Skip to main content

スウェーデンでの知的障害診断率の変化、診断率の上昇要因は診断実務によるものか

· 20 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事は、発達障害や知的・発達障害(IDD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連するビジネス、社会、学術研究の最新アップデートを紹介しています。ビジネス関連では、CentralReachが治療忠実度向上プラットフォーム**Behavior Science Technology Inc.**を買収し、ABA治療での質向上やRBT定着率向上に寄与することが強調されています。社会関連では、韓国でADHD治療薬が違法取引され受験生が摘発された事例が取り上げられています。学術研究では、自閉症児向けのSTEM学習環境でのインクルージョン向上を目指す研究や、スウェーデンでの知的障害診断率の変化、高サポートニーズを持つ自閉症児の臨床・社会人口統計的特徴を調査した研究など、幅広い研究成果が紹介されています。

ビジネス関連アップデート

CentralReach Acquires Behavior Science Technology Inc. the Leading, Research-Backed Treatment Fidelity Platform for Applied Behavior Analysis that has Demonstrated Ability to Help Increase Behavior Technician Tenure by 500% | Healthcare IT Today

この発表では、CentralReachが、Behavior Science Technology Inc. (BST)を買収したことを発表しました。BSTは、ABA(応用行動分析)治療における治療忠実度を測定するプラットフォームを提供しており、この買収により、CentralReachのAIを活用した包括的なケア管理プラットフォームであるCare360に統合されます。これにより、治療の質や結果を向上させ、RBT(登録行動技術者)の定着率を500%向上させる効果が確認されています。また、買収により、治療忠実度の標準化と価値に基づくケアへの移行が加速されるとされています。この買収は、2024年における2件目のものであり、CentralReachは今後も自閉症および**知的・発達障害(IDD)**ケアの未来を支えるソリューションを提供していくと強調しています。

社会関連アップデート

「勉強ができる薬」と言われて...ADHDの薬を違法取引した受験生が摘発=韓国|ニフティニュース

韓国で受験生が注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療薬「コンサータ」を違法取引したとして、10代1人と20代3人が摘発されました。

学術研究関連アップデート

Building capacity for inclusive informal STEM learning opportunities for autistic learners - International Journal of STEM Education

この研究は、自閉症の学習者に対して、STEM(科学・技術・工学・数学)関連の博物館などの非正式な学習環境での参加と学びを促進するための課題を探り、インクルージョン(包括性)を高めることを目的としています。親へのオンライン調査を通じて、自閉症の若者がSTEM博物館を訪問する際の経験を理解し、これを基に博物館スタッフ向けの研修を実施しました。自閉症の若者とその親が、研修を受けた博物館と受けていない博物館を訪れ、その体験を報告しました。

結果として、自閉症の若者は一般の若者と比較して、STEM博物館訪問でのインクルージョン、関与、全体的な影響が低いことが示されました。また、研修を受けた博物館では訪問の影響が高まったものの、親が報告したインクルージョンや関与の差は確認されませんでした。質的分析では、博物館訪問の影響や環境の適合性、関与の障壁とその解消方法について4つのテーマが浮かび上がりました。

結論として、非正式なSTEM学習環境での自閉症の学習者のためのインクルージョンの向上が求められ、スタッフの研修が有効な手段であることが示されました。

Changes in the prevalence of intellectual disability among 10-year-old children in Sweden during 2011 through 2021: a total population study - Journal of Neurodevelopmental Disorders

この研究は、2011年から2021年のスウェーデンにおける知的障害の診断率の変化を調査し、関連する社会人口統計学的および周産期要因がその変化に影響を与えるかを検討しています。1,096,800人の10歳児を対象とした結果、知的障害の診断率は2011年の0.64%から2021年には1.00%に増加しましたが、これは主に軽度および中程度の知的障害の増加によるもので、重度および深刻な知的障害の割合は安定していました。この増加は、社会人口統計学的要因や周産期要因(出生体重、妊娠期間、親の年齢、移民状況、教育レベルなど)によるものではなく、スウェーデンにおける診断実務の変化が原因である可能性が示唆されました。

