Make America healthy again?
このブログ記事では、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害、精神疾患、摂食障害、発達支援、音楽療法、拡張現実(AR)教育など、多様なテーマに関する最新の学術研究を紹介しています。主な研究内容として、ASD児の運動発達遅延や学習困難のメンタルヘルスへの影響、初発精神病(FEP)患者における自閉症的特徴、ディスレクシアのあ る生徒に対するARを活用した体育教育の効果、ASDと拒食症の関連、自閉症児への音楽療法の研究動向などが取り上げられています。また、ASDと軽度精神病症候群(APS)の関係や、過活動性カタトニアを持つ自閉症患者のECT治療に関する研究も含まれ、発達障害や精神疾患に関する臨床的理解の深化と支援策の改善を目指す知見がまとめられています。
社会関連アップデート
Trump: ‘We’re Going to Find Out’ Why Autism Levels Have Increased
トランプ前大統領は、アメリカにおける自閉症の診断数の増加に言及し、その原因を究明する意向を示しました。彼は、新たに任命した保健福祉長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を名指しし、「この問題の解明に最適な人物だ」と評価しました。しかし、ケネディ氏はワクチンと自閉症の関連性を主張する未証明の理論を支持しており、この点については公衆衛生の専門家から懸念の声が上がっているとのことです。
The mental health and social emotional skills of students with different learning difficulties in China
この研究は、中国の学習困難(数学困難:MD、読字困難:RD、両方の困難を併せ持つ:MDRD)を持つ学生のメンタルヘルスと社会・感情スキルを調査したものです。対象者は数学困難(MD)35名、読字困難(RD)27名、両方の困難(MDRD)43名、一般的な発達をしている学生(TD)167名で、それぞれうつ、孤独感、社交不安、社会・感情スキルを測定する質問紙に回答しました。
主な結果
メンタルヘルス
- MDRD(数学・読字の両方に困難がある学生)は、一般の学生(TD)より孤独感が高かった。
- MD(数学困難の学生)は、TDよりも抑うつのスコアが高かった。
- ただし、MD・RD・MDRDの間にはメンタルヘルスの大きな差は見られなかった。
社会・感情スキル
- MD(数学困 難)は、一般の学生(TD)より「忍耐力・責任感・自己制御・感情コントロール・好奇心・エネルギー」のスコアが低かった。
- MDRD(数学・読字の両方に困難がある学生)も、TDに比べて「好奇心」が低かった。
- 一方で、MD・RD・MDRDの間では「課題遂行能力・感情調整・協力・柔軟性」に大きな違いはなかった。
結論と意義
- 学習困難のタイプごとに、異なるメンタルヘルスのリスクや社会・感情スキルの弱点があることが確認された。
- 特に、数学困難(MD)の学生は、うつのリスクが高く、社会・感情スキルも幅広く低下する傾向がある。
- 支援を行う際には、学習困難のタイプごとに異なるメンタルヘルスやスキルの課題を考慮し、個別の対応が必要である。
この研究は、学習困難を持つ子どものメンタルヘルスや社会的スキルの課題を明らかにし、より適切な支援策を考える上で重要な示唆を与えています。
Motor developmental delay in preschoolers with autism spectrum disorders in China and its association with core symptoms and maternal risk factors: a multi-center survey - Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health
この研究は、中国の2~6歳の自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ幼児の運動発達の遅れに関する大規模調査であり、その要因やASDの中核症状との関係、母親のリスク因子について分析しています。ASDの特徴として、社会性やコミュニケーションの困難に注目されがちですが、運動発達の遅れ(粗大運動・微細運動)も多くの子どもに見られる問題であることを指摘しています。
研究の方法
- 対象:中国の1,256名のASD児(2~6歳)(中国多施設共同研究CMPAPのデータを使用)
- 評価方法:
- 子どもの発達状態:改訂版小児神経心理・行動評価スケール(CNBS-R2016)、ゲゼル発達尺度(GDS)
