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オンラインゲームがASD児の社会性に与える積極的な影響

· 約35分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本記事では、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD、ディスレクシアなどの発達・認知特性に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しています。具体的には、ASDに対するメラトニンや自然主義的介入(NDBI)の効果、ADHDの子どもの認知機能とスクリーンタイムの関係、ディスレクシア成人の外国語学習における自発性の困難、保護者の燃え尽きやセルフケアの実態、さらにはオンラインゲームがASD児の社会性に与える積極的な影響など、臨床・教育・社会環境の多角的な視点から実証された知見がまとめられています。また、重度な施設養育の経験が自閉症的特徴に及ぼす影響や、Webアプリの治療活用可能性といった、制度設計や支援の在り方を再考させる研究も含まれており、現代の発達障害支援をめぐる課題と展望を包括的に捉える内容となっています。

学術研究関連アップデート

Melatonin Interventions in Autism Spectrum Disorder: Sleep Regulation, Behavioral Outcomes, and Challenges Across the Lifespan

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある人に多く見られる**睡眠障害(最大80%が該当)**に対し、「メラトニン」というホルモンがどのように役立つかをまとめたレビュー研究です。


✅ メラトニンってなに?

  • 体内時計(概日リズム)を調整するホルモンで、主に夜になると分泌され、眠気を促します。
  • ASDのある人は、メラトニンの分泌が不規則になりやすいとされており、それが睡眠障害の一因と考えられています。

🧪 研究のポイント

このレビューでは、メラトニンがASDに与える影響を次の観点から紹介しています:

  1. 睡眠の改善

    → 入眠のしやすさや夜間の覚醒の減少に効果あり。

  2. 行動の改善

    社会的な行動、コミュニケーション、常同行動(繰り返しの行動)などの改善が報告されている。

  3. 脳への保護効果(神経保護)

    → メラトニンには抗酸化作用や抗炎症作用があり、脳を守る可能性があると示唆されている。

  4. 他の治療法との組み合わせ効果

    → 薬物療法や行動療法と併用することで相乗効果が期待できる可能性がある。


🔍 今後の課題と展望

  • 効果のメカニズムをもっと詳しく解明すること
  • 個別化医療(その人に合った量や使い方)の検討
  • 実生活でどれほど役立つかのデータ(実用性)の蓄積

📝 かんたんまとめ

✔ ASDのある人の多くが悩む睡眠障害に、メラトニンが効果的

睡眠だけでなく、行動面や脳の健康にも良い影響がある可能性

個別に合わせた使い方や他の治療との併用が重要

✔ 将来的には、ASD支援の中でメラトニンが重要な役割を担う可能性が高い

この研究は、メラトニンが「眠れるようになる薬」以上に、ASD全体のケアに役立つ可能性を持つことを示しています。

A Brief Report of Self-Care Practices and Respite Use Among Hispanic/Latina Mothers of Children with Developmental Disabilities

この研究は、**発達障害のある子どもを育てるヒスパニック/ラティーナ系の母親(アメリカ・ネブラスカ州在住)**が、自分自身のケア(セルフケア)や一時的な支援サービス(レスパイトケア)をどのように活用しているかを調べたものです。


🔍 研究の目的

以下の3点を明らかにすることが目的でした:

  1. セルフケアやレスパイトサービスを使っているか?
  2. どんなセルフケアの方法を使っているか?
  3. それらの利用を妨げる要因は何か?

