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強みに基づく新たなASD評価手法(SASSI)

· 39 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

この記事は、2025年3月時点の最新の学術研究を中心に、自閉スペクトラム症(ASD)や発達障害に関する診断・支援・教育・家族介入・神経科学的理解の進展をわかりやすくまとめたものである。特に、教師のインクルーシブ教育に対する態度、AIを活用したASD診断の高度化、脳刺激による社会的困難の軽減効果、ADHDとASD併存の神経指標、きょうだい支援の重要性、「複数の自閉症」という新しい視点、感情調整の支援、アンジェルマン症候群におけるASD特性、家族介入研究の動向、そして強みに基づく新たなASD評価手法(SASSI)など、個別化・多様化・当事者尊重に向かう支援と研究の潮流を幅広く紹介している。

学術研究関連アップデート

Preschool and primary school teachers’ attitude towards inclusive education for students with autism spectrum disorders in Ethiopian public schools: multicenter cross-sectional study - BMC Neurology

この研究は、エチオピアの首都アディスアベバにある公立の幼稚園および小学校の教師たちが、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもを通常学級に受け入れることに対してどのような態度を持っているかを調べたものです。


🔍 研究の背景と目的

  • 自閉症の子どもが通常の学校に通うケースが増えている中で、教師の理解と受け入れ態度がその子どもたちの学びやすさに大きく影響する
  • しかし、アフリカの文脈では、教師がどの程度自閉症に理解を示しているのか、明らかになっていない部分が多い
  • この研究では、教師の知識や経験が、ASDのある子どもの受け入れ態度にどう影響するかを分析した。

🧪 研究方法

  • アディスアベバの**416名の教師(幼稚園・小学校)**からアンケートを収集(2023年9月〜12月)。
  • データを統計的に分析し、態度・知識・経験の関係を調査。

📊 主な結果

  • ASDに関する十分な知識を持っていた教師は全体の35.5% にとどまった。
  • 教師の平均的な態度スコアは3.4(やや前向きな傾向)
  • 特別支援が必要な子どもとの経験がある教師は、6倍も肯定的な態度を持つ傾向があった
  • ASDの子どもを「行動や感情面で扱いづらい」と感じている教師は、肯定的な態度を持つ可能性が大幅に低かった(94%低い)
  • 肯定的な態度を持つ教師の方が、ASDに関する知識も高い傾向があった

結論と提言

  • 教師のASDに対する態度は、全体的にはやや前向きだが、知識や経験の差が大きく影響している。
  • よって、教師へのASDに関する研修や、実際の支援経験の機会を増やすことが重要
  • 特に、ASDのある子どもへの誤解や偏見をなくし、行動面への理解を深める教育的アプローチが求められる

📝 まとめ(かんたん解説)

✔ エチオピアの幼稚園・小学校の教師のうち、ASDへの知識があるのは約3割

✔ 経験がある教師ほど、インクルーシブ教育に前向き

✔ ASDの子の行動を「問題」と見なす教師は、受け入れに否定的

✔ 教師の研修や現場経験の機会を増やすことで、受け入れ態度の改善が期待される

この研究は、教育現場におけるASD理解の促進とインクルーシブ教育の実現に向けた重要なヒントを与えてくれます。

Improving Detection of Autism Spectrum Disorder (ASD) by Using mRMR Feature Selection and Genetic Optimization Based CES Model for Computing Autism Severity Score

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断精度を高めるために、新しいAIベースのスコアリングモデルを提案したものです。従来の診断ツール(例:Q-CHAT-10やAQ-10)は、あらかじめ決められた採点方式に基づいており、症状の多様性や個人差を十分に反映できない課題がありました。


🔍 研究の新しいアプローチ

研究チームは以下の技術を組み合わせて、新しいASD重症度スコア「GOCES(Genetic Optimization-Based CES Score)」を開発しました:

  1. mRMR(最小冗長・最大関連)アルゴリズム

    → Q-CHAT-10やAQ-10のデータから、特に重要な行動特性だけを抽出するために使用。

  2. 遺伝的アルゴリズム(GA)

