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ASD児のアイコンタクト改善のための自己モニタリング戦略の有効性

· 約19分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、発達障害やADHD、自閉スペクトラム症(ASD)に関する最新の学術研究を紹介しています。研究は、自己モニタリングや行動療法、ソーシャルメディア使用、医療サービスの利用と成果の関連性など、さまざまなテーマを網羅しています。特に、ASD児のアイコンタクト改善のための自己モニタリング戦略の有効性COVID-19パンデミック中のサービス利用がASD児に与えた影響成人ADHDに対する非薬物療法の短期および長期的効果が注目されています。これらの研究は、診断、治療、教育の質を向上させるための具体的な知見を提供しており、個別支援の重要性や非薬物療法の有効性が強調されています。

学術研究関連アップデート

An Evaluation of the Effectiveness of Self-monitoring Intervention Package for Increasing Eye Contact in Children with Autism Using Wearable Eye Tracking

この研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちを対象に、自己モニタリング戦略を活用した介入プログラムがアイコンタクトの改善に与える効果を評価しました。3名のASD児が参加し、学校の図書館で対面での実験が行われました。プログラムには、自己モニタリング、目標設定、強化が含まれ、ウェアラブルの視線追跡デバイスを使用してアイコンタクトの持続時間を測定しました。結果として、参加者のアイコンタクトの持続時間が大幅に増加し、視覚的分析とTau-Uの結果で効果が確認されました。さらに、教師や保護者へのインタビューでも、この研究が社会的に有効であると評価されました。この研究は、ウェアラブルデバイスを用いてASD児のアイコンタクトを改善する自己モニタリング戦略の効果を検証した初の試みであり、将来的な研究での再検証が求められています。

The association of social media use and other social factors with symptoms of attention-deficit/hyperactivity disorder in Egyptian university students - BMC Psychiatry

この研究は、エジプトの大学生を対象に、ソーシャルメディア使用やその他の社会的要因が注意欠如・多動症(ADHD)の症状とどのように関連しているかを調査したものです。タント大学の5つの学部からランダムに選ばれた933名が参加し、ADHD症状の評価には**成人ADHD自己報告スケール(ASRS-v1.1)**が用いられました。

主な結果

  1. ADHDのリスク:
    • ADHDリスクがあるとされた学生は30.5%でした。
    • 父親が海外出張中または母親と離婚している場合、ADHDリスクが顕著に増加(それぞれ42.3%、44.4%、p=0.031)。
  2. スポーツの影響:
    • スポーツを行う学生ではADHDリスクが低下(24.1%)し、行わない学生(33.8%)よりも有意に低い(p=0.002)。
  3. ソーシャルメディア使用:
    • リールやショート動画の視聴時間が増えるほどADHDリスクが高まる(平日p<0.001、週末p=0.001、休日p=0.038)。
    • 視聴時間が増えることはADHDリスクを独立して増加させる要因(Exp B=1.493)。
  4. スポーツの保護効果:
    • スポーツを行うことはADHDリスクを独立して減少させる要因(Exp B=0.679)。

結論

この研究は、リールや短い動画コンテンツの視聴時間がADHDリスクを高める一方で、スポーツ活動がADHDリスクを減少させる保護的要因であることを示しています。多くの要因についてさらなる研究が必要とされていますが、ソーシャルメディア使用と身体活動の重要性が強調されました。

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちにおける**エコラリア(反響言語)**の発生頻度や関連する要因を、多面的な視点(親、教師、臨床医の報告)から調査しました。対象は4~17歳のASDの子ども2555名(Simon Simplex Collectionデータ)です。

主な結果

  1. エコラリアの発生頻度:
    • ASDの子どもの90%が発達のどこかでエコラリアを示すと報告されました。
  2. エコラリアと年齢・言語能力の関係:
    • 言語能力が高い子どもでは、年齢が上がるにつれてエコラリアが減少。
    • 一方、言語能力が低い子どもでは、年齢が上がってもエコラリアが減少しない傾向。
    • これにより、言語能力が低い子どもではエコラリアがコミュニケーションの一形態として利用される可能性が示唆されました。
  3. エコラリアと反復行動の関係:
    • エコラリアは発達の全期間を通じて反復行動と正の関連を示しました。

