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アセスメントツールってなんで重要?〜知能・発達検査編〜【詳解】

· 約19分

個別支援計画を作成するときには、児童のアセスメントが必要となってきます。アセスメントがきちんとされていなければ、児童の課題も目標も曖昧で具体性のないものになり、後々のモニタリング・評価に影響を与える可能性があります。

はじめに

個別支援計画を作成するときには、児童のアセスメントが必要となってきます。アセスメントがきちんとされていなければ、児童の課題も目標も曖昧で具体性のないものになり、後々のモニタリング・評価に影響を与える可能性があります。

アセスメントには標準化されたアセスメントツールを用いる方法と、聞き取りや行動観察による方法が実施されています。

今回は、アセスメントについて、アセスメントツールとはという点から、種類、違い、どんな情報が得られるのかなどに関して詳解していきます!

個別支援計画の作成における全体の流れについては、こちらで詳解しています。

https://www.easpe.com/blog/article/41

なぜアセスメントツールが重要なのか

個別支援計画の作成するにあたり、児童の実態把握、実態に即した目標の設定、具体的な支援内容の明確化が必要です。また作成した個別支援計画に沿って支援を実施したのちに支援効果に関して評価も必要となってきます。アセスメントは、特に個別支援計画における実態把握・ニーズの把握に繋がっています。

計画に大きく関わるアセスメントの精度をより上げるためには、アセスメントツールを使用することが重要です。発達障害のように、はっきり目に見えない知的・社会的ハンディキャップを可視化し、必要な支援を提供するために、アセスメントツールを使って客観的な数値化を行うことが有効な手段となります。

しかしながら、実施にあたる資格要件がかなり高いという背景もあり、福祉施設・事業所での標準化されたアセスメントツールの普及率は2割に止まります。(2012年時点)

引用:特定非営利活動法人 アスペ・エルデの会「発達障害児者支援とアセスメントに関するガイドライン」

アセスメントツール全般の利用状況 機関種別ごとのアセスメントツール全般の利用状況を表2に示す。ただし、機関によっては医療機関と他の機関を併設するものもあったため、それらの機関については医療機関の集計にのみ含めた(以下の集計も同様)。医療機関や児童相談所では一般的ツールの普及が進んでおり、いずれも9割を超えていた。発達障害者支援センターや保健センターでは、一般的ツールを利用している機関は7~8割にとどまった。福祉施設・事業所では、一般的ツールの普及率は2割以下ときわめて低く、独自のツールを利用するか、いずれのツールも利用していない機関が大部分であった。

標準化されたアセスメントツールとは

アセスメントツールに関して、よく「標準化されたアセスメントツール」と呼ばれることが多いですが、「標準化された」とはどういう意味なのでしょうか。

アセスメントツールによってなされた数値化が単なる序列化で終わらないために、複数の下位尺度を組み合わせて発達の凸凹を評価します。個人の得点が集団の中でどのような相対的位置にあるかを把握するために、標準得点と呼ばれる値が算出されます。

児童の素点を標準得点に換算するための換算表を作成することを標準化と呼びます。

主なアセスメントツール(知能検査・発達検査)

今回はアセスメントツールの中でも知能検査・発達検査において主に使用される4つのアセスメントツールについて説明します。

  1. ウェクスラー式知能検査(WISC-Ⅳ、WAIS-IV)
  2. 田中ビネー知能検査Ⅴ
  3. K-ABC(K-ABCⅡ)
  4. 新版K式発達検査

ツール別利用状況

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引用:厚生労働省 平成24年度障害者総合福祉推進事業 報告書

それでは、個々に説明していきます。

参照:森 慶輔「小中学校に在籍する発達障害児のアセスメント:個別支援への活用」特定非営利活動法人 アスペ・エルデの会「発達障害児者支援とアセスメントに関するガイドライン」

ウェクスラー式知能検査

心理検査として最も頻繁に使用される心理検査の一つであり、WISC-Ⅳ(児童版)とWAIS-IV(成人版)があります。

WISC-Ⅳは全15 の下位検査(基本検査:10、補助検査:5)で構成され、5 つの合成得点(全検査 IQ、4 つの指標得点)が算出でき、合成得点から児童の知的発達の様相をより多面的に把握することができます。

全体的な認知能力を表す全検査 IQ(FSIQ)に加え、言語理解(VC)、知覚統合(PO)、作動記憶(WM)、処理速度(PS)の4 つの指標得点が測定可能です。

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引用:日本文化科学社

WAIS-IVは15の下位検査(基本検査:10、補助検査:5)で構成され、10の基本検査を実施することで、全検査IQ(FSIQ)、言語理解指標(VCI)、知覚推理指標(PRI)、ワーキングメモリー指標(WMI)、処理速度指標(PSI)の5つの合成得点を算出することができます。

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引用:日本文化科学社

WISC-Ⅳは5 歳から 16 歳の児童を対象とし、WAIS-IVは16 歳以上を対象としていて、両者とも実施時間は60~90分です。

購入先:日本文化科学社

田中ビネー知能検査Ⅴ

田中ビネー知能検査Ⅴは、ビネー式知能検査の一つであり、ウェクスラー式知能検査とともに、日本でよく用いられる代表的な個別知能検査です。

田中ビネー知能検査Ⅴの特徴として、問題が年齢尺度によって構成されているため、通常の発達レベルと容易に比較することができます。

1歳級から13歳級までの問題(96問)、成人の問題(17問)が難易度別に並べられています。各年齢級の問題は、言語、動作、記憶、数量、知覚、推理、構成など様々な内容からなり、1歳~3歳級は12問ずつ、4歳級~13歳級は6問ずつ、成人は17問が配置されています。また、1歳級の下に「発達チェック」(S1~11の11問)という項目があり、1歳級の問題を実施して未発達なところが予測された被検査者について、発達の目安をチェックすることができます。