    → AIによって、スコアリングモデル(後述)の最適なパラメータを自動で探索・調整

  3. CES(Constant Elasticity of Substitution)モデル

    → 複数の特徴量(行動項目)の貢献度を柔軟に調整可能な数式モデルを使用。これにより、固定スコア方式では表現しきれない「症状の重みづけ」を実現。


🎯 研究の成果と意義

  • GOCESモデルは、従来のように全ての質問に同じ重みを与えるのではなく、症状の現れ方や重みを個別に考慮して診断ができる
  • 特に、**ASDの症状の「軽いけれど特異なパターン」**にも敏感に対応できる点が評価される。
  • 今後、より柔軟で精度の高いASDスクリーニングや診断支援ツールの開発に活かせる可能性がある。

✅ ポイントまとめ(かんたん解説)

✔ Q-CHAT-10やAQ-10をAIで分析し、重要な特徴だけを抽出

✔ 遺伝的アルゴリズムで、スコアの重み付けを最適化

✔ 「全員に同じ評価軸」ではなく、「その人に合わせた重み付け」を実現

✔ 自閉症の診断や重症度の評価を、より柔軟かつ個別化されたものに進化させる試み

この研究は、今後のASD診断ツールが「一律評価」から「個別最適化」へと進化していく未来を示唆する、非常に革新的な提案といえます。

HD-tDCS effects on social impairment in autism spectrum disorder with sensory processing abnormalities: a randomized controlled trial

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもに対して、HD-tDCS(高精度経頭蓋直流刺激)という脳への非侵襲的な刺激法が、社会的な困難の改善にどのような効果をもたらすかを調べた臨床試験です。特に、感覚処理の特性(触覚の過敏・鈍感など) がこの治療効果にどう影響するかを検討しました。


💡 HD-tDCSとは?

HD-tDCS(High-Definition Transcranial Direct Current Stimulation)は、頭皮に電極をつけて微弱な電流を脳に流すことで、神経活動を調整する方法です。痛みはほとんどなく、安全性が高いとされています。


🧪 研究の方法

  • 対象:4〜8歳のASD児72人(そのうち51人が実際にHD-tDCSを受けた)
  • 試験デザイン:ランダム化・二重盲検・偽刺激(シャム)を含む臨床試験
  • 子どもたちの感覚処理の特性に応じて3グループに分類
    • 触覚過敏(ハイパータクタイル)
    • 触覚鈍感(ハイポタクタイル)
    • 通常の感覚(典型的タクタイル)

📊 結果のポイント

  1. 典型的な感覚の子どもたちは、社会的な認知や行動の改善が顕著

    → 社会的な気づき(ソーシャル・アウェアネス)や自閉的な癖(マナーリズム)が大きく改善。

  2. 触覚鈍感の子どもたちも、多くの社会的スキルが改善

    → 社会的認知・コミュニケーション・全体的な行動スコアなどに効果あり。

  3. 触覚過敏の子どもたちは限定的な効果

    → 社会的コミュニケーションだけにやや改善が見られたが、他の面では顕著な変化なし。


✅ 結論と意義

  • HD-tDCSは、ASDの子どもの社会的な困難の軽減に有効な可能性がある。
  • 特に、触覚が「通常」または「鈍感」なタイプの子に効果が出やすい
  • 一方、感覚過敏のある子どもには、さらなる工夫や補助的な支援が必要かもしれない

📝 かんたんまとめ

✔ HD-tDCSは、ASDの子どもの「人づきあいの苦手さ」に効く可能性がある

✔ 感覚の特性(特に触覚)が治療効果に影響する

✔ 通常または鈍感な子には高い効果、過敏な子には効果が限定的

✔ 今後は、個々の感覚特性に応じた個別化医療がカギになりそう

この研究は、ASDの子どもへの「脳刺激療法」の可能性と、その効果に影響する要因を明らかにする貴重な一歩です。

この研究は、ADHD(注意欠陥・多動性障害)単独の子どもと、ADHDにASD(自閉スペクトラム症)を併せ持つ子ども(ADHD&ASD)の違いを、脳波(ERP:事象関連電位)によって識別できるかどうかを調べたものです。目的は、将来的により個別化された治療につなげるための客観的な神経生理学的指標を見つけることです。


