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環境調整で問題行動を減らす!応用行動分析学に基づいた方法【ABI実践編】

· 16 min read

前回のABI準備編においては、そもそもどんなアプローチなのか、またその為に必要な準備に関してまとめました。今回は、前回の準備に対して具体的にどのように実践していくことができるのか紹介します。

はじめに

前回のABI準備編においては、そもそもどんなアプローチなのか、またその為に必要な準備に関してまとめました。今回は、前回の準備に対して具体的にどのように実践していくことができるのか紹介します。

Step1介入方針を選択する

問題行動の機能が逃避の場合

1.児童の好きなものを活用する この方法は、問題行動が発生する活動において、児童がすごく好むものを取り入れる事で、その活動からの逃避を避け、活動に取り組む時間を児童にとってより楽しい時間にする方法です。

(例) プリントにひらがなやカタカナを書き写す時に、その子が大好きなキャラクターの鉛筆を使えるようにする

児童の好きなものを特定する時には、ご家族に話を伺ったり、日々の観察から児童が喜んでいるものや夢中になっているものを見つけることができます。

2.予測可能なスケジュールと視覚の活用 この方法は、逃避行動の中でも、場面の切り替えなどの時に起きるケースに対して有効な方法です。この場合の逃避行動は、切り替わる事それ自体が先行刺激となっている事が多く、この点を解消するには場面の切り替わりや次に何が起きるのかということを事前に児童が理解しているという事、つまり児童にとって予測可能である事が重要です。 場面の切り替わりや今後の予定に関して児童が理解しやすい方法として、以下の例のような視覚を活用した予定表等があります。

文字だけのものや様々なバリエーションがありますが、この後に何が起きるのか児童がわかる形で提示する事が重要です。

視覚的なスケジュールの例

3.事前活動の活用 先ほどの視覚的なスケジュールを活用する方法と同じようにこの後に起きることを児童が理解できるようにする方法です。

先ほどは視覚的なスケジュールを見せることでこの後に起きることを理解できるようにしましたが、事前活動を活用する場合には、活動に取り組むまえに活動の一部を切り取ったものを事前に行い活動がこれから始まるという事を予測可能な状態にします。

また実際の活動を切り取って提供する以外にも、事前に次に何をするか口頭で伝えることで、次に何が起きるか予測できるような状態にする場合もあります。

言葉で説明すると少しわかりにくですが例を参考にしていただければと思います。

(例)事前告知パターン学校のチャイムがあと五分でなることを、児童に伝える「あと5分でチャイムなるから教室移動してね」

(例)事前活動パターン書き取りの授業を始める前に、前回の書き取りの内容を一緒におさらいする 「前回のプリントおさらいしようか」

(例)事前確認パターン1日の流れ・変化を児童と一緒に確認する 「お昼ご飯の後は、お外に行きます」

(例)活動分解パターン取り組む活動の流れをステップに分けて事前に児童に伝える「まず手を濡らします、それから石鹸をつけます、手をよーく擦ったら最後に水で洗い流しましょう」

4.児童に選択させる 問題行動が発生する活動に取り組む際に、逃避が発生することを防ぐ方法として、児童に何かを選ばせるという方法です。

この方法は、特に活動に従事することを拒絶するような場面で、非常に効果的です。児童は活動に対して、どちらから先に取り組むか、または取り組む際に何を使うかなど、自分で選ぶことができます。

自分で選ぶことでモチベーションが向上し、逃避が発生しにくくなります。

さらに、選択肢を提示して児童が自分で選ぶというステップは児童自身で要求する必要があるため言語能力や社会性の向上にもつながります。

(例) プリント課題に取り組む際に、何色のペンを使うか児童に選択させる 着席して課題に取り組む際に、どこに座るか児童に選択させる

5.カリキュラムの変更 より意欲的に児童が活動に参加したくなるように、指導要綱や指導方法自体を修正することも有効です。変更の方針としては以下のものが挙げられています。

