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韓国におけるADHDとASD向け医療機器の開発動向

· 約23分
Tomohiro Hiratsuka

このブログ記事では、発達障害に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しています。自閉症スペクトラム障害(ASD)やADHDを持つ学生の高等教育におけるアクセスと包摂の課題、幼児のジェスチャー模倣能力、地域社会への障害者の統合を支援する介入方法、ADL向上のための行動管理学習メディアの開発、自閉症成人における便秘症状の診断方法、そして中等学校における自閉症学生のポジティブな経験に寄与する要因が含まれます。また、自閉症の人々のRSHケアにおけるニーズ、早期介入プログラムにおける親のオンラインコーチング、韓国におけるADHDとASD向け医療機器の開発動向、遠隔医療を活用した自閉症児の運動と睡眠の質向上、知的障害者向けの終末期ケアツールの共同設計、およびASDとOCDに見られる反復行動の区別に関する研究も取り上げられています。

学術研究関連アップデート

Neurodivergent (Autism and ADHD) student experiences of access and inclusion in higher education: an ecological systems theory perspective

この論文は、自閉症やADHDを持つ神経多様性の学生が高等教育(HE)において経験するアクセスとインクルージョン(包摂)の課題を、生態系システム理論の視点から分析しています。オーストラリアの15名の神経多様性学生へのインタビューを通じ、カリキュラムや評価、合理的配慮、学習空間、教員、学生サポートなどのミクロシステムの重要性を明らかにしています。また、フィードバックループという概念を初めて高等教育の研究に取り入れ、システムが学生に与える影響を探りました。これにより、教育機関のリーダーや教職員が、神経多様性学生のために教育環境のアクセスやインクルージョンを改善するための具体的な洞察を提供しています。

Gesture Imitation Performance and Visual Exploration in Young Children with Autism Spectrum Disorder

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ幼児におけるジェスチャー模倣のパフォーマンスと視覚的探索に関する研究です。これまでの研究では、ASDの子どもが模倣能力において低下が見られることが報告されていますが、視覚的注意と運動実行の要因が関与している可能性があります。この研究では、意味のあるジェスチャーと意味のないジェスチャーの模倣に焦点を当て、アイトラッキング技術を使用して子どもたちが動画の俳優のジェスチャーをどのように観察し、模倣するかを評価しました。

ASDを持つ子どもたちは、顔の刺激に対して視線を向ける時間が少ないものの、ジェスチャーの観察自体には健常児と差が見られませんでした。意味のあるジェスチャーの模倣は、ASDの症状が軽度な場合に良好な結果を示し、意味のないジェスチャーの模倣は非言語的な認知能力や細かい運動スキルと関連していました。この研究は、模倣行動の複雑性に対する理解を深め、ASDの子どもへの評価や介入プログラムにおける臨床的な示唆を提供しています。

Introduction to the Special Issue: Advancements in Interventions and Supports for People with Autism, Intellectual, and Developmental Disabilities to Improve Access to Inclusive community-Based Settings

この論文は、自閉症知的・発達障害を持つ人々が地域社会に参加できるようにするためのサポート介入に関する最新の研究を紹介する特集号の序論です。特集号では、非公式な教育環境での介入、プールサイドでの安全などの重要なスキルに関する介入、障害を持つ成人に焦点を当てた記事が含まれています。また、介入効果の長期フォローアップ、空港や非公式教育環境といった新しい場面での研究が含まれ、障害を持つ成人を対象にした研究も特徴です。

Development of Web-Based Learning Media on Behavior Management to Enhance Activities of Daily Living for Children with Autism Spectrum Disorder

この論文では、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもの日常生活活動(ADL)における行動管理を支援するためのウェブベースの学習メディアの開発について述べています。プロジェクトは2つのフェーズで構成され、最初のフェーズでは、8人の学校ベースの作業療法士がADLにおける課題と行動管理の戦略を特定しました。これらのデータを基に、学習メディアが開発され、作業療法士や専門家、90人の自閉症児の親にレビューされました。ウェブベースの教材は、以下の内容で構成されています:

  1. 自閉症児のADLパフォーマンスに影響を与える問題(食事、歯磨き、着替え、睡眠)を、行動的・感覚的な課題に分類。
  2. ADLパフォーマンス向上のための行動管理戦略(感覚統合、環境調整、行動修正)。

