この記事では、最新の研究や技術を紹介しています。自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断と介入を目指すための、目の動きを追跡するデータを活用した機械学習モデルの開発。エビデンスに基づく実践(EBP)の有効性を検証し、特定の戦略が子供のメンタルヘルスに与える影響を調査した研究。また、自閉症知識評価における「わからない」という選択肢が推測率に与える影響について再評価し、ADIS-ASAの不安障害セクションの妥当性を検証した研究が。さらに、イングランドの自閉症自己擁護者の影響力を測定する新しい評価手法「3iインストゥルメント」について。最後に、カルシウムヘキサシアノフェレート(III)ナノ触媒を利用してASDの治療法を探求する研究を紹介します。
A novel multi-modal model to assist the diagnosis of autism spectrum disorder using eye-tracking data
この論文では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期介入と患者の転帰改善を目指して、目の動きを追跡するデータを活用した機械学習(ML)モデルを開発しました。従来のVGG-16モデルと比較して、提案された新しいMLモデルは目の動きの軌跡、視線の移動距離、視線の固定時間を分析することで、より効果的にASDを識別します。具体的には、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、ゲート付きリカレントユニット(GRU)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)を組み合わせたアーキテクチャを使用し、時間的側面を強化しました。データセットは増強なしで使用され、モデルの性能は検証データセットを用いて評価されました。結果として、この新しいMLモデルはASD検出において高い精度、再現率、正確度を示し、特に精度は93.10%に達しました。これにより、目の動きを追跡するデータの時間的分析がASDの検出において有効であることが示され、神経発達障害の診断および介入における目の動き追跡のさらなる進展に向けた有望な方向性が提供されました。
Validating a Pragmatic Measure of Evidence-Based Practice (EBP) Delivery: Therapist Reports of EBP Strategy Delivery and Associations with Child Outcome Trajectories
この論文は、エビデンスに基づく実践(EBP)の実施を支援し評価するための実用的な測定法の有効性を検証したものです。研究では、セラピストによるEBP戦略の実施報告が子供のメンタルヘルスの結果にどのように関連するかを調査しました。データは、2つの郡のシステムで76人のセラピストが248人の子供に対して行った1,380回のセッションから収集されました。子供たちの平均年齢は11.8歳で、内向性(52%)、外向性(27%)、トラウマ(16%)などの問題を抱えていました。セラピストは、25の内容戦略(例:親教育、認知行動療法)と12の技法戦略(例:モデリング、ロールプレイ)に基づいたEBP戦略の実施を報告しました。
研究では、各クライアントに対して平均5.6回のセッション報告が得られ、ケアギバーはベースライン、週次、2ヶ月後、4ヶ月後に「Brief Problem Checklist」で症状を報告しました。多レベルモデルを使用して、各EBP戦略の実施度合いが子供の結果に与える影響を分析しました。
結果として、技法戦略のうち6つ、内容戦略のうち1つが子供の症状の変化に関連していました。特に、パフォーマンスフィードバックとライブコーチングのより広範な使用、障害への対応の使用が少ないことが、症状の総体的な減少と関連していました。また、目標の設定・見直し、進捗の追跡・見直し、宿題の割り当て・見直しの 使用が外向性症状の減少と関連していました。内容戦略では、認知再構成の使用が症状の総体的な減少と関連していました。さらに、セッション全体での主要内容戦略の高い使用度合いが、症状の総体および外向性症状の減少と関連していました。
この研究は、セラピストによる特定のEBP戦略の実施が子供のメンタルヘルスの改善に予測的妥当性を持ち、ケアの質を示す指標として有用であることを示唆しています。
Re-Evaluating the Appropriateness of the “Don’t Know” Response Option: Guessing Rate as a Source of Systematic Error on Autism Knowledge Assessments
この論文は、自閉症知識評価における「わからない」という回答オプションの適切性を再評価し、参加者の推測率が自閉症知識の測定に与える影響を調査しています。多くの自閉症知識評価には「わからない」という選択肢が含まれており、これが系統的な誤差を生む可能性があります。本研究では、学校ベースの専門家396人が「自閉症スペクトラム知識尺度プロフェッショナルバージョン改訂版(ASKSP-R)」および「自閉症スティグマと知識質問票(ASK-Q)」を完了し、どちらの評価にも「わからない」という選択肢が含まれています。