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Make America healthy again?

· 約32分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害、精神疾患、摂食障害、発達支援、音楽療法、拡張現実(AR)教育など、多様なテーマに関する最新の学術研究を紹介しています。主な研究内容として、ASD児の運動発達遅延や学習困難のメンタルヘルスへの影響、初発精神病(FEP)患者における自閉症的特徴、ディスレクシアのある生徒に対するARを活用した体育教育の効果、ASDと拒食症の関連、自閉症児への音楽療法の研究動向などが取り上げられています。また、ASDと軽度精神病症候群(APS)の関係や、過活動性カタトニアを持つ自閉症患者のECT治療に関する研究も含まれ、発達障害や精神疾患に関する臨床的理解の深化と支援策の改善を目指す知見がまとめられています

社会関連アップデート

Trump: ‘We’re Going to Find Out’ Why Autism Levels Have Increased

トランプ前大統領は、アメリカにおける自閉症の診断数の増加に言及し、その原因を究明する意向を示しました。彼は、新たに任命した保健福祉長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を名指しし、「この問題の解明に最適な人物だ」と評価しました。しかし、ケネディ氏はワクチンと自閉症の関連性を主張する未証明の理論を支持しており、この点については公衆衛生の専門家から懸念の声が上がっているとのことです。

The mental health and social emotional skills of students with different learning difficulties in China

この研究は、中国の学習困難(数学困難:MD、読字困難:RD、両方の困難を併せ持つ:MDRD)を持つ学生のメンタルヘルスと社会・感情スキルを調査したものです。対象者は数学困難(MD)35名、読字困難(RD)27名、両方の困難(MDRD)43名、一般的な発達をしている学生(TD)167名で、それぞれうつ、孤独感、社交不安、社会・感情スキルを測定する質問紙に回答しました。

主な結果

メンタルヘルス

  • MDRD(数学・読字の両方に困難がある学生)は、一般の学生(TD)より孤独感が高かった
  • MD(数学困難の学生)は、TDよりも抑うつのスコアが高かった
  • ただし、MD・RD・MDRDの間にはメンタルヘルスの大きな差は見られなかった

社会・感情スキル

  • MD(数学困難)は、一般の学生(TD)より「忍耐力・責任感・自己制御・感情コントロール・好奇心・エネルギー」のスコアが低かった
  • MDRD(数学・読字の両方に困難がある学生)も、TDに比べて「好奇心」が低かった
  • 一方で、MD・RD・MDRDの間では「課題遂行能力・感情調整・協力・柔軟性」に大きな違いはなかった

結論と意義

  • 学習困難のタイプごとに、異なるメンタルヘルスのリスクや社会・感情スキルの弱点があることが確認された
  • 特に、数学困難(MD)の学生は、うつのリスクが高く、社会・感情スキルも幅広く低下する傾向がある
  • 支援を行う際には、学習困難のタイプごとに異なるメンタルヘルスやスキルの課題を考慮し、個別の対応が必要である

この研究は、学習困難を持つ子どものメンタルヘルスや社会的スキルの課題を明らかにし、より適切な支援策を考える上で重要な示唆を与えています

Motor developmental delay in preschoolers with autism spectrum disorders in China and its association with core symptoms and maternal risk factors: a multi-center survey - Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health

この研究は、中国の2~6歳の自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ幼児の運動発達の遅れに関する大規模調査であり、その要因やASDの中核症状との関係、母親のリスク因子について分析しています。ASDの特徴として、社会性やコミュニケーションの困難に注目されがちですが、運動発達の遅れ(粗大運動・微細運動)も多くの子どもに見られる問題であることを指摘しています。

研究の方法

  • 対象中国の1,256名のASD児(2~6歳)(中国多施設共同研究CMPAPのデータを使用)
  • 評価方法
    • 子どもの発達状態:改訂版小児神経心理・行動評価スケール(CNBS-R2016)、ゲゼル発達尺度(GDS)
    • ASDの症状の重さ:児童自閉症評価尺度(CARS)、社会応答性尺度第2版(SRS-2)
    • 運動発達遅延の関連要因:多変量順序ロジスティック回帰分析を使用

