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第28回日本自閉症協会全国大会 ALLかながわ大会参加レポ Vol.1

· 約13分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

第28回日本自閉症協会全国大会 ALLかながわ大会

1000015607.png 2025年2月8日・9日鎌倉芸術館にて開催されましたALLかながわ大会に参加しました。 本記事では日本自閉症協会および英国National Autistic Societyについて、また本イベントの概要について簡単にご紹介します。

日本自閉症協会とは?

日本自閉症協会は、自閉スペクトラム症(ASD)に関する支援活動を行っている団体で、1968年に設立された自閉症児者親の会全国協議会を母体に持ちます。協会は全国の47都道府県と3つの政令指定都市(川崎、横浜、神戸)にある50団体から成り、地域に密着した活動を展開しています。

主な活動内容:

  • 自閉スペクトラム症の支援: 医療、福祉、教育、就労、司法の分野での連携を強化し、支援体制を整備しています。
  • 啓発活動: 自閉症に対する理解を深め、社会的認識を高めるための啓発活動を積極的に行っています。
  • 行政への働きかけ: 厚生労働省や文部科学省、内閣府などに要望書を提出し、政策への影響を与えています。

歴史と設立経緯:

  • 1950年代には、自閉症の子どもに対する偏見が強く、親たちは悩みながら支援を求めていましたが、1967年に全国組織の設立に向けた動きが始まり、1968年には初の全国大会が開催されました。
  • 1989年には、法人として認可され、より広範な支援が可能となり、2014年には一般社団法人へ移行しました。

ミッション:

協会の使命は、自閉症の人々とその家族が安心して生活できる社会を作ることです。そのために、各地の自閉症協会と連携し、地域ごとのニーズに応じた支援を行い、社会全体で自閉症の人々が住みやすい環境を作るための活動を行っています。

事業活動等:

活動にかかる費用は、会費収入、事業収益、受取寄付金などから賄われており、2023年度の収支は以下の通りです。約8千万円の収入に対して、7千万の支出があり、収入の大半は会費と事業収益の半々で賄われています。(*一部抜粋)

項目2023年度(円)前年度(円)増減(円)
経常収益¥79,492,619¥81,538,737-¥2,046,118
会費収入¥33,458,000¥33,949,000-¥491,000
事業収益¥41,694,845¥41,346,974+¥347,871
受取寄付金¥1,524,197¥634,181+¥890,016
経常費用¥70,469,194¥81,207,799-¥10,738,605
事業費¥43,179,290¥77,019,171-¥33,839,881
管理費¥27,289,904¥4,188,628+¥23,101,276
正味財産期末残高¥235,370,916¥226,347,491+¥9,023,425

*一部抜粋

参考:日本自閉症協会公式サイト

National Autistic Societyとは?

**National Autistic Society(NAS)**は、イギリスにおける自閉スペクトラム症(ASD)の支援団体で、1962年に設立されました。イギリス全土に支部を持ち、ASDの啓発活動や支援サービスを提供しています。

主な活動内容

  1. 自閉症支援サービスの提供:

    • 専門学校の運営: 自閉症の子どもたちや若者を支援する専門学校を運営。
    • 成人向け支援サービス: 自立支援や住宅支援、就労支援などを提供。
    • コミュニティサポート: オンラインコミュニティや地方支部を通じて、地域社会での自閉症支援を行っている。
  2. 教育と研修プログラム:

    • 自閉症に関するトレーニングとコンサルティング: 企業向けに自閉症に配慮した職場作りのトレーニングを提供。
    • 認定プログラム: 自閉症に関連する診断評価や認定を行う。
    • 学校向け支援: 学校教育における自閉症支援をサポートし、インクルーシブ教育の推進。
  3. 啓発活動とキャンペーン:

    • 自閉症の理解促進: 自閉症についての啓発活動を行い、社会全体での理解を深める。
    • 政策提言活動: 政府や地方自治体に対し、自閉症支援に関する政策や法律の改善を訴え、権利保護を推進。
  4. 支援団体のネットワーク:

