ADHD児の親を対象としたモダンな行動管理トレーニングの効
この記事では、発達障害や精神疾患に関連する最近の学術研究の成果を紹介しています。具体的には、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関する出生前環境リスク要因、トゥレット症候群(TS)と注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状ネットワーク分析、ADHD成人患者の治療変更と医療資源利用の実態、ADHD児の親を対象としたモダンな行動管理トレーニングの効果、ASD患者のMRI画像を用いた自動診断手法、幻覚と感覚処理障害の関連性、ブラジルのASD児の食事行動と栄養状態、知的障害の遺伝的診断の報告状況、そしてASDに関連する家族歴の包括的調査が含まれます。
学術研究関連アップデート
Prenatal environmental risk factors for autism spectrum disorder and their potential mechanisms - BMC Medicine
この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスク要因としての出生前環境要因とその潜在的なメカニズムをレビューしています。ASDの増加は、診断基準の拡大や啓発活動による部分もあるが、遺伝的要因と現代の環境曝露との相互作用が真の発症率増加の原因と考えられています。妊娠中の感染、妊娠糖尿病、母体の肥満はASDの確立されたリスク要因です。最近の研究では、妊娠中の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、抗生物質、毒性物質への曝露が脳の発達に与える影響も注目されています。これらのリスク要因がどのようにASDを引き起こすかは不明確で、免疫調節異常、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、腸内微生物の変化、ホルモン異常が関与している可能性が示唆され ています。このレビューは、ASD予防のための新たな戦略のターゲットとなる可能性のある、出生前の環境要因とそのメカニズムを評価しています。
Network analysis of Tourette syndrome and attention-deficit/hyperactivity disorder symptoms in children and adolescents - Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health
この研究は、トゥレット症候群(TS)と注意欠陥多動性障害(ADHD)の併存症状を詳細に理解するために、ネットワーク分析を用いて症状間の関係を調査したものです。3,958人の参加者を対象に、TSの運動チックや強迫症状、音声チックのデータを収集し、ADHDの症状も併せて評価しました。ネットワーク分析により、両者の症状の23.06%に関連があり、主要な症状として「注意を持続することの難しさ」や「止められない言葉や思考」などが特定されました。また、TSとADHDの橋渡しとなる症状として「言葉が止められない」「跳ねたり手を叩く行動」などが示されました。この結果は、TSとADHDの併存症状を持つ子供や青年に対する治療のターゲットとして役立つ可能性があります。
Real world analysis of treatment change and response in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD) alone and with concomitant psychiatric comorbidities: results from an electronic health record database study is the United States
この研究は、ADHD単独および精神的併存症を持つ成人患者における治療変更や反応を調査し、医療資源の利用(HCRU)との関連を分析したものです。2002〜2021年のNeuroBluデータベースからADHD薬を処方された18歳以上の患者3,387人を対象に行われました。結果として、全体の44.8%が12か月以内に治療変更を経験し、特にうつ病や不安障害を併発する患者で治療の切り替えや追加治療が多く見られました。また、治療開始後12か月以内の治療変更の確率は42.4%と推定され、外来受診率は初期に増加し、その後減少しました。併用療法が治療変更のリスクを増加させることも示されました。この研究は、ADHDと併存する精神的疾患を持つ患者に対する未解決の治療ニーズを明らかにしています。
Modernizing behavioral parent training program for ADHD with mHealth strategies, telehealth groups, and health behavior curriculum: a randomized pilot trial
この研究は、ADHDの子供を持つ親を対象とした行動管理トレーニング(BMT)プログラムのモダン化を目的に、新たに健康行動やテクノロジーを取り入れたプログラム(LEAP)の受容性と実現可能性を調査しました。参加した6〜10歳の子供とその親は、LEAPまたは標準的なBMTプログラムにランダムに割り当てられました。結果、両グループともにADHD症状の減少や実行機能の改善が見られ、介入後およびフォローアップ時に持続されました。身体活動は減少したものの、メディアの使用時間や就寝時の抵抗は改善されました。LEAPは標準的なBMTと同様に効果的であり、健康行動を促進するためのさらなる支援が必要であることが示されました。