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ADHDと慢性痛の関係

· 33 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

この記事では、自閉スペクトラム症(ASD)の診断率上昇に関する社会的議論から、VRやAI技術を活用したASD支援、ADHDと慢性痛の関係、ディスレクシアにおけるセルフ・コンパッションの意義、向精神薬に対する親の認識、溺水リスクに関するASD児の水の安全など、医学・教育・福祉・技術の各分野での重要な研究成果を取り上げています。いずれも、支援の質を高めるための科学的な知見や、政策・実践への示唆を含んでおり、発達障害をめぐる多面的な課題とその解決へのアプローチが集約された内容です。

社会関連アップデート

Opinion | The Madness in RFK Jr.’s Autism Method

📰 RFK Jr.の「自閉症対策」には懸念も──科学の信頼性は守られるべきか?

2025年9月までに自閉症の原因究明を目指すと宣言したロバート・F・ケネディJr.長官。その「本気の姿勢」は評価されつつも、医師であるNicole Saphier氏は、「方法」に対して強い懸念を表明しています。複雑な自閉症の成因を単純化するリスクや、信頼性に欠ける研究者の登用が、科学的な前進をむしろ阻むのではないかという指摘がなされており、政治よりもエビデンス重視の姿勢が今こそ求められていることを訴えます。

「本当に家族のためになる支援とは何か?」を問い直す視点から、一読の価値ある論考です。

学術研究関連アップデート

Assessment and intervention with virtual reality technology for children aged 3–12 years with autism spectrum disorders: A scoping review

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある3~12歳の子どもに対して、バーチャルリアリティ(VR)技術がどのように活用されているかを包括的に整理したスコーピングレビューです。


✅ 目的と背景

これまでにもVRがASDの子どもに有効だという研究は多くありましたが、「どの種類のVR技術が、どのような目的で使われているのか」についての整理は不足していました。そこで本研究では、52本の研究論文を対象に、**評価(アセスメント)と介入(トレーニングや支援)**の両面から、VR技術の活用方法を明らかにしました。


🔍 主な内容と結果

  1. 研究対象に偏り
    • 多くの研究が**6〜12歳の比較的高機能なASD児(軽度〜中等度)**を対象にしており、3〜5歳の低年齢や重度のASD児は対象外になりがち
  2. VRは有効
    • VRは、ソーシャルスキルの学習、行動観察、感覚トレーニングなどにおいて有効とされ、評価ツールとしても介入手段としても効果あり
  3. HMD型VRの課題
    • 頭に装着するタイプのVR(HMD VR)は、ASD児にとって感覚過敏を引き起こしやすい可能性があり、段階的に慣らす(脱感作)工夫が必要とされる。
  4. 最も多く使われているのはDesktop VR
    • *パソコンやタブレットを通して体験するVR(Desktop VR)**が、最も多くの研究で使用されていた。

🧠 結論と今後の課題

  • VRはASD支援に有望なツールであり、HMD、Desktop、Handheld、プロジェクター型、CAVE(部屋全体が仮想空間)型など、複数のタイプすべてに一定の効果がある
  • 一方で、年齢が低い子や重度の子どもへの応用はまだ研究が不十分であり、今後の課題となっている。

この論文は、VRを使ったASD支援に取り組む教育・医療・福祉関係者にとって、技術選定や対象児の理解に役立つレビューです。また、テクノロジーをどう安全に、効果的に使うかを考えるうえでのガイドラインにもなり得ます。

Correlation between attention deficit/hyperactivity disorder and chronic pain: a survey of adults in Japan

この研究は、日本国内の成人を対象に、ADHD(注意欠如・多動症)と慢性痛との関連性を調査したものです。痛みを抱える人の中に、ADHDの傾向を持つ人が多いのではないかという疑問に答える形で行われました。


🔍 研究の概要

  • 対象:20〜64歳の成人4,028人(過去4週間に身体のどこかに痛みを経験した人)
  • 方法:
    • 痛みの程度は0〜10点のNRS(数値評価スケール)で評価
    • ADHDとASDの傾向は、それぞれASRS(成人ADHD自己記入式質問票)と自閉スペクトラム指数で測定
    • *メンタルヘルスの問題(PMH)**も併せて評価し、ADHD傾向と痛みとの因果関係を分析