親の意見では、この学習メディアは理解しやすく、フォント、サイズ、色、ユーザーインタラクションが適切であると評価されました。

Symptoms of constipation in autistic adults: A systematic literature review on diagnostic methods and presence of actual symptoms

この論文は、自閉症の成人における便秘の診断方法と症状に関する体系的なレビューです。自閉症の人々は消化器系の問題を経験することが多く、特に便秘が一般的な懸念となっていますが、成人向けの特定の診断ガイドラインがないため、医療提供者が便秘を効果的に診断・治療することが困難です。2012年から2022年にかけての9つの研究を分析した結果、質問票や標準化された基準、観察など、診断に使用された方法はさまざまでした。また、多くの研究が子供や青少年に焦点を当てており、成人に関する症状の理解にギャップがあることが分かりました。公式な診断基準に含まれない睡眠障害問題行動などの症状が強調され、便秘の診断にはより広範な症状を考慮する必要があることが示唆されました。このレビューは、自閉症の成人に特化した診断ツールの開発が必要であることを指摘し、より正確な診断と治療の改善に繋がる可能性があるとしています。また、医療提供者には多様な症状を認識する重要性が強調され、政策立案者には年齢に応じたガイドラインの必要性を提言しています。

A systematic review: Which psycho-social-environmental factors do autistic students identify as being important for positive experiences in mainstream secondary school?

この論文は、自閉症の学生が通常の中等学校で前向きな経験をするために重要だと認識している心理的・社会的・環境的要因を調査した体系的レビューです。これまでの研究は自閉症の人々が学校で直面する課題に焦点を当てることが多かったのに対し、本研究は自閉症の学生がどのような要因によって学校での経験が向上するかを探っています。36件の研究をレビューし、青年期および成人期の自閉症の人々からの直接的な引用を分析しました。前向きな経験をもたらす重要な要因には、学校の大人や同級生から理解され、受け入れられること感覚や社会的環境を自分に合わせて調整できること、および興味を引く活動に参加できることが含まれていました。このレビューは、学校がより包括的で自閉症の学生にとって前向きな環境を作るための方法を明らかにしています。

Unmet need for autism-aware care for gynaecological, menstrual and sexual wellbeing

この研究は、自閉症の人々が婦人科、月経、性的健康(RSH)に関連する医療を受ける際に抱える困難を明らかにすることを目的としています。調査はイギリスで実施され、136人の成人が回答しました。調査結果によれば、自閉症の人々は、医療従事者(HCP)が自閉症がRSHにどのように影響するかをほとんど理解していないと感じており、一般的な医療体験にも影響を与えることが強調されています。また、HCPは自閉症に関連する特有のニーズを理解し、対応するためのトレーニングが不足していることが明らかになりました。調査では、自閉症に配慮したRSHケアが不十分であることが示され、さらなる研究によってHCPの知識を深め、改善に向けたリソースやトレーニングの開発が必要であると結論付けられています。

From Early Behavioral Intervention to School: A Systematic Evaluation of Parents' Perspectives on the Quality of the Autism Services During the Transition to Kindergarten

この研究は、早期行動介入(EBI)から幼稚園への移行期間中の自閉症サービスの質に対する親の認識を体系的に評価したものです。研究は、親が移行期間中に受けたサービスの質に対する認識を調査し、サービスのアクセス、継続性、妥当性、柔軟性、共感の5つの要素を評価しました。138家族を対象に、EBIの終了時、学校初年度の開始時と終了時の3つの重要な時期で評価が行われました。結果は全体的に好意的な認識が示されたものの、時間の経過とともに質の評価が低下し、特に妥当性において最大の低下が見られました。サービスの質に対する評価やその変化は、子どもの特性(性別、年齢、障害、問題行動)、親の特性(母親の出身地、公用語の流暢さ、教育水準)、家族の特性(子どもの人数)によって異なりました。この研究は、幼稚園への移行を支援するための改善の指針を提供するものです。

Parents' online coaching in the early intervention home program for toddlers with autism spectrum disorder during the COVID-19 pandemic: Manual development and feasibility study

