このブログ記事では、社会と学術研究に関する最新の情報を紹介しています。特に、アメリカの労働者がメンタルヘルス関連の休暇を申請する際の困難、COVID-19パンデミック中の有色人種の母親が障害を持つ子供を育てる際の特有の課題、統合失調症患者におけるADHDとASDを区別する遺伝的リスクスコアが認知機能と皮質構造に与える影響、ポルトガル語でのオンラインスピーチトレーニングアプリの開発と評価、ASDの診断年齢と患者中心の医療ホームの関連、自閉症特性との関連を含む瞳孔伝染の調査、知的・発達障害を持つ個人の口腔衛生管理におけるテレモニタリン グデバイスの効果、発達性言語障害を持つ幼児と典型的発達の幼児の統計的学習能力の比較、危険廃棄物への曝露が子供の神経発達に与える影響、馬療法の自閉症児への利点、VRを利用した運動プログラムがASDを持つ子供の感情調整と実行機能に与える効果、発達性ディスレクシアにおける視覚の視床の機能障害、そしてADHD、ASD、併存するうつ病を持つ患者の腹部ノシプラスティック痛の治療事例などについて紹介します。
社会関連アップデート
The Battle Over Disability Pay and Mental-Health Leave
この記事では、アメリカの労働者がメンタルヘルスの問題に対して有給休暇や障害手当を申請する際に直面する困難について取り上げています。特に、メンタルヘルス関連の請求が、骨折などの明確な医療問題に比べて否認される率が高いことが指摘されています。
学術研究関連アップデート
Parental Concerns during the COVID-19 Pandemic: Intersections for Racialized Mothers of Children with Disabilities
この論文では、COVID-19パンデミック中における障害を持つ子供を育てる有色人種の母親が直面する特有の課題とストレスについて調査しています。研究は、カナダの全国調査「Crowdsourcing: Impacts of COVID-19 on Canadians-Parenting During the Pandemic, 2020」のデータを使用し、特に障害を持つ子供を育てる母親に焦点を当てました。12,624人の非先住民の母親を対象に分析を行った結果、障害を持つ子供を育てる有色人種の母親は、他のグループよりも子供と家族に対する懸念が著しく高いことが明らかになりました。また、未就学児を持つ親は学齢期の子供を持つ親よりも育児に対する懸念が少ない一方で、家族に対する懸念はやや高い傾向がありました。この研究は、パンデミック初期における障害を持つ子供を育てる有色人種の母親の育児に関する懸念の重要性を強調し、社会的影響や政策的な示唆についても考察しています。
Associations of polygenic risk scores differentiating attention-deficit hyperactivity disorder from autism spectrum disorder with cognitive and cortical alterations in Schizophrenia patients
この研究は、統合失調症(SCZ)患者において、自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)を区別するポリジェニックリスクスコア(PRS)が、認知機能障害と皮質構造の変化に関連しているかを調査しました。9,315人のASD患者と11,964人のADHD患者のデータを用いて、ASDとADHDを区別するPRSを計算し、168人のSCZ患者に適用しました。認知機能はWAIS-IIIで評価し、皮質の表面積と厚さはFreeSurferで解析しました。
結果として、ADHDのリスクが高いPRSはSCZ患者の作業記憶(WM)の低下と関連し、ASDのリスクが高いPRSは左内側眼窩前頭、左嗅内、左中心後、右紡錘および左紡錘皮質の表面積の減少と関連していました。また、ADHDのリスクが高いPRSは両側の横側頭領域の皮質厚の減少と関連していました。
この研究は、ADHDとASDを区別する遺伝的要因が、SCZ患者の皮質構造と認知機能に影響を与えることを示し、SCZの異質性が他の神経発達および精神障害に関連する遺伝的要因に部分的に由来する可能性を示唆しています。
A mobile application and system architecture for online speech training in Portuguese: design, development, and evaluation of SofiaFala
