強化子を選択します。
強化子の選び方としては、目標行動の難易度と強化子の強さが同じになるように選択します。
具体的な強化子の設定の仕方等に関してはこちらの記事を参照してください。
https://www.easpe.com/blog/article/13
さて、ここまででプロンプトを用いたトレーニングの準備が整いました、ここから先はそれぞれのトレーニング方法に関してご紹介します。