🧪 方法

  • 対象:75人のヒスパニック/ラティーナ系の母親
  • 時期:2022年8〜9月にインタビュー調査を実施

📊 主な結果

  • 73.3%の母親が「自分をケアしている」と答えた

    → 実際には80%が具体的なセルフケア活動(例:運動、祈り、休息)を行っていた

  • 移民ステータスによる差が明らかに → 米国で合法的に滞在していない人たちは、セルフケア実施率が有意に低かった(38.2% vs. 61.8%)

  • レスパイトサービス(子どもの一時的なケア)の利用者はわずか6.8% → 利用していない人の60%が「サービスの存在を知らなかった」と回答


✅ 結論(やさしくまとめると)

✔ 多くの母親が、自分の心と体の健康のために何らかのセルフケアをしている

✔ しかし、「一時的に子どもを預けて休む」ためのレスパイトケアについては知られていない

✔ 特に移民ステータスに不安のある人は、ケアを受けづらい状況にある

文化・言語・生活状況に合った情報提供や支援制度が必要


📝 かんたんまとめ

ヒスパニック/ラティーナの母親たちは、日々のケアで頑張っているけれど、「支援サービス」についての情報不足や制度への不安が妨げになっている。支援を届けるには、その人の文化や状況に寄り添った情報と制度づくりが大切だと示された研究です。

Language skills of adults with dyslexia in English as a foreign language: proposal of a language spontaneity deficit hypothesis

この研究は、発達性ディスレクシア(読み書きの困難)を持つスペイン語話者の大人が、外国語としての英語を使うときにどんな困難を抱えるのかを明らかにしたものです。そして、「言語の自発性に弱さがある」という新しい仮説を提案しています。


🔍 研究の目的

  • 発達性ディスレクシアは子どもだけでなく大人になっても読み書きに困難が残る障害です。
  • 本研究では、英語を外国語として学ぶスペイン人のディスレクシアのある成人18人と、同年代の健常者グループを比較しました。

🧪 方法

参加者に以下の4つの課題を実施:

  1. 英語の文章を読む(リーディング)
  2. 英語を聞き取る(リスニング)
  3. 英語で文章を書く(ライティング)
  4. 英語を話す(スピーキング)

📊 主な結果

  • ディスレクシアのある人たちは:
    • 読むのに時間がかかり、内容理解も弱い
    • 書くときにスペルミスが多い
    • 話すときに、意味の誤り・語彙の少なさ・文の単純さが目立った
  • 特に注目すべきは、「書く」より「話す」方が差が大きかったという点。
    • これは、「とっさに話す=自発的な言語活動」に苦手さがあることを示している。

🧠 提案された仮説

  • 研究者たちはこれを「言語自発性の欠如(Language Spontaneity Deficit)仮説」と名付けました。
  • つまり、準備ができない状態での言語使用(特に口頭)において、ディスレクシアのある人は大きな困難を感じるという考え方です。

✅ 実践への示唆(かんたんまとめ)

✔ ディスレクシアのある大人には、読み書きだけでなく「英語を話す」支援も必要

✔ 特に、即時応答や会話といった自発的な言語使用にサポートが求められる

✔ 外国語教育では、事前準備ありの練習+安心して話せる環境づくりが大切


この研究は、ディスレクシアの支援を「読み書き」だけに限らず、「話す力」や「会話場面での負荷」にも目を向けるべきだという、新たな視点を提供しています。

Could the use of web-based applications assist in neuropsychiatric treatment? An umbrella review

この研究は、インターネットブラウザで使える「ウェブアプリケーション」が、神経精神疾患(うつ、不安、ADHDなど)の治療に役立つかどうかを調べた「アンブレラレビュー(既存のレビュー論文をまとめた総まとめ)」です。


🔍 研究の目的

  • 精神的な不調や神経系の問題を抱える人にとって、手軽に使えるデジタル支援(例:オンラインアプリ)は本当に効果があるのか?
  • 既存のレビュー論文(過去の研究をまとめたもの)を広く調査し、ウェブアプリが治療に役立つかどうかを検証しました。

🧪 方法

  • MEDLINE(PubMed)、SciELO、Cochraneの3つの医学データベースから、ウェブブラウザで利用するアプリを対象としたレビュー論文83件を収集。
  • 言語や出版年に制限はなし。
  • 内容の近いテーマごとに分類して分析。