Sociodemographic and Clinical Profile of 915 Autistic Preschoolers Engaged in Intensive Early Intervention in Australia

この研究は、オーストラリアで早期介入を受けている高サポートニーズを持つ自閉症の子ども社会人口統計学的および臨床的特徴を調査したものです。2012年から2024年にかけて、全日制の早期介入プログラムに参加した915人の自閉症児が対象となりました。調査では、家族の社会人口統計データや、子どもの臨床データ(自閉症診断観察スケジュール(ADOS)マレン早期学習尺度ビンランド適応行動尺度)が評価されました。結果として、男女比は3.8:1で、診断および介入に至るまでの遅延が確認され、文化的に多様な家族が多く含まれていました。臨床データは、他の自閉症研究よりも顕著な認知および適応の障害を示しましたが、親のストレスや家族の体験に関するデータは、他の自閉症研究と同様の結果でした。この研究は、高サポートニーズを持つ自閉症児へのアプローチをより適切かつ個別化するための情報を提供しています。

Visual Working Memory in Adolescents with Autism Spectrum Disorder

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ青年における視覚的作業記憶(WM)の能力について調査したものです。以前の研究では、ASDの成人は作業記憶の容量は保たれているものの、注意の配分とフィルタリングに問題があると示されていました。本研究では、ASDを持つ青年がWM容量や注意の配分にどのような問題を抱えているかを評価しました。

方法として、ASDを持つ38人の青年(11〜15歳)と定型発達の39人の青年がコンピュータ化された作業記憶課題に参加しました。課題では、4つまたは6つの色のついた図形(円や四角)のセットを記憶し、短時間の遅延後に特定の図形の記憶を問われました。また、特定の図形(例:円)が他の図形(例:四角)よりも頻繁に問われると事前に知らされており、注意をその図形に集中させることが戦略的に有利でした。

結果として、ASDグループは定型発達グループに比べて全体的に作業記憶容量が低いことが示されましたが、注意の配分にはグループ間で差が見られませんでした。また、ASDを持つ青年において性別による作業記憶のパフォーマンスの違いは確認されませんでした。

結論として、ASDを持つ青年は作業記憶容量における障害がある一方で、その障害は成人期には解決される可能性が示唆されています。今後の研究では、作業記憶の各要素とその発達過程をより詳細に解明する必要があります。

A longitudinal study on the development trajectory of auditory processing and its relationship with language development in Chinese preschool children with autism spectrum disorder: study protocol

この論文は、中国の自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ幼児における聴覚処理の発達経路と、言語発達との関係を探るための縦断的研究プロトコルを示しています。研究では、3歳から4歳11か月の220人のASD児を対象に、聴覚処理言語能力を評価します。ASD児の聴覚処理には個人差があり、言語発達にも影響を与える可能性があるため、発達経路を特定することが重要です。子どもたちは、知能、聴力、自閉症の症状について評価され、聴覚処理は電気生理学的検査聴覚処理評価スケールで、言語スキルは言語発達評価スケールで測定されます。これらのデータを用いて、異なる聴覚処理の発達経路が言語障害に与える影響を解析します。本研究は、ASD児に対する早期介入言語リハビリの改善に役立つ新たな知見を提供することを目指しています。

A preliminary estimate of the environmental burden of disease associated with exposure to pyrethroid insecticides and ADHD in Europe based on human biomonitoring - Environmental Health

この論文は、ピレスロイド系殺虫剤への曝露が、ヨーロッパの子どもたちにおける注意欠陥多動性障害(ADHD)発症に与える環境負荷についての予備的な推定を行ったものです。ヒト生体モニタリング(HBM)のデータによると、ヨーロッパではピレスロイドへの曝露が広く見られ、特に子どもたちの曝露レベルが高いことが示されています。この研究では、フランス、ドイツ、アイスランド、スイス、イスラエルのデータを基に、ピレスロイド曝露によるADHDの環境負荷を評価しました。

