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ポーテージプログラムが親のストレス軽減と子供の発達に与える効果

· 約8分
Tomohiro Hiratsuka

この記事は、主に発達障害や自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する最新の研究を紹介しています。具体的には、ASDにおける長鎖非コードRNA(lncRNA)の発現異常の役割、ポーテージプログラムが親のストレス軽減と子供の発達に与える効果、ギリシャの小児集団を対象にしたChildren's Color Trail Test(CCTT)の臨床的妥当性、知的・発達障害やASDを持つ子供の問題行動を管理するためのスマートフォンアプリ「ProVIA-Kids」の効果、そして破壊的行動障害(DBD)の診断における人種間の格差についての研究などを紹介します。

学術研究関連アップデート

Assessment of Expression of lncRNAs in Autistic Patients

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)における長鎖非コードRNA(lncRNA)の発現異常が疾患に関与している可能性を調査した研究です。30人の自閉症児と41人の健常児から採取した末梢血を用いて、特定の5つのlncRNA(PCAT-29、lincRNA-ROR、LINC-PINT、lincRNA-p21、PCAT-1)の発現レベルを分析しました。その結果、自閉症患者ではこれらのlncRNAの発現が有意に低下していることが判明しました。特に、lincRNA-RORやPCAT-1などは診断のバイオマーカーとして有用である可能性が示されました。また、PCAT-1とPCAT-29の発現レベル間には正の相関が見られ、lincRNA-RORの発現レベルと患者の年齢との間にも正の相関が確認されました。これらの結果は、lncRNAの発現異常が自閉症の病因に関与している可能性を示唆しており、さらなる研究が必要であることを示しています。

Evaluating the effectiveness of a Portage program on reducing parenting stress and enhancing child development in autism spectrum disorders - Middle East Current Psychiatry

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供の発達を促進し、親のストレスを軽減するための「ポーテージプログラム」の効果を評価しました。41人のASDと診断された子供とその親が対象となり、プログラムの実施前後で親のストレスレベルや家族の理解度を測定しました。結果として、プログラム参加後に親のストレスが有意に減少し、家族のASDに対する理解度が向上しました。また、子供たちの社会的、言語的、自助的、認知的、運動的スキル、ならびに全体的な発達年齢と発達比率も改善が見られました。結論として、3か月間のポーテージプログラムの参加は、親のストレス軽減と家族のASDに対する認識向上に大きな効果をもたらし、子供たちの多くの発達領域においても顕著な進展が見られたとしています。

Children's color trails test: Greek normative data and clinical validity in children with traumatic brain injury and attention deficit - Hyperactivity disorder

この研究では、ギリシャの小児集団に対する「Children's Color Trail Test(CCTT)」の標準データを作成し、その臨床的妥当性を評価しました。CCTTは、認知の柔軟性、注意力、視覚的追跡、処理速度、干渉や抑制への感受性を評価するためのツールとして広く使用されています。研究では、6歳から15歳の417人の健康なギリシャの子供を対象にCCTTを実施し、年齢がテストの完了時間に有意な影響を与えることを確認しました。年齢が上がるにつれてテストの完了時間が短縮される一方で、性別による影響は見られませんでした。また、CCTTは、外傷性脳損傷(TBI)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持つ子供たちと、通常発達の子供たちのパフォーマンスを区別することができました。この研究は、ギリシャの小児集団におけるCCTTの有用性を示し、臨床や研究の現場で利用可能な有望な神経心理学的ツールのデータを提供しています。

Frontiers | ProVIA-Kids -Outcomes of an Uncontrolled Study on Smartphone-Based Behaviour Analysis for Challenging Behaviour in Children with Intellectual and Developmental Disabilities or Autism Spectrum Disorder

この研究は、知的・発達障害や自閉症スペクトラム障害を持つ子供の問題行動を分析し、管理するためのスマートフォンアプリ「ProVIA-Kids」の実現可能性と初期効果を評価しました。18人の保護者が8週間の介入期間中に参加し、アプリを使用して子供の問題行動の原因を特定し、個別の実践的な指導を受けました。主な結果は、保護者のストレスの変化であり、日々の評価を通じて記録されました。研究の結果、保護者のストレスと問題行動の強度、過剰反応的な育児が改善し、保護者の気分も向上したことが観察されました。アプリの受け入れも高く、ProVIA-Kidsが子供の行動と保護者のメンタルヘルスにプラスの影響を与える可能性が示されました。

Frontiers | Racial disparities in the diagnosis of disruptive behavior disorders: a U.S. National Inpatient Sample analysis

この研究は、米国の入院患者データベース(National Inpatient Sample, NIS)を用いて、破壊的行動障害(DBD)の診断における「人種」による格差を調査しました。対象となったのは、700,770人の小児入院患者で、平均年齢は9.32歳でした。研究では、DBDと注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断を受けた患者のうち、ネイティブアメリカン、アジア系、黒人、ヒスパニック系の子供たちが、白人に比べてDBDの診断を受ける可能性が高いことが明らかになりました。具体的には、ネイティブアメリカンはDBD診断の可能性が2.18倍、アジア系は1.88倍、黒人は1.40倍、ヒスパニック系は1.20倍高いことが示されました。この研究は、DBD診断における人種間の不均等が存在することを強調し、これに関する重要な問いを提起しています。