メインコンテンツまでスキップ

EBPの実施を支援し評価するための実用的な測定法の有効性の検証

· 約14分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

この記事では、最新の研究や技術を紹介しています。自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断と介入を目指すための、目の動きを追跡するデータを活用した機械学習モデルの開発。エビデンスに基づく実践(EBP)の有効性を検証し、特定の戦略が子供のメンタルヘルスに与える影響を調査した研究。また、自閉症知識評価における「わからない」という選択肢が推測率に与える影響について再評価し、ADIS-ASAの不安障害セクションの妥当性を検証した研究が。さらに、イングランドの自閉症自己擁護者の影響力を測定する新しい評価手法「3iインストゥルメント」について。最後に、カルシウムヘキサシアノフェレート(III)ナノ触媒を利用してASDの治療法を探求する研究を紹介します。

A novel multi-modal model to assist the diagnosis of autism spectrum disorder using eye-tracking data

この論文では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期介入と患者の転帰改善を目指して、目の動きを追跡するデータを活用した機械学習(ML)モデルを開発しました。従来のVGG-16モデルと比較して、提案された新しいMLモデルは目の動きの軌跡、視線の移動距離、視線の固定時間を分析することで、より効果的にASDを識別します。具体的には、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、ゲート付きリカレントユニット(GRU)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)を組み合わせたアーキテクチャを使用し、時間的側面を強化しました。データセットは増強なしで使用され、モデルの性能は検証データセットを用いて評価されました。結果として、この新しいMLモデルはASD検出において高い精度、再現率、正確度を示し、特に精度は93.10%に達しました。これにより、目の動きを追跡するデータの時間的分析がASDの検出において有効であることが示され、神経発達障害の診断および介入における目の動き追跡のさらなる進展に向けた有望な方向性が提供されました。

Validating a Pragmatic Measure of Evidence-Based Practice (EBP) Delivery: Therapist Reports of EBP Strategy Delivery and Associations with Child Outcome Trajectories

この論文は、エビデンスに基づく実践(EBP)の実施を支援し評価するための実用的な測定法の有効性を検証したものです。研究では、セラピストによるEBP戦略の実施報告が子供のメンタルヘルスの結果にどのように関連するかを調査しました。データは、2つの郡のシステムで76人のセラピストが248人の子供に対して行った1,380回のセッションから収集されました。子供たちの平均年齢は11.8歳で、内向性(52%)、外向性(27%)、トラウマ(16%)などの問題を抱えていました。セラピストは、25の内容戦略(例:親教育、認知行動療法)と12の技法戦略(例:モデリング、ロールプレイ)に基づいたEBP戦略の実施を報告しました。

研究では、各クライアントに対して平均5.6回のセッション報告が得られ、ケアギバーはベースライン、週次、2ヶ月後、4ヶ月後に「Brief Problem Checklist」で症状を報告しました。多レベルモデルを使用して、各EBP戦略の実施度合いが子供の結果に与える影響を分析しました。

結果として、技法戦略のうち6つ、内容戦略のうち1つが子供の症状の変化に関連していました。特に、パフォーマンスフィードバックとライブコーチングのより広範な使用、障害への対応の使用が少ないことが、症状の総体的な減少と関連していました。また、目標の設定・見直し、進捗の追跡・見直し、宿題の割り当て・見直しの使用が外向性症状の減少と関連していました。内容戦略では、認知再構成の使用が症状の総体的な減少と関連していました。さらに、セッション全体での主要内容戦略の高い使用度合いが、症状の総体および外向性症状の減少と関連していました。

この研究は、セラピストによる特定のEBP戦略の実施が子供のメンタルヘルスの改善に予測的妥当性を持ち、ケアの質を示す指標として有用であることを示唆しています。

Re-Evaluating the Appropriateness of the “Don’t Know” Response Option: Guessing Rate as a Source of Systematic Error on Autism Knowledge Assessments

この論文は、自閉症知識評価における「わからない」という回答オプションの適切性を再評価し、参加者の推測率が自閉症知識の測定に与える影響を調査しています。多くの自閉症知識評価には「わからない」という選択肢が含まれており、これが系統的な誤差を生む可能性があります。本研究では、学校ベースの専門家396人が「自閉症スペクトラム知識尺度プロフェッショナルバージョン改訂版(ASKSP-R)」および「自閉症スティグマと知識質問票(ASK-Q)」を完了し、どちらの評価にも「わからない」という選択肢が含まれています。