この論文は、ポ ルトガル語でのオンラインスピーチトレーニングを支援するモバイルアプリケーション「SofiaFala」の設計、開発、評価について説明しています。SofiaFalaは、神経発達障害を持つ人々、特にダウン症の人々のためのスピーチセラピーを支援するために設計されており、無料で利用できます。開発プロセスには、言語病理学者、親、介護者、そしてスピーチ障害を持つ子供たちが積極的に参加しました。論文では、SofiaFalaの設計、機能、使用負荷、実験研究の結果についても詳述されています。さらに、関連する研究の分析やSofiaFalaの機能の導出、アプリのソフトウェアアーキテクチャの開発、フィールドスタディによる評価、実装プロセスでの主要な課題への対処方法についても説明しています。SofiaFalaは、コミュニケーションの効果を最大化し、ユーザーの言語スキルを向上させ、スピーチ障害を持つ人々の生活の質を向上させることを目的としています。
Age of Autism Spectrum Disorder Diagnosis and Patient-Centered Medical Home Components
この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断がサービスの提供を促進し、介入を通じて機能向上の機会を高めることを強調しています。研究の目的は、患者中心の医療ホーム(PCMH)モデルの構成要素とASD診断年齢の関連を評価することです。PCMHは、中央集約型でアクセス可能かつ調整されたケアを重視する医療モデルです。本研究は、ASDを持つ17歳以下の子供を対象とした全国調査データを用いた横断的観察研究で、1,193人の子供の保護者が参加しました。階層的多重線形回帰分析を実施し、ASD診断年齢とPCMHの全体的な代理変数および5つの個別構成要素(通常のケア源、個人的な医師または看護師、家族中心のケア、ケア調整、必要時の紹介取得)との関連を調査しました。結果として、PCMHの全体的な代理変数はASD診断年齢と有意な負の関連を示し(標準化ベータ係数=−.08; p < .01)、特に通常の病気時のケア源が診断年齢と有意に関連していました(標準化ベータ係数=−.11; p < .01)。このことから、通常の病気時のケア源を持つことが、子供や青年にとってASDの早期診断に重要である可能性が示唆されました。
Pupil contagion variation with gaze, arousal, and autistic traits
この論文は、瞳孔の大きさが他人の瞳孔の大きさに無意識に適応する「瞳孔伝染」と、その関連する覚醒度、視線、および自閉症特性との関係を調査しています。自然な子供の顔の画像(小さな瞳孔または大きな瞳孔を描写)を、広範な自閉症特性を持つ子供や青年のグループに提示し、そのうち3分の1は自閉症と診断されています。研究では、瞳孔の大きさ の変化、心拍数、および皮膚電気反応を通じて、自律神経系の反応を反映する瞳孔伝染の程度を調査しました。また、覚醒反応と自閉症特性の程度との関連も調べました。結果として、瞳孔伝染とそれに伴う心拍数の変化が、視線が顔の目の領域に制限されると明らかになり、皮膚電気反応の変化は見られませんでした。さらに、瞳孔伝染と自閉症特性の間には正の関連が見られました。この研究は、瞳孔伝染のメカニズムと自閉症との関連についての理解を深めるものです。
Oral hygiene changes & compliance with telemonitoring device in individuals with intellectual/developmental disabilities: a randomized controlled crossover trial
この研究は、知的・発達障害を持つ個人の口腔衛生管理におけるテレモニタリングデバイス(スマート歯ブラシ)の効果を評価しました。ランダム化クロスオーバートライアルで、参加者は最初にテレモニタリングデバイスを使用するグループと後で使用するグループに分けられ、一ヶ月のウォッシュアウト期間を挟みました。結果として、テレモニタリングデバイス使用時には歯垢指数が大幅に減少し、歯磨きの頻度、時間、協力が増加しましたが、手動歯ブラシに切り替 えた後はこれらの効果が減少しました。口腔微生物の変化には有意な差は見られませんでした。この研究は、テレモニタリングデバイスが知的・発達障害を持つ個人の口腔衛生を改善する効果があることを示していますが、手動歯ブラシに戻るとその効果は持続しないことも示しています。
Statistical Learning Among Preschoolers With and Without Developmental Language Disorder: Examining Effects of Language Status, Age, and Prior Learning
この研究は、発達性言語障害(DLD)を持つ幼児と典型的発達(TD)の幼児の統計的学習能力を比較し、2つの人工文法の学習を評価しました。4歳と5歳のDLDおよびTDの幼児を対象に、簡単な文法(aX)とより複雑な文法(abX)の学習を行い、新しい要素を含む文法パターンの一般化をテストしました。結果として、4歳児のDLDおよびTDグループはどちらの文法テストでも同等のパフォーマンスを示し、どちらのグループもチャンスを超える正確さを示しませんでした。一方、5歳児のTD参加者はaXテストでDLD参加者よりも有意に高いスコアを示しましたが、abXスコアには差がありませんでした。5歳児のDLD参加者はどのテストでもチャンスを超えることはありませんでしたが、TD参加者はすべての文法学習結果でチャンスを超えました。回帰分析により、aXパフォーマンスがTD参加者のabX文法学習結果を予測することが示されました。この結果は、DLDを持つ幼児が統計的学習において典型的な同年代の子供に比べて劣っているが、年齢と文法構造の種類によってその差が異なることを示しています。