🧪 研究の概要

  • 参加者:204人
    • ADHDのみ:70人
    • ADHD+ASD併存:64人
    • 典型的発達の子(健常群):70人
  • 実施した検査:
    • 神経心理検査:数字スパンテスト、行動評価(BRIEF)、トレイルメイキングテスト(TMT)、ストループテストなど
    • ERP測定:脳の前頭部(Fz)、中央部(Cz)、頭頂部(Pz)での脳波の反応速度(潜時)や強さ(振幅)などを測定
    • 刺激応答課題(オッドボールパラダイム):決まった刺激が不規則に混じる中で特定の刺激に反応する課題

📊 主な結果

  • ADHD+ASD群は、ADHD単独群よりも脳波の反応が遅く、注意切り替えの困難さも顕著だった(特にFz、Cz、Pz領域でのERP潜時や反応時間が長い)。
  • 行動評価(BRIEF)やストループテストでも、ADHD+ASD群の困難がより大きいことが示された。
  • *ADHDとADHD+ASDを識別するのに有効な指標(ROC分析)**として、以下の2つの組み合わせが特に有効:
    • Fz領域の脳波潜時
    • 平均反応時間 → この2つを組み合わせると、感度88.68%、特異度97.14%、識別精度(AUC)0.938という非常に高い精度が得られた。

✅ 結論と意義

  • ERP(脳波)を活用することで、ADHD単独とADHD+ASDを高い精度で識別できる可能性がある
  • これにより、個別化された診断・支援・治療の方針を立てやすくなると期待される。
  • 今後の臨床や教育現場での活用に向けて、さらに研究を進める価値がある

💡 簡単なまとめ

✔ ADHDとASDの併存を、脳波(ERP)で高精度に識別できる指標が見つかった

✔ ADHD+ASDの子は、脳の反応速度や注意力により大きな課題を抱える傾向

✔ 脳波+反応時間の組み合わせが、識別に特に有効(識別精度93.8%)

✔ 将来的には、より個別化された支援や診断のツールとして活用される可能性がある

この研究は、「見た目だけではわからない」発達特性の違いを、客観的に見える化できる手法として非常に注目されています。

Well-Being and Mental Health of Siblings of Children with Intellectual Disability: a Longitudinal Twin-Family Study

この研究は、知的障害(ID)のある子どもを持つ家庭における兄弟姉妹の心の健康と幸福感に焦点を当てた長期的な追跡調査(縦断研究)です。調査には5~12歳の双子を対象としたオランダの全国的データベース(Young Netherlands Twin Register)が使われました。


🧪 研究の目的と方法

  • *IDのある子の兄弟姉妹(IDグループ)**と、**発達が典型的な子の兄弟姉妹(比較グループ)**を対象に比較。
  • 注目したのは以下の3つの指標:
    • 全体的な幸福感(well-being)
    • 外向的問題行動(externalizing behavior):攻撃的・反抗的な行動など
    • 内向的問題行動(internalizing behavior):不安・うつなど
  • *多層的な統計モデル(マルチレベルモデリング)**を用いて、子ども本人だけでなく、家庭全体の影響も分析。

📊 主な結果

  1. 知的障害のある子どもの問題行動が、その兄弟姉妹の「内向的問題行動(不安・抑うつなど)」に影響していた

    → これは「媒介効果」と呼ばれ、兄弟姉妹の不調の一因が、IDのある子どもの行動にあることを示している。

  2. 保護者の幸福感や子どもへの関わり方(特に母親のモニタリング)が、兄弟姉妹の行動に大きく関係していた

    → 親が子どもの行動や生活をよく見守っているほど、兄弟姉妹の行動問題は少なくなる傾向があった。

  3. 母親による見守り(モニタリング)が、IDのある子どもの問題行動と兄弟姉妹の問題行動の「つながり」を弱める効果があった

    → つまり、親がよく見てあげることで、兄弟姉妹への悪影響を緩和できる可能性がある


✅ 結論と意義

  • 知的障害のある子を育てる家庭では、その兄弟姉妹も心理的影響を受けやすい
  • 特にIDのある子どもが問題行動を起こしている場合、兄弟姉妹の不安やストレスが高くなることが示された。
  • しかし、親の関与や家庭の支援体制を工夫することで、兄弟姉妹への悪影響は減らせる可能性がある。
  • 支援機関は、「子ども本人だけでなく、家族全体を支援する視点(ファミリーシステム・アプローチ)」が重要である。

💡 まとめ(簡単な解説)

