EBPsのどの療育方法を選択しても共通する、基本のステップがあります。 今回はそのステップに関して紹介し、より簡単にエビデンスのある療育を開始することができるように活用していただければと思います。
はじめに
EBPsのどの療育方法を選択しても共通する、基本のステップがあります。 今回はそのステップに関して紹介し、より簡単にエビデンスのある療育を開始することができるように活用していただければと思います。
基本の4ステップ
・行動を定義する ・ベースラインデータを収集する ・療育によって求める結果を観察できる、また計測できる形で定義する ・EBPを選択する
ステップ1ー行動定義
どんな介入方法を選べばいいのかは、そもそもどんな行動に対して介入を行うかによって大きく左右されます。
また支援を行なっていく上で様々な大人が関わるため、「何に対して介入するのか」という点をそれぞれが同じように捉える(共通認識化)必要があります。
この点をしっかりと抑えるため、まずは行動を客観的に観察でき、かつ****計測できる形で定義します。 例えば、以下のような2つのケースを考えてみるとわかりやすいかもしれま せん。
例 ケース1 たかしは頑固で、自分で遊んでいるおもちゃを絶対に他人に渡そうとせず、少しでもおもちゃに触れようものなら癇癪を起こします。 ケース2 たかしは、自由時間に一人でおもちゃで遊んでいる時に、他の児童がそのおもちゃに触れようとすると、触れようとした児童に対して、押したり叩いたりと他害行為をする。
2つの例を比べた時にどれだけ具体的にイメージすることができるでしょうか?
ケース1と比較してケース2の場合には、いつ、どんなシチュエーションで、何をきっかけに、どんな行動を行うのかという点が漏れなく書かれているため読み手の想像によって補われる部分がより少なくなっています。
また、実際の行動に関しても、癇癪とは具体的にどんな行動を指すのかよりわかりやすく記載されていることで行動の開始と終了がわかりやすくなっています。これにより、行動の回数を数える時や、時間を測るときにより正確に測定することができます。
ステップ2ーベースラインデータの収集
ベースラインデータとは、今現在対象とする行動がどのくらいの頻度で、またどのくらいの時間発生しているのかをまとめたデータです。
このベースラインデータは、個別支援計画等に記載された目標の達成判断をする上での基準にもなります。問題行動を減少させたい場合や、特定の適応行動を伸ばしたい場合においても、現在の状態が明確に定量的に評価されていないことには、支援前の状態と支援後の状態の差分を確認することが非常に難しくなってしまいます。
Tips 日本語で使用できるアセスメントの多くは何度も使用して経過観察することを前提としていなかったり、また経過観察期間が1年以上などと非常に長い場合もあり、なかなか日常的に支援効果を確認できる方法がありません。 この点においても、ベースラインデータと現在値の比較は有効に活用することができます。
ベースラインデータの収集は先ほどの行動の定義に基づいて、その行動の頻度や時間を計測します。収集に必要なデータ量は最低でも4日間程度(4回の観察機会)があることが望ましいと言われています。
****また4日間でデータが大きく変動して傾向がわからない場合などには、頻度や時間等の傾向が安定するまで収集する必要があります。収集した結果はグラフにして表示すると、より明確に傾向がわかります。
このように対象とする行動が今現在どのくらいの頻度、時間なのかを定量的(数値)に表すと、例えば今からこの頻度を30回に1週間で伸ばすのは難しいだろうということがより直感的に理解できますし、適切な目標設定や期間設定を行うための良き基準として使用できます。