結果として、ピレスロイド曝露に関連するADHDによる**障害調整生命年(DALYs)**は、年間100万人あたり27〜3DALYsの範囲で推定され、また、ADHDの年間症例数は国ごとに2189〜209症例と推定されました。ADHDに関連する医療費は、年間100万人あたり0.3〜2.5百万ユーロと試算されています。さらに、全ADHD症例の約18%がピレスロイド曝露に関連しているとされましたが、これらの推定には不確実性があるため、慎重に解釈する必要があります。

この研究は、より正確な環境負荷の推定には、さらなるヒト生体モニタリング研究や疫学研究の調整が重要であることを示唆しています。

An investigation of the Bernstein’s strengths Scale: factorial validity and network analysis of attention-deficit/hyperactivity symptoms, mental health, and the strengths of the healthy adult self

この論文は、BernsteinのStrengths Scale(BSS)を使用して、健常な成人の自己の強みと、注意欠陥多動性障害(ADHD)症状およびメンタルヘルスとの関連性を調査したものです。Bernsteinのモデルは、自己主導性、自己調整、つながり、超越性という4つの高次要因に基づく16の強みを評価します。本研究では、BSSの因子妥当性を検証し、ADHD症状やメンタルヘルスとの関連を探りました。

528人の成人がオンライン質問票を記入し、結果として、BSSは15の因子と44項目で優れたモデル適合度を示しました。また、ネットワーク解析では、自信知恵が最も影響力のあるノードとして浮上しました。ADHD症状は、責任感自己管理感情の安定などと負の関連が見られましたが、ユーモア自己反省創造力と正の関連が示されました。

結論として、BSSは成人の自己の強みを評価するために信頼性があり、ADHDの成人に対して、強みを活かした心理社会的介入が情緒的な健康や日常生活の機能向上に役立つ可能性が示唆されました。

A continuum of balance performance between children with developmental coordination disorder, spastic cerebral palsy, and typical development

この研究は、発達性協調運動障害(DCD)と痙性脳性麻痺(CP)の子どもたちのバランス能力を調査し、典型的な発達(TD)の子どもたちと比較することを目的としています。DCDのバランス障害は非常に多様で、CPのバランス障害との共通点はあるものの、理解が進んでいません。5歳から10.9歳の子どもを対象に、バランス能力を評価するためのKids-BESTestを使用し、年齢を考慮した比較を行いました。

結果、DCDとCPの子どもたちはTDの子どもたちよりもバランス能力が低く、DCDの子どもたちはCPの子どもたちよりも良好な成績を示しましたが、姿勢調整感覚統合が必要なタスクにおいては両グループともに困難がありました。これにより、両グループともに内部モデリングの欠陥があり、速いフィードフォワード制御よりも遅いフィードバック制御に依存している可能性が示唆されました。

この研究は、個別のバランス障害に基づいたオーダーメイドの治療プログラムの重要性を強調しています。

The Chinese 10-Item Empathy Quotient and Systemising Quotient-Revised: Internal Consistency, Test-Retest Reliability, Known-Groups Validity, and Sex Differences in Autistic and Non-Autistic Adults

この研究は、発達性協調運動障害(DCD)と痙性脳性麻痺(CP)の子どもたちのバランス能力を調査し、典型的な発達(TD)の子どもたちと比較することを目的としています。DCDのバランス障害は非常に多様で、CPのバランス障害との共通点はあるものの、理解が進んでいません。5歳から10.9歳の子どもを対象に、バランス能力を評価するためのKids-BESTestを使用し、年齢を考慮した比較を行いました。

結果、DCDとCPの子どもたちはTDの子どもたちよりもバランス能力が低く、DCDの子どもたちはCPの子どもたちよりも良好な成績を示しましたが、姿勢調整感覚統合が必要なタスクにおいては両グループともに困難がありました。これにより、両グループともに内部モデリングの欠陥があり、速いフィードフォワード制御よりも遅いフィードバック制御に依存している可能性が示唆されました。

この研究は、個別のバランス障害に基づいたオーダーメイドの治療プログラムの重要性を強調しています。