オーストラリアにおける障害児の標準テスト受験決定に関する学校の説明責任
このブログ記事では、発達障害やASD、ADHDに関する最新の学術研究を取り上げています。ディープラーニングを用いた自閉症予測、早期介入サービスの受給における格差、発達遅滞児へのタブレットトレーニング、ADHD児のVRを用いたソーシャルスキルトレーニングなど、各研究は新たな介入や予測手法 、診断過程における障壁、教育や介護におけるサポート手段の向上に関する知見を提供しています。さらに、ゲーム依存症とADHDの共通遺伝的要因、食品汚染物質とASDリスクとの関連性、ADHD児のP300反応特性、自閉症特性が言語学習に与える影響、障害児の標準テスト受験決定に関する学校の説明責任など、幅広い分野での研究を紹介します。
学術研究関連アップデート
Deep learning approach to predict autism spectrum disorder: a systematic review and meta-analysis
この論文は、ディープラーニング(DL)技術を用いて自閉症スペクトラム障害(ASD)を予測する研究を体系的にレビューし、メタ分析を行ったものです。研究では、ASD分類の精度を評価するため、2023年4月16日までに発表された論文をPubMedやEMBASEなどで検索し、最終的に11件の予測試験(9495人のASD患者を含む)を含めました。DL技術のASD分類における全体の感度は0.95、特異度は0.93、AUC(曲線下面積)は0.98という結果が得られ、DLの高い予測精度が確認されました。サブグループ解析では、異なるデータセットによるばらつきがないことが示されましたが、研究間の異質性が大きく、臨床応用の実用性にはさらなる検証が必要であると結論づけています。
Disparities in Receipt of Early Intervention Services by Toddlers with Autism Diagnoses: an Intersectional Latent Class Analysis of Demographic Factors
この研究は、自閉症と診断された幼児に対する早期介入(EI)サービスの受給における格差を、社会的および人種的背景に基づいて調査しました。マサチューセッツ州で実施されたPart C EIプログラムにおいて、LCA(潜在クラス分析)を用いて、508人の参加者を人種、所得、言語などの複合的な属性に基づき分類し、異なるグループ間でのサービス受給時間を比較しました。結果、白人で米国生まれ、英語が堪能で貧困線以上の収入を持つ家庭の子どもは、平均12.0時間/週のサービスを受けたのに対し、ラテン系移民家庭の子どもは6.9時間/週と最も少ない時間しか受けていませんでした。診断時点での公平なアクセスにもかかわらず、人種や経済的要因による介入サービスの利用格差が残っていることが示され、平等なケア提供に向けたさらなる改善の必要性が示唆されました。
Tablet computer-based cognitive training for visuomotor integration in children with developmental delay: a pilot study - BMC Pediatrics
このパイロット研究は、発達遅滞(DD)を持つ子どもたちの視覚運動統合(VMI)を改善するために、タブレットを使った認知トレーニングの効果を評価しました。4~17歳のDDを持つ子ども10名が、12週間にわたり「Mind Rx Kids Program」による視覚空間および視覚運動トレーニングを受け、毎日30分間のトレーニングを実施しました。主要評価項目はBeery-Buktenica発達的視覚運動統合テスト(VMI-6)で、補助評価として上肢スキル(QUEST)、日常生活活動(WeeFIM)、自閉症評価スケール(CARS)、ADHD評価スケール(ARS)、およびスマホ依存スケールを使用しました。結果、VMIスコア(生スコア、標準スコア、パーセンタイル、等価年齢)およびQUESTとWeeFIMで有意な改善が見られましたが、CARS、ARS、スマホ依存スケールでの改善は有意ではありませんでした。結論として、タブレットによる認知トレーニングはVMIや細かな運動スキル、日常生活の活動を向上させ、デジタル依存を助長しないため、自宅で安心して活用できる可能性が示されました。
Therapist-Reported Adaptations to an Autism Intervention: Family-Level Predictors and Associations with Fidelity
この研究は、自閉症に対する証拠に基づいた介入(EBI)の適応について、以下の3点を調査しました:(1) セラピストが報告する介入の適応の因子構造の確認、(2) 適応タイプの予測因子の特定、(3) 適応タイプとセラピストの忠実度(介入が計画通りに実行される度合い)との関連です。コミュニティにおける効果試験に参加したセラピスト70名と自閉症児79名、その家族が対象です。結果、適応は「拡張的適応」と「削減・再構成適応」の2つのタイプに分類されました。拡張的適応は、子どもの認知機能が低い場合や自閉症特性が高い場合、また非ヒスパニック系の白人保護者の場合に多く見られ、削減・再構成適応も非ヒスパニック系白人保護者との関連が確認されました。適応の有無はセラピストの忠実度に影響を与えないことが分かり、セラピストが個別ニーズに応じた介入調整を行っても忠実度が損なわれないことが示唆されました。