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アメリカでの自閉症の有病率と治療パターンに関するトレンド分析(2017-2020)

· 約16分
Tomohiro Hiratsuka

この記事では、自閉症やダウン症の子どもたち、さらには彼らの家族に関するさまざまな研究を紹介しています。サイケデリック薬の体験が自閉症の成人に与える影響や、ダウン症の幼児向けの社会的コミュニケーション介入の効果を評価した研究、アメリカでの自閉症の有病率と治療パターンに関するトレンド分析、自閉症児における不安とそのリスク要因を調査した研究、腸内細菌と自閉症の関連性を探る研究、また、低所得層の幼稚園児に対する実行機能トレーニングプログラムのパイロットスタディや、自閉症のリスクが高い幼児のごっこ遊びにおける親の関わり方の研究、自閉症の人々が不明瞭な音声理解においてジェスチャーの助けを受ける可能性についての研究、自閉症児の親と非自閉症児の親を対象にセルフコンパッションと精神的健康の関係を比較した研究も紹介します。

学術研究関連アップデート

Perceived changes in mental health and social engagement attributed to a single psychedelic experience in autistic adults: results from an online survey

この論文は、自閉症の成人が経験したサイケデリック薬の影響を調査したオンライン調査の結果を報告しています。233名の自閉症の参加者が、最も「影響力のあった」サイケデリック経験に関連する心理的および社会的変化について回答しました。その結果、82%が心理的苦痛の軽減、78%が社会不安の減少、70%が社会的な関与の増加をその経験に帰していることが示されました。ただし、20%は不安の増加などの望ましくない影響も報告しており、一部はその経験を人生で最もネガティブな体験の一つと感じていました。心理的苦痛の軽減に最も強く関連していたのは、心理的柔軟性の向上でした。結論として、自閉症の成人は単一のサイケデリック体験が精神的健康や社会的な関与に変化をもたらすと認識していますが、調査の非実験的なデザインやサンプリングの偏りに留意する必要があります。

Evaluating an early social communication intervention for young children with Down syndrome (ASCEND): results from a feasibility randomised control trial - Pilot and Feasibility Studies

この論文は、ダウン症の幼児向けに親が提供する早期の社会的コミュニケーション介入「ASCEND」の実現可能性を評価したランダム化比較試験(RCT)の結果を報告しています。研究では、子供たちの初期の社会的コミュニケーションスキル、特に共有注意に対する応答を促進することを目的とし、英国のNHSの言語療法サービスを通じて実施されました。20名の子供(11〜36ヶ月)を対象に、10名が介入群、9名が対照群にランダムに割り当てられました。

結果として、親や言語療法士からは介入の受け入れが良好で、治療の遵守率も高く、データ収集の面でも問題がなかったことが示されました。健康経済データも介入が低コストであることを示唆しており、将来的に290名の参加者を対象にした本格的なRCTが可能であると結論づけられました。

この論文は、2017年から2020年にかけて米国の子どもと青年における自閉症スペクトラム障害(ASD)の有病率と治療パターンについて分析したものです。国家児童健康調査(NSCH)からのデータを使用し、年齢、性別、所得、保険状況、そして人種/民族による違いを評価しました。

結果として、3歳から17歳の子どもたちのASD有病率は2.94%であり、年齢が高くなるほど有病率が上昇し、男子の方が女子より有病率が高いことが分かりました。人種/民族による差異も確認され、ヒスパニック系の子どもが最も高い有病率を示しました。また、家庭の収入や保険の有無が診断や治療アクセスに大きく影響していることが分かりました。

治療に関しては、約3分の2のASD児が何らかの治療を受けており、39%は行動療法のみ、21%は行動療法と薬物療法の両方を受けていました。全体的な治療パターンは安定しているものの、年齢や保険状況によって影響を受けることが示されています。

結論として、ASDの有病率は安定している一方で、人種/民族や社会経済的な要因による格差が依然として存在し、これらに対応した医療戦略の必要性が強調されています。

Anxiety in children and adolescents with autism spectrum disorder: behavioural phenotypes and environmental factors

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供や青年における不安のリスク要因を調査しています。5〜18歳の262人(42%がASD)の参加者を対象に、不安、ASDの症状の重症度、注意欠陥/多動、感情的問題、抑うつ症状、親の養育スタイル、ストレス、その他の環境要因を評価しました。人工ニューラルネットワークを使用したデータ解析により、不安の程度に基づく3つの異なるプロフィール(低、不安中程度、不安高)を特定しました。

結果として、抑うつ症状や仲間との問題が不安の程度に大きな影響を与えていることが分かりました。ASDを持つ子供にとって、仲間との困難は社会的能力の課題に関連しており、これが抑うつ症状を悪化させる可能性があります。

