この記事では、自閉症やダウン症の子どもたち、さらには彼らの家族に関するさまざまな研究を紹介しています。サイケデリック薬の体験が自閉症の成人に与える影響や、ダウン症の幼児向けの社会的コミュニケーション介入の効果を評価した研究、アメリカでの自閉症の有病率と治療パターンに関するトレンド分析、自閉症児における不安とそのリスク要因を調査した研究、腸内細菌と自閉症の関連性を探る研究、また、低所得層の幼稚園児に対する実行機能トレーニングプログラムのパイロットスタディや、自閉症のリスクが高い幼児のごっこ遊びにおける親の関わり方の研究、自閉症の人々が不明瞭な音声理解においてジェスチャーの助けを受ける可能性についての研究、自閉症児の親と非自閉症児の親を対象にセルフコンパッションと精神的健康の関係を比較した研究も紹介します。
学術研究関連アップデート
Perceived changes in mental health and social engagement attributed to a single psychedelic experience in autistic adults: results from an online survey
この論文は、自閉症の成人が経験したサイケデリック薬の影響を調査したオンライン調査の結果を報告しています。233名の自閉症の参加者が、最も「影響力のあった」サイケデリック経験に関連する心理的および社会的変化について回答しました。その結果、82%が心理的苦痛の軽減、78%が社会不安の減少、70%が社会的な関与の増加をその経験に帰していることが示されました。ただし、20%は不安の増加などの望ましくない影響も報告しており、一部はその経験を人生で最もネガティブな体験の一つと感じていました。心理的苦痛の軽減に最も強く関連していたのは、心理的柔軟性の向上でした。結論として、自閉症の成人は単一のサイケデリック体験が精神的健康や社会的な関与に変化をもたらすと認識していますが、調査の非実験的なデザインやサンプリングの偏りに留意する必要があります。
Evaluating an early social communication intervention for young children with Down syndrome (ASCEND): results from a feasibility randomised control trial - Pilot and Feasibility Studies
この論文は、ダウン症の幼児向けに親が提供する早期の社会的コミュニケーション介入「ASCEND」の実現可能性を評価したランダム化比較試験(RCT)の結果を報告しています。研究では、子供たちの初期の社会的コミュニケーションスキル、特に共有注意に対する応答を促進することを目的とし、英国のNHSの言語療法サービスを通じて実施されました。20名の子供(11〜36ヶ月)を対象に、10名が介入群、9名が対照群にランダムに割り当てられました。
結果として、親や言語療法士からは介入の受け入れが良好で、治療の遵守率も高く、データ収集の面でも問題がなかったことが示されました。健康経済データも介入が低コストであることを示唆しており、将来的に290名の参加者を対象にした本格的なRCTが可能であると結論づけられました。
Prevalence Trends and Treatment Patterns of Autism Spectrum Disorder Among Children and Adolescents in the United States from 2017 to 2020
この論文は、2017年から2020年にかけて米国の子どもと青年における自閉症スペクトラム障害(ASD)の有病率と治療パターンについて分析したものです。国家児童健康調査(NSCH)からのデータを使用し、年齢、性別、所得、保険状況、そして人種/民族による違いを評価しました。
結果として、3歳から17歳の子どもたちのASD有病率は2.94%であり、年齢が高くなるほど有病率が上昇し、男子の方が女子より有病率が高いことが分かりました。人種/民族による差異も確認され、ヒスパニック系の子どもが最も高い有病率を示しました。また、家庭の収入や保険の有無が診断や治療アクセスに大きく影響していることが分かりました。
治療に関しては、約3分の2のASD児が何らかの治療を受けており、39%は行動療法のみ、21%は行動療法と薬物療法の両方を受けていました。全体的な治療パターンは安定しているものの、年齢や保険状況によって影響を受けることが示されています。
結論として、ASDの有病率は安定している一方で、人種/民族や社会経済的な要因による格差が依然として存在し、これらに対応した医療戦略の必要性が強調されています。
Anxiety in children and adolescents with autism spectrum disorder: behavioural phenotypes and environmental factors
この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供や青年における不安のリスク要因を調査しています。5〜18歳の262人(42%がASD)の参加者を対象に、不安、ASDの症状の重症度、注意欠陥/多動、感情的問題、抑うつ症状、親の養育スタイル、ストレス、その他の環境要因を評価しました。人工ニューラルネットワークを使用したデータ解析により、不安の程度に基づく3つの異なるプロフィール(低、不安中程度、不安高)を特定しました。
結果として、抑うつ症状や仲間との問題が不安の程度に大きな影響を与えていることが分かりました。ASDを持つ子供にとって、仲間との困難は社会的能力の課題に関連しており、これが抑うつ症状を悪化させる可能性があります。
この研究は、不安を抱えるASDの子供たちに対して、抑うつ症状の評価と社会的コミュニケーション能力の強化が重要であることを示しており、個別化された介入策の開発に役立つ可能性があります。