📊 主な結果

  • 慢性痛ありのグループ(1,465人)は、慢性痛なしの人(2,563人)よりADHDの傾向が強いと評価された
  • ADHD傾向のある人ほど、痛みの強さが高くなる傾向
    • 特に**「非常に強い痛み」を訴える人のうち38.3%がADHD傾向あり**
  • ADHD傾向と慢性痛との関連(相関係数0.26)は、メンタルヘルスの問題(相関係数0.09)よりも強かった
  • ASDの傾向は、慢性痛とは有意な関連がなかった

✅ 結論と意義

  • ADHDの傾向がある成人は、慢性的な強い痛みを感じやすい可能性がある
  • ASD傾向と痛みとの関連は認められなかった
  • 一部の研究では、ADHD治療薬が痛みの軽減に役立つ可能性も示唆されている
  • 今後、慢性痛を訴える患者にはADHDのスクリーニングや治療も考慮すべきという新たな視点が提示されている

この研究は、**「痛みの背景に発達特性が隠れているかもしれない」**という重要な示唆を与えており、医療現場での評価・支援の幅を広げるヒントとなる成果です。

The role of self-compassion in adults with dyslexia

この研究は、大人のディスレクシア(読み書き障害)を持つ人たちにとって「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」がどのような役割を果たしているかを明らかにしようとした初の研究です。


🔍 背景と目的

ディスレクシアは学習の難しさだけでなく、自己評価の低下や不安などの心理的な問題とも関係しています。しかし、これまで**「自分に優しくする力=セルフ・コンパッション」**がどのように関連しているかはほとんど研究されてきませんでした。

この研究では、以下の点を調べました:

  • セルフ・コンパッションと、自己肯定感(self-esteem)、自己効力感(self-efficacy)、不安との関係
  • セルフ・コンパッションが、**ディスレクシアの人の不安をやわらげる「仲介的な役割」**を果たすかどうか

👥 研究方法

  • 対象:ディスレクシアを持つ成人100人
  • 方法:オンラインで以下の指標を測定
    • セルフ・コンパッション
    • 自己肯定感
    • 自己効力感
    • 不安レベル

📊 主な結果

  • セルフ・コンパッションが高い人ほど、不安が低く、自己肯定感や自己効力感が高い傾向にあった
  • 特に注目すべきは、セルフ・コンパッションが「不安」と「自己肯定感/自己効力感」の関係を仲介していたこと
    • つまり、「自分を責めすぎない力」が、自信や不安の改善に間接的に貢献していることが初めて明らかになった

✅ 結論と意義

  • ディスレクシアのある大人にとって、セルフ・コンパッションは心理的な健康を守る重要な要素
  • 今後の支援やカウンセリングでは、「学習の支援」だけでなく、自分に優しく接する姿勢を育むアプローチが効果的かもしれない

この研究は、ディスレクシアの心理的側面に光を当て、「自分に厳しすぎること」が不安や自己否定感を悪化させている可能性を示しており、支援の新たな視点を提供しています。

Perspectives of South Korean Parents Toward Psychotropic Medication Use Among Autistic Individuals

この研究は、韓国の保護者が自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもに対する向精神薬の使用についてどのように考えているのか、またその使用状況や関係者とのコミュニケーションのあり方を明らかにすることを目的としています。


🔍 研究の概要

  • 対象:18歳以上の自閉症の子どもを持ち、向精神薬を処方されている韓国の保護者19名
  • 方法:個別インタビューによる質的調査
  • 分析:比較分析法とテーマごとのコーディング

📊 主な結果とポイント

  1. 処方傾向の特徴
    • いつから薬を使い始めたか、使用の目的、服薬量、入院歴などで分類
    • 向精神薬の使用は主に行動問題の管理を目的としていた
  2. 薬に対する親の見解
    • 多くの保護者が、薬の効果に懐疑的または不安を抱いていた
    • そのため、**医師の指示通りに服薬しないケース(服薬アドヒアランスの低下)**が見られた
  3. コミュニケーションの問題
    • 精神科医、本人、他の支援者(例:教師、ソーシャルワーカー)との情報共有や対話が不足
    • 本人の意思が十分に尊重されていない状況も浮き彫りに