この研究は、不安を抱えるASDの子供たちに対して、抑うつ症状の評価と社会的コミュニケーション能力の強化が重要であることを示しており、個別化された介入策の開発に役立つ可能性があります。

Turicibacter and Catenibacterium as potential biomarkers in autism spectrum disorders

この論文では、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する腸内微生物の組成について、レバノンのASD児、彼らの非影響を受けた兄弟姉妹、そして健常な対照群を対象に16S-rRNAシーケンスを使用して調査しました。研究結果から、ASDおよび兄弟姉妹のグループでは、Turicibacterが少なく、Proteobacteriaが増加していることが示され、腸内微生物が食生活や生活環境、遺伝的要因によって影響される可能性が示唆されました。また、BacteroidetesがASD群で低く、CatenibacteriumとTenericutesがASD群で増加していることが確認されました。これにより、TuricibacterとCatenibacteriumの変化がASDと関連する可能性が示され、腸内細菌とASDの関係に関する証拠がさらに強化されました。

Pilot Study of Smart Moves: An Executive Functioning Training Program with Kindergarteners at a Title I School

この論文は、低所得層にある子どもたち(LIEM)の実行機能(EF)訓練プログラム「Smart Moves」のパイロットスタディの結果を報告しています。14人の幼稚園児を対象に、ゲーム形式のプログラムを小グループで8週間実施しました。プログラムは、認知負荷を増やしながら自己調整能力を教えるメタ認知要素を含んでいます。結果として、参加者の85%がプログラムを完了し、標準化されたEF測定で有意な改善が見られました(行動的自己制御でCohen’s dが0.70と1.36、コンピュータ化された課題で0.40、対立解決課題で0.61、教師評価で0.68)。この研究は、EF訓練が教室での行動にも転移する可能性があることを示し、さらなる研究が必要であることを強調しています。

Cultivating the imagination: Caregiver input during pretend play with toddlers at elevated likelihood for autism

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスクが高い幼児(EL幼児)と定型発達の幼児(TL幼児)における、親が家庭での遊びにどのように関わるかを調査したものです。18か月および36か月時点で、ASDの兄弟を持つリスクが高い幼児(EL)は、ASDの診断がついたグループ(EL-ASD)、診断なしのグループ(EL-ND)、言語遅延のあるグループ(EL-LD)に分類されました。親の発話は、幼児の遊びの行動に関連するものとして分類されました。研究結果として、すべての親は複雑なごっこ遊びについて話す割合が時間とともに増えましたが、36か月時点では、EL-ASD幼児の親は他のグループと比較して、ごっこ遊びに関連する発話が少なく、また幼児の行動に関連する発話も少なかったことが分かりました。この研究は、幼児の遊びに対する親の高い適応能力を示し、親と幼児の間の相互作用が遊びにどのように影響するかを強調しています。

Autistic individuals benefit from gestures during degraded speech comprehension

この論文は、自閉症の人々が、音声が不明瞭な状況で意味のある手のジェスチャーを使うことで、発話理解をどのように助けられるかを調査したものです。従来の研究では、自閉症の人々は手のジェスチャーを処理する方法が異なり、騒音があるなどの不利な条件下では、非自閉症の人々ほどジェスチャーが役立たないと考えられていました。本研究では、参加者に、女性がオランダ語の動詞を発話しながら意味のあるジェスチャーをするかしないか、または音声が明瞭か不明瞭なビデオを見せ、動詞を識別するタスクを行わせました。その結果、予想に反して、自閉症の人々も非自閉症の人々と同様に、ジェスチャーを使って不明瞭な発話を理解することができることが分かりました。この研究は、ジェスチャーがコミュニケーションを助ける有効な手段であり、特に不利なコミュニケーション環境で役立つことを示しています。

Self-compassion, mental health, and parenting: Comparing parents of autistic and non-autistic children

この研究は、自閉症の子どもを持つ親とそうでない親におけるセルフコンパッション(自己慈悲心)、精神的健康、そして子育て経験との関連性を調査したものです。178人ずつの自閉症児の親と非自閉症児の親を対象に比較を行った結果、自閉症児の親はセルフコンパッションが低い傾向にありました。どちらのグループにおいても、セルフコンパッションが高いほど、精神的苦痛や子育てのストレスが低く、幸福感や子育て能力が高いことが確認されました。非自閉症児の親では、精神的苦痛と幸福感の両方がセルフコンパッションと子育て経験の間に介在する役割を果たしていましたが、自閉症児の親では、幸福感のみが介在役割を果たしていることがわかりました。この研究は、自閉症児の親にとって、セルフコンパッションと幸福感が子育て経験の向上に重要であることを強調しています。