検査対象は 2歳から成人と幅広く、実施時間は約60~90分程度です。

購入先: 一般財団法人 田中教育研究所・田研出版

K-ABC

米国や日本では、K-ABCはビネー式検査、ウエクスラー式検査と並び、知能検査におけるBIG3と呼ばれています。

ルリア理論およびキャッテルーホーンーキャロル理論という 2 つの最新の理論モデルに基づいて作成され、児童の知的活動を認知尺度と習得尺度から測定をします。継次処理能力、同時処理能力、計画能力、学習能力、流動性知能(推理を使って新規な問題を解く能力)や結晶性能力(獲得した知識を使って問題を解く能力)など幅広い能力を測定することができます。現在日本で使用されているものは日本版** K-ABCⅡ**であり、適用年齢は 2 歳 6 ヶ月~18 歳11ヶ月です。

実施時間は認知尺度が約40分~60分、習得尺度が約30分~50分となっています。

購入先:丸善

新版K式発達検査

1951年に京都市児童福祉センターで開発された、乳幼児や児童の発達の状態について、全般的な進みや遅れ、バランスの崩れなど発達の全体像をつかむことができる検査です。

通常その年齢において典型的と考えられる行動や反応をもとに、対象児者の行動や反応がそれらに合致するかどうかを評価することでおこなわれます。

各検査項目は「姿勢・運動」(postural-motor,P-M)、「認知・適応」(cognitive-adaptive,C-A)、「言語・社会」(language-social,L-S)の3つの領域に分類されています。生活年齢で何歳何ヶ月相当の項目であるかにしたがって、第1葉から第6葉までの6枚の検査用紙上に配置されています。

適用年齢は、0歳(生後3カ月)~18歳以上(3カ月未満児の場合は、新生児反射と適応行動の区別が難しい項目があるため、発達年齢の算出はせず、結果は参考に留めることになっています)、実施時間は15分(第1葉)~1時間(第5、6葉)程度です。

購入先:社会福祉法人 京都社会福祉協議会 京都国際社会福祉センター 

ツール比較

WISC-ⅣWAIS-Ⅳ田中ビネー知能検査ⅤK-ABCⅡ新版K式発達検査
対象年齢5歳0ヶ月~16歳11ヶ月16歳0ヶ月~90歳11ヶ月2歳~成人2 歳 6 ヶ月~18 歳11ヶ月0歳(生後3カ月)~18歳以上
費用1~2万円1~2万円840円(保険適用の場合)2~3万円840円(保険適用)
診断書別料金
実施時間60~90分60~90分約60~90分認知尺度:約4060分、習得尺度:約3050分15分~1時間
検査対象定型発達、知的障害、発達障害、神経学的障害、英才児・成人など定型発達、知的障害、発達障害、神経学的障害、英才児・成人など発達障害を含むすべての子ども定型発達、知的障害、発達障害など何らかの事情で、支援を考えるうえで発達年齢を把握する必要がある人。どのような発達段階であっても適用可能
経過観察期間1~2年1~2年1年記載なし1歳未満は1カ月以上13歳未満は3カ月以上、36歳未満は6ヶ月以上、学童期以降は1~2年以上
検査官大学院での心理検査・心理査定や発達検査を履修した者や、日本文化科学社が実施している講習会を受講した者大学院での心理検査・心理査定や発達検査を履修した者や、日本文化科学社が実施している講習会を受講した者大学院等で心理検査・心理測定を履修した者大学院等で心理学や学校教育に関する学習とともに、心理検査・発達検査について履修した者あるいは日本KABCアセスメント学会等が行う講習会を受講した者京都国際社会福祉センターにて講習会で修了証を取得した者
購入先日本文化科学社 日本文化科学社一般財団法人 田中教育研究所・田研出版丸善社会福祉法人 京都社会福祉協議会 京都国際社会福祉センター 

施設に検査に必要な資格を持つ職員がいない場合には、検査を導入している精神科や心療内科、大学の相談室、民間のカウンセリングルームなどで受けることができます。

また発達障害者支援センターでも、実施している機関について問い合わせをすることもできます。

http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%9B%B8%E8%AB%87%E7%AA%93%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1/

また費用に関しても、各施設ごとに料金設定が異なるため受診する病院やセンターなどに問い合わせが必要となります。

まとめ

算出された知能指数は知的発達の目安にはなりますが、子どもの知的能力すべてを測れているわけではないことを念頭においておく必要があります。検査結果の解釈では数値にのみとらわれるのではなく、検査中の児童の行動観察をはじめとして、背景等も考慮していくことが大切です。

検査結果を児童の支援に活用していくためには、家族や教師などからの現在の状況や生育歴などの聞き取り、学校場面や学習場面などの行動観察、指導における児童の反応の観察が重要です。検査情報だけでなく、児童の生育歴や学力の状況、現在の適用の様子など背景情報を集め、総合的にアセスメントをしていき、検査結果も児童の情報の一つとして解釈していく必要があります。

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