✅ 結論と提言

  • 保護者の不安や誤解を減らすために、薬についての基本知識・適正な用量・副作用対策などを学べる教育プログラムの整備が必要
  • 本人を中心に据えたチームアプローチと、継続的な多職種連携による対話の場の保障が求められる
  • 特に、当事者本人の声が尊重される医療・支援のあり方を重視すべき

この研究は、**薬物治療の現場でよくある「納得のない服薬」や「孤立した意思決定」**といった問題に注目し、より丁寧で包括的な支援体制の必要性を示しています。

Parent Perspectives on Water Safety for Children with Autism

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもたちの水の安全(ウォーターセーフティ)について、保護者がどのような経験や不安を抱えているのかを明らかにするために行われました。特に、自閉症の子どもは**14歳までの死因で最も多いのが「溺死」**であるという深刻な背景があります。


🔍 研究方法

  • 自閉症の子どもを持つ保護者を対象に、6回のフォーカスグループと1件の個別インタビューを実施。
  • 保護者の経験や悩みを聞き取り、共通するテーマを抽出。

📊 明らかになった6つの主要テーマ

  1. 自閉症の特性が水の危険性を高める
    • 衝動性、危険の理解の乏しさ、徘徊傾向などが溺水リスクを上げている。
  2. 水に関する不安が家庭生活に影響
    • 家族での外出や水辺のレジャーが制限され、保護者のストレスも増加
  3. 水泳教室や安全教育の情報が見つけづらい
    • ASD児向けの適応プログラムが少なく、探すのに苦労している
  4. 自閉症の特性により水泳レッスンの参加が難しい
    • 集団行動が苦手、音や水の感覚への過敏さなどにより、通常のレッスンでは効果が薄い
  5. ASD児には個別化された水泳指導が必要
    • 進度や指導方法を柔軟に対応する必要がある。
  6. インストラクターの理解と準備が成功の鍵
    • ASDについての知識や対応スキルが指導の質に大きく影響する。

✅ 結論と提言

  • 自閉症の子どもにとって、水の安全教育は命を守るために不可欠
  • 保護者や支援者が溺水リスクや予防法について正確な情報にアクセスできるようにするべき
  • 適応型水泳教室の拡充(費用、スケジュール、アクセス)と、インストラクターへの専門研修の整備が急務。

この研究は、“水の安全”という視点からASD児支援の重要性を再確認させるものであり、家庭・学校・地域が連携して命を守る体制づくりが求められることを示しています。

Missed Early Intervention Opportunities for Children With Autism Spectrum Disorder

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちが「早期介入(EI)」を2歳未満で受けられていない現状と、その背景要因を明らかにしたものです。早期介入はASDの発達支援に非常に効果的とされているにもかかわらず、**2021〜2023年の全米子どもの健康調査(NSCH)によると、2歳未満でEIを受けたASD児はわずか15%**しかいませんでした。


🔍 分析内容と主な発見

  • データ対象:ASDと診断された就学前の子どもたち(NSCHより)
  • 主な分析項目
    • ASDの診断時期
    • 家計の経済状況(SES)
    • ASDの重症度
    • 性別・出生体重・人種・発達遅延の兆候有無など
  • 早期にEIを受けた子どもに共通する特徴
    • 2歳未満でASDと診断されていた
    • 世帯の社会経済的地位が高かった
    • 出生体重が低かった

📉 課題点

  • ASDが重度であっても、EIが遅れるケースが多数(15.5%)
  • 経済的に不利な家庭ほど、EIの受給が遅れる傾向
  • 出生体重や発達の兆候があっても、州によってはEI対象にならないこともある

✅ 結論と提言

  • 「発達遅延」の定義をより広く取り、支援対象を増やす必要がある
  • 出生体重が低いだけでもEI対象になる州を増やすべき
  • 低所得世帯やマイノリティ家庭に対するEI参加の障壁を取り除く支援体制が求められる
  • ASDや発達遅延をより早期に発見できるツールや体制の整備が必要

この研究は、「介入が遅れることで本来得られる成長機会を逃しているASD児が多く存在する」という現状に警鐘を鳴らし、公平で迅速な支援制度の再構築が不可欠であることを示しています。

Evaluation of oral health and dental hygiene habits in adolescents with intellectual and developmental disabilities: a longitudinal pilot study

この研究は、知的・発達障害(IDD)がある14〜19歳の若者の歯の健康状態と歯みがき習慣が、継続的な教育と観察によってどう変化するかを調べたパイロット的な長期観察研究です。


