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テレヘルスによるASD支援の可能性

· 15 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本ブログ記事では、発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)に関する最新の学術研究や社会的動向を幅広く紹介しています。ワクチンとASDの誤解を解く科学的知見、ASDの社会的困難をめぐる哲学的考察、AIによるADHD診断の最前線、テレヘルスによるASD支援の可能性、保護者の心理的負担と生活の質の関係など、多角的な視点から発達障害をとらえ、医療・教育・社会支援に役立つ知見をまとめています。

ビジネス関連アップデート

障害児支援事業者が6768万円を不正受給 柏市が指定取り消しへ

千葉県柏市の障害児通所支援事業所が不正受給発覚。指定取り消しへ。

社会関連アップデート

If Vaccines Don’t Cause Autism, What Does?

ワクチンと自閉症の関係性についての誤解は、今なお一部で根強く残っています。本記事では、その誤解を科学的に否定しながら、「では実際にASDのリスクはいつ・どこから始まるのか?」という問いに対し、最新の研究に基づいた妊娠中・出生前のリスク要因を丁寧に解説しています。母体の免疫反応や親の年齢、妊娠中の健康状態など、さまざまな要素が複雑に絡み合うASDの発症メカニズムに迫る一方で、「何ができるか」という具体的な予防行動のヒントも紹介。ASDに関する正しい理解を広めるために、保護者・支援者・医療者すべての方に読んでほしい内容です。

学術研究関連アップデート

Intersubjective, systemic, and sensory roots of autistic social difficulties: a critical evaluation of enactivist and phenomenological approaches

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある人たちが抱える**「社会的な困難さ」**の原因をより深く理解するために、近年注目されている「現象学的(体験重視)」や「エナクティブ(関係性重視)」な視点を批判的に評価しています。

著者は、ASDの社会的な困難を理解するには、以下の3つの観点を同時に考える必要があると主張しています:


🔍 3つの「社会的困難の根」:

  1. 相互主観的な違い(intersubjective differences)

    → ASDの人とそうでない人の感じ方や伝え方の違いが、誤解やすれ違いを生む。これは「ダブル・エンパシー問題」として知られており、「ASDの人が一方的に理解できない」のではなく、お互いに理解しづらいという関係の問題とされます。

  2. システム的な差別(systemic discrimination)

    → ASDの人の身体の使い方や表現の仕方が社会の標準に合っていないことを理由に、排除や不利な扱いを受けている。これは「異質だから仕方ない」のではなく、社会の力関係やルールの偏りが原因であると指摘します。

  3. 感覚の違い(sensory modulation)

    → 光や音などへの敏感さや注意の向け方の違いは、確かに社会的困難と関わりますが、これが唯一の原因ではない。むしろ、上の2つと組み合わさって困難が生じていると考えるべきです。


📝 一言まとめ:

自閉症の人が社会の中で感じる生きづらさは、「感覚の違い」や「理解のズレ」だけではなく、社会の構造そのものにも原因がある――だからこそ、当事者の視点や社会のあり方も含めた多角的な理解が必要だ、ということを論じた哲学的かつ実践的な論文です。


この視点は、「ASDの特性」ではなく、「ASDを取り巻く社会構造」にも焦点を当てる点で、支援や理解の在り方を問い直す重要な示唆を含んでいます。

✅ 要約:

この研究は、「ADHD(注意欠如・多動症)」の研究において、人工知能(AI)がどのように使われてきているかを世界的な視点から整理・分析したものです。特に、AIを使ってADHDの診断や分類をより正確・客観的に行う方法に注目しています。


🔍 研究の目的と方法:

  • 目的:ADHDの研究におけるAIの活用状況や最新トレンド、今後の展望を明らかにすること。
  • 方法
    • 世界中の研究論文342本を分析(Web of Scienceという学術データベースを使用)
    • 専門ツール「CiteSpace」で、国ごとの動向やキーワードの変化を調べた

📊 主な結果:

  • 研究数が多い国ベスト3
    1. アメリカ(103本、影響力も最大)
    2. 中国(69本)
    3. イギリス(34本)
  • 注目されたAI関連キーワード(2022〜2024年)
    • 「診断(diagnosis)」
    • 「ネットワーク(network)」
    • 「ADHD(attention deficit hyperactivity disorder)」
    • 「人工知能(artificial intelligence)」
  • 特に注目されている分野
    • 脳波や行動パターンなどの客観的データをAIで解析し、ADHDの診断やタイプ分類を助ける技術
    • これにより、主観的な問診だけに頼らない、より信頼性の高い診断方法が実現する可能性

✅ わかりやすいまとめ:

✔ 世界では今、AIを使ってADHDをより正確に診断したり分類したりする研究が急増しています。

✔ 特にアメリカと中国がこの分野の研究をリードしており、「AIで客観的な診断ができるか?」というのが大きなテーマです。

✔ 将来的には、AIが医師のサポート役として、ADHDの診断や個別支援に役立つと期待されています。


📝 一言まとめ:

