メインコンテンツまでスキップ

ADHD専門家の視点から見た今後の研究の優先課題

· 約6分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事は、ADHDに関する2つの重要な研究を紹介しています。1つ目は、スウェーデンでの小児精神科から成人精神科への移行に伴う医療利用と薬物治療の変化を調査したもので、ADHD薬の使用率が18歳時点で80.1%だったのに対し、21歳までに36.1%に減少する傾向が明らかになりました。2つ目は、国際的なADHD専門家の視点から今後の研究の優先課題を明らかにしたデルファイ法による調査で、女性や少女におけるADHD研究非薬物的介入感情調整介入の効果などが最も重要な課題として挙げられました。

学術研究関連アップデー

Transitioning From Pediatric to Adult Psychiatric Care for ADHD in Sweden: A Nationwide Study

この研究は、スウェーデンにおける注意欠如・多動症(ADHD)の若者が小児精神科から成人精神科に移行する際の医療利用と薬物使用の変化を調査したものです。2018年から2020年にかけて、19,233名の患者を対象に観察型後ろ向き研究を実施しました。

主な結果

  1. 成人精神科への移行:
    • ADHD治療を受けた患者の85.8%が21歳までに成人精神科でのケアを受けていました。
  2. 薬物使用の減少:
    • ADHD薬の使用率は、18歳時点で80.1%と最も高かったが、21歳までに36.1%に減少しました。
  3. 関連する治療利用:
    • ADHD薬を継続使用している患者は、以下の傾向が有意に高いことが確認されました(p < .0001):
      • 自閉症に関連する医療を受けている。
      • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の処方を受けている。
      • 成人精神科の外来訪問をしている。

結論

この研究は、スウェーデンのADHD患者が小児医療から成人医療へ移行する際に、ADHD薬の使用が大幅に減少することを明らかにしました。医療サービス利用の継続性や薬物治療の維持が課題として浮き彫りになっています。

Establishing the Research Priorities of ADHD Professionals: An International Delphi Study

この研究は、国際的なADHD専門家の視点から、今後の研究の優先順位を明らかにするために実施されました。研究は2段階の改良型デルファイ法を用いて行われました。

研究方法

  1. 第1段階(質的調査):
    • 132名の参加者が、ADHDに関する重要と考える研究課題をリストアップしました。
    • 382の研究質問が生成され、10の広範なテーマに分類されました(例: 併存症や治療法など)。
  2. 第2段階(量的調査):
    • 180名の参加者が、研究可能であり、未解決とされた質問について、その重要性を評価しました。

主な結果

  • 上位20の重要な研究課題:
    • ADHDにおける女性や少女に関する研究
    • 長期的な薬物治療の影響
    • 非薬物的介入の有効性。
    • ADHDの測定方法や評価スケール
    • 感情調整に関する介入の効果

結論

この結果は、国際的なADHD専門家グループの意見を反映したADHD研究アジェンダの策定に貢献します。また、専門家だけでなく、ADHD当事者やその家族の視点からの研究優先順位も並行して調査する必要性が示されています。この研究は、より包括的で効果的なADHD研究を推進するための重要な基盤となります。