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ノルウェーのADHD児に対する薬物治療が学業成績に与える長期的な影響

· 5 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、ノルウェーのADHD児に対する薬物治療が学業成績に与える長期的な影響を調査した研究を紹介しています。この研究は、薬物治療だけでは学力向上には限界があり、個別指導や学習環境の調整と組み合わせた支援が重要であることを示唆しています。

Long-term effect of pharmacological treatment on academic achievement of Norwegian children diagnosed with ADHD: a target trial emulation

この研究は、ノルウェーのADHD児に対する薬物治療が、長期的に学業成績(英語、数学、読解力)にどのような影響を与えるかを調査したものです。ADHDの治療には行動の調整や症状の軽減が目的の薬物療法が広く使われていますが、学業成績の向上に長期的な効果があるかは十分に検証されていませんでした。

研究の方法

  • 2000~2007年生まれのADHD診断を受けたノルウェーの子ども(8,548人) を対象に、薬の服用と学業成績(8年生時の全国試験)との関係を分析。
  • ノルウェーの複数の医療・教育データベースを活用し、薬の処方履歴や学校の成績を統合。
  • 「ターゲット試験エミュレーション(Target Trial Emulation)」という手法を用い、薬物治療の影響を分析。

研究結果

✅ ADHD薬を服用した子どもは、全国試験(英語・数学・読解)の成績がわずかに向上していた。

  • 英語: 標準化された平均差 0.037(ほぼ誤差範囲)
  • 数学: 0.063(統計的に有意)
  • 読解: 0.071(統計的に有意)

❌ ただし、**この成績向上は実際の学習成果においてはほとんど意味のないレベル(臨床的に重要とは言えない)**だった。

研究の結論

  • ADHDの薬物治療は、学業成績に対してわずかにプラスの影響を与える可能性があるが、その効果は極めて小さい。
  • 薬による行動調整や集中力向上が、学習成果に直結するとは限らない。
  • 研究の強み: 実際の医療・教育データを用いた点、結果が異なる分析モデルでも一貫していた点。
  • 研究の限界: 服薬以外の要因(家庭環境、教師の支援など)を完全には考慮できていない可能性。

実生活への応用

📚 ADHDの薬物療法は、学習環境の調整や追加支援と組み合わせて活用すべき

🏫 学業成績向上には、薬物治療だけでなく、個別指導や学習支援が必要

👨‍⚕️ 親や教育関係者は「薬だけでは学力向上には限界がある」ことを理解し、総合的な支援を検討するべき

この研究は、ADHD薬が学業成績に与える影響はわずかであり、学習支援や環境調整と併用することが重要であることを示唆しています。