✔ 知的障害のある子の兄弟姉妹は、心理的な負担を抱えやすい

✔ 特に、その子が問題行動を起こしているときに影響が大きい

✔ 親がよく見守ることで、兄弟姉妹への影響はやわらぐ

✔ 家族全体をサポートするアプローチが大切

この研究は、**「障害のある子の兄弟姉妹もまた支援の対象であるべき」**という視点を改めて強調しています。

From autism to the plural 'autisms': evidence from differing aetiologies, developmental trajectories and symptom intensity combinations

この論文は、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」を一つのまとまった概念ではなく、**「複数の自閉症(the autisms)」**として捉えるべきだという考え方を紹介・提案しています。


🔍 背景と問題提起

  • 自閉症は、社会的理解や認知の困難、反復的・制限的な行動様式を特徴としますが、その現れ方(行動や発達のパターン)は非常に多様です。
  • 多くの人にとって、その特性は生涯続き、かつ行動・精神・身体のさまざまな他の障害(併存症)と重なることが多いです。

💡 現在の診断システム(DSM-5やICD-11)では…

  • この多様性に対応するため、症状の重症度や支援の必要性に基づいて診断を分類しています。
  • 最近では「プロファウンド(重度)自閉症」という新しい分類も加わり、一部の人では**症状が生涯続かない(非持続型)**ことも報告されています。

🔬 著者らの主張:「**多様な原因(病因)にも注目すべき」」

著者たちは、「複数の自閉症(the autisms)」という考えをさらに広げて、以下の**「3つの軸」**で自閉症を再分類するべきだと提案しています:

  1. 病因(なにが原因か)
    • 遺伝子変異
    • 感染症やウイルスなど
    • 環境因子(非感染性)
    • 免疫系の問題 など、多様なルートが自閉症の発症に関与していることがわかってきています。
  2. 症状の強さ(重症度)
  3. 発達の経過(時間とともにどう変化するか)

✅ 結論と意義

  • 「自閉症は一つの状態ではなく、原因・症状・経過が異なる“いくつもの自閉症”が存在する」という考えは、研究にも支援実践にも大きな影響を与える可能性があります。
  • このように分類を見直すことで、より適切な支援の提供や、個々に合った治療・教育の道が開けるとしています。

📝 簡単まとめ

✔ 自閉症は、症状・経過・原因の多様性から「複数の自閉症(the autisms)」として再定義すべき

✔ 遺伝や環境など、さまざまな原因が自閉症につながることがわかってきている

✔ 「病因 × 症状の強さ × 発達のパターン」の三軸で分類すると、研究・支援・教育がより個別化できる可能性がある

この論文は、「自閉症は人それぞれ違う」という実感を、科学的に整理し直すための大きな一歩となる内容です。

Autistic Traits and Emotion Dysregulation in 5-11-Year-Old Intellectually Able Children With Autism Spectrum Condition: Mediating Role of Emotion Regulation Strategies

この研究は、**知的に高い能力を持つ5〜11歳の自閉スペクトラム症(ASC)の子どもたちが抱える「感情のコントロールの難しさ(感情調整困難=ED)」に焦点を当て、その背景にある自閉特性と感情調整の戦略(ERS:Emotion Regulation Strategies)**の関係を明らかにしようとしたものです。


🧩 研究の目的と方法

  • 感情調整の困難(ED) が、自閉特性そのものによって引き起こされているのか?
  • それとも、感情調整のスキル不足(ERSの未発達) が関係しているのか?

これを明らかにするために、110人のASCの子どもについて、自閉特性・感情調整困難・感情調整戦略(内的:再評価や抑制、外的:親のサポート)を調査しました。


🔍 主な結果

  • 社会性、注意の切り替え、コミュニケーション、想像力に関する自閉特性が高いほど、ED(感情調整困難)のレベルも高い
  • 特に**親が感情を一緒に調整してくれる「親のコ・レギュレーション(共調整)」が、この関係を仲介(メディエート)**していることが分かりました。
    • つまり、親の関わり方によって、子どもの感情調整の難しさが緩和されたり悪化したりするということです。
  • 特に「コミュニケーション」と「想像力」の特性とEDの関係は、完全に親の共調整で説明されることが明らかになりました。
  • また、想像力に関する自閉特性が強いと、感情を再評価するスキル(再構成的思考)が育ちにくくなり、結果として感情のコントロールがより困難になる傾向があることもわかりました。