📊 分類された主なテーマ

  • マインドフルネス
  • 耳鳴り
  • eHealth(電子的な健康支援)
  • 若者や学生のメンタルヘルス
  • mHealth(モバイルヘルス:スマホアプリなど)
  • うつ、不安、ストレス
  • 薬物使用
  • 睡眠の質
  • 慢性疾患とメンタルの関係

✅ 結論(かんたん解説)

✔ ウェブベースのアプリは、神経精神疾患の治療をサポートする手段として効果が期待できる

✔ うつや不安の軽減、ストレスへの対処、睡眠の改善など、QOL(生活の質)向上に役立つ

マインドフルネスやeHealthなど、様々な形のオンライン支援がすでに活用されている


📝 一言まとめ

「ウェブで使えるアプリ」は、心の健康を支える有効なツールとなりうることが、多くの研究を統合した形で示されました。今後は、こうしたデジタル支援をより使いやすく、安全に活用する方法が求められます。

The “Tetris effect”: autistic and non-autistic people share an implicit drive for perceptual cohesion - Molecular Autism

この研究は、**「テトリス効果(Tetris effect)」と呼ばれる「バラバラなパーツを自然に組み合わせて全体の形を思い描こうとする心の働き」が、自閉スペクトラム症(ASD)の人とそうでない人で違いがあるのか?**を調べたものです。


🔍 背景と目的

  • テトリスやパズルのように、「このパーツとこのパーツ、うまく組み合わさりそうだ」と無意識に全体像を想像してしまう現象があります。これが**「テトリス効果」**。
  • ASDの人は、「細かい部分に注目しやすい」と言われる一方で、「パターン認識に強い」ともされており、この“全体を構成しようとする力”が弱いのか強いのかは議論があります
  • そこでこの研究では、ASDの人と非ASDの人(一般的な人)で、この効果がどう現れるかを比較しました。

🧪 方法

  • 参加者:合計470人(ASDの人196人、非ASDの人274人)
  • 手法:オンラインで「テトリス風の形」を見せる2つの課題を実施
    • 例:パーツAとBを見て、それが「合わさって1つの形になるかどうか」を判断
  • データ解析には、**統計的に精度の高い手法(混合効果ロジスティック回帰、信号検出理論)**を使用

📊 主な結果

  • 全体として、「組み合わせられそうなパーツ」は、実際には組み合わせていなくても“1つの形”として認識されやすいという、テトリス効果が確認された
  • ASDの人と非ASDの人の間で、この効果に違いはなかった
  • つまり、ASDの人も「全体像を作ろうとする心のはたらき」を同じように持っていることがわかりました。

✅ 結論と意義(やさしくまとめると)

✔ 人は、バラバラな情報から「まとまり」を見つけようとする傾向がある(=テトリス効果)

✔ この傾向は、自閉スペクトラム症の人でも同様に見られる

✔ 「ASDの人は全体を捉えられない」という考えに対して、それは一面的な見方であり、誤解である可能性がある


📝 かんたんまとめ

自閉症のある人も、そうでない人と同じように「バラバラな情報を1つにまとめて見ようとする」力を持っていることが分かりました。これは、“違い”よりも“共通点”を重視する新たな視点を提供する研究です。

Screen time is a predictor of cognitive function in children with attention deficit hyperactivity disorder

この研究は、ADHD(注意欠如・多動症)のある子どもにおいて、日々の「スクリーンタイム(スマホやタブレットなどの画面を見る時間)」が認知機能にどのような影響を与えるかを調べたものです。


🔍 研究の目的と背景

  • ADHDのある子どもたちは、集中力や記憶、情報処理など「認知機能」に課題を抱えやすいとされています。
  • 一方で、現代ではスマホやゲームなどのスクリーンに接する時間(スクリーンタイム)が長くなっている子どもが多く、これが脳の発達にどう影響するかが注目されています。
  • この研究では、スクリーンタイムと認知機能との関係、そして他の影響要因(知能指数、親の学歴など)についても分析しました。