主な結果

  1. 運動発達の遅れはASD児の間で非常に多く見られた
    • 粗大運動(歩く・走る・ジャンプなど)の遅れ39.6%
    • 微細運動(指先の動き・書く・物をつかむなど)の遅れ68.4%
  2. ASD児は年齢に関係なく、粗大運動・微細運動の発達の遅れが見られる傾向があった
  3. 運動発達の遅れがあるASD児は、社会性の課題がより深刻だった
    • 運動発達の遅れがある子どもは、CARSやSRS-2のスコアが高く(=ASDの症状が重い)、社会的スキルの困難がより大きかった。
  4. 運動発達の遅れに関連するリスク要因
    • 5歳以上のASD児は、粗大運動の遅れのリスクが高い(OR=5.504)
    • CARSやSRS-2スコアが高い(ASDの症状が重い)ほど、粗大運動・微細運動の遅れのリスクが高い
    • 妊娠28〜36週で生まれた子ども(早産)は、運動発達遅延のリスクが高い

結論と意義

  • ASD児の多くは、運動発達の遅れ(特に微細運動の遅れ)が見られ、社会的スキルの困難とも関係している
  • 運動発達の遅れがあるASD児ほど、ASDの症状が重くなる傾向があり、早期発見と適切な介入が重要
  • 特に、5歳以上のASD児や、早産児は運動発達遅延のリスクが高いため、継続的なモニタリングと支援が必要

この研究は、ASDの子どもにおける運動発達の遅れの重要性を強調し、早期診断と個別の介入を行うことの必要性を示しています。運動療法や適切な発達支援が、ASD児の社会性向上にもつながる可能性があるため、今後の研究と実践が求められます。

Evaluating augmented reality in physical education for dyslexic students from the perspectives of teachers and students

この研究は、拡張現実(AR)技術を体育(PE)の授業に導入することで、ディスレクシア(読字障害)のある生徒(SWDs)にどのような影響を与えるかを、教師と生徒の視点から評価したものです。ディスレクシアの生徒は読字の困難だけでなく、自己評価の低下や学業成績の不振にも直面しやすいですが、体育の授業は身体的・心理的発達に良い影響を与える可能性があると考えられています。しかし、怪我への恐れ、教材の不足、専門的な指導者の不足などが、体育の授業の包括性(インクルーシブな環境)を妨げているという問題があります。

研究の目的

  • 従来の体育授業における課題を明らかにする
  • AR技術を導入することで、体育の授業の機会や効果、課題がどう変化するかを調査する

研究の方法

  • 対象:ディスレクシアの生徒(SWDs)22名と体育教師2名(マレーシアの学校)。
  • 調査手法
    • 体育授業の前後でインタビューを実施(AR導入前と導入後)。
    • *録音したインタビューの内容をテーマ別に分析(テーマ分析法)**し、**テーママップ(概念的な関連図)**を作成。

主な結果

  • AR技術を活用した体育の授業は、ディスレクシアの生徒にとってより包括的で参加しやすい環境を作り出す可能性がある
  • ARを活用することで、運動スキルの習得が視覚的・直感的にできるようになり、従来の指導方法よりも理解しやすい
  • 体育の授業への興味が高まり、運動への恐怖心が軽減される可能性がある
  • 教師にとっても、AR技術を活用することで指導の幅が広がるが、教材の準備やトレーニングの不足が課題とされた。

結論と意義

この研究は、体育の授業にAR技術を導入することで、ディスレクシアの生徒がより積極的に授業に参加できるようになり、学習の障壁を克服できる可能性があることを示唆しています。ただし、AR技術の活用には教師のトレーニングや教材の整備が必要であり、今後の課題として、ARを活用した体育教育プログラムの開発と普及が求められると考えられます。

What autism features in first episode psychosis? Results from a 2-year follow-up study

この研究は、初発精神病(FEP: First Episode Psychosis)の患者における自閉症的特徴の影響を2年間追跡し、臨床的な転帰や治療の効果を分析したものです。FEPの患者は統合失調症などの精神疾患の初期段階にあり、一部の患者には自閉症スペクトラム障害(ASD)に似た特徴が見られることがあります。研究では、**PANSS Autism Severity Score(PAUSS)**という指標を用いて、FEPの患者の中で自閉症的特徴を持つ群(PAUSS+)と持たない群(PAUSS−)を比較しました。

