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問題行動を減らし適切なコミュニケーションを増やす方法【FCT準備編】

· 約13分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

FCTは、問題行動や不適切行動が持つ機能をそのままに、代替行動としてより適切なコミュニケーション方法に変換する方法です。

FCTとは?

FCTは、問題行動や不適切行動が持つ機能をそのままに、代替行動としてより適切なコミュニケーション方法に変換する方法です。

例えば、以下のようなケースを考えてみるとわかりやすいかもしれません。

例たかし君は、自分が遊びたい遊具で誰かが遊んでいるのを見ると、遊具に近づいていき遊んでいる児童を突き飛ばしてしてしまいます。結果として遊んでいた子はその場から離れ、たかし君は遊びたかった遊具で遊ぶことができます。

少し極端な例ですが、このケースの場合たかしくんは突き飛ばした結果、遊具で遊ぶことができています。

しかしながら突き飛ばすという行為は他の児童に怪我をさせてしまう恐れのある問題行動で望ましくありません。このケースにおいてFCTを用いると、突き飛ばすという行動で自分の遊びたい遊具で遊ぶという結果を獲得するという形から**「かして」とコミュニケーションを取ることで自分の遊びたい遊具で遊ぶという結果を獲得するという形に変更することができます。**

大概のケースにおいて、この介入方法で必要になるのは簡単な口頭でのプロンプトなどであり、また物が必要な場合であっても意思表示するためのイラスト等で十分なため、非常に低コストで始めることができます。

不適切行動や問題行動をより適切なコミュニケーションに変換することで、問題行動の減少と同時にコミュニケーションスキルの向上も実現できる方法です。

FCTの対象と変換候補

FCTの対象になる主な行動とその代替行動の例は下記の通りです。

FCTを用いて減少する対象になる問題行動のカテゴリー

  • 傷害行為

  • 癇癪

  • 叫ぶ

  • パニック

  • 離脱・逃走

  • 自傷行為

  • 物損行為

  • 強迫的な常同行動(不適切行動と結びつく場合)

主な代替行動

  • カードを指差して意思表示

  • ジェスチャー(身振り手振り)で意思表示

  • 単語で意思表示

  • フレーズで意思表示をする

  • 文章で意思表示をする

年齢別に効果が確認された領域

image

https://afirm.fpg.unc.edu/node/1495

Step1行動分析と目標設定

FCTを実践するにあたり準備段階として、対象となる問題行動や不適切行動の定義やベースライン測定をまずは実施する必要があります。

行動の定義や問題行動の分析の手法に関してはこちらの記事をご確認ください。

https://www.easpe.com/blog/article/4

https://www.easpe.com/blog/article/7

https://www.easpe.com/blog/article/10

問題行動の分析、定義が済んだら、それに対してどのような条件の時に代替行動が発生して欲しいか?また、代替行動をするにあたり必要なスキルを備えているか?備えていない場合にはどのようにしてそのスキルを獲得させることができるか?など前提となるような事項に関しても整理を行います。

ここまで整理した上で、どの程度の問題行動の減少または代替行動の増加を目標とするのか?目標に到達しているかどうかをどのように測定するのかという目標設定等に関しても整理します。

S****tep1チェックリスト

  • 問題行動・不適切行動の定義
  • 問題行動・不適切行動の機能の把握
  • 問題行動のベースライン調査
  • 代替行動が発生して欲しいタイミングの把握
  • 必要スキルの把握
  • 必要スキルの習得方法
  • 必要スキル習得の確認方法
  • 目標設定
  • 目標達成の測定方法

Step2代替行動を選択する

実際に問題行動の代わりになる適切な行動として、どのような代替行動を習得させるか定義します。代替行動は行動の機能、行動の形態、難易度の3点を考慮して決定する必要があります。****** **

行動の機能を一致させる

****行動分析を行なった結果、問題行動の機能(獲得や逃避等)が特定されます。この機能をより適切な方法で児童が実現できる事を目標とするため、代替行動は問題行動によって達成されていた機能と同じ機能を果たす必要があります。

例 プリント課題に取り組む最中に、教室を抜け出す(逃避) 代替行動プリント課題に取り組む最中に、休憩カードを選択し先生に渡すと休憩することができる(逃避)

適切なコミュニケーション形態を選ぶ

 代替行動としてなんらかのコミュニケーション方法を選択する際には、基本的に児童が今現在使用している方法に則って選択します。

****例えば、通常口頭でコミュニケーションを取る児童に関しては口頭で、通常イラストカードでコミュニケーションを取る児童に関してはイラストカードでといった形で選択します。

またこれは必ず児童が日常的に使うコミュニケーション方法のみ利用するということではなく、例えば口頭でのコミュニケーションに加えてイラストカードも使ったことがあるというような場合には、代替行動としてイラストカード等を用いることも可能です。状況に応じてより適切だと判断できるコミュニケーション方法を選択することが重要です。

ただし、児童がこれまで全く使ってこなかったコミュニケーション方法を代替行動として選択することは推奨されていません。


適切な難易度にする

**代替行動の難易度が、児童にとってとても高いものだと、その行動をするよりも問題行動によって逃避や獲得といった機能を満たしたほうがいいと判断されかねません。**そのため代替行動は児童にとって一番簡単なコミュニケーション方法で始められるように工夫する必要があります。

Step2チェックリスト

  • 代替行動の定義
  • 代替行動の機能と問題行動の機能が一致していることを確認
  • 代替行動のコミュニケーション方法と通常のコミュニケーションに乖離がないか確認
  • 「代替行動の難易度」>「問題行動」という形になっていないか確認

Step3代替行動の共通認識化

代替行動としてどのような方法を用いるか選択した後に重要なのは、それを支援者間でしっかりと共通認識化することです。

問題行動が発生していたのは、その問題行動によって得ることができていた結果があるためです。FCTは問題行動以外の行動でも同じ結果が得られるということを学習させていく方法ですので、代替行動が発生した際には同じ結果を必ず提供する必要があります。

実際に代替行動が起きた時に、その代替行動の機能を満たさないと、問題行動を利用する状態に戻りかねません。

そのため、支援者はFCTを実施する際には、代替行動はどのような行動でまたその行動が発生した場合どのような対応が必要なのか、しっかりと共通認識を持っておく必要があります。

Step3チェックリスト

  • 代替行動の定義の共有
  • 代替行動の機能の共有

Step4必要となるものを作成・用意する

代替行動を児童が行う上でカードや、デバイスなどが必要な場合には、あらかじめそれらを準備しておく必要があります。

Step4チェックリスト

  • 必要な物品等の準備

まとめ

以上が、FCTを始めるまでに必要な準備になります。代替行動を適切に設定しないと問題行動の方が使われ続けてしまったり、また代替行動が起きた時の反応を統一していないと問題行動の方が優先されてしまうなど、いくつかのポイントをしっかり抑えて活用していく必要があります。

そのため準備の段階で特に行動の機能や代替行動の難易度に注意しながら設計していくことが重要です。