🧪 方法

  • 対象:中国国内のADHDのある6〜16歳の子ども184人
  • 評価項目:
    • ADHDの主な症状(不注意や多動など)
    • IQ(知能指数)
    • 認知機能(DN:CASという理論に基づいた検査を使用)
    • 1日のスクリーンタイム(テレビ、スマホ、タブレットなどを見る時間)
    • 家庭の背景(母親の学歴など)
  • 分析手法:複数の要因が認知機能にどう影響しているかを、多変量線形回帰で分析

📊 主な結果

  • 1日のスクリーンタイムが短いほど、認知機能のスコアが高かった
  • IQが高い子どもほど、認知機能のスコアも高かった
  • 母親の学歴が高い家庭の子どものほうが、認知機能が高い傾向があった

✅ 結論とポイント(やさしくまとめると)

✔ ADHDの子どもにおいて、スクリーンを見る時間が長いほど、認知機能のスコアが低くなる傾向があった

✔ 認知機能には、知能(IQ)や家庭環境(特に母親の教育水準)も関係していた

✔ 保護者は、子どものスクリーンタイムを適切に管理することが、認知の発達にとって大切だということが示唆された


📝 かんたんまとめ

ADHDのある子どもの「認知の力」は、スクリーンを見る時間の長さと関係がありました。スクリーンタイムが短く、知能が高く、母親の学歴が高いほど、認知の力も高い傾向があることがわかりました。親は、スクリーンタイムのコントロールが子どもの発達に役立つことを理解しておくと良いでしょう。

Complex, low-intensity, individualised naturalistic developmental behavioural intervention in toddlers and pre-schoolers with autism spectrum disorder: The multicentre, observer-blind, parallel-group randomised-controlled A-FFIP trial

この研究は、**自閉スペクトラム症(ASD)のある2〜5歳の子どもに対して行われる「自然主義的発達行動介入(NDBI)」が、どれほど効果があるかを検証した大規模な臨床試験(ランダム化比較試験)**です。特に、**ドイツで開発された「A-FFIP(フランクフルト早期介入プログラム)」**という介入法の効果が1年間にわたって検討されました。


🔍 研究の目的

  • ASDの子どもに対する支援の中でも、日常生活に沿った形(自然な場面)で行う発達支援=NDBIは有望とされています。
  • この研究では、A-FFIPという低強度・個別化された支援プログラムが、通常の早期支援(EIAU)と比べてどのように効果が異なるかを検証しました。

🧪 研究の方法

  • 対象:134人のASDの子ども(24〜66か月、発達指数DQ>30)
  • 介入群:A-FFIP(68人)
  • 比較群:通常の早期支援(EIAU、66人)
  • 主な評価指標:12か月後のASD症状の変化(専門家が動画で評価するBOSCCスコア)
  • その他:保護者・教師による行動評価なども実施
  • ※コロナ禍によって介入や測定に制約が生じた点も考慮

📊 主な結果

  • 主な評価指標(社会的コミュニケーションなどの症状改善)では、A-FFIPと通常支援で有意差なし
  • しかし、副次的な指標では以下の改善が見られた
    • 保護者による反復行動の評価が改善
    • 保護者および教師による実行機能(計画性、注意など)の評価も改善
  • 有害事象(問題行動や事故など)は両群で同等で、安全性に問題なし

✅ 結論(わかりやすく)

1年間の介入では、A-FFIPはASDの中核症状(社会性・言語など)に特別な効果はなかった

✔ ただし、反復行動や実行機能(計画性・注意力など)に対しては一定の改善が見られた

✔ 個別ニーズに合わせて支援内容を調整できる点は評価できるが、効果を出すには期間や実施環境に工夫が必要


📝 かんたんまとめ

ドイツで開発されたASD向け支援プログラム「A-FFIP」は、1年で社会性の大きな改善は見られなかったものの、反復行動の減少や実行機能の向上といった副次的な効果は期待できることがわかりました。支援の質や内容を個別に調整できるNDBIの特徴を活かすには、さらに長期的な検証や実施方法の工夫が必要です。