✅ 結論と実践へのヒント

  • 感情の問題を単に「自閉症の特徴だから」と捉えるのではなく、感情調整のスキル(ERS)とその発達支援が重要であることが示されました。
  • 特に、**親子の関わり(共調整)を高める支援や、再評価スキルを育てるような模倣トレーニング(例:ロールプレイや感情カードなど)**が効果的だと考えられます。

🔖 ポイントまとめ(かんたん解説)

✔ 自閉特性(特に想像力やコミュニケーション)の強さは、感情の調整の難しさと関係している

✔ 親が子どもの感情を一緒に調整する力(共調整)が、その影響を和らげるカギになる

✔ 「感情を再解釈する力」の育成が、特に想像力に困難を持つ子どもにとって重要

✔ 親子で一緒に取り組む感情調整支援が、有効な介入方法になりうる

この研究は、知的に高い自閉症の子どもが抱える「見えにくい感情の困難」に注目し、親の役割と支援方法に実践的なヒントを与えてくれる内容です。

この研究は、まれな遺伝性疾患であるアンジェルマン症候群(Angelman Syndrome, AS)の子どもたちに見られる自閉スペクトラム症(ASD)様の特性が、年齢とともにどう変化するか(経年変化)を調べたものです。


🔍 研究の目的

  • ASの子どもに自閉症の特性がどのくらい現れるのか?
  • 年齢とともにその特性は変化するのか?
  • 性別、遺伝子型(特に「欠失型」や「UBE3A変異型」)、てんかんの有無などが、自閉的特性に影響するのか?

🧪 方法

  • 対象は2〜18歳のASの子ども107名(うち一部は2〜3回の経年データあり)。
  • 使用された評価:
    • ADOS(自閉症観察スケジュール):自閉傾向の行動を観察的に評価。
    • DSMベースの臨床診断:医師の診断評価。
    • 感覚処理の評価:聴覚や触覚などへの過敏さや鈍感さなど。

📊 主な結果

  • 自閉特性や感覚処理の困難は非常に高頻度で見られた
  • 特に、「欠失型」の遺伝子を持つ子どもに自閉的特徴が強く出る傾向があった。
  • ADOSの評価ではASDの診断率が高く出やすい傾向があり、DSMベースの医師の診断とは差があった
  • 自閉的特徴は年齢とともに大きく変化することは少なかったが、
    • UBE3A変異型の子ではADOSスコアが減少(改善)する傾向
    • グループ全体では「社会的関わり」分野でわずかに改善傾向があった。

📌 結論と実践への示唆

  • ASの子どもに対しては、自閉特性と感覚処理の特徴を早期に把握し、支援環境を調整することが非常に重要
  • ADOSによる評価だけに頼るとASDと誤診されるリスクがあるため、複数の評価方法と専門家の意見を統合した慎重な診断が必要
  • 自閉的特徴は基本的に年齢とともに安定しているが、遺伝子型によっては軽減する可能性もある

✅ ポイントまとめ(かんたん解説)

✔ アンジェルマン症候群の子どもには自閉的な特性が高頻度で見られる

✔ ADOSによる評価は過大に出やすく、複数の診断方法の組み合わせが大切

✔ 「欠失型」は特に自閉的傾向が強い

✔ 一部の子どもでは年齢とともに改善する可能性もある

✔ 感覚過敏・鈍感などの特徴も考慮した支援が必要

この研究は、ASの子どもへの支援や診断において、「見た目の行動」だけで判断せず、背景の特性や評価手法を慎重に見極める重要性を教えてくれるものです。

Frontiers | A bibliometric analysis of the current state of research on family interventions for ASD

この研究は、**自閉スペクトラム症(ASD)に対する「家族介入(Family Intervention)」の研究の動向や注目されているテーマを、世界の学術論文から分析した文献メトリクス研究(ビブリオメトリック分析)**です。


🔍 背景と目的

  • ASDの子どもへの支援で「家族介入」が効果的だという研究は多くありますが、
    • 「家族介入」という言葉の定義が曖昧
    • 具体的なプログラム内容や実施方法の記述が不足
    • さまざまなアプローチが混在していて体系化されていない
  • そこで、本研究では1987年から2024年の間に発表された文献1891本を分析し、
    • どの国・機関・研究者が多く発信しているか
    • どんなキーワードやテーマが多く引用されているか
    • 今後の研究の方向性がどこに向かっているか を明らかにしようとしています。

