メインコンテンツまでスキップ

ACTを基にした親向けプログラムのストレス軽減効果

· 約17分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

この記事では、自閉スペクトラム症(ASD)に関連する最新の学術研究を紹介しています。主な研究内容として、少数派コミュニティのASD児支援を目指したファミリー・ピア・アドボケイトモデルの有効性、紡錘状回における顔認識の神経的特徴、セーバー病とADHDの関連性、ACTを基にした親向けプログラムのストレス軽減効果、教育者とASD幼児の会話相互作用の安定性分析、そして神経管血管形成異常がASDの発症要因となる可能性などが挙げられます。これらの研究は、ASDの発症メカニズムや支援方法の理解を深め、より効果的な介入や治療法の開発に寄与する新たな知見を提供しています。

学術研究関連アップデート

A Family Peer Advocate Model to Address Disparities in Access to Care for Minority Autistic Children with Co-Occurring Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)を併発する少数派(ラテン系および黒人)の子どもたちとその家族を対象に、ファミリー・ピア・アドボケイト(FPA)モデルの効果を検証しました。FPAは、家族に寄り添いながらケアへのアクセスを改善し、ストレス軽減や支援を促進する役割を担います。

主な内容

  • 対象: FPAモデル(介入群、n=24)と通常の治療(対照群、n=24)にランダムに割り当て。
  • 方法: FPAモデルでは、6か月間で計12回(対面4回、遠隔8回)の個別サポートを提供。
  • 測定項目:
    • 主な成果: 介護者のストレス家族の生活の質
    • 副次的成果: 子どもの行動問題(いらだち、多動)、家庭での行動遵守、サービス利用状況。
  • 結果:
    • FPAモデルによる介入は、介護者のストレス軽減、家族の生活の質向上、ADHDを併発するASD児の問題行動(いらだち、多動)の改善に効果的。
    • 治療への満足度は、ADHD併発の有無に関わらず向上。

結論

FPAモデルは、特にADHDを併発するASD児の介護者にとって有益であり、外向的な行動問題が多い場合にも効果的であることが示されました。このモデルは、少数派コミュニティでのケア格差解消や家族支援に貢献する可能性があります。

A multimodal neural signature of face processing in autism within the fusiform gyrus

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)における顔認識の神経的特徴を、**紡錘状回(fusiform gyrus, FFG)**の多様な神経画像データを用いて調査したものです。ASDの人々は、一般的に顔認識の仕方が典型発達の人々と異なると報告されており、その神経的な基盤を明らかにすることが目的です。

主な内容

  1. 対象と方法:
    • 7~30歳のASDと非ASDの人々(合計204名)を対象に、構造MRI安静時機能MRI課題中の機能MRI、**脳波(EEG)**の4つの神経画像データを収集。
    • ノーマティブモデリング独立成分分析を組み合わせて、個人ごとの脳機能や構造の偏差を統合的に評価。
  2. 主要な発見:
    • ASD群と非ASD群では、FFGにおける複数の神経画像データ(特に安静時機能MRI、構造MRI、課題中機能MRI、脳波)に基づくマルチモーダル成分が有意に異なっていました。
    • このマルチモーダル成分は、社会的機能(例: 顔認識や社会的スキル)に関連しており、ASDにおける非社会的機能とは関連していませんでした。
    • マルチモーダルデータは、単一のデータ(例: 機能MRIだけなど)よりもASDと非ASDの区別に優れていました。
  3. 意義:
    • ASDにおける顔認識と社会的機能の理解を深める新しい視点を提供。
    • 社会的機能に関連する脳のメカニズムや将来的な予測バイオマーカーの特定に役立つ可能性。

結論

この研究は、顔認識に関するASDの神経的な特徴が多面的な脳機能や構造の相互作用に関連していることを示しました。この成果は、ASDにおける社会的機能を理解し、より正確な診断や予測方法の開発につながる可能性があります。

Possible association between Sever’s disease and attention deficit hyperactivity disorder. a prospective observational study - Journal of Orthopaedic Surgery and Research

この研究は、小児期に一般的な足の痛みの原因である**セーバー病(Sever’s disease)注意欠如・多動症(ADHD)**との関連性を調査したものです。研究は2023~2024年の1年間で実施され、足の痛みを訴える238名の子どもからセーバー病と診断された88名を対象に行われました。また、健康な対照群90名も評価に含まれました。

主な結果

  1. ADHDの有病率:
    • セーバー病の患者のうち、**70.5%(88人中62人)**がADHDと診断されました。
    • 対照群では、**13.3%(90人中12人)**のみがADHDと診断され、セーバー病患者のADHD有病率は統計的に有意に高いことが示されました(p<0.01)。
  2. 性別の影響:
    • セーバー病患者の中で、男子は女子よりもADHDと診断される割合が高いことが判明(p<0.018)。
  3. スポーツ活動の影響:
    • スポーツ活動に参加していないセーバー病患者でADHDと診断される割合が特に高いことが確認されました(p<0.01)。

結論

セーバー病を持つ子ども、とくに男子やスポーツ活動をしていない子どもは、ADHDを持つ可能性が高いと考えられます。セーバー病の診断時に、ADHDの評価を行うことが有用である可能性が示唆されました。この研究は、身体的な症状と神経発達症状の関連性について新たな視点を提供しています。