研究の概要

  • 対象:FEP患者301名(うち85名[28.0%]がPAUSSのカットオフスコアを超え、自閉症的特徴があると分類)。
  • 評価
    • PANSS(Positive And Negative Syndrome Scale):統合失調症の症状評価。
    • GAF(Global Assessment of Functioning):機能的な状態の評価。
    • HoNOS(Health of the Nation Outcome Scale):精神疾患の影響を測定。
  • 分析手法
    • カプラン・マイヤー生存分析(症状や機能回復の割合を比較)。
    • 混合設計分散分析(mixed-design ANOVA)(時間経過による変化を分析)。
    • 多重線形ロジスティック回帰分析(影響要因を特定)。

主な結果

  1. PAUSS+群(自閉症的特徴のあるFEP患者)は、PAUSS−群よりも症状や機能の回復率が低かった
  2. 2年間の追跡調査で、PAUSSのスコアは全体的に減少し、長期的に安定した「特性」ではなく、変動しうるものであることが示唆された
  3. PAUSSスコアの低下(改善)は、EIP(初発精神病介入プログラム)のケースマネジメントの回数と強く関連していた
  4. PAUSSは、FEP患者の持続的な自閉症特性を評価するには適していない可能性があるが、重症度が高く予後が悪いサブグループを特定する手がかりとなる可能性がある

結論と意義

この研究は、FEP患者の中で自閉症的特徴を持つ群は、症状や機能回復が遅れる傾向があり、より継続的な支援が必要であることを示唆しています。また、PAUSSは固定的な自閉症特性を測るものではなく、FEPにおける重症度の指標として活用できる可能性があるとしています。特に、ケースマネジメントなどのEIP介入がFEP患者の回復に重要であることが示されたため、今後の精神医療ではより個別化された支援が求められると考えられます。

Treat to Sedation: Managing Intravenous Placement for Electroconvulsive Therapy in Autism with Intellectual Disability and Hyperactive Catatonia

この研究は、自閉症(ASD)と知的障害を持ち、さらに過活動性カタトニア(hyperactive catatonia)を併発する患者に対し、電気けいれん療法(ECT)を実施する際の静脈内(IV)アクセス確保を安全に行う方法を検討したものです。カタトニアは、運動機能や気分に深刻な影響を与える症状であり、自閉症の人に多く見られます。その治療としてECTが必要になる場合がありますが、衝動性や攻撃性が強いため、IVアクセスの確保が困難になることが多いのが課題です。

研究方法

  • 対象者:自閉症、知的障害、カタトニアを併発し、ECTを受けた6名の患者(年齢10~30歳)。
  • 診断基準:DSM-5(精神疾患の診断基準)に基づき、自閉症とカタトニアの診断を確認。
  • 治療アプローチ
    • カタトニアの治療として高用量のベンゾジアゼピン(抗不安薬)を使用(平均ロラゼパム換算で24mg/日)。
    • IVアクセスの確保が困難なため、筋肉注射(IM)でケタミンを投与
    • その後、安全にIVアクセスを確保し、ECTを実施。

主な結果

  • 全患者がIMケタミンの投与により、安全にIVアクセスを確保し、ECTを受けることができた
  • 高用量ベンゾジアゼピンとケタミンの併用においても、重篤な副作用は報告されなかった
  • この方法により、過活動性カタトニアの患者にもECTを適用することが可能であることが示唆された

結論と意義

この研究は、過活動性カタトニアを伴う自閉症患者がECTを安全に受けられるようにするための有効な手法として、IMケタミンの使用が有望であることを示唆しています。カタトニアの治療においてIVアクセスの確保が課題となることが多いですが、本研究の方法を応用することで、より安全かつスムーズに治療を進めることができる可能性があります。今後、より大規模な研究でこの手法の安全性と有効性をさらに検証することが重要です。

Understanding the Autistic Experience of Restrictive Eating Disorders-A Systematic Review and Qualitative-Synthesis

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の人々が経験する摂食障害(特に拒食症)の特徴を明らかにし、より効果的な治療法の開発に役立てることを目的としたシステマティックレビューです。研究チームは、自閉症の人々、介護者、医療従事者による質的データを含む研究を分析し、共通するテーマを抽出しました。