🧪 方法

  • 分析対象:Web of Scienceに登録された、ASDの家族介入に関する文献(1987〜2024年)
  • 使用ツール:CiteSpace(文献の可視化ソフト)
  • 分析内容
    • 国・研究機関・著者ごとのネットワーク
    • キーワードや引用関係の構造
    • 時系列による研究テーマの推移

📊 主な結果

  • 総文献数:1891件
  • 最も多く発表している国はアメリカ(1028件)、次いでカナダ(254件)オーストラリア(209件)
  • 著者では Baranek が最多(19件)。
  • 大学機関ではカリフォルニア大学システムが最多。
  • 研究の中心は先進国であることが明確に。
  • 最近の研究トピックとしては以下のようなものが目立つ:
    • 家庭を基盤とした早期介入(early intervention)
    • 自閉症児の親の心理的ストレス
    • 親主導型の支援(parent-mediated intervention)
    • 遠隔医療(telemedicine)を活用した介入

🧭 結論と今後の展望

  • この分析により、ASDの家族介入分野で影響力のある国・研究者・機関・ジャーナルが明らかになった
  • 今後の研究では、
    • 家庭環境を活かした効果的な介入モデルの開発
    • AI技術を活用したコンピュータベースの支援手法 に注目が集まると予測される。
  • 具体的には、家庭で行えるテレメディスンや親が主導する介入プログラムが最も有望視されている。

ポイントまとめ(かんたん解説)

✔ 「家族介入」はASD支援の中で注目されているが、具体的な方法や定義はまだ曖昧

✔ アメリカが研究を主導、内容としては「早期介入」「親の支援」「テレメディスン」がトレンド

✔ 今後は、AIを活用した家庭ベースの介入プログラムが重要な研究テーマになる見込み

この研究は、ASDと家族支援に関する研究の流れを俯瞰する上で非常に役立つマッピングツールとして、多くの臨床家や研究者にとって有用な情報を提供しています。

Frontiers | Commentary: Toward a more comprehensive autism assessment: the survey of autistic strengths, skills, and interests

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)の評価方法を「できないこと(欠損モデル)」に着目するのではなく、「できることや強みに目を向ける(ニューロダイバーシティの視点)」へと転換しようとする動きについて、特に**SASSI(自閉スペクトラム症の強み・スキル・関心に関する調査)**という新しい評価ツールを紹介しながら解説したコメント論文です。


🔍 要点まとめ

  • 従来のASD評価は「社会性の障害」「コミュニケーションの問題」など、できないことに焦点を当ててきた
  • しかし今、「ニューロダイバーシティ(神経の多様性)」の考え方が広まり、本人の強みや興味、価値観にも注目した評価が求められている
  • そうした流れの中で、臨床心理士のSara Woods博士とAnnette Estes博士が開発したSASSIは、
    • ASDの人が持つとされる正直さ・道徳観・率直な表現などの強みをベースにした質問で構成され、
    • 本人の思考を深める追質問も用意されており、評価の場における不安やストレスの軽減も期待される。

💡 SASSIの意義

  • 質問の内容は、家族や本人の実体験から得たフィードバックを基にして設計されており、「当事者の声」に重きを置いた構成。
  • ASDの特性の一つとされていた「言語の問題」さえも、肯定的に捉え直そうとする姿勢が示されている。
  • 従来の「高機能」「低機能」などの差別的な表現を避け、より尊重的な言葉遣いも広がりつつある。

🧪 今後への提案

  • 将来的には、SASSIを用いた評価で「評価者が自閉症当事者かどうか」で結果が異なるかどうかも検証すべきと筆者は提案。
  • 自閉症のある臨床家が自身の経験を共有することが、相談者にとって安心感や共感を生み出すこともすでに他の研究で示されている。

まとめ(かんたん一文)

この論文は、自閉スペクトラム症の評価を「できないこと」から「できること・強み」にシフトする流れを後押しするものであり、特にSASSIという新しい評価法がその実例として紹介され、当事者の尊厳を尊重し、より包括的で人間中心のアセスメントが重要であると訴えています。