発達障害に関して、早期診断や早期療育の重要性が説かれることは多くありますが、なぜ早めに療育を開始することが重要なのかその詳細に関して説明されているものは多くありません。 今回は、2009年にResearch in Autism Spectrum Disordersに掲載された、「The effects of age and treatment intensity on behavioral intervention outcomes for children with autism spectrum disorders」(意訳:自閉症スペクトラム児への行動介入の効果における支援強度と年齢の影響)を一つ題材として、なぜ早期療育が重要と言われているのか理解してみます。
はじめに
発達障害に関して、早期診断や早期療育の重要性が説かれることは多くありますが、なぜ早めに療育を開始することが重要なのかその詳細に関して説明されているものは多くありません。 今回は、2009年にResearch in Autism Spectrum Disordersに掲載された、「The effects of age and treatment intensity on behavioral intervention outcomes for children with autism spectrum disorders」(意訳:自閉症スペクトラム児への行動介入の効果における支援強度と年齢の影響)を一つ題材として、なぜ早期療育が重要と言われているのか理解してみます。
調査方法
この論文の中では、245名の自閉症スペクトラム児および特定不能の広汎性発達障害児に対して、早期集中行動的介入(EIBI)を個別に4ヶ月間提供し、その介入の中で獲得したスキルの割合と年齢の関係を回帰分析を用いて検討しています。 また対象となっている245名の児童は、379名の行動療法を受けている児童から下記の条件にあった児童を選出しています。
条件
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生後16ヶ月〜12才
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研究対象期間中に少なくとも平均して20時間以上(月)の療育を受けている
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少なくとも1月に1つ以上のスキルを獲得している
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療育開始から1月未満である児童および、4年以上継続して療育を受けている児童を除外する
調査結果
青いラインが2-5.15才のグループ、緑が5.15-7.14才のグループです。 結果として明らかになったのは、より幼い時期に療育を提供すると、提供時間対スキル獲得数のパフォーマンスが、高年齢のグループと比較して有意に高いということです。また2-5.15才、5.15-7.14才のいずれのグループにおいても、支援量の増加に伴ってスキル獲得量が増加しています。 一方で7.14〜12才グループに関してのグラフがこの画像上でみられないのは、今回の実験においては、支援の提供時間とスキル獲得量に有意な相関が得られず、平均して月に約17個のスキルを獲得することが観察されたからです。 つまり、より早い時期に療育を開始することは、スキル獲得に関して高い時間対効果が望めるということと、7才以下の児童に関しては、より支援提供時間が長いとその分効果(スキル獲得に関して)も高まるということが示唆されています。 一方で支援効果を測定する上で困難な条件は、それが純粋に支援のみによって担われたのか、という点です。というのは、児童が起きている時間と支援を提供する時間は、当然起きている時間の方が長くまたその間にも児童が学習することは可能であるからです。この点に関しては厳密に24時間すべての行動を記録しているわけではないので、自然な学びが生じていたかどうかそのプロセスに関して分析はされていません。 より詳細に、条件や分析方法に関して知りたいという方は是非原文をご覧になってください。
今回は、年齢と支援量が支援結果にどのように影響しているのか?そこに関係性はあるのかということを調べた論文を扱って、早期療育の重要性を検討してみました。早期集中介入が重要である大きな理由は、時間対効果という点と、支援提供量とスキル獲得量が比例のような関係にあることが7才以下の時に確認されている点、これら2点にあるのだと考えられます。グラフで見ると結構違うのだなあということが理解できていいですね。
*早期集中介入以外の方法を否定するための文章ではなく、あくまでなぜ早期集中的な介入を行うことが良いとされているのか検討してみたものです。