研究方法

  • PROSPERO(国際的なレビュー登録データベース)に事前登録し、PRISMAガイドラインに従って進行。
  • CINAHL、PsycINFO、Medline、Embase、Web of Science、Global Healthなどのデータベースを検索し、関連する研究を抽出。
  • 最終的に9つの研究を分析(すべて拒食症(Anorexia Nervosa)に関するもの)。
  • 質的データの分析手法(テーマ分析)を用い、4つの主要テーマを特定

主な結果(4つのテーマ)

  1. 自閉症と拒食症の関係
    • 感覚過敏(例:特定の食感や匂いが苦手)ルーチンへの強いこだわり食事に対する認知の違いなど、自閉症特有の特徴が拒食症の発症や維持に影響している。
    • 体型や体重へのこだわりではなく、「食事の管理を通じて秩序を維持しようとする心理」が関与することが多い。
  2. 自己理解への道のり
    • 拒食症を持つ自閉症者の多くが、自分の状態を理解するまでに時間がかかる
    • 医療機関を受診するまでの過程で、自閉症の診断が遅れるケースが多い。
  3. 摂食障害治療サービスの経験
    • 医療者が自閉症の特性を十分に理解していないことが多く、不適切な治療アプローチがとられることがある
    • 例えば、「社会的な食事の重要性」を強調されても、ASDの人にとっては逆にストレスになることがある。
  4. 治療の適応(改善案)
    • 個別化された治療(感覚過敏への配慮、食事の選択肢を増やす、ルールを柔軟にする)が必要。
    • 医療従事者向けの研修を強化し、自閉症特有の摂食障害への理解を深めるべき

結論

本研究は、自閉症と拒食症の関係は従来の摂食障害治療では十分に考慮されておらず、新たな治療アプローチが必要であることを示唆しています。特に、自閉症の特性に配慮したカスタマイズされた治療プログラムや、医療者向けの専門的な研修が重要とされています。今後、より適応的な治療法の開発と実践が求められるというのが本研究の重要なメッセージです。

Sex differences in the prevalence and clinical correlates of autistic features in patients with chronic schizophrenia: a large scale cross-sectional study

この研究は、統合失調症(SCZ)患者における自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴の性差を調査したものです。統合失調症と自閉症は、一部の特性が重なることが知られていますが、これらの特徴が性別によってどのように異なるのかは十分に研究されていません。本研究では、中国の10の精神科病院から統合失調症の患者1690名(男性1122名、女性568名)を対象に、自閉症の特徴と認知機能を評価しました。

研究の方法

  • 自閉症の特徴の評価:「Positive and Negative Syndrome Scale Autism Severity Score(PANSS-ASD)」を使用。
  • 認知機能の測定:「Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status(RBANS)」を使用。
  • 統計手法:バイナリロジスティック回帰分析を用いて、自閉症の特徴と関連する要因を特定。

主な結果

  1. 女性の統合失調症患者の方が、男性よりも自閉症の特徴を持つ割合が高かった
  2. 男性患者における特徴
    • 自閉症の特徴を持つ患者は、病気の期間が長く、RBANS(認知機能)のスコアが高かったが、教育歴が短かった
    • 視空間・構成能力(Visuospatial/Constructional abilities)と言語能力が自閉症の特徴と関連
  3. 女性患者における特徴
    • 自閉症の特徴を持つ患者は、RBANSスコアが高かったが、教育歴が短かった
    • 言語能力と遅延記憶(Delayed Memory)が自閉症の特徴と関連

結論と意義

  • 統合失調症患者の自閉症の特徴には性差があり、特に女性の方がその特徴を持つ割合が高いことが示された。
  • 教育歴、認知機能(特に言語能力や記憶)、病気の期間が、自閉症の特徴と関連している。
  • 男性は視空間能力、女性は記憶能力が影響している可能性があり、治療や支援の方法を性別に応じて調整することが重要

この研究は、統合失調症の治療において、自閉症の特徴を持つ患者の特性を考慮し、より個別化されたアプローチを取る必要があることを示唆しています。特に、認知機能の違いを考慮した支援やリハビリテーションが求められると考えられます。