結論

エコラリアはASDにおいて、機能的なコミュニケーション手段としての役割と、反復行動の一部としての役割を持つ可能性があります。この研究は、エコラリアの発達過程をさらに理解し、ASDの行動を肯定的に支援する方法を開発する重要性を強調しています。

Identification of diagnostic and therapeutic biomarkers for attention-deficit/hyperactivity disorder

この研究は、注意欠如・多動症(ADHD)の診断と治療に役立つバイオマーカーの特定を目的としています。ADHDは、子どもや青年によく見られる精神疾患で、診断は現在、臨床症状と患者の病歴に基づいています。しかし、より客観的で信頼性の高いバイオマーカーの発見は、早期診断や治療結果の改善につながる可能性があります。

主な内容と結果

  1. バイオマーカーの候補:
    • 血液、唾液、便のサンプルから、診断精度向上に寄与するいくつかの有望なバイオマーカーを特定。
  2. 研究アプローチ:
    • エピジェネティック調節機構の解析を通じて、ADHD発症に関与する要因を探究。
    • 末梢血中のマイクロRNAを用いた診断モデルを開発。
  3. 腸内細菌叢の役割:
    • ADHDに関連する腸内細菌叢の不均衡(マイクロバイオータ・ディスバイオシス)の可能性を調査し、新たな治療方法への洞察を提供。
  4. 性別・年齢の影響:
    • ADHDの有病率における性別の違い(男性優位)や症状の年齢による変動を考慮し、神経内分泌システムの役割を解析。

結論

本研究は、ADHDの診断精度を向上させる可能性のある客観的バイオマーカーの存在を示しています。今後、より大規模なコホート研究を通じて、これらのバイオマーカーの信頼性を確認する必要があります。この知見は、ADHDの診断と管理をより科学的かつ効果的に進めるための重要な基盤を提供します。

Frontiers | Bridging gaps in healthcare; child-health and specialist-care collaboration for young children with autism and coexisting conditions

この研究は、移民が多く、資源が限られた地域において、自閉スペクトラム症(ASD)やその他の神経発達症状を持つ幼児の早期発見、評価、専門的介入を支援するための臨床プロジェクトを評価したものです。

主な結果

  1. 診断と介入の迅速化:
    • ASDが疑われる子どもの一次医療から専門医療への紹介年齢が平均38か月から27か月に短縮。
    • ASD診断の平均年齢も44か月から31か月に短縮。
    • 紹介時点から一次医療で介入が開始され、待機時間が短縮
  2. 看護師の経験:
    • 新しい知識とスキルの獲得。
    • 子どもとその家族にとっての重要性が強調。
    • ギャップを減らす効率的な方法としてさらに発展可能。
  3. 全体的な成果:
    • 専門家による幼児期の初期症状への理解が向上
    • 家族や保育園との密接な連携を通じて、医療サービスの統合化が実現。
    • 早期評価と介入により、子どもと家族に大きな利益をもたらすことが示された。

結論

このプロジェクトは、医療システムのギャップを埋める効果的なモデルを提供しました。特に、早期診断と介入を可能にする新しい方法や専門家の知識向上が、ASDを持つ子どもたちとその家族に重要な影響を与えています。この結果は、今後の統合的な医療と家族・地域社会との協働の可能性を示唆しています。

Frontiers | Decoding communicative action vitality forms in social contexts

この研究は、人間の行動がどのような形で行われるか(例えば、穏やか、粗野、中立的)が、社会的コミュニケーションにおいて重要な情報を伝えるという理論に基づき、その動態的特徴(Vitality Forms: VFs)を調査したものです。

