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文化的および言語的に多様な子供たちに対する自閉症スクリーニングツールの有効性と課題

· 10 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、発達障害や自閉症に関する最新の学術研究を紹介しています。主に、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断や介入に関する多様な研究が取り上げられており、神経的な特徴の一般化可能なモデルの開発や、若年自閉症児に対するEarly Start Denver Model(ESDM)の有効性比較試験、脳の時間的安定性に基づく発達プロファイルの調査、言語ネットワークの機能的結合性と遺伝的要因に関する解析、さらに文化的および言語的に多様な子供たちに対する自閉症スクリーニングツールの有効性と課題を紹介します。

学術研究関連アップデート

Generalizable and transportable resting-state neural signatures characterized by functional networks, neurotransmitters, and clinical symptoms in autism

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の神経的な特徴を特定し、一般化可能な診断モデルを構築するために、日本の730名の成人を対象とした大規模なマルチサイトの静止状態fMRIデータを用いています。研究の目的は、ASDの機能的ネットワーク、神経伝達物質、臨床症状に基づく神経の特徴を捉えることです。この分類器は、日本、アメリカ、ベルギーの成人に対して成功裏に一般化され、さらに子供や青年にも適用可能であることが示されました。分類器には、ASDと定型発達者を区別するための141の重要な機能的接続が含まれており、これらの接続は社会的相互作用の困難さやドーパミンとセロトニンに関連していました。さらに、ADHD、統合失調症(SCZ)、うつ病(MDD)もASDと関連する生物学的軸上にマッピングされ、ADHDとSCZはASDと近い位置にあることが確認されました。この研究は、ASDの脳の機能的特徴が分子レベルや臨床症状に基づいており、関連疾患の評価にも応用できることを示しています。

Study Protocol for a Cluster, Randomized, Controlled Community Effectiveness Trial of the Early Start Denver Model (ESDM) Compared to Community Early Behavioral Intervention (EBI) in Community Programs serving Young Autistic Children: Partnering for Autism: Learning more to improve Services (PALMS)

この研究は、若年の自閉症児に対するEarly Start Denver Model(ESDM)と、通常の早期行動介入(EBI)を比較する効果を評価するためのクラスターランダム化制御試験です。ESDMは、ABA(応用行動分析)と発達科学を統合した自然主義的な行動介入法で、社会的コミュニケーション能力の向上が期待されています。この研究では、地域の機関で提供されるESDMとEBIの効果を比較し、自閉症児の言語や社会的コミュニケーションの改善を検討します。

100人のスーパーバイザーと300人の自閉症児、200人の行動技術者が参加し、12ヶ月にわたって観察されます。主要な評価項目は、6ヶ月および12ヶ月後の子供の言語と社会的コミュニケーション能力で、二次的な評価として適応行動、介護者の介入技術、介入忠実度なども測定します。

この研究の結果は、地域社会でのESDMの有効性と普及に関する重要な知見を提供し、特に公的資金による介入サービスに依存する自閉症児へのアクセス向上に寄与することが期待されています。

Characterization of the temporal stability of ToM and pain functional brain networks carry distinct developmental signatures during naturalistic viewing

この研究は、自然な視覚刺激下での脳の機能ネットワーク(特に他者の精神状態(Theory of Mind: ToM)と身体的感覚(痛み)に関わるネットワーク)の時間的安定性が、子供から成人期にかけてどのように発達するかを調査しています。3〜12歳の子供122人と成人33人のfMRIデータを使用し、映画鑑賞中に脳がどのように反応するかを解析しました。結果として、ToMネットワークと痛みネットワークの時間的安定性は、3歳時点で低く、5歳頃までに安定し、その後成人期まで持続的に安定することが明らかになりました。特にToMネットワークの安定性は、幼少期の「誤信念課題」の成績と関連しており、安定性が高いほど課題をクリアする傾向があることが示されました。この研究は、社会的認知の神経基盤に関する発達障害のバイオマーカーとして、脳ネットワークの時間的安定性が役立つ可能性を示唆しています。

この研究は、言語ネットワークの機能的結合性と、それに関連する遺伝的要因を調査したものです。29,681人のUK Biobankの参加者から得られた安静時の脳画像データを使用し、左脳の言語処理に関与する18の領域と、それらの右脳領域および半球間の接続性を測定しました。多変量ゲノムワイド関連解析により、言語ネットワークの機能的結合性に関連する14のゲノム領域が特定され、そのうち3つは左右の脳内結合性の非対称性とも関連していました。また、言語能力の低下、ディスレクシア(読字障害)、左利きに関連する遺伝的傾向が、左脳優位の結合性の減少と関連していることが明らかになりました。さらに、まれな遺伝子変異に基づく解析では、7つの追加の遺伝子が示唆されました。これらの結果は、言語ネットワークの組織化に関与する遺伝的要因と、それに関連する行動的特徴についての新たな知見を提供しています。

Screening tools for autism in culturally and linguistically diverse paediatric populations: a systematic review - BMC Pediatrics

この系統的レビューは、自閉症スペクトラム障害(ASD)のスクリーニングツールが文化的および言語的に多様な(CALD)小児集団でどの程度効果的かを調査したものです。2310件の文献から51件の研究を分析し、32か国で使用されているさまざまな言語のスクリーニングツール(中国語、スペイン語、韓国語、トルコ語など)を評価しました。研究はスクリーニングツールの有効性、信頼性、正確性を評価しましたが、CALD集団におけるツールの受容性に関するデータは不足していました。結果として、スクリーニングツールは、そのツールが作成された文化や言語に適した場合に高いパフォーマンスを示す一方で、文化的適合性が低い場合には精度が低下することが示されました。結論として、文化に敏感なスクリーニングツールの必要性が強調され、より公平な診断と介入のためには、文化に特化した信頼性のあるツールの開発が必要であると提案されています。