この研究は、自閉症の子どもに対する音楽の影響に関する研究の動向を分析し、主要な研究者や注目されているテーマを明らかにするための**書誌計量分析(Bibliometric Analysis)**を行ったものです。自閉症の子どもは、社会的な相互作用やコミュニケーション、行動面に課題を抱えることが多く、音楽がそれらの発達を促進する可能性があるため、関心が高まっています

研究の方法

  • 1953年~2024年の間に発表された関連論文Web of Science Core Collectionから収集。
  • VOSviewer、CiteSpace、R(バージョン4.3.3)を使用して書誌計量分析と視覚的分析を実施
  • 研究論文の数、主要な研究機関、影響力のある研究者やキーワードの変化を調査

主な結果

  1. 2009年以降、音楽と自閉症に関する研究論文の発表数が大幅に増加
  2. 研究が盛んな国は、アメリカ、イギリス、カナダ、中国、オーストラリア
  3. 研究機関では、マギル大学(23本)、モントリオール大学(17本)、ヴァンダービルト大学(12本)が特に活発
  4. 「Journal of Autism and Developmental Disorders」が最も影響力のあるジャーナルで、h指数19、被引用数1,706回
  5. 最も影響力のある研究者はクリスチャン・ゴールド教授(12本の論文、合計599回の被引用)
  6. キーワード分析では、「children(子ども)」「autism(自閉症)」「therapy(療法)」が頻出
  7. 2020年以降、「social skills(社会的スキル)」「communication(コミュニケーション)」「engagement(関与)」などのキーワードが増加し、社会性やコミュニケーション能力への関心が高まっていることが分かった。

結論と今後の展望

  • 音楽は、自閉症の子どもの社会的スキルやコミュニケーション能力の向上に貢献する可能性が高い
  • 今後の研究では、音楽療法の長期的な効果(言語・認知・行動面への影響)をより詳細に検討する必要がある
  • 教育や療育の場での音楽の活用方法をさらに探ることが求められる

この研究は、音楽が自閉症児の発達を促す可能性を示すとともに、研究の進展状況や今後の課題を整理することで、より効果的な介入方法の確立に貢献する重要な知見を提供しています。

Frontiers | Investigating the Attenuated Psychosis Syndrome in youth with Autism Spectrum Disorder: results from an observational study

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の若者における「軽度精神病症候群(Attenuated Psychosis Syndrome: APS)」の特徴を明らかにすることを目的とした観察研究です。ASDの人々は、精神病リスクが高いと考えられていますが、特に前兆的な精神病症状(APS)の検出は十分に研究されていません。本研究では、ASDとAPSを併せ持つグループ(ASD/APS, 48名)APSのみのグループ(APS, 93名)、**ASDのみのグループ(ASD, 30名)**を比較し、臨床的な特徴を調査しました(対象年齢:9~23歳)。

研究の方法

  • 自閉症症状の評価:「自閉症診断観察スケジュール(ADOS-2)」
  • 精神病リスクの評価:「精神病リスク症候群構造化面接(SIPS)」
  • 認知・適応機能の評価:標準化された指標を使用

主な結果

  1. 適応機能
    • ASD/APSグループは、APSグループ(p = 0.006)やASDグループ(p = 0.005)よりも、全般的な適応能力が低いことが判明。
  2. 精神病リスク症状(SIPS)
    • ASD/APSグループはAPSグループと比較して、ほぼすべての精神病症状のスコアが低かった(例外として、「異常な思考内容/妄想的アイデア(SIPS-P1)」や「誇大妄想(SIPS-P3)」は有意差なし)。
  3. 自閉症の特徴
    • ASD/APSグループは、ASDグループよりも「反復的・限定的な行動」が有意に多かった(p < 0.001)
  4. APSの発症年齢
    • 3つのグループ間で、APSの発症年齢に有意差はなかった(p = 0.601)

結論と意義

この研究は、ASDとAPSを併せ持つ若者の臨床的特徴を詳細に分析し、適応機能の低下や反復行動の増加が顕著であることを示しました。また、ASDの人々の中には精神病症状のリスクを抱える者がいるため、早期スクリーニングと介入が重要であることが強調されています。適切なサポートを早期に提供することで、長期的な発達や精神的健康の改善につながる可能性があると考えられます。