Effects of an acceptance and commitment-based parenting program for parents of children with autism spectrum disorder on parenting stress and other parent and children health outcomes: A pilot randomized controlled trial

この研究は、受容とコミットメント療法(ACT)に基づいた親向けプログラムが、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを持つ親に与える効果を検証したものです。このプログラムは、感情とストレス管理、育児スキルのトレーニング、自閉症に関する教育、セルフケア学習を組み込んでいます。

研究方法

  • 40人の親を対象に無作為に2つのグループに分け、ACTプログラム(8回セッション)を受けるグループと通常のケアを受けるだけのグループに割り当てました。
  • プログラムの実施可能性や満足度をアンケートやインタビューで評価しました。

主な結果

  1. プログラムの実施可能性:
    • 多くの親が参加とセッションの完了に意欲的であり、プログラムは実施可能であると判明。
    • 満足度も高く、プログラムを有益と感じた親が多い。
  2. 親への効果:
    • ACTプログラムを受けた親は、以下の点で有意な改善が見られました:
      • 育児ストレスの軽減
      • 抑うつ症状と不安症状の減少
      • 育児に対する自信の向上
  3. 子どもへの効果:
    • プログラム後、親の関与が増えたことで、ASDの子どもたちにおける感情的・行動的問題の減少が確認されました。

結論

このACTプログラムは、ASDの子どもを持つ親にとって実施可能であり、受け入れられやすく、有望な効果があることが示されました。将来的には、対象を広げた大規模な研究で、ASDや他の神経発達症の子どもを持つ親への効果をさらに検証することが提案されています。

この研究は、ASDを持つ子どもの親が直面するストレスや不安を軽減するための新しい支援策を提供する可能性があります。

Preliminary Examination of the Stability of Sequential Associations Between the Talk of Educators and Autistic Preschoolers Using Generalizability Theory

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の幼児と教育者の間の会話の順序的関連性(会話の流れ)を分析する際に、測定の安定性をどのように確保するかを検討したものです。特に、一般化可能性理論を用いて、測定条件(観察回数と評価者)が結果に与える影響を調査しました。

研究方法

  • データ: ASDの幼児11名を対象に、インクルーシブな幼稚園教室での自由遊び中の15分間の教育者-幼児の会話を4回ビデオ録画。
  • コーディング: 訓練を受けた2名の評価者が、幼児の発話と教育者の発話(例: 表現言語の機会 [OEL]を提供する発話とそれ以外の発話)を分類。
  • 分析: 一般化可能性研究を用いて、教育者のOELに続く幼児の発話と、幼児の発話に続く教育者の発話の関連性を評価。

主な結果

  1. 現在の方法論では、両方の会話方向(教育者→幼児、幼児→教育者)において、推定値が不安定でした。
  2. 評価者による誤差は最小限でしたが、観察回数の不足が大きな誤差要因となりました。
  3. 安定した測定値を得るには以下が必要:
    • 教育者のOELに続く幼児の発話: 少なくとも6回の観察が必要。
    • 幼児の発話に続く教育者の発話: 15回以上の観察が必要。

結論

  • 安定した関連性を測定するには、十分な観察回数を確保することが重要です。
  • 今後の研究では、6回以上の観察を基準とし、さらに多くのデータを収集することで、教育者と幼児の会話の相互関係を正確に評価できると提案されています。

この研究は、幼児の言語発達を支援するための教育者の役割を理解する上での基礎的な指針を提供します。

Dysregulation of neural tube vascular development as an aetiological factor in autism spectrum disorder: Insights from valproic acid exposure

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の発症要因として神経管の血管形成異常が関与している可能性を探り、特に**バルプロ酸(VPA)**が神経発達に与える影響について検討しています。以下が主なポイントです:

背景

  • ASDは、遺伝的要因や環境要因が絡む神経発達障害です。
  • 最近の研究では、神経血管の発達異常がASDの病因に重要な役割を果たす可能性が示されています。

VPAの影響

  • *バルプロ酸(VPA)**は抗てんかん薬として広く使用されており、胎盤を通過して胎児の脳に影響を及ぼします。
  • VPAは以下のような血管形成に重要なプロセスを阻害します:
    • *血管内皮増殖因子A(VEGFA)**やその受容体の発現を低下。
    • プリン作動性シグナル伝達を妨げる。
  • これらの影響により、神経血管の発達が不十分となり、神経細胞の移動や経路形成に異常が生じる可能性があります。

ASDとの関連性

  • 血管形成異常は神経系の発達や行動に影響を与え、ASDの特徴的な神経および行動の症状に寄与する可能性があります。
  • VPAに関する研究結果は、神経管の血管形成がASD発症における重要な要因であることを示唆しています。

結論

この研究は、ASDの病因を検討する際に血管因子の重要性を強調しています。VPAが血管形成と神経発達に与える影響に基づき、血管形成の異常が特発性自閉症の発症要因として考慮されるべきであると提案されています。この視点は、ASDの理解や治療法の開発に新たな方向性を提供します。