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の幼児に対する早期介入ホームプログラムのための親向けオンラインコーチングマニュアルを開発し、その実現可能性を検証したものです。研究は3つの段階に分けて行われ、(I) マニュアルのコンセプトと内容の設計、(II) フォーカスグループディスカッションと専門家による内容の妥当性評価、(III) 認知インタビューと実現可能性の調査が行われました。マニュアルの内容妥当性指数(CVI)は高く、認知インタビューではマニュアルが理解しやすいとの評価が得られました。実現可能性調査では、8名の親すべてがコーチングセッションから利益を得たと報告し、87.5%の親が日常生活に活動を取り入れやすいと答えました。また、75%の親が子供の行動管理に自信を持つようになったと報告しています。親向けのコーチングは実現可能であり、受け入れられていることが確認されましたが、今後の研究でその効果をさらに検証する必要があります。

この論文は、韓国における注意欠如・多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断・管理に関連する医療機器の使用と開発に焦点を当てたレビューです。背景として、韓国の学校でADHDとASDが多く見られることが教師や特別支援教育に負担をかけている現状があり、技術の進歩が早期診断と治療の提供を通じて支援できる可能性があることが述べられています。

このレビューでは、韓国の医療機器開発の傾向をデジタル治療と従来の治療に分類し、デジタル治療は特に人工知能や機械学習、脳波・神経フィードバック技術に焦点が当てられています。一方、従来の治療は認知行動療法や診断スケール、音楽や文学療法などが含まれます。レビュー結果として、韓国ではデジタル技術を活用した治療が特に進展していることが強調されています。

今後、デジタル技術を取り入れた医療機器がADHDやASDの早期診断と介入を促進し、学校や教育現場の負担を軽減する役割を果たすことが期待されています。

Frontiers | Telehealth based parental support over six months improves physical activity and sleep quality in children with autism: A randomized controlled trial

この研究は、自閉症の子どもたちにおける運動活動(MVPA)と睡眠の質を改善するために、テレヘルスを活用した親のサポートの効果を調査したものです。34名の自閉症の子ども(平均年齢15.7歳)がランダムに、6ヶ月間の介入グループと対照グループに分けられました。両グループは学校で標準的な体育の授業を受けましたが、介入グループには放課後にテレヘルスを通じたサポートが追加されました。

6ヶ月後、介入グループは対照グループと比較して、日々のMVPAの時間がほぼ2倍に増加し、睡眠効率の改善起床時間、睡眠断片化、入眠までの時間の減少が見られました。また、子どもたちの睡眠に関する主観的な評価でも改善が確認されました。

結論として、テレヘルスと親のサポートの組み合わせは、自閉症の子どもの健康行動を改善し、他の遠隔支援を必要とする集団にも有効なモデルであることが示唆されています。

Reflections on an Evidence Review Process to Inform the Co‐Design of a Toolkit for Supporting End‐of‐Life Care Planning With People With Intellectual Disabilities

この論文は、知的障害者向けの終末期ケア計画を支援するツールキットの共同設計を行うために、既存のツールやリソースを特定するためのエビデンスレビュープロセスについて述べたものです。エビデンスレビューには、学術文献の迅速なスコーピングレビュー、グレイリテラチャーのデスクベース検索、未発表のリソースを収集するためのオンライン調査が含まれていました。このプロセスを通じて、現在使用されているツールやアプローチを特定し、選ばれたものを共同設計チームと共有しました。

エビデンスレビューは、知的障害者向けの新しい終末期ケアツールキットの設計に大いに役立ちましたが、使用した評価基準(AGREE II)は限界があることも分かりました。また、知的障害者自身も研究チームやアドバイザリーグループのメンバーとして深く関与しており、共同設計プロセスの全段階において参加しています。この研究は、エビデンスレビューが共同設計活動にどのように役立つかを強調し、特に知的障害者を含む研究での改良点も提案しています。

ASD or OCD? An evidence‐based differentiation of repetitive behaviors

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と強迫性障害(OCD)に見られる儀式的・反復的な行動が類似しているため、診断や適切な治療の実施が難しい点を論じています。OCDは、持続的で不快な思考(強迫観念)が強い不安や苦痛を引き起こし、それを軽減するために反復的な行動(強迫行為)を行うのが特徴です。一方、ASDは、社会的コミュニケーションの持続的な困難や限定的・反復的な行動(RRB)、機能障害を伴う発達障害として定義されます。

診断が複雑になる場合も多く、特に併存症があるとさらに難しくなります。この違いを明確にするためには、行動の進行状況とその目的を評価することが重要です。正確な区別ができれば、青年や家族へのサポートがより効果的に行えるとしています。