生徒も先生も楽しい学びの実現は可能か?フロー理論を活用した実践と限界について
多くの人が夢中になるビデオゲーム。その背後には、ユーザーを引き込み、継続的に楽しませる巧妙な仕組みが数多く仕掛けられています。中でも有名なのは、**チクセントミハイの「フロー理論」**でしょう。フロー理論は、人が活動に没頭し、時間を忘れるほど集中している状態を指し、その状態に入ることで最大のパフォーマンスと満足感が得られるとされています。本記事では、このフロー理論を教育に応用した実践について、フロー理論自体の概説を踏まえながら探っていきます。
本記事では、ゲームに用いられるフロー理論をベースにした教育システムの可能性と、その実践例であるキー・ラーニング・コミュニティの設立背景とその後の変遷、そして閉校の理由について探ってみたいと思います。
ゲームに学ぶ教育のヒント:フロー理論とは
フロー理論とは
ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー理論」は、人が活動に深く没頭し、時間を忘れるほど集中している状態を指します。この状態では、課題の難易度と個人の技能レベルが適切にマッチしており、最大のパフォーマンスと満足感が得られます。
ゲームにおけるフロー理論の活用
ビデオゲームは、このフロー状態を巧みに引き出すよう設計されています 。具体的には:
- 難易度の調整:プレイヤーのレベルに合わせて難易度が変化し、常に適度な挑戦を提供。
- 即時のフィードバック:プレイヤーの行動に対して即座に反応があり、達成感や改善点が明確になる。
- 明確な目標設定:ゲーム内のクエストやミッションが具体的で、達成すべきゴールがわかりやすい。
これらの要素により、プレイヤーはゲームに没頭し、継続的に楽しむことができます。
皆さんに馴染みのあるRPGにおいても、最初のエリアでは敵が弱く簡単に倒せるため、プレイヤーは自分の能力を確認しながらゲームに慣れていきます。その後、難易度が上がり、新しいスキルを習得しながら挑戦を続けます。敵がずっと弱いままでも、最初から強すぎる場合でも、プレイヤーは離脱しやすくなってしまいます。しかし、よく設計されたゲームは、プレイヤーが自分の成長を感じながらゲーム内の難易度が上がっていくように設計されており、その過程に夢中になることができます。
教育へのフロー理論の応用:可能性と挑戦
同じ「学習」であっても、学校の授業でゲームのように夢中になった経験がある人はまだ少ないかもしれません。しかし、フロー理論はゲーム内の操作に限定されるものではなく、学習においても応用が可能です。