    • 地域支部との連携: NASは、英国全土に50以上の地域支部を持ち、それぞれの地域で自閉症の支援活動を行う。
    • 支援団体との協力: 他の自閉症関連団体や医療機関、福祉機関、教育機関と協力して支援体制を構築。
  5. 研究と調査活動:

    • 自閉症に関する最新の研究: 自閉症の理解を深めるための研究に取り組み、学術機関や研究者と連携。
    • データ収集と分析: 自閉症に関連する調査を実施し、社会的認識や支援の改善に活かす。

歴史と設立経緯:

  • 1962年: NASは、自閉症の子どもを持つ親たちによって設立されました。当時、自閉症の子どもたちはしばしば「子ども型統合失調症」と診断され、施設に送られていました。
  • 1965年: NASは、世界初の自閉症専門の学校を西ロンドンに開設。ジョン・レノンが1,000ポンドの寄付を行い、支援しました。
  • 1967年: 自閉症に関する情報誌「Communication」(現在の「Your Autism」)を創刊し、自閉症に関するアドバイスとガイドラインを提供しました。
  • 1970年代: 初期の創設者であるローナ・ウィング博士とジュディス・グールド博士は、カンバーウェルで自閉症の人口調査を行い、従来の認識を超える自閉症の存在を明らかにしました。
  • 1974年: 英国初の自閉症成人向けの居住サービスがサマセットに開設され、成人自閉症者の社会参加を促進。
  • 1979年: ローナ・ウィング博士が「自閉症スペクトラム」という概念を提唱し、自閉症の認識と診断基準に大きな影響を与えました。
  • 1991年: 英国初の自閉症専門の診断センターがロンドンに開設され、全国的な診断と支援体制が強化されました。
  • 1992年: 「自閉症認証」制度が設立され、2,500以上の機関が自閉症に最適な支援を提供する認証を取得しました。
  • 2009年: NASのキャンペーンにより、英国で初めて「自閉症法」が制定され、自閉症成人向けの政府戦略が義務化されました。
  • 2015年: NASの支部が英国全土で100ヵ所に達し、全国規模で自閉症者や家族の支援が充実。
  • 2016年: 「Too Much Information」キャンペーンを開始し、56百万回の視聴数を記録するなど、自閉症の理解促進に大きな影響を与えました。
  • 2020年: 新しいウェブサイトを立ち上げ、4.5百万回の訪問を達成しました。
  • 2021年: 英国政府が新たな自閉症戦略を発表し、年間73百万ポンドの投資が約束されました。
  • 2022年1月23日: NASは設立60周年を迎え、これまでの成果を振り返りながら、引き続き自閉症者やその家族を支援するための活動を進めています。

ミッション:

  • 自閉症の成人と子ども700,000人、家族や介護者3,000,000人に対して、支援、情報提供、実用的なアドバイスを提供し、生活を変革すること。
  • 自閉症に対する社会的理解を深めることで態度を変え、企業、地方自治体、政府が自閉症に配慮した環境を提供し、より良いサービスを提供できるように支援すること。

事業活動等:

プロフェッショナル資金調達チームによる寄付金等の獲得および、自治体等との契約に基づいたサービス提供による事業収入が主な収入源となっており、2024年度の収支は以下の通りです。 約9500万ポンドの収入に対して、9600万ポンドの支出があり、収入の大半は寄付金とサービス収入の半々で賄われています。(*一部抜粋)

項目2024年2023年
収入
寄付金および遺贈£9,101,000£13,292,000
事業収入(サービス)£85,519,000£85,356,000
合計収入£95,410,000£99,142,000
支出
資金調達費用£1,769,000£1,993,000
慈善活動支出(教育、社会支援など)£93,893,000£100,894,000
合計支出£96,162,000£123,043,000

*2024年3月31日終了年度の数字を一部抜粋

参考:National Autistic Society公式サイト

いずれの団体も非常に歴史の長い団体であり、自閉症の理解と支援において重要な役割を果たしています。今回のALLかながわ大会では、日本とイギリスの両団体が協力して、自閉症に関する最新の情報や支援活動について特に支援の「質」をテーマに、参加者に有益な情報を提供しました。