Frontiers | Latent Profile Analysis of Parental Burnout Among Parents of Children With and Without Autism Spectrum Disorder (ASD)

この研究は、中国における自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもを育てる親と、ASDのない子どもを育てる親との間で「親の燃え尽き(パレント・バーンアウト)」にどのような違いがあるかを分析したものです。特に、どのようなタイプ(パターン)のバーンアウトが存在するのかを分類(潜在プロファイル分析)し、それに影響する社会的・家庭的要因を調べました。


🔍 研究の背景と目的

  • 「親の燃え尽き」とは、育児による極度のストレスや疲労で、情緒的に疲れ果てたり、育児への否定的な感情が強まる状態のこと。
  • 特にASDのある子どもを育てる親では、この状態が深刻化しやすいと考えられています。
  • 本研究では、中国の親たちを対象に、燃え尽きの程度とその特徴を分類し、**影響要因(性別、子どもの年齢、きょうだいの有無など)**を明らかにしました。

🧪 方法

  • オンライン調査:ASDのある子の親/ない子の親の2グループを対象
  • 使用ツール:親の燃え尽き度を測定する簡易版尺度(Chinese BPBA)+基本的な属性質問
  • 分析方法:
    • *潜在プロファイル分析(LPA)**で「燃え尽きのタイプ(プロファイル)」を分類
    • 多変量ロジスティック回帰で、その要因を検討

📊 主な結果

  • ASDのある子の親
    • 「低レベル」「中レベル」「高レベル」の3タイプのバーンアウト群が見られた
  • ASDのない子の親
    • 「低レベル」「中レベル」の2タイプのみ
  • バーンアウトが高くなりやすい親の特徴
    • 母親
    • 子どもが2人以上いる親
    • 子どもが年少である親
    • ASDの症状が重い子を育てる親

✅ 結論と意義(わかりやすく)

✔ ASDのある子の親は、より深刻な「燃え尽き」状態に陥りやすい

✔ 特に、「子どもが小さい」「複数の子どもがいる」「母親」「重度のASD」などの条件が重なるとリスクが高まる

✔ 親の状態に応じた、**段階的・個別的な支援(例えばストレス軽減、休息の支援など)**が重要


📝 かんたんまとめ

ASDのある子を育てる親は、より深い育児ストレスを抱える可能性が高いことが明らかになりました。親の性別や家庭の状況によって「燃え尽き」のタイプも異なるため、一律の支援ではなく、それぞれの状況に合った支援が必要です。

Multiplayer gaming and autism: Social communication through repetitive behaviours

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもたちが「Minecraft(マインクラフト)」などのオンラインマルチプレイヤーゲームを通じて、どのように社会的なやり取り(ソーシャルコミュニケーション)を行っているのかを調査した事例研究です。特に、ASDの特徴である反復的な行動が、むしろ他者とのやりとりを促す役割を果たしていることに注目しています。


🔍 研究の背景と目的

  • ASDのある子どもたちは、**反復的な行動(同じ遊び方を繰り返す、特定のことに強いこだわりを見せるなど)**が特徴的です。
  • 一方で、オンラインゲーム、とくにMinecraftのような自由度の高いゲームでは、子どもたちが自分のスタイルで関われるため、ASDの特性が「強み」として活かされやすいのでは?という仮説に基づいています。

🧪 方法

  • 3人の自閉症の小学生を対象に、家庭と学校でのMinecraft利用中の様子をビデオ観察
  • ゲーム中の画面操作、言葉、身体の動きなどを含むマルチモーダル(多様な手段)でのやりとりを分析。