**環境調整 **児童が課題に取り組む場所を、机以外の場所でもいいようにする。一人で落ち着ける静かなスペースを用意する。小集団の中で一緒に作業するのではなく、ペアで作業できるようにする。等々児童に合わせて環境を変化させる。

**サポートツールの採用 **可能な限り児童が自立して取り組む事ができるように、意思表示のためのYesNoカードや、プリント上に取り組む順番を記載するなどの工夫をする。

活動の単純化 取り組む活動をより簡単にする、または取り組む活動を細分化して、小さなステップに分けて提供する。

**大人からのサポート **児童が活動に参加できるように、実際にやって見せるなど大人が直接手助けをする。

ピアサポート 自閉症児と関わりのある児童(同級生など)が、手助けをする。

視覚支援を使う 情報がイラストで伝わる、時系列にそってやる事が視覚的に理解できるなどの工夫をする。

対象行動が獲得の場合

1.感覚刺激を用いた、環境調整 自閉症児の場合には特定の感覚刺激を満たすための行動を行う事がありますが、場面によっては不適切行動となってしまいます。この場合、感覚刺激を得る方法を従来の行動から別な手段で代替する事によって、活動中に不適切行動が発生することを抑制する方法です。

どの感覚刺激がマッチするかを確かめる方法としては、不適切行動が発生するような状況において、5分間特定の物に自由に触れる時間を設け、30秒間ごとに物を使用しているか確認し、全体の75%の区間でチェックがついた場合そのアイテムは求める感覚刺激とマッチしていると考えられます。

(例)爪噛み爪噛みが発生する状況にする手のひらサイズのボールを目の間におき、30秒ごとにボールに触れているかどうかチェックする。5分間継続して観察し、チェックの割合が全体区間の75%を超えている場合には、爪噛みの感覚刺激はボールを触ることで代替可能と考えて良い。

Step2プランの作成

選択する介入方針を決定した後で、週次の介入プランを記載します。記載項目としては、下記のようになります。

  1. 行動目標(例:5分間着席しているなど)
  2. 採用するアプローチ
  3. 採用したアプローチの具体的実施内容
  4. 実施にあたり必要な備品など

Step3プラン実行時の強化

作成したプランを実行する際に忘れてはならないのは、対象となった行動(不適切行動)を行わなかった時、また定義したゴールを達成できた時には「強化」を行うということです。

強化とは 強化子(児童が好む物や活動でかつ対象行動の将来における発生確率を上げるもの)を用いてある行動を増加させることを目的とした介入です。例えば離席せず課題に取り組む事ができた際にはすぐに、5分間の休憩タイムを提供することなどがこれにあたります。強化子は対象とする活動の難易度や児童の好き具合を勘案して妥当だと思われるものである必要がありまた目標行動ができた直後すぐに提供する事が重要です。

Step4効果測定

行動を特定・分析し、目標を定義し、介入方針を決め、プランを作成し、実行まできました。最後に重要なのはその介入プランで効果が出ているかチェックする事です。 このプランで効果が出ているのか測定する方法として、頻度を計測する方法と時間を計測する方法があります。 頻度を測る 週次の介入プランが開始されるタイミングで、定義した行動が1日のうちで、どれくらいの頻度で発生しているか以下のように計測します。介入が始まってから頻度が減少している場合には効果が出ていると考える事ができます。

頻度記録の例

時間を測る 対象とする行動をしていた時間の合計を計測します。頻度計測で得られる発生しているか、していないかという情報よりも一歩進んだ考察ができる材料が手に入ります。

時間記録の例

まとめ

以上がABIを実践する大まかな流れになります。実際に取り組む中で効果が見られない場合には、行動の定義や、行動の機能を見誤った可能性や、介入する方針が適切でない場合など様々な理由が考えられます。

そのため週次での計画で効果があまりにも見られない場合には、既存の計画を延長して様子を見るよりも一度振り返りを行い、計画の見直しを行う事が推奨されています。 まず何が起きているのか、ABC分析を行い、分析結果をブラッシュアップして、介入方針を決め、効果測定を行い、計画が順調か確認し継続的にアップデートしていくことが重要です。