プロンプトは簡単に言えば学習していく上での補助となる要素です。
プロンプトとは?
プロンプトは簡単に言えば学習していく上での補助となる要素です。
例えば自転車に乗る練習をする際には、いきなりそのままの自転車に乗って練習するというよりも補助輪などをつけてある程度コツを掴むという段階を踏むことがよくあるかと思います。
補助輪で走れるようになれば、今度は補助輪を外して後ろで支えながらトレーニングし、最終的には補助輪も支えもなしで練習するというような段階をへて一人で自転車に乗ることができるようになります。
このように最終的に達成したい目標に対して直接目標と同じ状態でトレーニングするのではなく、補助輪や支えを利用して最終目標に近づけていくトレーニングの方法をプロンプトを用いたトレーニングということができます。
応用行動分析学では補助輪や支えに該当するものをプロンプトといいます。
本記事では、プロンプトのメリット、種類やその使い方に関して簡単にご紹介します。
プロンプトを用いるメリット
プロンプト最大のメリットは成功体験が多く、失敗体験が少ないという点です。
先ほどの自転車の例を取れば、明らかに達成が難しい、補助輪・支えなしの走行を直接訓練した場合と、出来そうなステップから補助ありで訓練していく方法では明らかに後者の方が成功体験が多く、失敗体験が少ないことがわかると思います。
新しいスキルの獲得は児童にとっても支援者にとっても負担が大きくなりがちです。プロンプトを用いればよりストレスフリーなトレーニングを実施することができます。
プロンプトのもう一つのメリットは、介入の強さを下げることで児童の学習機会を増やすことができるという点にあります。
例えば、児童が1から10まで手取り足取り教えてもらわないと目標の行動が実施できないというケースにおいては、当然教える人はその児童について詳しく理解している人である必要があり、かつその人がトレーニングを実施する必要があります。
この場合児童の学習機会は、児童のことや特性を理解している人の数に限定されてしまいます。
ではプロンプトを用いて学習できる状態であればどうでしょうか?
プロンプトは反応や刺激にちょっとした補助を加えることで対象の行動を実施させる方法です。
プロンプトを利用できる場合においてトレーニングに必要なのは、いつどのようなプロンプトを児童に対して提供すればいいのかという情報のみです。(もちろん児童の特性などに理解があるに越したことはありません)
このようにプロンプトを用いてトレーニングできる状態にあれば、児童のことをよく知ら ない人であっても、プロンプトだけ提供してもらうようにすることで、児童の学習機会を確保することができます。
さらに上記のように意図的に誰かに実施してもらうことももちろん可能ですが、より自然なプロンプトであれば、半ば自動的に学習機会を確保していくことも可能となります。
プロンプトの種類について
療育において用いられるプロンプトには、プロンプトを用いる対象とその性質に応じていくつかの種類分けがされています。
反応プロンプト
反応プロンプトは行動(反応)に直接働きかけるプロンプトです。
これからする動作のお手本を見せたり、すべき動作に関して口頭で支持をするなどが該当します。
反応プロンプトには、音声、ジェスチャー、視覚、モデリング、身体の4つの種類のプロンプトがあります。
刺激プロンプト
刺激プロンプトは刺激(トレーニングに用いる要素など)に直接働きかけるプロンプトです。
刺激プロンプトは、例えば3枚のカードから正しいものを選ぶというトレーニングをしているときなどに、正しいカ ードを児童の側にあらかじめ近づけておいておくなどが刺激プロンプトです。
音声プロンプトとは
対象行動をする手助けとなるような、あらゆる音声指示です。
児童の掌が汚れている時に、手を洗ってと声かけをする。 手が汚れている時にはどうしたらいい?と聞く。
ジェスチャープロンプトとは
対象行動を象徴するようなあらゆる動作やジェスチャーです。
手洗いの際に手をゴシゴシする動作を見せる。 ドアを開ける際に、ドアを開けるような動作を見せる。
視覚プロンプトとは
チェックリストやスケジュール、イラストで描かれた手順、写真など視覚的に対象行動を行う上で補助となるすべてのものです。
手洗いの手順を、各ステップごとにイラストで説明したものを児童が手洗いをする時に見せる。
モデリングとは
対象となる行動やスキルをそのままやってみせる方法です。部分的にやってみせる場合とすべての動作をやってみせる場合があります。
手洗いのステップをすべて実際にやってみせる。 手洗いの水を出すというステップに関して、途中まで水道をひねる。
身体プロンプトとは
身体プロンプトは実際に児童の体に触れ動かします。対象動作を絶対に完了させるように、全てのステップに干渉する場合と、部分的に肩をポンポンと叩いたりする場合の2種類あります。
手洗いのすべてのステップを児童の手に支援者の手を添えて支援者が児童の手が洗われるように動かす。 手を洗い終えて拭く時にちょんちょんとタオルのある方の肩を叩く。
プロンプトを用いたトレーニングの種類
プロンプトはあくまで補助である為、最終的には補助がなくても自立して児童がスキルを使用できる状態を目指します。その為プロンプトは学習のためにプロンプトを使用し、自立のためにプロンプトを減らしていくというアプローチをとります。この手続きをよりシステマチックに行うために3つのアプローチが有効であるとされています。
①最小ー最大プロンプト
少なくとも3レベルのプロンプトを使用して、補助の具合の低いものから高いものにプロンプトを移行していく方法です。
一番最初のレベルの時には児童はプロンプトなしで反応する機会を与えられ、その後レベルが上昇するに伴ってより強い補助が使用されます。
一番最後のレベルの場合には必ず行動が起きるように、コントロールプロンプト(児童が絶対に対象行動を実行できるレベルのプロンプト)が使用されます。
②段階的ガイダンス
まず最初に児童が必ず、対象行動を実行できるようにコントロールプロンプトを提供し、そこから徐々にプロンプトを取り除いていくアプローチです。
児童がスキルや対象行動を実行し始めたらプロンプトを取り除き始めますが、もし対象行動をしなくなるなど後退が見られる場合にはプロンプトをすぐに元に戻します。
この判断は実際にセッション中に児童がどのような反応をしているかに基づいて決める必要があります。適切にプロンプトを取り除いていかないとプロンプト依存になり自立してスキルを使用することが困難になります。
同時プロンプト
導入セッションと、確認セッションが含まれる方法です。
導入セッションにおいては児童の対象行動に対して合図が出されるのと同時に、コントロールプロンプトが使用されます。
確認セッションにおいては児童の対象行動に対して合図のみ出され、コントロールプロンプトを含むその他のプロンプトは使用しません。このアプローチは限りなく失敗が少ないアプローチでかつ比較的簡単に実行できます。
まとめ
今回の記事ではプロンプトの概要、メリット、種類、トレーニング方法に関して簡単にご紹介しました。
プロンプトは実践場面では他のトレーニング方法と組み合わせて使用されることの多い方法です。
メリットの箇所で述べたように児童にとっても支援者にとってもメリットの大きい方法なのでぜひインプットしていただければと思います。
具体的なトレーニングステップなどに関しては次回の記事で解説します。