ADHDの診断をもっと正確で客観的にするために、AIの活用が世界中で進められており、今後の医療・教育現場への応用が大いに期待される分野です。

Frontiers | Assessing communicative-pragmatic in telehealth: e-ABaCo in autistic individuals

✅ 要約:

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)のある思春期の子どもたちの「コミュニケーションの使い方(語用論的スキル)」を、オンライン診療(テレヘルス)でどれだけ正確に評価できるかを調べたものです。具体的には、「e-ABaCo」という評価ツールが、対面と同じくらい信頼できるかどうかを検証しました。


🔍 研究の背景と目的

  • ASDのある人は、言葉を話せても「状況に応じた適切な伝え方(語用論的スキル)」に困難があることが多い。
  • たとえば、ジェスチャーや声のトーン、場面にふさわしい言い回しの選び方など。
  • コロナ禍以降、テレヘルス(ビデオ通話などでの遠隔診療)が一般化しつつあるが、語用論的スキルをオンラインで評価できるツールはまだ少ない。
  • この研究では、すでに対面で有効性が示されている**ABaCo(コミュニケーション評価バッテリー)**のオンライン版(e-ABaCo)の信頼性を検証。

🧪 方法

  • ASDの思春期の子ども 30人を2グループに分けて比較:
    • 15人:テレヘルスで評価(ASD TH)
    • 15人:対面で評価(ASD FtF)
  • さらに、**定型発達(TD)の子ども15人(対面評価)**と比較
  • 全員、年齢・性別・知能指数(IQ)をマッチング
  • 評価内容:言語・ジェスチャー・声のトーンなどを使った理解と表現、および社会的適切さ

📊 主な結果

  • オンラインでも対面でも、ASDの子どもたちはほぼ同じ成績 → e-ABaCoは信頼できる
  • 一方、ASDのグループ(テレヘルス・対面の両方)は、定型発達の子どもに比べてすべての面でスコアが低かった
    • 語用論的スキル全体のスコア
    • 理解力・表現力
    • 表現手段(言葉、ジェスチャー、声のトーン)
    • 社会的な適切さ

✅ わかりやすくまとめると

✔ ASDのある子どもの**「コミュニケーションの使い方の難しさ」**は、オンラインでも正確に評価できることが分かった。

✔ 特に、e-ABaCoというツールは、遠隔でも対面と同じように信頼できる評価ができる

✔ 今後、自宅からでも専門的な支援を受けやすくなる可能性がある。


📝 一言まとめ

ASDのある思春期の子どもたちの「伝え方の困難さ」は、オンラインでもきちんと評価できる——そんな可能性を示した、テレヘルス時代にぴったりな注目の研究です。

Frontiers | The association between intolerance of uncertainty and psychological burden among caregivers of children with autism and the impact on their quality of life

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもを育てる保護者が感じる「心理的な負担」と「将来への不安への耐性(不確実性への耐性)」が、生活の質(QoL)にどのように影響しているかを調べたものです。


🔍 背景と目的

ASDのある子どもを育てる保護者は、日常生活の中で多くのストレスにさらされています(例:育児の難しさ、社会的孤立、経済的困難、精神的・身体的疲労)。本研究では、「不確実な状況を受け入れにくい性格(Intolerance of Uncertainty)」が、心理的負担や生活の質にどう関係しているかを分析しました。


🧪 方法

  • 対象:リヤドの発達支援施設に通うASD児の保護者59人
  • 使用ツール:
    • 不確実性耐性尺度(IUS)
    • 介護者負担尺度(Zarit Burden Interview)
    • WHO版 生活の質評価尺度(WHOQOL-BREF)

📊 主な結果

  • *約2/3の保護者が「中〜高レベルの不確実性への耐性のなさ」**を示し、約14%が高い介護負担を感じていた
  • 約60%が「生活の質が低い」と回答
    • 特に「社会的」「心理的」側面でのスコアが低かった
  • 「不確実性への耐性が低い」ほど、「心理的負担が高い」傾向
  • 不確実性の耐性が低い人ほど、生活の質が低くなるという明確な相関が見られた
  • 環境面以外のQoL全ての領域でこの関連が確認された

✅ わかりやすくまとめると

ASDの子どもを育てる保護者は、将来の見通しが立てにくいことに強い不安を感じやすく、それが心の負担や生活の質の低下につながっている

特に「不確実な未来に耐えられない」という気持ちが、保護者の心理的健康に大きく影響している

✔ そのため、支援プログラムや家族・地域に根ざしたサポート体制の整備が重要であると示唆されている


📝 一言まとめ

ASD児の保護者の生活の質を支えるには、「将来がどうなるかわからない」という不安を軽減する支援が不可欠である——ということを示した意義深い研究です。