- ASDの症状の重さ:児童自閉症評価尺度(CARS)、社会応答性尺度第2版(SRS-2)
- 運動発達遅延の関連要因:多変量順序ロジスティック回帰分析を使用
主な結果
- 運動発達の遅れはASD児の間で非常に多く見られた:
- 粗大運動(歩く・走る・ジャンプなど)の遅れ:39.6%
- 微細運動(指先の動き・書く・物をつかむなど)の遅れ:68.4%
- ASD児は年齢に関係なく、粗大運動・微細運動の発達の遅れが見られる傾向があった。
- 運動発達の遅れがあるASD児は、社会性の課題がより深刻だった:
- 運動発達の遅れがある子どもは、CARSやSRS-2のスコアが高く(=ASDの症状が重い)、社会的スキルの困難がより大きかった。
- 運動発達の遅れに関連するリスク要因:
- 5歳以上のASD児は、粗大運動の遅れのリスクが高い(OR=5.504)。
- CARSやSRS-2スコアが高い(ASDの症状が重い)ほど、粗大運動・微細運動の遅れのリスクが高い。
- 妊娠28〜36週で生まれた子ども(早産)は、運動発達遅延のリスクが高い。
結論と意義
- ASD児の多くは、運動発達の遅れ(特に微細運動の遅れ)が見られ、社会的スキルの困難とも関係している。
- 運動発達の遅れがあるASD児ほど、ASDの症状が重くなる傾向があり、早期発見と適切な介入が重要。
- 特に、5歳以上のASD児や、早産児は運動発達遅延のリスクが高い ため、継続的なモニタリングと支援が必要。
この研究は、ASDの子どもにおける運動発達の遅れの重要性を強調し、早期診断と個別の介入を行うことの必要性を示しています。運動療法や適切な発達支援が、ASD児の社会性向上にもつながる可能性があるため、今後の研究と実践が求められます。
Evaluating augmented reality in physical education for dyslexic students from the perspectives of teachers and students
この研究は、拡張現実(AR)技術を体育(PE)の授業に導入することで、ディスレクシア(読字障害)のある生徒(SWDs)にどのような影響を与えるかを、教師と生徒の視点から評価したものです。ディスレクシアの生徒は読字の困難だけでなく、自己評価の低下や学業成績の不振にも直面しやすいですが、体育の授業は身体的・心理的発達に良い影響を与える可能性があると考えられています。しかし、怪我への恐れ、教材の不足、専門的な指導者の不足などが、体育の授業の包括性(インクルーシブな環境)を妨げているという問題があります。
研究の目的
- 従来の体育授業における課題を明らかにする。
- AR技術を導入することで、体育の授業の機会や効果、課題がどう変化するかを調査する。
研究の方法
- 対象:ディスレクシアの生徒(SWDs)22名と体育教師2名(マレーシアの学校)。
- 調査手法:
- 体育授業の前後でインタビューを実施(AR導入前と導入後)。
- *録音したインタビューの内容をテーマ別に分析(テーマ分析法)**し、**テーママップ(概念的な関連図)**を作成。
主な結果
- AR技術を活用した体育の授業は、ディスレクシアの生徒にとってより包括的で参加しやすい環境を作り出す可能性がある。
- ARを活用することで、運動スキルの習得が視覚的・直感的にできるようになり、従来の指導方法よりも理解しやすい。
- 体育の授業への興味が高まり、運動への恐怖心が軽減される可能性がある。
- 教師にとっても、AR技術を活用することで指導の幅が広がるが、教材の準備やトレーニングの不足が課題とされた。
結論と意義
この研究は、体育の授業にAR技術を導入することで、ディスレクシアの生徒がより積極的に授業に参加できるようになり、学習の障壁を克服できる可能性があることを示唆しています。ただし、AR技術の活用には教師のトレーニングや教材の整備が必要であり、今後の課題として、ARを活用した体育教育プログラムの開発と普及が求められると考えられます。
What autism features in first episode psychosis? Results from a 2-year follow-up study
この研究は、初発精神病(FEP: First Episode Psychosis)の患者における自閉症的特徴の影響を2年間追跡し、臨床的な転帰や治療の効果を分析したものです。FEPの患者は統合失調症などの精神疾患の初期段階にあり、一部の患者には自閉症スペクトラム障害(ASD)に似た特徴が見られることがあります。研究では、**PANSS Autism Severity Score(PAUSS)**という指標を用いて、FEPの患者の中で自閉症的特徴を持つ群(PAUSS+)と持たない群(PAUSS−)を比較しました。