オンライン認知行動療法(CBT)が自閉症の子どもの不安症に有効であることを示した研究
このブログ記事では、発達障害に関連する最新の学術研究を紹介しています。具体的には、遺伝子変異(PDZD8)が自閉症様行動を引き起こす可能性や、ADHDの人の脳内鉄の蓄積が神経変性リスクと関連することを示した研究、オンライン認知行動療法(CBT)が自閉症の子どもの不安症に有効であることを示した研究などが取り上げられています。また、特別支援教育におけるテクノロジー活用の効果、親向けサポートプログラム「AutInsight」の有効性、ASDの人が映像のカメラワークに対して異なる脳活動を示すことについても紹介されています。これらの研究は、発達障害の理解を深め、より効果的な支援や介入方法を見つけるための重要な知見を提供しています。
学術研究関連アップデート
Autistic behavior is a common outcome of biallelic disruption of PDZD8 in humans and mice - Molecular Autism
この研究は、PDZD8遺伝子の両方のコピー(バリアレリック変異)が機能しなくなると、自閉症のような行動が現れることを人間とマウスの両方で確認したものです。PDZD8は、小胞体(ER)という細胞内の構造に関わるタンパク質を作る遺伝子で、知的発達障害(IDDADF)と関連することが分かっています。これまでに報告されたIDDADF患者4名のうち3名が自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されていました。本研究では、新たにこの遺伝子に変異を持つ**「3つ目の家族(家族C)」を特定し、PDZD8欠損マウス(Pdzd8tm1bマウス)の行動や脳の変化を詳しく調べました**。
主な発見
- 人間のIDDADF患者では、発達遅延・知的障害・自閉症・特徴的な顔貌が共通して見られた。
- PDZD8欠損マウスでは、以下のようなASD関連の特徴が観察された:
- 社会的な認識能力や、においの識別能力の低下
- 暗い時間帯の運動量の増加
- 代謝の変化(エネルギー消費の増加、血中中性脂肪の低下(オスのみ))
- 脳の変化(嗅覚関連の脳領域の増大、小脳の一部の萎縮、神経新生(新しい神経細胞の生成)の低下)
- 小胞体ストレスとミトコンドリアの融合に関連する遺伝子の変化
結論
この研究により、PDZD8の機能喪失が自閉症行動の原因となる可能性が高いことが確認されました。また、代謝や脳の構造にも幅広い影響を及ぼす可能性があるため、今後はより多くの症例を集めて研究を進めることが重要とされています。
Virtual delivery of group-based cognitive behavioral therapy for autistic children and youth during the COVID-19 pandemic was acceptable, feasible, and effective
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもや若者(8~13歳)に対するグループ認知行動療法(CBT)のオンライン実施が、受け入れられやすく、実現可能であり、効果的であるかを検証したものです。ASDの子どもの50~79%が不安症を抱えており、日常生活に大きな影響を及ぼすことが知られています。従来、対面形式のCBTプログラム「Facing Your Fears(FYF)」がASDの若者に有効であることが分かっていましたが、専門施設へのアクセスが難しい家庭も多く、提供できる機会が限られていました。そこで、COVID-19の影響を受け、オンライン形式でFYFを実施し、その効果を評価しました。
研究の概要
- 対象者:8~13歳の自閉症児100名とその保護者
- 方法:1年間にわたり、バーチャルFYFプログラムを提供し、その効果を評価
- 評価項目:
- 子ども本人と保護者が報告する不安症状の変化
- 保護者の自己効力感(子どもの不安に対応できる自信)の向上
- 治療効果に影響を与える要因(例:子どもの元々の不安の程度、適応能力、ASDの症状、保護者の自己効力感など)
主な結果
- 子どもの不安症状が有意に改善
- 保護者の自己効力感が向上
- 治療効果に影響を与える要因として、子どもの元々の不安のレベル、適応能力、ASDの症状、保護者の自己効力感が関係していた
- COVID-19関連の要因もわずかながら治療の成果に影響を与えた
結論
オンラインでのFYFプログラムは、ASDの子どもの不安症に対して効果的であり、対面の治療と同様の成果を出す可能性があることが示されました。この方法は、遠隔地に住む家庭でもアクセスしやすく、より多くのASDの子どもたちに治療機会を提供できる可能性があるため、今後の普及が期待されます。
AutInsight: A Pilot Randomised Controlled Trial (RCT) of a Consumer-Informed Parent Support Program for Parents of Autistic Children
この研究は、**自閉症の子どもを持つ親向けの新しいサポートプログラム「AutInsight」の効果を検証するために実施されたパイロットランダム化比較試験(RCT)**です。AutInsightは、自閉症当事者の視点を反映して設計された親向けプログラムで、親の心理的柔軟性やマインドフルネスを高め、家族全体の生活の質を向上させることを目的としています。
研究概要
- 対象者:10歳以下の自閉症児の親 41名
- 研究デザイン:
- AutInsightプログラムを受けるグループ(20名)
- 通常のケア(Care-as-Usual)を受けるグループ(21名)
- 評価のタイミング:プログラム開始前(ベースライン)、プログラム終了後、3か月後のフォローアップ
- 評価項目:
- 親の感受性(子どもの気持ちや行動に対する理解と対応)
- 親の心理的柔軟性やマインドフルネス
- 親のメンタルヘルスと家族全体の生活の質
- 子どもの行動(問題行動の減少や社会的行動の向上)