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環境調整で問題行動を減らす!応用行動分析学に基づいた方法【ABI準備編】

· 11 min read
Tomohiro Hiratsuka

自閉症をはじめとした発達障害を持つ児童に支援を提供するにあたり、よく直面する課題の一つとして問題行動が挙げられます。癇癪やときには人や自分自身を傷つけてしまうこともある行動を適切に減少させるにはどのような支援が望ましいのでしょうか?

はじめに

自閉症をはじめとした発達障害を持つ児童に支援を提供するにあたり、よく直面する課題の一つとして問題行動が挙げられます。癇癪やときには人や自分自身を傷つけてしまうこともある行動を適切に減少させるにはどのような支援が望ましいのでしょうか?

今回は、問題行動を減少させる方法の1つであるABI(Antecedent Based Intervention)という方法をご紹介します。

ABIとは?

ABI(Antecedent Based Intervention)とは応用行動分析学(ABA)に基づいた、不適切行動や課題従事を分析・改善するための実践方法です。どのような状況の時に、どのような刺激が、どのような行動を引き起こし、結果として何が起きたのか、という4つの観点で分析を行い、環境調整を行うことで最終的には不適切行動が起きないような環境を作ります。

ABIの対象になる行動の例

問題行動の他にも、例えば着席しやすい(離席しにくい)環境作り等の形で、使用することも可能です。

  • 適応行動の確立
  • 自傷行為の減少
  • 癇癪の減少
  • 反抗的な行動の減少
  • 変化への対応可能性の向上
  • 遊びを始めるスキル
  • 交代
  • コミュニケーション
  • 常同行動の減少
  • 物事に取り組む力の向上
  • 社会性の向上
  • 読み書き計算(アカデミック)スキルの向上
  • 運動能力(粗大、微細)の向上

実施に当たっての準備

ステップ1ーABC分析

実際にABIを用いる上で、まず最初に重要なのは「何が起きているのか」をしっかりと把握することです。この「何が起きているか」をわかりやすく時系列順に記載するものがABC分析になります。つまり対象とする行動(不適切行動等)に対して、

  • Antecedent(先行刺激、行動の直前の状況)
  • Behavior(行動)
  • Consequence(結果何が起きたのか)

これらABCをそれぞれ記述します。実際に例を考えてみます。

 先生が、たかしに積み木を絵と同じように組み立てるように言ったところ、たかしは、積み木を放り投げ、先生はもうやらなくていいと叱り課題を中断した。 たかし君の問題行動の例

この場合のABCは以下のようになります。

A:先生がたかしに積み木を組み立てるように言う

B:積み木を放り投げる

C:先生が叱り課題を中断する

このようにまずは、**「事実として何が起きていたのか」**ABC分析をすることが重要です。

ステップ2ーパターンを探る

さて先ほど、特定の事例でABC分析を行いましたが、1回観察しただけでは、行動の前後にある条件や結果を特定することは出来ません。

そのため、次に行うのは対象となる行動がどんな時に発生しているかそのパターンを探ることになります。

例えば、取り組んでいる課題毎にその行動が発生したか、発生していないかを1週間計測してみると、ある特定の課題の時に発生することがわかったり、なんらかの規則性を発見することができます。


  • どこで、対象となる行動が起きているか(学校、家、病院、放デイetc)?
  • 誰といる時に、対象となる行動が起きているか? 
  • いつ、対象となる行動が起きているか? 
  • 対象となる行動が起きた時に取り組んでいた活動は何か? 
  • 対象となる行動が起きた時、他の生徒や児童は何をしていたか? 
  • 対象となる行動が起きた時、先生や周囲の大人は何をしていたか? 
  • 行動が発生した時に、他の生徒や先生、大人はどれだけ近くにいたか? 
  • 行動が発生した時に、周囲に何人いたか?
  • 行動が発生した時に、環境に変化はあったか?(大きな音や、光etc)
  •  行動が発生した時に、その行動の機能はなんだったのか?(行動の機能:獲得、逃避、注目、自己刺激)

ステップ3ー情報の整理

ここまでで、対象となる行動がどんな時に起こるのか、全体感がつかめるようになってきました。 ここでは最初に定義した行動・条件をABC分析やパターンを探った結果得られた情報をもとに以下の要素をカバーしながら再定義します。

場面・シチュエーション先行刺激行動結果行動の機能
算数の時間プリントを手渡される離席プリントをやらなくて済む逃避

先ほどのパターンを探るのところで出てきた「行動の機能」ですが、児童の行動の機能は大きく分けて2つに分類することができます。

1つは、「獲得」です。児童がなんらかの行動を行い、物や機会などをゲットした時にその行動の機能は「獲得」であったと確認する事ができます。

2つ目は、「逃避」です。児童の行動によって、何かを避けた時にその行動の機能は「逃避」であったと確認する事ができます。  注意しなけらばならないのは、例えば同じ「泣く」という行動であっても、機能としては泣いたことによって飴がもらえる場合と、泣いたことによって課題をしなくてもいい場合など、機能が異なる事があるという事です。

この行動の機能を見誤ると、支援を進めていく事が困難になる為慎重に判断し、つど確認する事が重要です。

またもう一点、この再定義の際に確認すべきことは、**「随伴性」**です。ある行動の前後関係を考える時に重要なのは、本当にその刺激によって行動が発生し、またその行動によって生じた結果なのか、という点です。あるシチュエーションにおいてAが生じた時に直ちにBが発生し、直ちにCが生じたか、適切に再定義する事が重要になります。

ステップ4ーゴール定義

最後のステップは、対象となる行動がどう変化する事が望ましいか、観察できる形で定義する事です。

例えば、積み木を放り投げることを対象行動として扱う場合には、課題取り組み中に積み木を投げず、与えられた課題を最後まで〇〇分以内に完了する事ができる、などど記載する事ができます。

まとめ

Antecedent-basedと言われている通り、ある行動が何によって生じているのかそれを外部環境から探り改善していくアプローチがABIであり、「事実を観察すること」がとても重要です。診断名や性格などももちろん重要な要素ですが、同時に客観的に何が起きているのかを明らかにすると、これまで以上に的確なアプローチを実現することができます。