🔍 研究の背景と目的

知的・発達障害のある若者は、身体的な制約や口腔ケアへの理解不足、歯みがきの難しさなどにより、むし歯や歯の損傷のリスクが高いことが知られています。この研究では、歯の状態の変化と、教育後の歯みがき習慣の改善度合いを検証しました。


🦷 実施方法

  • 対象:軽度〜中等度の知的・発達障害のある生徒23人(14〜19歳)
  • 評価項目:
    • むし歯の数(DMFT指数)
    • むし歯の進行具合(ICDAS-II)
    • 歯のすり減り具合(BEWE)
    • エナメル質の発達異常(DDE)
    • 歯みがきの状態(OHI-S)とスキル
  • 介入:歯みがきのやり方を教えるトレーニング
  • 評価時点:初回、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後

📊 主な結果

  • むし歯が非常に多い(平均10本以上)、**進行したむし歯が78.3%**に見られた
  • エナメル質の異常や歯のすり減りも65.2%に確認
  • 介入後:
    • 歯みがきの回数が有意に増加(p = 0.008)
    • 口腔内の清潔度が向上(OHI-Sスコアが減少、p = 0.001)
    • 歯みがきのスキルも向上(p = 0.016)

✅ 結論と意義

この研究は、知的・発達障害のある若者でも、適切な指導と定期的なフォローアップによって歯みがき習慣を改善できることを示しました。初期状態は非常に悪くとも、継続的な支援が歯の健康維持に効果的であるという重要な知見を提供しています。


つまり、「正しく教え続ければ、できるようになる」ことを歯みがきの分野でも証明した研究です。支援のあり方を考える上で、日常的なケアの視点からも大きな示唆を与えます。

The moderating role of gender on the relationship between childhood attention deficit and hyperactivity symptoms and functional impairment

この研究は、大学生における子ども時代の注意欠如・多動症状(CAS)が、現在の生活機能にどのような影響を及ぼしているか、さらにその影響に「性別の違い」がどう関係するかを調べたものです。


🔍 研究の概要

  • 対象:大学生680名
  • 使用した尺度:
    • WURS(子ども時代のADHD症状の自己報告)
    • BSI(精神的な不調の評価)
    • WFIRS-S(学校・仕事・社会関係など生活全体の支障を測る尺度)
  • 分析方法:性別が関係性に影響を与えるかを調べる「モデレーション分析」

📊 主な結果

  • 子ども時代のADHD症状が強いほど、大学生になってからの生活の様々な面で支障を感じている(例:学業、人間関係、リスク行動など)
  • 特に、男性ではその影響が女性よりも強く出ていた
    • 全体的な生活支障
    • 社会的な関係
    • リスクのある行動領域(例:衝動的行動)

✅ 結論と意義

  • 子ども時代のADHD症状は、大学生になっても生活の質に深く関わっている
  • その影響は、性別によって異なり、特に男性において顕著に見られた
  • 今後は、性別に応じた支援や介入の必要性が示唆される

この研究は、**「大学生になっても影響が続くADHD症状」と「その支障における性別の違い」**を明らかにしたもので、学生支援やメンタルヘルスの分野で実践的に活かせる知見を提供しています。

The Role of Methylphenidate and Aripiprazole in the Treatment of Emotion Dysregulation in Children With ADHD

この研究は、注意欠如・多動症(ADHD)のある子どもたちに見られる「感情のコントロールの難しさ(情緒調整障害)」に対して、メチルフェニデート(MPH)がどれだけ効果があるかを調べたものです。さらに、MPHが効かなかった場合にアリピプラゾール(APZ)を使うとどうなるかも検証しました。


🔍 研究の方法

  • 対象:6~18歳のADHD児30名(情緒調整障害あり)
  • 試験は3段階で進行:
    1. 4週間のメチルフェニデート治療(全員)
    2. 非反応者にアリピプラゾールを4週間投与
    3. さらに効果がなければ、両薬を併用して2週間投与

📊 主な結果

  • 73%(22人)がメチルフェニデートだけで改善
  • 残りの8人のうち5人はアリピプラゾールで改善
  • 最終的に、30人中27人がどちらかの薬で情緒調整が改善
  • 改善効果は大きく、特に「いらだち(怒りやすさ)」の軽減に有効
  • ADHDの核心症状(不注意・多動)よりも、反抗挑戦性障害のような周辺症状との関連が強かった