主な内容

  1. 目的:
    • 不同なVFs(穏やか、粗野、中立、遅い、速い)で行われた動作(移動を伴う行動や身振り)について、時間的・空間的な特徴を分析。
    • これらのVFsを機械学習を用いて自動的に認識できるかを検証。
  2. 方法:
    • 2名の俳優が7種類の行動を異なるVFsで実行し、計1,000回分のデータをモーションキャプチャで収集。
    • 得られた動作データから22の運動特性を抽出。
  3. 結果:
    • VFsは単純に速度や加速度といった1つのパラメータだけでなく、複数の時間的・空間的特性の組み合わせで特徴づけられる。
    • 機械学習によるVFsの自動認識の正確度は87.3%に達し、学習データに含まれない動作でも74.2%の正確度で認識可能。
  4. 応用の可能性:
    • 神経科学社会的ロボット工学バーチャルエージェントの開発に役立つ。
    • 人間の態度を認識し、それに応じて人工エージェントが行動を適応させることが可能になる。
    • ASD(自閉スペクトラム症)のような社会的・コミュニケーション障害におけるリハビリテーションプログラムの設計にも寄与する可能性がある。

結論

VFsは人間の行動とコミュニケーションの中核を成すものであり、その動態的特徴の理解は、AIやリハビリテーションを含む多くの分野において重要な応用可能性を示しています。

Frontiers | and Long-Term Effect of Non-pharmacotherapy for Adults with ADHD: A Systematic Review and Network Meta-Analysis

この研究は、大人の注意欠如・多動症(ADHD)に対する非薬物療法の効果を評価し、その短期および長期的な影響を比較するために行われました。ADHDの中核的な症状(不注意、多動性、衝動性)と感情障害(うつ、不安)への影響が対象です。

主な内容

  1. 研究目的:
    • 大人のADHDに対する10種類の非薬物療法の短期および長期効果を比較し、それぞれの効果をランク付け。
    • ADHD症状や関連する感情障害に対する治療法の有効性を特定。
  2. 方法:
    • Web of Science、PubMed、Cochrane Library、EMBASEからランダム化比較試験(RCT)を抽出。
    • 計37件のRCT(参加者2,289名)が分析対象。
    • コクランのバイアスリスクツールやCINeMAを用いて信頼性を評価。
  3. 結果:
    • 認知行動療法(CBT)は、短期(SMD: -4.43)および長期(SMD: -3.61)のADHD症状に最も効果的。
    • CBTは、うつ(短期: SMD: -4.16、長期: SMD: -3.89)と不安(短期: SMD: -2.12、長期: SMD: -7.25)にも有効。
    • マインドフルネス認知療法(MC)は、併存症のない患者には有望な選択肢とされる。
  4. 結論:
    • CBTがADHDとその関連症状に最も効果的である可能性が示唆された。
    • 一方で、結果の解釈には慎重を要し、より高品質なRCTが必要とされる。

実用的な示唆

この研究は、大人のADHD治療において非薬物療法、特にCBTが効果的な選択肢であることを示し、感情障害を含む複合的な症状への対応策として期待されます。

Relationship between service receipt during the COVID‐19 pandemic and autistic children's multisystem outcomes and autism severity: A SPARK dataset analysis

この研究は、COVID-19パンデミック中のサービス利用と、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちにおける親が感じる多面的な成果や自閉症の重症度の関係を調査しました。

主な内容と結果

  1. 対象:
    • SPARK研究のデータを使用し、親が回答したCOVID-19影響調査データ(6067名分)を分析。
  2. 分析結果:
    • PT/OT(理学療法・作業療法)とABA(応用行動分析):
      • 社会的相互作用、日常生活活動、自閉症の重症度の改善に関連。
    • SLT(言語療法)とABA:
      • コミュニケーションの改善に関連。
    • MH(メンタルヘルスケア)とMED(医療サービス):
      • 全ての領域で親が感じる成果の悪化と関連。
    • その他の要因:
      • 年齢が若い男性家計収入が高い自閉症の重症度が低い運動機能や認知遅延が少ない言語遅延が大きい、および親のメンタルヘルス問題がない場合に、親が感じる成果が改善しやすい。
  3. 結論:
    • PT/OTやABAサービスは社会的および機能的成果の改善に関連。
    • SLTやABAサービスはコミュニケーションの改善に寄与。
    • MHやMEDサービスの利用では、逆に成果が悪化する傾向がある。

実用的示唆

この研究は、パンデミック中にASDの子どもたちが受けた支援の質と量が、親の感じる子どもの多面的な成果にどのように影響を与えたかを明らかにしました。特に、ABAやPT/OTの重要性が強調され、サービスの継続的な提供の必要性が示唆されています。