Neurodevelopmental outcomes in children living near hazardous waste sites: a systematic review
この論文は、危険廃棄物(HW)の不適切な管理が生態系と人間の健康に与える深刻な脅威を調査し、HWへの居住地曝露と子供の神経行動への影響に関する証拠を評価したシステマティックレビューです。国際機関のウェブサイトとMEDLINEおよびEMBASEデータベースを利用して「人口-曝露-比較-結果」の質問形式で検索を行い、75件の研究を審査し、9件が適格基準を満たしました。これらの研究は、HWサイトへの居住地曝露と子供の神経発達への負の影響との関連を一致して示しています。特に、鉛を放出するHWサイトと認知障害との関連は十分な証拠があると評価されましたが、自閉症スペクトラム障害についての証拠は不十分とされました。この結果は、汚染されたサイトの環境修復と違法および不適切なHW管理慣行に対抗する緊急性を示しています。
'The Horse Weaves Magic': Parents and Service Providers on the Benefits of Horse-Based Therapies for Autistic Children-an Australian Qualitative Study
このオーストラリアの質的研究は、自閉症の子供たちに対する馬を使った療法の利点について、親とサービス提供者の経験を理解することを目的としています。研究は、6人の親(母親4人、父親2人)と馬療法サービスのスタッフ8人への12のインタビューを通じて行われました。結果として、親とサービス提供者の間で共通して認識された3つの主要テーマが浮かび上がりました。1つ目は、健康、自律管理スキル、社会的スキルなどの身体的および社会的な利益です。2つ目は、精神的健康の保護です。3つ目は、馬療法の改善とアクセス向上に関する提言です。特に、長年馬療法に関わってきたサービス提供者は、幸福感、落ち着き、回復力、良好な精神的健康を促進する上で、馬療法が自閉症の子供たちにとって実際的かつ潜在的な利益をもたらすと評価しています。
The Impact of Virtual Reality Intervention on Emotion Regulation and Executive Functions in Autistic Children
この研究は、仮想現実(VR)を利用した運動プログラムが自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供たちの感情調整(ER)と実行機能(EFs)の改善に有効かどうかを調査しました。7歳から10歳のASDと診断された40人の男児を、VR介入グループ(20人)と対照グループ(20人)にランダムに分けました。介入グループはVRプログラムに参加し、対照グループは座りがちなビデオゲームに従事しました。8週間の介入前後で、フランカータスクとウィスコンシンカードソーティングタスクを用いてEFsを評価し、親は感情調整チェックリストを用いて子供のERスキルを評価しました。
結果として、介入グループは対照グループに比べてERスキルとEFsが有意に向上しました(P < 0.05)。この研究は、VR運動がASDの子供たちのERとEFsの向上に役立つ可能性があり、伝統的な教育戦略を補完する有効な介入法となり得ることを示唆しています。
Dysfunction of the magnocellular subdivision of the visual thalamus in developmental dyslexia
この研究は、発達性ディスレクシア(DD)における視覚の視床の大細胞性部分 (M-LGN)の機能障害を調査しました。以前の研究でDDの特徴とされるM-LGNの形態変化が確認されていましたが、技術的な課題により生体内での検証は困難でした。本研究では、最新の高解像度磁気共鳴画像法(7テスラMRI)を使用し、26名のDD患者と28名の対照者を対象にM-LGNの機能とミエリン化を比較しました。
結果として、DD患者は対照者と比較してM-LGNの異常な反応と機能の側性化の違いが見られました。これらの変化は、特に男性のDD患者において、迅速な文字と数字の命名(RANln)のパフォーマンスと関連していました。一方、視床のもう一つの主要な部分であるP-LGNは、グループ間で同様の反応を示しました。
この研究は、M-LGNの変化がDDの重要な特徴であり、その機能と微細構造に影響を与えることを初めて明確に示しました。これにより、DDの診断と治療戦略に対する性別特異的な理解が深まりました。