ASDや知的発達障害(I/DD)の子どもを持つ親のストレス測定ツールの改良
このブログ記事では、発達障害や自閉スペクトラム症(ASD)に関連する最新の研究動向を紹介しています。具体的には、ASDや知的発達障害(I/DD)の子どもを持つ親のストレス測定ツールの改良、トルコの母親における抑うつと心理支援の関連、神経性やせ症(AN)と発達障害の認知プロフ ァイル、自閉症児の体験を語る能力へのインタビューの影響、ASD児の親主導型CBTの効果予測要因、そしてASD成人が交通事故に関連するPTSD症状をより強く経験することなどが取り上げられています。
学術研究関連アップデート
Psychometric Properties of The Parental Stress Scale for Parents of Children with Intellectual and Developmental Disabilities
この研究は、知的および発達障害(I/DD)を持つ子どもの親における親のストレスを測定するための「Parental Stress Scale(PSS)」の心理測定特性を検証したものです。対象は、ASD(自閉スペクトラム症)を含むI/DDを持つ子ども(1~18歳、平均年齢5.28歳)の家庭3220世帯の親で、91%がASDと診断されていました。
主な結果
- PSSの検証:
- 元の18項目から構成されるPSSでは、3つの項目が基準を満たさないことが判明。
- これら3つの項目を除外し、15項目に修正したスケールを使用して確認的因子分析を再実施。
- 修正版PSS(15項目)は、良好な内部一貫性、区別的妥当性、モデル適合性を示しました。
- 因子構造:
- PSSの構造は、元の設計に基づく**「喜び(rewarding)/負担(burdensome)」という二因子構造**に一致。
- 15項目すべてが因子負荷の基準を満たしました。
結論
修正版の15項目PSSは、I/DDを持つ子どもの親のストレスを評価するための信頼性の高いツールとして使用可能であることが示されました。このスケールは、親のストレスに関する正確な測定と効果的な介入を支援するために役立つと考えられます。
Depression and psychological help-seeking attitude among Turkish mothers of children with autism: problem-focused coping as a mediator
この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ子どものトルコ人母親において、抑うつと心理的支援を求める態度(心理的助けを求める姿勢)に対する対処戦略の役割を調査したものです。イスタンブールの自閉症センターでトレーニングを受けている母親250名を対象に行われました。
主な結果
- 抑うつと対処戦略の関連性:
- 抑うつは、**問題焦点型対処(問題解決に向けた行動)**と正の相関がありました。
- 一方で、抑うつは心理的助けを求める態度と負の相関を示しました。
- 対処戦略間の関連性:
- 心理的助けを求める態度と問題焦点型対処は、**回避型対処(問題を避ける行動)**と正の相関がありました。
- 媒介効果の分析:
- 問題焦点型対処は、抑うつと心理的助けを求める態度の間で媒介的な役割を果たしていることが確認されました。
- つまり、抑うつが高い場合でも、問題焦点型対処が心理的支援を求める態度を改善する可能性があります。
結論
ASDを持つ子どもの母親が抱える抑うつや心理的助けを求める姿勢を改善するには、母親の抑うつ症状や対処戦略を考慮することが重要です。今後の予防や介入プログラムでは、母親が自分の抑うつをどのように捉え、それにどのように対処しているかを含めた支援が必要とされています。この研究は、ASDを持つ子どもの母親の心理的健康を向上させるための新たな視点を提供しています。
The Cognitive Profile in Adolescents With Anorexia Nervosa and the Relationship With Autism and ADHD: A Pilot Study
この研究は、神経性やせ症(AN)を持つ青年期の認知プロフィールと、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の特性との関連性を調査したパイロット研究です。また、ANを持つ青年とその親の間で認知プロフィールの類似性も検討されました。
主な結果
- 認知タスクの実施結果:
- 体重が回復したAN群は、Group Embedded Figures Test(特定の図形を複雑な背景から見つける課題)で比較群より高いスコアを記録(p < 0.001)。
- その他の**柔軟性(セットシフト)や中心的統合力(中央的結束性)**を測定するタスクでは、AN群と比較群の間に差は見られませんでした。
- 親子間の関連性:
- オブジェクト組み立てサブテストでは、父親と子どもの間に相関(r = 0.53, p = 0.035)が見られました。
- ASDとADHDの特性:
- ASDやADHDの特性は、AN群において一般的であることが確認されました。