✅ 結論と意義

  • ADHDにおける感情調整の問題には個人差が大きく、反応する薬も異なる
  • 大多数の子どもはメチルフェニデートだけで改善が見込める
  • メチルフェニデートが効かない子には、アリピプラゾールが有効な代替手段になる可能性がある
  • 薬の選択を「行動の質」や「周辺症状」に合わせて柔軟に考えることが重要

この研究は、ADHDの中でも「怒りっぽさ」や「感情の爆発」に悩む子どもたちへの薬物治療の新たな選択肢を示しており、臨床現場での治療の幅を広げる貴重な知見です。

Raising the bar: Preliminary investigation of alternative MSVT cutoffs for adults referred for ADHD

この研究は、ADHDの評価においてよく使われる検査「MSVT(Medical Symptom Validity Test)」の基準値(カットオフ)を見直すことで、より正確に信頼できる結果が得られるかどうかを調べたものです。


🔍 背景と目的

MSVTは、注意力や記憶力の検査の中で「きちんと取り組んでいるか(症状の誇張がないか)」をチェックする目的で使われます。特にADHDの評価では、「実際には問題がないのに、ADHDのふりをしている(=シミュレーター)」人を見分ける必要があります。

本研究では、MSVTの3つのスコア(即時再生=IR、遅延再生=DR、一貫性=CNS)について、従来のカットオフ(85点以下)を緩めることで、見落としを減らせるかを検証しました。


🧪 方法と結果

  • 研究1:大学生を対象に、ADHDの「ふり」をするよう指示したグループと健常対照グループを比較
    • 新たに提案したカットオフ(90点以下、95点以下)は、感度(見つける力)が向上しつつ、特異度(誤検出の少なさ)も高水準を維持
  • 研究2:実際のADHD疑いのある成人114人のデータを分析
    • 新カットオフ(90点以下)は、従来の85点以下よりも**感度が上がる(35%→56%)**ことがわかり、特異度は90%以上と良好

✅ 結論と意義

  • MSVTの従来の基準(≤85点)は厳しすぎて、症状の誇張がないのに「無効」とされてしまう可能性がある
  • カットオフを≤90点に引き上げることで、ADHD評価時に「努力している人を誤って疑うリスク」を減らせる
  • ただし、これは予備的な結果であり、臨床現場での正式採用にはさらなる研究が必要

この研究は、ADHDの診断の質を高めるために、信頼性検査の基準の見直しが有効かもしれないという示唆を与えており、評価バイアスの軽減や誤診防止につながる可能性があります。

Frontiers | Application of Artificial Intelligence in Modern Healthcare for Diagnosis of Autism Spectrum Disorder

この研究は、人工知能(AI)を使って子どもの顔の特徴から自閉スペクトラム症(ASD)を早期に診断できる可能性を探ったものです。ASDは、言語や社会的なやりとりが難しい、繰り返しの行動が多いなどの特徴を持つ発達障害で、早期発見・早期介入が非常に重要とされています。


🔍 研究のポイント

  • 顔の表情や特徴の違いに注目し、AIを使ってASDの子どもを見分けるという新しいアプローチ
  • 使用した技術:深層学習(ディープラーニング)モデル(ResNet50、Inception-V3、VGG-19)
  • データセット:Kaggleから取得した2940枚の子どもの顔写真
  • 目的:ASDの子どもとそうでない子どもを、顔画像だけで自動的に分類できるかを検証

📊 主な結果

  • Inception-V3モデルが最も優れており、98%の高い正確度でASDの有無を判別
  • 他のモデル(ResNet50、VGG-19)よりも精度・効率ともに高評価
  • この方法により、医療現場での一次スクリーニングとして、ASDの見逃しを減らせる可能性があると示唆

✅ 結論と意義

  • 顔の画像を使ったAI診断は、医師がASDの可能性に早く気づく手助けになる
  • 特に、まだ症状が目立ちにくい早期の段階でも、顔の微細な違いをAIが検出できる可能性がある
  • 将来的には、スクリーニングツールとして保育・教育・医療現場での実用化が期待される

この研究は、画像認識AIと発達障害の支援を結びつけた先進的な取り組みであり、誰もが早く・正しくASDに気づける社会づくりへの一歩といえるでしょう。