結果として、推測率は両方の評価において自閉症知識の最も強力な予測因子であることが示されました。ASKSP-Rでは、学校心理学者、経験年数が多い人、自閉症関連の臨床経験が多い人、また自閉症の人を個人的に知っている人が高い推測率を示しました。学校心理学者やより多くの自閉症の生徒と働く参加者は、自閉症知識スコアが高かったです。ASK-Qでは、自閉症知識が高いと自己評価する参加者が高い推測率を示しました。博士号を持つ人、自閉症の人を個人的に知っている人、より多くの自閉症の生徒と働く参加者は自閉症知識スコアが高かったです。

推測率は自閉症知識評価における系統的誤差の原因となる可能性があり、これを修正するための解決策が検討され、将来の使用のために推奨されています。

Concurrent Validity of the Anxiety Disorders Section of the Anxiety Disorder Interview Schedule- Autism Spectrum Addendum (ADIS-ASA) in Autistic Youth

この研究は、167人の自閉症の若者を対象に、DSM-IVに基づく不安障害面接スケジュール(ADIS-ASA)の不安障害セクションの同時的妥当性を検証しました。参加者の平均年齢は9.91歳で、78.4%が男性、82%が非ヒスパニック、77.67%が白人でした。親が報告した子供の不安症状と機能障害の次元的な測定を使用して、ADIS-ASAの不安障害診断の妥当性を調査しました。

結果として、分離不安障害と社会不安障害の診断は、理論的に一貫した子供の不安症状の側面と有意な関係が見られましたが、全般性不安障害や強迫性障害では見られませんでした。また、分離不安障害は子供の機能障害に関連する変数との収束的妥当性を示しましたが、他の不安障害ではそうではありませんでした。

この研究の結果は、自閉症の若者の不安評価におけるADIS-ASAのゴールドスタンダードとしての地位を支持していますが、さらに不安症状の測定精度を向上させる必要性を強調しています。これにより、臨床評価における重要な示唆が得られました。

Marginalised or missed? The curious case of influential autistic self-advocates in England: introducing the 3i instrument

この論文は、社会政策におけるマージナライズされたグループ(社会的に疎外されたグループ)の影響が過小評価されるリスクについて議論し、新しい評価手法「3iインストゥルメント」を提案しています。この手法は、通常の試みよりも広範な指標を用いて影響力を測定するもので、影響力の初期段階を含めることを意図しています。この指標は、イングランドの自閉症自己擁護者のケーススタディを通じて探求されています。

驚くべきことに、結果は、自閉症自己擁護者と彼らを通じた広範な自閉症コミュニティが、自分たちや他者が予想する以上に政策に影響を与えていることを示しています。しかし、影響力が後の段階で見過ごされていることも示されており、これは研究者のバイアスが複雑な要因である可能性を示唆しています。

単一の「見過ごされた」影響のケースでは、他の文脈やグループに一般化するには不十分ですが、この研究は、より広範な方法論的議論と研究者自身の内省を促す扉を開くものです。

Calcium Hexacyanoferrate (III) Nanocatalyst Enables Redox Homeostasis for Autism Spectrum Disorder Treatment

この論文では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療のために特定の触媒ナノ酵素、カルシウムヘキサシアノフェレート(III)ナノ触媒(CaH NCs)を設計し、効果的な治療法として研究しています。ASDは過剰に生成された活性酸素種(ROS)が細胞のアポトーシスや炎症反応を引き起こす多面的な神経発達障害です。CaH NCsは、スーパーオキシドジスムターゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの自然酵素の活動を模倣し、細胞内の過剰なROSを緩和し、レドックス平衡を調整します。

具体的には、CaH NCsはミトコンドリア膜電位を調整し、B細胞リンパ腫-2レベルを上昇させ、Caspase-3やB細胞リンパ腫-2関連Xなどのプロアポトーシスプロテインを抑制し、細胞のアポトーシスを効果的に減少させます。さらに、CaH NCsは抗炎症性サイトカインインターロイキン-10を上昇させ、炎症性因子を減少させることで、ミクログリアとアストロサイトの活性化を抑え、神経炎症を軽減します。結果として、CaH NCsは社会的能力を向上させ、不安レベルを低下させ、反復行動を改善し、ASD動物モデルにおける学習と記憶を改善します。

この研究は、ASDの管理と予防においてCaH NCsが有効であることを示し、神経学的状態に対する臨床介入の新たな方法を提供する可能性があります。