📊 主な結果

  • Minecraftでの「反復的なプレイパターン」(例:同じブロックの配置、特定の作業の繰り返し)が、仲間とのコミュニケーションや協力行動のきっかけになっていた
  • ゲーム内での活動を通じて、社会性・協調・言語的やりとりが自然に発生していた。
  • 反復的な行動は、**コミュニケーションの障壁ではなく、むしろ「共通の関心」や「交流のスタート地点」**として機能していた。

✅ 教育的な示唆(わかりやすく)

反復的な行動=困りごとという視点ではなく、社会参加の入り口として活かせる可能性がある

Minecraftのような自由度の高いゲームは、ASDのある子どもにとって「自然に関われる場所」になる

✔ 教師は、こうしたゲームを多面的(マルチモーダル)に活用することで、子どもたちの強みを引き出す支援ができる


📝 かんたんまとめ

マインクラフトなどのオンラインゲームは、自閉症の子どもたちにとって、反復的な行動を活かして他者とつながる「社会的なツール」になり得る。先生たちは、ゲームを通じたやりとりを授業や支援にうまく取り入れることで、コミュニケーション力や協調性を育むことができる。

What Is Distinctive About Autism Arising Following Severe Institutional Deprivation? A Direct Comparison With a Community Sample of Early Diagnosed Autistic People

この論文は、「幼少期に深刻な施設での養育(ネグレクトなどの極度な環境的剥奪)を受けた子どもに見られる自閉症的特徴(QA:準自閉症)が、一般的な自閉スペクトラム症(CA:地域社会で早期診断された自閉症)とどう異なるのか」を比較した研究です。


🔍 研究の背景と目的

  • 「**イギリス=ルーマニア養子縁組研究(ERA)」では、劣悪な施設で長期間過ごした子どもの中に自閉症に似た特徴(準自閉症=QA)**が高い割合で見られました。
  • 本研究では、そのような極度の早期環境剥奪によって生じた自閉症的特徴(QA)が、地域社会で早期に診断された一般的な自閉症(CA)とどのように似ていて、どのように異なるのかを直接比較しています。

🧪 方法

  • QA群:ルーマニアなどで施設育ちを経験した養子26名。
  • CA群:一般的な医療機関で11歳・15歳の時点で自閉症と診断された子どもたち。
  • 比較指標:Social Communication Questionnaire(SCQ)の32項目(社会性・コミュニケーション・反復行動の3領域)を使って分析。
  • 時系列比較:11歳、15歳、23歳時点の変化を観察。

📊 主な結果

共通点(QAもCAも似ている点):

  • 社会性、コミュニケーション、常同行動のすべての自閉症ドメインに困難が見られる
  • 情緒的問題(不安やうつ)や行動上の困難(多動など)も共通して存在
  • 全体的に、自閉スペクトラム症に共通する特徴を備えている。

違い(QAとCAの違い):

  1. コミュニケーションの困難の質が違う

    → QAでは、「言語表現の異常(例えば不自然な言い回しや文法)」が中心だった。

  2. 社会的相互性(他人とのやりとり)の困難はQAの方が軽く、時間とともに改善する傾向

    → CAの方がこの領域の困難は強く持続的だった。

  3. 常同行動・反復的行動は、QAでも強く・長く続く

    → これはCAと同様、成人期にも持続していた。


✅ 結論(かんたんまとめ)

✔ 施設での深刻な剥奪経験により生じた自閉症的特徴(QA)は、一般的な自閉症(CA)と非常に似ているが、いくつかの点で異なる

✔ 特に、社会的やりとりの困難はQAの方が軽く、時間とともに改善しやすい

✔ 一方で、言語表現の異常と、常同行動の持続性はQAでも顕著

✔ この研究は、自閉症的特徴が「脳の発達特性」だけでなく、「早期の環境」によっても形成され得ることを示しています。


📝 一言まとめ

「環境によって自閉症のような特徴が生じることがある」という重要な発見をもとに、自閉スペクトラム症の多様性と、支援の在り方について再考を促す研究です。